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Flight1‐気にしちゃいけない

さっそく新キャラ! バカな作者をお許しください…

 僕は走る。

 とにかく走る。

 なにがなんでも走る。

 限界を突破しても走る。

 足がブチ切れるまで走り続ける。



 その理由は、後ろを振り返れば分かる……




『待てェェェェェェエエエエエエエエエエエエエエ!!!!』



 僕を追ってくる人、人、人、人…

 老若男女の様々な姿をした人々の大群が、俺の後ろをバッファローの群れの如く大地を揺らして猛然と走ってくる。

 理由は分からない……けど、止まったら死ぬ!!



 そして、その大群から一歩飛び出して追い掛けてくる一つの影……



 整った顔立ちに女性らしいバランスの取れたスタイルのいい体、すらりと伸びる雪のように白い手には、見事に鍛え上げられた一本の日本刀…

 その刀を振り回しながら走っているため、腰まである栗色のポニーテールが風に揺れる。



「止まれェェェェェェエエ!! 止まらないと細切れ肉にするわよッ!!!」




 その女性は僕の幼馴染みであり、僕をよく狩ろうする人であり、僕が守る人の筆頭である四谷よつや彩貴サキだった。



……でも取り合えず、一つ文句言っていいですか?









「…クソ作者ぁ!! 夢ぐらいまともなもの見させろぉ!!!」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









「……………なんか、ヤな夢見た気がする」



 真冬よりも寒さは緩み、人々は新しい時期を迎える。

 そんな時期のはずなのに、僕の体は冷や汗を滝のように流していた。

 だけど、どんな夢見たかすっかり忘れた。



「…4:30……まあまあって所かな」



 薄暗い空に太陽が昇り始めた時間帯だ。

 今日も枕元の目覚まし時計が鳴る前(アラームは5:30に設定)に起きた。


 ………取り合えず、今日の予定を思い出そう。



「………あ、今日から学校じゃん」



 今日は、僕の通っている戌神いぬがみ高校の始業式と入学式があった。

 まぁ、遅刻にはならないし、余裕を持って行動しよう。

 僕は朝ご飯とかの準備のために、温もりの残る布団から出る。



「クラス分け…どうなるんだろうなぁ」



 なんとなく嫌な予感がする中、僕は部屋の壁にぶら下がっている鏡を見る。

 広がってしまった髪を軽く後ろに流しつつ、後頭部の中心から肩胛骨辺りまで、束ねた糸のように伸ばした一掴みの髪に手櫛を通す。



「…よし、活動開始しますか!」



 そして、鏡から目を外した瞬間、いきなり結構な重みが僕の背中を襲うが……まぁ、気にしないでおこう。



「……そう言えば今日からあの子も学校か…頑張ってもらいたいな、うん」



 僕は何度か独り言をもらしながら、二階にある自分の部屋から一階へ向かった。










→→→→→→→→→→→→→→→










 体を覚ますために軽く朝の運動をした僕は、洗濯やら庭先の掃除やらを終えて、20分ぐらい前から朝食+弁当を作り始めていた。

 さっきから首の左側がくすぐったい気がするが……気にしないでおこう。




 そんなことよりなぜ僕が、午前中で帰れる始業式の日に弁当を作っているかというと、理由は今日の予定にある


 新入生である一年は、午前中に入学式があり、午後には教師紹介や学校設備見学がある。

 僕ら二年や三年は、通常は始業式が終わったら各自解散の予定だ。

 しかし、生憎僕は午後も学校に残らなきゃならない予定が入ったのだ。


 それと、運悪く春休み開け一番に、一年の学校設備案内の手伝いをさせられるヒカルにも、今日は弁当を作ってあげる約束をしていた。

 …いつも、カ〇リーメイトやら十秒ゼリーばっかりじゃ可哀相だしね。



「……よし、これでトマトを乗せれば完成っと」



 適当に頭で考えてる間に、体はしっかり仕事をしてくれて、僕の目の前には三つの弁当と三つの朝食が出来上がっていた。



 弁当は、玉子焼きやポテトサラダを作って、彩りや栄養バランスを考えて入れており、シュウマイ等の冷凍食品も一部使って、それなりに手を抜きながら美味しく仕上がってるはずだ。


