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Flight13‐真実よりも純粋なウソ

更新が遅くなってスミマセン(汗

短編小説に手間取ってしまいました。

これからペースを戻しますので、見捨てないでください(懇願





 私が目を開くと、視界には見たことがない天井が見えたです。

 いい匂いのする布団に、私は寝ていました。



「また……あの夢ですか」



 ……本当の恐怖としか言えない夢。

 その夢を見るたび、今みたいに体中が汗でベトベトして、ほっぺたを拭くと涙まで出てきます。



「イヤな夢なんて……忘れるです」



 頭をブンブン振って、私は夢を振り切ります。

 そして、取りあえず体を起こして周りを見ると、ここは畳やふすまがある純和風な部屋です。

 でも、ココは私の記憶にないです。

 ……もしかして!



「ココはどこ? 私は……美海ですね」



 ためしに記憶喪失の定番セリフを言ってみたです。

 でも、自分がいる場所は分からなくても、自分の名前が分かるから、記憶喪失じゃないですね。

 一安心です。



 ……


 …………


 …………………!?



「安心しちゃダメです!!」



 どこかも分からない場所で安心しちゃダメです!!



「ココはどこですかッ!? 私は美海ですッ!!」



 完全にパニックです!!

 自分で言ってることが分かりません!!

 私は……どうすればいいんですか!?









「ここは僕の家で、君は確かに和倉美海さんだ」



 突然、私の目の前に人影が出てきた。

 いつの間にこの部屋に? ……パニックだったから、気づかなかったのかもしれないです。

 その声に反応して、私はその人影を見上げ……



「そして安心してくれていいよ」



 私の目線の先には、優しい笑顔を浮かべた伊達センパイがいました。

 そして、私は思い出しました。

 私はセンパイを襲って……返り討ちにあったことを。



「……センパイ、なんで私はこんな所にいるですか?」



 確か、私がセンパイを襲ったのは学校だったはずです。

 ここがセンパイの家だとしたら、私を連れてきた理由が分からないです。


 ……もしかして、尋問されるですか?

 それとも、証拠が出ないようにここで消されるですか?

 あの新月の黒猫のことです。きっと、ただではすまない……






「あぁ、本当なら君の家に送り届けるべきだったんだけど、夕食の準備があったからちょっと寝ててもらったんだ」



 ……えっ?

 私の予想を完全に裏切った答えが、先輩から返ってきた。

 なにか企んでいるような笑みではなく、どこか悪びれた苦笑いを浮かべているセンパイ。


 自分を襲った人を、夕飯の準備という理由だけで自宅に入れるなんて……ありえないです。

 絶対に裏があるはずです。



「……ほ、本当にそんなことで、私を家に連れてきたんですか?」


 私はセンパイの考えを探るため、恐る恐る聞きます。

 すると、センパイは私が乗っている布団の横に座り、苦笑いままで頭をかきます。



「本当ゴメンね。夕飯のためなんかに、僕の家に連れ込んじゃって。お詫びに、その夕飯なんてどう? 麻婆豆腐なんだけど……」



 センパイは、この部屋の柱にかけられた時計を見ながら、私に提案してきた。

 確かに、今思えばお腹は減ってるですし、麻婆豆腐は好きです。

 でも……



「センパイッ! とぼけないでくださいッ!!」



 私は確実にセンパイを殺そうとして、それを宣言しました。

 でも、センパイは何もなかったかのように、私に接してきます。

 最後の慈悲か誘導尋問か分からないけど……そんなのいらないです!!



