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Zodiac Frontier Online(ゾディアックフロンティア・オンライン)  作者: 剣伎 竜星
第2章 ポイエイン国の狂気の錬金術師(マッドアルケミスト)
8/66

第2話 3年前から今まで万屋(よろずや) 蛇遣い座(オピュクス)になにがあった?

前回再会したリリィとの続きです。


前半は甘甘展開ですので、ご注意ください。


 それまで流した涙で俺の胸元を濡らしながら、

只管ひたすら俺の名前を繰り返していたリリィは

自分を抱きしめている俺の顔から眼鏡が消えたことに気づくと、

そっと俺の両頬に白くやわらかい両手を添えてきた。


 不意に感じたその感触に頭が混乱し始めた直後に、短い接触音と共に、

唇に柔らかい感触がきて、目の前に目を閉じたリリィの顔のアップが!?


 ゆっくり目を開けて情熱的なキスを交わしてきたリリィは

俺の瞳に自分の顔が映ったのを見たのか、白い肌をまた少し赤くし、

しばらくしてから、つま先立ちになっていたかかとを下ろした。


 りんごの様に赤い顔をしたリリィ、

いや、自分も同じ位真っ赤になっているのであろうことは

顔が熱くなっていることからも分かる。

 突然のことに頭がオーバーヒートして回らない俺に

リリィは万人を魅了するはにかんだ笑顔を見せて、


のどが渇いていませんかシオン様? 紅茶は如何いかがですか?」


そう言って、俺の腕を引き、なすがままの俺は1階の応接室へ連れて行かれた。


 リリィの様な優しい癒し系金髪美女エルフに抱きつかれ、

キスされて嬉しくない男はいるだろうか? いや、いない!!(反語)