 一つは僕の分。

 一つは光の分。

 もう一つは………




 ふと、台所と廊下をつなぐ扉が開き、そこから眠気眼ねむけまなこの少年がパジャマ姿で表れた。



「ふぁぁ……おふぁよふございまふぅ(おはようございます)」

「おはよう」



 眠そうに目を擦る彼の襟足ほどの藍色に染まった髪は、寝癖で爆発しあらゆる方向に跳ねている。



「随分眠そうだね、矢沢やざわくん」

「スミマセン……昨日は緊張して眠れなくて……ふぁぅ…」



……彼は矢沢やざわ翔吾ショウゴ君。

 戌神高校に入学する一年であり、僕と一つ屋根の下に住むことになった少年だ。


 僕と彼が一緒の場所に住むことになったのは、僕が一戸建て+庭付きの結構広い家に一人暮らしをしてるためである。

 この家に一人暮らしをしてると部屋がありあまってしまったため、有効活用と称してなんとなく部屋を貸しているのだ。

 そして前の居住者がいなくなって、一人寂しく過ごしていた四月の頭に彼が尋ねてきたため、今僕たちは共同生活をしてるのだ。



「ほら、トーストと目玉焼き作っといたから、早く食べちゃいな」

「……あ、ありがとうございます」



 台所の向かいに位置してるリビングのテーブル上には、三人分の朝食とコーヒーを用意しておいた。



 椅子に座った矢沢くんは少しぎこちなく朝食を食べ始める。

 ……彼の容姿は、藍色の髪に童顔+160程度の低身長、見た目はまるで少女のような少年である。

 正直、最初見たときは中学生の少女の家出かと思ったが、今見れば素直でいい子だ。



「………伊達さん、一つ質問していいですか?」



 僕が彼の対面に立つと、彼はトーストを噛りながら突然挙手をする。



「ん? なんだい? もしかして家賃のことかな? それとも、勝手に君の分の弁当作ったのは迷惑だった?」

「いや、家賃については敷金・礼金0円。食費・水道代・ガス代・電気代込みで月々7万ポッキリには文句のつけようがないし、絶品の弁当まで作って頂けて正直ありがたいです。けど………」



 彼の目線が僕の目から左の首筋に移る。



「さっきは眠くて気づかなかったんですけど…………その方はどちら様ですか? ……もしかして霊感ゼロの僕にも見える幽霊?」

「ん? この人は幽霊じゃない。戌高いぬこうの校医だよ。……アヤさんも朝ご飯どうですか?」

「……あむっ……私、かーくんで十分」

「僕の首に栄養は含まれてないですよ?」



 ……一部の方は気づいただろうか。

 何を隠そう、僕が朝起きた時点で背中に乗っかって、運動や家事をしてる間も僕の首筋を甘噛みしていた人が今も僕の背中にしがみついてるのだ。

 気づいてた……だけど、背中にしがみついた一瞬、メスを突きつけられたら反抗なんてムリです。



「そのままだと僕も座れないですし、せっかく作ったんですから食べてください」

「……かーくんが作った……やっぱり食べる」



 僕に張りついていたその人は、素直に矢沢君の正面の椅子へ座ってくれた。

 その流れで、僕もその隣の席に座ってから、今まで自分が背負っていた人の様子を見る。



 四谷よつやあや……それが彼女の名前だ。

 成長して170後半になった僕よりちょっと小さいぐらいの身長に白衣を纏い、肩まで伸びた艶やかな赤髪で無表情な顔の左目辺りを隠している。

 スタイルはモデル並に抜群で、さっきまで背中に彩さんの山×2が当たってた状態でした。

 ……よく頑張った、僕の精神……



「…かーくん、ギリギリの所で、なかなか悩殺できない」

「お願いだから殺さないでください。あと、勝手に心を読まないでください」

「心が読める、本心分かる、それはいいこと」

「プライバシー侵害は悪いことですけどね」



 ……話を聞いて分かる通り、読心術のスキルを会得してる特殊な人だ。

 そのせいで矢沢くんが完全に取り残されてたりする。



「……まぁ、不思議な人だけど気にしないでね」

「は、はぁ…」



 返事をしながらも、その目線は正面の彩さんから目が離れない。



「で、なんで彩さんは朝からこの家に?」

「ずっと、かーくん、会えなかった。だから、会いたくなった」


「……」


「…彩さん、あなたがとてつもない発言するから矢沢くんが固まっちゃったじゃないですか」

「本当のこと、言っただけ……はむっ…」

「……僕の首は食べ物じゃありません」



 固まった少年、首を噛む女性、そして見てるだけの僕……



「………今日は厄日か?」



 僕の新学年は、そう簡単に始まってはくれないらしい。








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