「拷問するなら早く拷問してくださいッ!! 殺すなら早く殺してくださいッ!! 無駄話はやめて煮るなり焼くなりしてくださいッ!!」



 私は大声でセンパイに怒鳴ってから、ゆっくりと俯く。

 自分を殺すように言うなんておかしいですけど、無駄な慈悲を受けるなら……死んだほうがましです。

 私は俯いたまま、センパイの言葉を待つです。

 いたぶられるのか、殺されるのか、それとも……










「えっ? なんで僕が君のこと殺さなきゃならないの?」



 センパイの口から出たのは、殺意も悪意も感じられない、ただ純粋な疑問。

 私はその事実に驚き、俯いてた顔をバッと上げます。



「僕が君を殺す理由なんてないでしょ? てか、殺人を奨励しちゃダメだよ」

「だってッ!! 私はセンパイに刃を向けたですッ!! 私はセンパイを殺そ…ッ!?」



 私がとぼけるセンパイに痺れを切らして、真実を言おうとすると、私の口をセンパイの人差し指が塞ぎました。

 いきなりのことに驚いた私は、すぐにセンパイの顔を見ます。

 私の見たセンパイの顔は……



 ……一切屈託のない、綺麗で優しい笑顔。



「美海さんは僕と会った時、たまたま持ってた刃物を僕に向けながらコケた。臆病者の僕がそれを避けたから、美海さんは頭から床にぶつかって気絶した。……それだけのことだよ」



 センパイの言ってることは、まったくのウソ。

 私……そしてセンパイも、事実を知ってます。

 なのに、センパイは笑顔でウソを吐きました。

 真実よりも純粋なウソを…



「あとこれ、危ないからあんまり外で持ち歩かないようにね」



 私の唇から指を離したセンパイは、どこからか私の持っていたクナイを取り出します。

 センパイは私の手を取って、その手にクナイの柄を乗せました。


「んじゃ、お腹減ったでしょ? 麻婆豆腐持ってくるから食べてよ。今日は特に美味しく出来たんだ♪」



 私がクナイを受け取ったことを確認すると、センパイは立ち上がった後すぐ、私に背中を向けて部屋を出ようとします。

 ……背中を向けたセンパイは完全にスキだらけです。

 新月の黒猫になる様子もありません。

 そして、私の手にはさっき返されたクナイがあります。



 センパイを殺すなら……今です。















―――――――――――――――













 僕は歩みを進める。

 一歩踏み出すたびに、足が畳に擦れて沈黙に音を加える。



 僕は美海さんにクナイを渡し、背中を向けて出口に歩いてる。

 襲い掛かってきた人間に武器を渡し隙を見せる……こんなこと『僕は死にましぇ〜ん』と言ってトラックの前に飛び出す人でもやらないだろう。


 ……でも、僕は信じたい。



『……すみませんです』



 彼女は僕を刺そうとした時、確かにそう言った。


 その時、彼女の瞳は僅かに揺らいでいた。

 人を殺すことに躊躇していた。 人の命が大切なことを知っていた。

 それでも、僕を殺そうとした。



 そんな彼女が僕を殺そうとするのには、なにか理由があるはず。

 ……それも、僕に関することだろう。



 その理由が彼女にとって消せないものなら、この場で僕は刺される。

 僕の血でその理由を塗り潰すしかない。


 その理由が彼女にとって消せるものなら、この場を僕は出れる。

 そして、僕が出来る範囲でその理由を消す。



 つまり、これは賭けなのだ。

 殺すか生かすか、死ぬか生きるか、命を賭けた大博打。


 そして僕は……彼女の優しさに命を賭けた。















―――――――――――――――













「んじゃ、持ってくるまで少し待っててね」



 センパイはそう言ってから、出入口であるふすまを閉めました。

 そして、部屋中に広がる沈黙。


 ……私は結局、センパイを殺せなかったです。


 殺す気になれば、手に持ったこのクナイを首に刺せば、一発で殺せました。

 センパイもスキだらけの背中で、まるで『殺してくれ』と言ってるみたいでした。


 でも、私は殺すどころか、一歩も動けなかったんです。


 センパイになにかされた訳でもなく、私の体自身が動こうとしませんでした。

 逆に、丸分かりなウソを吐いた時のセンパイの笑顔が、意識に焼き付いて離れません。



「なんで……ですかね……」



 私は答えの出ない心のモヤモヤを、沈黙に問いかけました。





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