 しかも、ゲームのときに比べて、圧倒的に豊かで自然になった表情と

鮮明になった感触とぬくもりがあるのだから言わずもがなであろう。

 加えていうなら、リリィの体は女性として出るところは

しっかり出ているのだから。


 応接室に併設された台所で湯を沸かして、ティーセットと

シュガーポット、ミルクピッチャーに茶菓子を載せたカートを

押して来たリリィ。


 従者だから遠慮したのか、自分の分のカップを持って来なかった彼女に

俺は腕輪のアイテムボックスの中から、全く同じ物を彼女の分として出す。

 自分の分を取りに行くよう言えば、彼女は取りに行くだろうが、

それは時間の無駄である。

 自分で出したカップに自分の分として紅茶を注いでもらうのは

彼女への配慮が足りない行動であろう。


 応接室にリリィが紅茶をカップに注ぐ音がひびき、

紅茶のいい匂いが辺りにただよう。


 俺はミルクティー派だが、リリィの淹れてくれた紅茶の一口目ひとくちめ

いつもストレートにしている。

 ゲームのときは無味で気分でやったが、そこは徹底した。

現実となった今はプロが淹れたレベルの紅茶の味が口の中に広がっている。

 目の前では猫舌なリリィが紅茶を冷ましつつ飲んでいる。


 時間が経ったのと、飲み物を飲んで落ち着いたので、

俺は目を閉じ、周囲に聞き耳を立てている者がいないか

スキルで確認した後、目をゆっくり開き、

リリィがカップを置き、話ができる体勢になったのを見計らって

俺は切り出した。


「リリィには訊きたいこと、言いたいことがあると思うが、

まず、確認したい。リリィ、俺は誰だ?」

「シオン・スレイヤ・ヴァイザード様。私がおしたいするご主人様です」


リリィはいつも俺に向けてくれている優しい穏やかな笑顔で

即答してくれた。

……先ほどの自分の大胆な行動を思い出したのか少し頬が赤いが。


 俺はその言葉にうなずくと共に、右手の甲に彼女が俺にほどこしてくれた

妖精族エルフの祝福”の紋章を見せた。


「ありがとう。

俺が戻ってこれなかったことについては後で必ず話すから、

俺がいない間に一体なにがあったのか教えてくれ。

帰ってきたときに店が閉まっていて、リリィもソフィもいなくて驚いたぞ」


俺に起こったことの説明は後でいい。

なぜなら、俺が無事ここにいるからだ。

 だが、この店の現状に関しては

緊急を要する切迫せっぱくした状況であることは明白だ。


 リリィは俺と自分の空いたティーカップにポットに

残っていた紅茶を注いだ。

 俺は砂糖とミルクを好みの量入れて、

ティースプーンで混ぜて一口飲み、

ティーカップを置き、リリィの言葉を待った。


「はい。シオン様が旅立たれて行方がわからなくなった3年前に

時期を同じくして、市長のテイラー様とそのご家族、

他の市長様2人と高ランクの冒険者達が突然、行方不明になりました。

 ギルドには彼らの捜索依頼が殺到し、

テイラー様の秘書をしていたウィルさんが

市長代理をし、皆で協力してこの都市を守っていました」


なるほど、やはりプレイヤーだったテイラーこと堤 大地氏と

その妻、陽子さん、息子の空、市長の2人と高ランク冒険者たちは

揃っていなくなったのか。

 俺はZFOプレイヤー全員の失踪を確信して、

リリィの話の続きに耳を傾ける。


「ですが、必死の捜索の甲斐なく、半年が経ったとき、

気づかぬうちに魔物の数が増え、

ガイア神域に接するアレスとポセイドンの神域が魔物に占領され、

神域内に魔物の巣ができるようになりました。

大神殿から遠征軍の派遣の神託が下り、

この都市の全ての店から軍事物資として、

使える商品の在庫6分の1を徴収されました」


ヴェスタに聞いた通りの展開か、

 物資として徴収されたのが6分の1で済んだのは

俺がいないと商品の補充ができないこの店では

ある意味不幸中の幸いだ。

 俺はリリィに先を続けるよううながした。


「それから、更に半年が過ぎ、遠征軍が勝利し、

魔物に占領されたアレスとポセイドンの神域を奪還して、

帰還した時にテイラー様達、都市長のお三方さんかた

行方不明だった10数名の冒険者の姿がありました」


帰ってきた遠征軍のなかにテイラー達の姿を見つけ、

必死に遠征軍の中に俺がいないか探し回るリリィと

ソフィの顔が目に浮かぶと苦い思いがした。


「そのとき残っていた商品在庫は残りおよそ5分の3でした。

先月に同じ商品を扱う店舗が近くに開店し、顧客を奪われ始め、

遂に在庫が先月末になくなってしまい、お店の資金も先々月の支払いで

底を突いてしまっていました」


ん? こちらの落ち目を狙って競合店舗がでてきたのか。

 顧客が移るということは品質と価格はうちと比べてどうなんだろうか?

あとで一緒に今の適正価格と市場の品質状況も調査しないとな。

でもたしか、商品総数1万以上あった気がするのだが、

それがなくなったか。

出るときに保管ボックスの最大値に入れていたのもあったのにな。


かろうじて、ソフィが半年前から集落から修行で出てきた

双子の弟と妹をともなって、冒険者ギルドのクエストの報酬と

素材を売って稼いだお金も加えて、先々月分の支払いはできましたが、

先月分は滞納している状態です」


おお、あの双子が来てくれたのか。それは心強い。

 2人ともソフィと同じ弟子にして欲しいと言っていたからな。

「クラスにあった効率的かつ効果的な修行をたっぷり課してあげよう。

クックックック、なんかワクワクしてきたぞ」

 あ、リリィの表情が苦笑いになって、紅茶を口にした。

心の声が口から出ていたか。


「お店閉めていたのは今日売る商品の在庫がなくなり、

売り切れになったからです。

 先程まで留守にしていたのは、ソフィ達が遠出の冒険者クエストで

出かけているため、テイラー様に支払いをソフィたちが帰ってくるまで

もう少し待ってもらうお願いをしてきましたからです」


そう告げたリリィの顔は自分の不甲斐なさを責めるかのように曇っていった。


 ううむっ、なかなかの逆境ではあるが、なんとかできないか?

 テイラーに支払うのこの店舗の建築費と土地を購入する際に組んだローンで、

毎月銀貨5アルゲントゥムの約束で、

きちんとしたリリィの性格からすると抜けがないから、

今月分で支払いは終わるはず。


「リリィ、ソフィ達が戻るのはいつになる?

 ついでに稼いでくる予想最低金額は?」

「帰還は明後日、予想される最低金額は銀貨4アルゲントゥムです」


ふむ……俺の持ち金がゴブリン討伐の前金と

レベルリセット前に稼いだのとあわせて、

金貨1アウルムと銀3貨枚アルゲントゥム、銅貨80カルコス、鉄貨90シデロース


ここで、この世界の通貨について説明しよう。

 貨幣は全神域各国共通。

 使われる金属の割合も統一されていて、偽造すると死刑だ。

 貨幣価値は鉄<銅<銀<金<白金と上がっていき、

鉄貨1シデロースはZFOの食堂で菓子パン1個の値段だから、

日本円の100円相当と考えられる。

 カルコスまでは100枚で1つ上の貨幣1枚と同じ価値になり、

アルゲントゥムからは10枚で1つ上と同じ価値の扱いになる。

 最も、白金レウコンアウルム貨以上は市場では取り扱われない。

国が軍費とかでまとめるために使う。

 サンク王国にいるときにケイに白金レウコンアウルム貨を見せてもらった。


 丁度、金貨1アウルムあるから、これをテイラーに渡して支払いを完済しよう。

これで土地と店舗のローンの支払いは解決するな。


「はい、先月と今月分を併せてこれで払えばいいね」


そう言って、俺は練者の腕輪の財布から金貨1枚を取り出し、

立ち上がってテーブルの上に置いた。


「あ、はい……ありがとうございます。シオン様」


リリィの表情が沈んだものから、笑顔に変わる。

うん、やはり、リリィは沈んだ表情よりも笑顔がいい。


 当面の次の問題は、競合店舗か、なんかキナ臭いな。

まぁ、それよりも先にテイラーの所に行って、

さっさと支払いを済ませよう。

ついでにいろいろと聞かないといけないこともあるしな。


「行って戻ってきたところで悪いが、

一緒にまたテイラーのまで付いてきてもらえるか?」

「はい、喜んでお供させていただきます」


俺の言葉に快諾してリリィは台所に片付けたティーセット等を

カートに乗せて押していき、しばらくしてから戻ってきた。

あ、茶菓子食べ損ねた。帰ってきてから夕食後だな。


 リリィを後ろに従え、

裏口の扉の前に来ると彼女が前に出て、扉を開けてくれた。

 外は日が傾き始め、黄昏どきになっていた。

俺はいつも着けている仮面を着けて、リリィに短く礼を言い、

夜の帳が下り始める街への一歩を俺は踏み出した。




御一読ありがとうございます。


ゲーム時リリィは店長代理としてお店を支えてくれていました。

今後の展開次第でPTに参加します。


 シオンはゲーム時に既にリリィの好感度を

限界値上昇を上げるイベントを消化しまくっていたので、

リリィはもうデレていた訳です。

 この世界の異種族の結婚にはいろいろなしきたり(試練)が

あります。

 チートなシオンはそれも試練と思わず踏み越えてました。


※修正しました。 

市場で扱われない 金貨以上→白金貨以上 2015 5/23

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