第14話 捕らえたユニコーンに飴と鞭を
遅くなってすいません。
あとは夕食後のヘンリーたちとの模擬戦の反省会だけと思っていた
ところに突如現れた一角獣のアルベリッヒ。尊大すぎる発言と
その場に居合わせたイリア、リリィ、アンを侮辱する言葉を吐いたので、
肉体言語によるおはなしあいにて(こちらは)無事召喚契約の締結完了。
アルベリッヒのちょうきょ……、教育を申し出てきたイリアたちに
アルベリッヒのことを任せて、俺は夕食の準備ができ、ソフィが
待っているカリュクス職人が魔改造したコテージに入った。
「お帰りなさいませマスター。ヘンリーと模擬戦をされたそうですが、
いかがでしたでしょうか?」
手洗いうがいを終えて食堂に割り当てている部屋に入ったところで
ソフィの配膳の手伝いをしていたサラが気になるのか訊いてきた。
「詳しい話は食事のあとだ。今回ヘンリーの相手をしたのはアンだから、
食事の後にする反省会で詳しいことが分かるだろう」
俺の後に部屋に入ってきたヘンリーとクオルの表情は暗い。
それから少し経って皆が食堂にそろい、夕食となった。
ポセイドン神域で入手した食材を今回はひと山になるほど使ったが、
まだアイテムボックスには今日使った5倍程度残っている。
献立は焼肉的な肉料理が多かったが、スープ、サラダも用意されていて、
バランスは問題なく、味も良かった。
今回のデザートはオレンジに似た果物のシャーベットだった。
食事を堪能したあと、召喚獣にしたアルベリッヒの紹介と模擬戦
の反省会となった。
「我としたことが、こんな逸材が側にいたのに気が付かなかったなんて、
なんたる不覚!!」
俺の目の前で金髪青眼、シャツにスラックスを穿いたキザな青年が
見事なorzの体勢でうなだれていた。
彼の額には一本角が生えて折られた跡がある。俺がへし折った名残だ。
言わずもがな、この優男はアルベリッヒの人間形態である。
パーティメンバーにアルベリッヒを紹介した際に、コイツは
まず始めにエルフでリリィの妹のローラ、次に銀狼族のソフィの妹、
サラにコナかけようとしたが、すげなくそでにされて、あえなく撃沈。
そして、俺の膝上でシャーベットをパクつく白いワンピース姿で
金髪灼眼幼女形態の黄金刀に気付き、御覧の有様である。
「おぜうさん、どうか、我の背に一度だけでいいので乗ってもらえませんか?」
事情を知らずに端から見ていたら完全に幼女趣味の変態ですね。
ありがとうございました。
ユニコーンかと思ったら、ロリコーンだったよ!
現実世界ではおまわりさんコイツですと通報される場面だ。
「……乗るだけなら、主が許可すればいいよ」
アリスの言葉にすがる様な表情だったアルベリッヒの顔が砂漠で
飲み水をようやく見つけた旅人のような安堵に変わった。
後で確認したが、一角獣的に定期的に摂取する必要がある処女が無意識に
発散している微弱な魔力というニッチな条件のものが欠乏していて、
暴走手前の状態だったらしい。他の一角獣たちも似たような状態で、
以前は月の女神の神子が狩りに連れていた侍女の精霊たちを乗せて
摂取していたらしいが、最近はその侍女たちが現れず、代わりに
月の女神の神子の側にいけ好かない下郎がまとわりつき、近づけなく
なったそうだ。
閑話休題、俺は少し考えたあと、アリスがアルベリッヒに騎乗する
ことを許可した。アルベリッヒが通常形態に戻りたいと申請してきたので、
同じように許可した。食堂に割り当てた部屋は広く、大きめの馬が
入室しても問題ない広さと高さがある。
「……ん」
「!? フオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
突如、アルベリッヒから金色の気柱が建ち、俺が叩き折った角が
以前のものより立派な物へ生え変わった。
「HAHAHAHAHAHA、いいぞ、とてもいい気分だ!
生まれてはじめて最高にH☆iってヤツだ!!」
さっきまでの憔悴が嘘のように毛並みも良くなり、気力が充実して
いるのが見て分かる。
「クックックックック、こうなったらもう、なにも怖くない!
