第15話 粗暴で蛮勇な英雄の末路※残酷な描写があります
仕事で遅くなり、お待たせして申し訳ありません。
今回サブタイトルにあるように残酷な描写があります。
主人公が同行した女性陣に見ない方がいい旨告げた先からはじまりますので、
ご注意ください。
「よく来たな。ここでその足りない頭を下げてアルテミスを諦めて、
すぐ様この地から立ち去り、妹に二度と近寄らないと誓いを立てるのならば、
見逃してやってもよいのだぞ?」
「ふん、誰がアポロンなんかに頭下げるかよ。
ご託はいいからさっさと始めろ」
「そういう態度だからお前のような粗暴な奴はオレの妹に相応しく
ないのだ。まったく。いいだろう。ならば望みどおりお前にオレの
試練を与えてやる。オレが呼び出す生物を見事斃せたならば、
オレの妹との交際はもとより、婚姻も認めてやろう。
条件は己の力のみでその生物を斃すことだ」
「ああ。地上最強の生物である俺様に勝てる生物なんて、
この世にいないから、なにが相手でも構わないから俺様の相手を出しな」
出会い頭に喧嘩腰の口論を始める太陽神とオリオン。
血縁的には従兄弟なのだが、お互い嫌悪し合っているのは丸分かりで、
仲を取り持つのは不可能であるのはこのやりとりをみれば想像に
難くない。現にお互い睨み合って、視線の先で火花が散っている様
な状態だ。
深く考えれば近親憎悪、同族嫌悪にも見える。
「敗者には”死”あるのみ! 我がアポロンの名の下にこの人間に試練を課す!
出でよ!『タイラントデスストーカー』!!」
アポロンはオリオンから距離をとって、虚空より取り出した球状の
黒い陶器を丁度オリオンとの中間点に叩きつけて割った。
途端にその残骸から黒い煙が噴き出しはじめ、次第に黒い煙は大きな塊になった。
また、アポロンの宣言と共に乱入と妨害防止の結界が起動し、オリオンは
光の柱のなかに閉じ込められる形になった。一方、既にアポロンは結界の外に
退避した。
これで完全にオリオンとアポロンの呼び出した生物が戦う舞台が整った。
ちなみにオリオンに魅了されて恋の奴隷状態のアルテミスとその神子である
アタランテは、アタランテがリリィとローラによって3人の故郷の集落で、
アタランテの大好物のリンゴ、しかも神々のオリンポスでしか
手に入らない『黄金の林檎』を餌に誘い出され、足止めされている。
依り代となるアタランテが足止めされているため、アルテミスも
この地に降臨できず、必然的に動きがとれないので、オリオンを助けるために
この場にくることはできない。
アルテミスにこの試練を観戦させてもいいのでは? と思うかもしれないが、
この場に彼女がいれば、アルテミスは強力な戦闘支援効果をさも当然の
如くオリオンに付与するので、オリオンを排除したいアポロンにとって、
妹のオリオンの試練の観戦は強力な障害であるのだ。
また、観戦を頼まれれば、シスコンであるアポロンにとって、
それを断ることも難しいのも障害の1つである。
だが、今回リリィとローラがアタランテを足止めに協力したため、
アルテミスのオリオンへの援護を封じることができた千載一遇の
機会をアポロンは得た。敵ともいえるガイアにも協力してもらった
という点が不安を煽るが、アポロンは本気でオリオンを潰す刺客を
用意したのだろう。
黒い煙は次第に晴れていき、中から、鈍い光を放つ黒曜石の様な
黒い宝石の様な殻に覆われた巨躯をもち、巨大な2つの鋏みとその
鋏みよりも巨大で鋭利な尻尾をもつ巨大な蠍が現れて、オリオンに
対峙していた。
俺はすぐにスキルの【看 破】で巨大蠍、『タイラントデスストーカー』の
ステータスを確認した。
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名称:タイラントデスストーカー
種族:節足鋏角亜門族 希少亜種
ランク:EX
力:S+
素早さ:S
体力:S
攻撃力:S+
防御力:A
知性:D
精神力:D
魔力:D
スキル:弓矢無効 毒S 麻痺毒S 英雄殺し
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ステータスを見て確信したが、『タイラントデスストーカー』は
正しくオリオンを抹殺すべく用意された存在であった。
身体ステータスだけで既にオリオンを凌駕しているが、
極めつけはそのスキルだ。
まず、弓矢無効。今のオリオンの得物、弓矢。他に装備は見られない。
次に英雄殺し。オリオンは以前、惚れた島国の姫を報酬として
もらうため、その国の王に約束もせずに国で暴れている獅子を退治
した功績で英雄の称号を得ている。最も、完全に一方通行の好意で、
認めない王にのらりくらりと姫との婚姻をかわされて、最終的に
キレて、酒に酔って姫をレ○プしたため、両目を潰された過去が
オリオンにはある。英雄殺しの効果でオリオンの防御力は紙同然になる。
