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Zodiac Frontier Online(ゾディアックフロンティア・オンライン)  作者: 剣伎 竜星
第2章 ポイエイン国の狂気の錬金術師(マッドアルケミスト)
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第3話 こちらは避けようとしているのに何故、面倒事のほうから突っ込んでくる?

※改行、誤字・脱字修正しました。

 リリィを連れてテイラーの屋敷に向かう。

かなりの視線を集めていたが、その視線の大半がリリィへ向け、

俺に向かうものだから、どういった性質たちのものかはわかりやすい。


 屋敷の門に着いた今の時刻は17:40なので、

もう辺りは暗い。テイラーは19時まで仕事しているが、

面会希望は18時までと決めているらしい。


 リリィが4人いる門番のうち、見覚えのある1人に

話を通し、伝令役が屋敷に向かっていった。


 待つこと数分。屋敷に向かった人間が戻ってきた。

他に面会希望者がいないから、門の通行許可が下りた

……のだが、


「止まれ!」


門の両脇にたっていた若い門番2人が槍を交差して、

1人が制止の言葉を発して、リリィが先に通った後の

門を通り抜けるために踏み出した俺の道を塞いだ。


 直後に言葉を発していない方の門番が、俺の足元に投げた、

魔導具マジックアイテムの『簡易結界展開装置イージーシールデベロッパー』が発動し、

屋敷の敷地内にいるリリィ達を除いて、

俺と門番2人だけを直径25mのドーム状の結界が包んだ。


「なにを…「怪しい奴め、お前をテイラー様に会わせる訳にはいかない!!」」


驚いたリリィが言いとがめようとした言葉に被せて、

俺に槍の穂先むけた。

 同じく、言い放った1人にあわせて、もう1人の門番も

俺に持っていた槍の先をこっちにむけた。

……こいつら自殺希望者か?


 いや、簡易結界展開装置が発動しているから、

致死レベルの攻撃を受けても瀕死ひんし(おさえ)えられる

のだったか。


 まぁ、仮面被って隠蔽いんぺい効果のある防具着けている人物が

怪しくないわけないのだが、従者であるリリィが俺に先に行くよううなが

……ああ。


 俺はこの2人の顔を一瞥いちべつして、

そのにやけた表情から魂胆を察し、

2人が俺に槍を向けた理由に思い当たった。


 俺をサンク王国から追放し、積極的・・・に追撃してきた奴らと同じ、

自分の実力におぼれ、気に入らない者は理由もなく、

自分の気分が晴れるまでなぶ下衆げすだ。


 スキル【看破リード】を使い、この2人のクラスを確認する。

2人とも前衛系戦士の基本職、ファイターだった。

レベルは19で、あと少しの経験値でレベルが上がる。

 サブクラスが使えるようになることも理由か。

加えて、俺が後衛系の召喚士の基本職だから、

自信満々なのかと内心(あき)れる。


 俺は嘆息するとともに、両手でそれぞれ順番に召聘(しょうはい)陣と

召喚陣を展開する。


「お前!」


俺が呆れてため息をついたのに反応した門番2人は槍を突き出したが、

俺の召聘の方が早い。


 召聘陣が消え、直後に現れた黒い肩から

指先までを包む全身鎧の右手、左手部分のみのそれぞれが一瞬だけ現れ、

その手に持った漆黒の大剣を無造作に振り下ろした。

 その強烈な剣の一撃で門番2人の槍が折られる音は振り下ろされた剣が

辺りにとどろかせた石畳の地面を割り砕く大音響にかき消される。

 更にその後、門番2人の首筋に彼らの槍を破壊した大剣と

全く同じものがそれぞれ8方向から突きつけられる。

 俺に槍を突きつけた門番2人は詰んだ。


「……それで、続けるか?」

「「……」」


うつむき、黙り込む2人。

その行動が俺の怒りの火に油を注ぐことになるとも知らずに。


俺は聖人君子ではない。

やられたら、俺の価値基準に従った報復を行う人間だ。


「では、その大剣たちをその首に突き刺すとしよう。

一息……いや、ゆっくりとな。

簡易結界展開装置けっかいが発動しているから、死ぬほど痛い(・・・・・・)かもしれないが、

死ぬことはあるまい」

「「……ッ!!」」


邪悪な笑みを浮かべているであろう俺の言葉に身の危険を感じて、息を飲み、

焦燥する2人。


 槍をむけるということは剣の切っ先を向ける、銃の銃口を向けるのと同じく、

敵対行動、を奪う宣言だと俺は考えている。

故に、安直に行うのは愚の骨頂。

 加えて、俺は敵をあざむかざるをえないとき以外は味方に前述の行動はとらない

と心に決めている。

 

ダークナイト達に指示を出そうとしたそのとき


「ああ、お取り込みの途中で悪いが、その辺で俺の顔をたてて、

そいつらを許してやってはくれないか? 後でキツ~く言っておくからよ」


この場に不相応な気安い声で、俺に声をかけてきたスキンヘッドの

いかつい風体の男がスーツに身を包み、苦笑いを浮かべて立っていた。


「……飼い犬のしつけ位はきちんとしておいてくれ」

「そうは言うけどよ、こいつらは2年前の戦争の後に入った奴らだから

すまないが、大目に見てやってくれよ」


憮然として応えた俺に、声の主は軽く頭を掻きながらそう言った。


俺は転がっていた簡易結界展開装置を孔雀の短刀で破壊して、

結界を消滅させ、門をくぐったところで門番2人を囲んでいた

ダークナイト達を送還した。

 2人は膝から崩れ落ちて屋敷に行っていた門番にその場で説教され始めた。


「それにしても、どこで油を売っていたんだシオン?

