Flight10‐脅される者と探る者
後半は完全に伏線です。意味が分からなくても放置しておいてください(焦
前回、彩さんに……あれは誘拐っていうのだろうか?
どっちかって言えば連行か?
…まぁ、一時間ほど彩さんに保健室で遊ばれてから、僕は生徒会室に戻ってきていた。
「…ふぅ、これでOKかな」
この場に戻ってきた僕は、まず迷わずに盗聴器発見器を使った。
そして、結果は見事大当たり。
六十三台の盗聴器と三十四台の小型監視カメラが見つかった。
前回突然彩さんが来たのは、生徒会室の様子を、ずっと監視してたかららしい。
てか、僕は『月』と書いて『ライト』って名前でも、『神』と書いて『キラ』と呼ばれてる人でもないんで、そこまで監視しないでほしい。
んで、放課後になってやっと、その盗聴器等の取り外し+部屋の掃除が終わったのだ。
「やることやったし………帰るか」
部活に入ってない(勧誘はあるけどすべて拒否)僕は、バッパと帰りの用意をして……
「カ〜ケ〜ル〜?」
「ん…?」
名前を呼ばれてその方向を向くと、音もなく開けられたドアの先に、仁王立ちした彩貴の姿があった。
「彩貴か…どうした? なに
「なんで授業受けなかったのよ!!」……へ?」
訳の分からないことを言いながら、彩貴はズンズンと僕に近づいて来る。
その威圧的な雰囲気に、僕は胸ぐらを掴まれるまで動けなかった。
「なんでこんな所で時間潰してるのよッ!!」
「ちょッ! やめれぇ! 首がもげるぅ!!」
首を前後左右にブンブン振られて、まともに喋れない。
の、脳ミソが揺れるって!
「いや…マジ…ギブ………」
「あッ…ゴメン。やりすぎた」
僕の状態に気づいたのか、彩貴はパッと手を放す。
「…ゲホッ……いきなりなにすんだよ」
「だから! なんでアンタは教室にいなかったのよ!」
僕がむせながら質問すると、意味不明な質問返しが来た。
てか、なんで僕が教室にいなきゃ行けないんだ?
「いや、特級生なんだから別にいいでしょ?」
「関係ない!! 私が出てるんだからアンタも出なさい!!」
「…なんだその理不尽」
お前の物は俺の物。俺の物は俺の物的なヤツか?
イジメっ子の法則か?
「…せっかく一緒のクラスになれたんだから……」
「ん? なんか言ったか?」
「な、なんでもないッ!! とにかく! これからなにもない時は必ず授業に出ること!! 拒否権はなし!! いいわね!」
「いや、それは個人の自由…」
言葉の途中で、僕の目の前に鈍く黒光りする一本の筒が突き出される。
彩貴は目が笑ってない笑顔で、その筒についてる引き金に指を掛けていた。
「い・い・わ・ね?」
「………はい」
……自動小銃なんて、どこに隠し持ってんだよ。
そんなことを思いながら、僕は武力に屈した。
―――――――――――――――
「新月の黒猫……四谷のサーバーでは新井月朔夜の名前で登録あるが……これは偽名か」
暗闇の中にぼんやりと光を放つ液晶画面には、ネット中に広がった新月についての情報が纏められている。
新しい情報には幽霊説や宇宙人説など…はっきり言ってきな臭い。
それに対して古い情報……特に四谷令嬢誘拐事件時の警察庁や報道機関のサーバーにハッキングした方が数十倍信用できる
「…今度は本物と見て間違いないだろう」
対象が見つかり、叩くキーボードがいつもより軽快に音を刻む。
その速度は人の指が動く限界に近づきながら、指の一本一本が正確に目標のキーを叩いていく。
「これで片割れの目的は達成出来る。後は…」
言葉と同時に指は動きを止め、最後の仕上げに右手の人差し指がEnterキーを押す。
すると、画面の様子が変わり、ある人間の情報が画面上に映し出される。
新月の黒猫が四谷『最強』なら、この人間は史上『最悪』。
史上最悪のコンピュータウイルスを製作した者であり、全世界のハッカーの頂点といわれる人間。
その人の手掛かりは、『薔薇のような深紅』と言われる瞳を持っているということのみ。
「三十日八雲…いや、深紅大蛇……お前も必ず見つけだす」
文字と数字だけの画面に、まだ見ぬ相手を見据え、ゆっくりと眼鏡を押し上げた。