そして、毒、麻痺毒いずれもSランク。くらえばほぼ確実に麻痺
と毒によるダメージが発生する。しかも、麻痺毒は特に厄介で、
ランクがA以上になると確率で神経系にもダメージがいく。
更に、神経系へのダメージは薬や魔術で解毒しても全く回復せず、
最高レベルの回復魔術でなければ治せない。
弓使いが単独で挑むには無謀というか勝ち目がない凶敵である。
ちなみによく誤解されているが、致死毒をもつ蠍は約1000種中、
25種と少ない。また、蠍の生息域は砂漠のみと思われがちであるが、
種によっては寒い地方にも適応したものがいる。熱帯地方が中心では
あるが温暖な地方にも生息していて、現実世界の日本には南西諸島
に毒性が低い2種が生息しているらしい。
閑話休題、オリオンが対峙している『タイラントデスストーカー』
だが、現実世界にも『デスストーカー』の通称をもつ蠍は存在する。
『オブトサソリ』。蠍の中で最強の毒をもち、非常に攻撃的で
獰猛。素早く、積極的に尾の致死性毒針を振るうため、危険な蠍に
指定されている。色はこちらのタイラントとは違って黒くなかったはず。
俺はもう一匹のデスストーカーの通称をもつ危険で巨大な黒い蠍のことが
頭を過ぎった。
「俺様の弓が効かないだと!?」
どうやらオリオンは先制して弓矢を連射しているが効果がないのに
苛立っているようだ。
『タイラントデスストーカー』が無効スキルを持っているのを【看破】を
もっていないため、知らないから仕方がないと言えば仕方がないが、
仮にも狩りをするならば、弓矢以外の武器も矢がなくなったときのことを
考えて携帯してしかるべきなのだが、オリオンは弓矢以外何ももっていない。
結界の外からオリオンが苦戦している様子を見ているアポロンは
笑みを浮かべている。
「クソッ! 矢がなくなった。こうなったら素手で相手してやるぜ」
そう言い放って、弓を投げ捨てるオリオン。
オリオンが弓矢による攻撃ができなくなったのを察した黒い巨体の大蠍は
その両腕に位置する2つの大鋏みとそれより巨大な毒針をもつ尾を
天に向けた後、鋏みを下げ、素早い動きで尾をオリオンに向けた。
「なんだ?」
敵の動きをいぶかしむオリオンに向かって向けられた毒針から毒液が噴射された。
「ぐああああああああッ」
宙を舞う毒液をまともに目に浴び、オリオンは地面に倒れ、目に走る激痛で
もがき苦しんでいる。
その様子を見つつ、黒い大蠍は悠然と獲物に近寄っていく。
オリオンは痛みに気をとられ、その接近に気が付いていない。というか、
そちらに気をまわせないのだろう。
十分に接近したところで黒い巨体は止まり、巨大な2つの鋏みで
哀れな犠牲者を捕らえた。
「なんだ!? 離しやがれ!!」
両手を開いてT字の様に捕まえられて吊り下げられたオリオンは
その束縛から逃れようと暴れる。
しかし、即座に鋏みよりも大きい尾が鋏みの拘束から逃れるべく、
暴れる目標に襲い掛かる。
ブシュッ
肉に突き刺さる音があたりに響く。尾が脈動して、オリオンに毒が
注入されているのが分かる。オリオンは毒を注入され始めてから
動きが止まって、顔色が変わり、痙攣し始めた。
どうやら完全に毒と麻痺毒にやられたようだ。
タイラントデスストーカーはその巨体のため、注入できる毒の量も
多いのか、かなりの量の毒をオリオンに注入してから毒針を抜いた。
オリオンは完全に体にまわった毒で麻痺して痙攣し、
喋ることもできないようだ。
「イリア、ソフィ、サラ、アン。もう見ない方がいい」
俺は同行していた女性陣に気を遣い、手短にそう告げた。
勝負はついた。では、獲物を無力化して動きを封じた捕食者が
次にすることはなにか。
肉が千切れ、骨が折れて、血が地面に飛び散る音に続き、肉を咀嚼し、
骨を噛み砕く音があたりに鳴り響く。
ナルシストの気があって自身の肉体美に自信をもっていた
オリオンの防具は実際ほとんどなく、足に履いていたサンダルや
股間を隠すビキニパンツぐらいであった。
タイラントデスストーカーは鋏角で丁寧に足のサンダルを切断して外し、
オリオンを足から捕食し始めたのだ。毒で麻痺しているからか絶叫を
あげることもできずオリオンは足先から黒い捕食者の鋏角で小さく
千切られて、その口の中に消えていく。
両脚がなくなり、千切られた切断面からとめどなく流れ出した血が
地面に赤い水溜りを広げていく。捕食者は自身に降り注ぐ血を気にも
止めず、捕食を続ける。
オリオンが身に着けていたビキニパンツも鋏角で切断され、
オリオンは性器を露出するが、情け容赦のない捕食者はすぐさま
それを鋏角で小さくちぎって食べた。
タイラントデスストーカーの食事は更に続き、直腸、小腸などを
はじめ、肺などの臓器も1つ残さず、ちぎって口にし、骨に至っても
鋏角で小さく切断して口に運び、最終的に残ったのは捕食者の食事中に
地面に滴り落ちてできた餌の血でできた血溜まりだけであった。
御一読ありがとうございました。