俺達大変だたんだぜ」


闖入ちんにゅうしたスキンヘッドにスーツの男、

テイラー・テクトーンこと堤 大地、は

俺に愚痴をこぼしたが、その場にいなくて寝こけていた俺にどうしろと?


「テイラー様、ここで話す内容ではないかと」

「おっと済まないな。それじゃ、中で話そうぜ」


リリィの諫言を受けたテイラーを先頭に俺達は屋敷の中に入った。





 俺とリリィはテイラーに案内され、彼の執務室に入った。

 通常、こういった案内はテイラーの弟子兼助手のウィルがやるのだが、

ウィルは泊り込みの仕事らしい。もっとも、テイラー本人はこういった仕事を

苦にせず、気にしない性分で折る胃ある。


「まずはすぐ済ませられる用事を済ませよう。リリィ、あれを」

「はい、シオン様」

「ん?なんだ??」

「店舗ローンの滞納していた先月分と最終支払いの今月分です」


俺の言葉に応えたリリィが革袋から金貨1アウルムを出し、

テイラーが座っている机の上に支払い分として置いた。


「おお、もう少し掛かるって話しだったが、シオンのおかげで、

なんとかなったんだなよかったよかった。

それじゃ、これが支払い証明書だ……かぁああ、それにしても、

やっぱり予言は当るんだな!」


予言・・


テイラーの言葉に俺は疑問を口にするとともに眉をひそめた。

 書類を受け取ったリリィも疑惑を浮かべた表情になっている。


「まぁ、とりあえず、座ってくれ。

 その件については悪いが明日、10時にここに来てくれ、

お前に会わせたい人がいるんだ。その件の詳しくは明日だ。

 さて、大体予想はできるが、俺に何の用だ。シオン?」


俺達に座るように勧め、

俺とリリィの疑問に一応の答えを突きつけて、

テイラーは本題を言うよう、口端を上げて、うながした。


「俺の店の近くにできたという競合店のことを知りたい」


俺はテイラーに市長として知っている競合店ライバル

情報開示を求めた。


「やっぱりか……リリィに聞いて知っていると思うが、

開店したのは先月の頭。店の名前は『アルカ』、

店主は錬金術師の『ティオ・ヤクタ』、冒険者ギルドのギルドランクはB。

 ゲオルギア国出身で、”狂気の錬金術師(マッドアルケミスト)”の弟子を名乗り、

その腕はなかなかだ」


そう言って、テイラーは机の上にあったコップの中の水を飲んだ。

 俺が”狂気の錬金術師(マッドアルケミスト)”という単語に反応したのに気づいて、

少しニヤニヤしていたが、すぐに真面目な表情に切り替えて続けた。


「魔獣大戦時は遠征軍に従軍。

”俺達”とは違って行方不明からの合流ではないからな」


俺が頭に浮かんだ疑問を口にする前にテイラーは

俺達を強調してティオが元プレイヤーである事を否定し、

NPC側であることを言外に告げた。


「店で扱っている商品の品質はお前に比べると、2ランク程度下だな。

価格の方は市場価格の2割り増し。

 万屋よろずや 蛇遣いオピュクスの在庫不足に便乗して、利益を出し、

オピュクス王の常連の幾人かが流れたが、これは仕方ないな。

 欲しい物があり、手に入るなら多少値が張っても手に入れたいのが人情だ。

特に、回復魔法の使えない(・・・・・・・・・)冒険者にとって回復アイテムは

死活問題だしな」


常連が流れたくだりでリリィの表情が沈んだが、

テイラーはどうしようもないことだと言ってフォローした。


「これだけだったら多少値段が高い店で済んだんだがな」

「なにか問題があるのか?」

「ああ、市場にでていない、オピュクスでも扱ってないHP回復アイテムを

扱っていてな。それの副作用の症例が出ていて、死人こそまだ出ていないが、

影響で重傷を負った人間が出ている」


俺はテイラーが語ったアルカが扱っていると言う副作用のあるHP回復アイテムに

いくつか心当たりが浮かんだ。


「ティオは重傷は客の責任ということで責任を否定しているが、

重傷者とその仲間、他の客から不満の声があがっているんだ。

……最近は苦情の矛先がこっちに向いてな……」


ティオの責任逃れを追求する陳情が市長であるテイラーに向いて、

その所為で精神的にかなり疲労しているようだ。


俺は練者の腕輪のアイテムボックスからMPマナポイント回復効果の高い、

中級MP回復アイテム蜂蜜ミード酒を取り出して、テイラーに渡した。

 店売りや宝箱からの入手ではなく、自家製だ。

 副作用で状態異常バッドステータス酩酊めいてい1が

低確率で発動するが、中級MP回復アイテムの中ではなかなかいい回復量の

アイテムだ。


「お、差し入れか? 悪いな」

「……飲み過ぎないようにな」


疲れた顔をすぐに笑顔に変えて、礼を口にしたテイラーに俺は釘を刺した。


 そして、腕輪の表示する時刻を確認する。


<<19:15>>


テイラーのあがる(・・・)時間を越えてしまったか。


「そろそろ失礼する。明日の10時にここに来ればいいんだな?」

「ああ、遅れるなよ」


念のため、明日の時間を確認し、俺は席を立つ。

 テイラーが見送る視線を背中に感じながら、

俺はリリィが開けてくれた扉を出て、屋敷の使用人たちが見送る中、

テイラーの屋敷をあとにした。




御一読ありがとうございました。


次話に関しては活動報告で進捗・投稿予定を開示しますので、

活動報告をご確認ください。

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