いざ! 下克じょ、うっ!?……」
調子に乗ったアルベリッヒが不穏なことを口走ろうとした矢先に
その背に乗っていたアリスが人間形態から黄金の剣に瞬時に変わって、
一角獣の象徴たるさっき生え変わったばかりの見事な角を根元から
遠慮なく熱したナイフでバターを切るかのように簡単に叩き斬った
のであった。
「Nooooooooooooo!(TⅡT)」
「……主に叛意を抱くなら、次は首を斬る……」
「(ブルブルブルブル)Yes,Ma'am!」
「分かればよろしい」
なぜか軍隊口調になったアルベリッヒの言葉に満足したアリスは
再び人間形態、幼女形態になって、アルベリッヒの背に騎乗して、
角が回復したのを見計らって降りる。見事な飴と鞭であった。
その様子を遠くから見て、反省会に参加しているサラは口にこそ
出していないが、
(アリス、おそろしい子!!Σ(゜Д゜|||))
という状態になっていた。
このままだと収集つかなくなりそうだっため、アルベリッヒの紹介を
終えたので、早々に送還陣で還ってもらった。
「これで目的の1つである一角獣の捕獲・契約は達成しましたね。
兄さん」
「そうだな。思ったよりもはやく終わったからこの後の予定が前倒しに
できるな」
労いの言葉を掛けてきたイリアに俺はそう応え、反省会を始めた
ヘンリー、クオル、ソフィたちが集まっている所に行こうとしたが、
イリアに手を引かれ遮られてしまった。
「イリア?」
「兄さんは先にお風呂で汗を流しましょう」
「いや、これからさっきの模擬戦の反省会を……」
「ダメですよ! 本当なら食事の前に入って欲しかったのですが、
ご飯は冷えてしまったものを温めなおしても、温かかったときのものより
味が落ちるから我慢しましたが、食事と重要な連絡事項が終わった
今、体を冷やす前に行きましょう! アン、そっちは任せます」
「ん!」
「汗ならば拭けばいいのでは?」
「ダメです。湯船に浸かりましょう。兄さんも今は女の子なのですから、
身だしなみはきちんとしないといけません」
「お湯に浸かって芯から温まる!」
右腕をイリア、左腕をアンに抑えられ、俺は問答無用でコテージ内に
造られている大浴場に連行された。
見慣れてきたはずなのだが、やはり自分の胸部にできた山には
未だに違和感が拭えない。そのことに内心でため息をつきつつ、
甲斐甲斐しく世話を焼くイリアとアンに任せて体と髪を洗った。
精神が男性である俺にとって、目の前にさらけ出されている、
懇意にしている2人の肌、イリアの白い肌とアンの褐色の肌は
出るところがはっきりと出ていて、腰が細く、大変目の保養には
なったのだが、心にモヤモヤしたものができてしまう。悩ましい。
それを見越していたのか、イリアは未完成の性転換解除薬、
半陰陽になる薬を不意に俺に飲ませた。結果、2人が気絶するまで
2人とすることになり、心配して入ってきたリリィとソフィに
たしなめられつつ、イリアたちを介抱して、場所をベッドに移してから、
たっぷりとリリィとソフィの相手をした。
ちなみにヘンリーは正座の上、サラとローラに付き添われて基本座学の
復習。クオルは黄金の剣相手に模擬戦をしていたそうだ。
カーテンの隙間から朝日が部屋に差し込んできているのが
寝起きのはっきりしない視界に浮かんできた。
「ん……」
「おはようございます。シオン様」
「おはようございます。マスター」
「ああ、2人ともおはよう」
体を伸ばしたところで、俺よりも先に起きて、メイド服をきちんと
着込んでいるリリィとソフィの2人の従者に挨拶をされて、返す。
女体化する前はここで今日着る服を渡されて2人に退室してもらう
のだが、ここ最近では髪を梳くのと服を着るのを手伝ってもらって
いる。
最初は遠慮しようとしたのだが、イリアも加わった3人で押し切られ、
身だしなみの世話を従者であるリリィとソフィに任せることになった。
ちなみに日によってはイリアも加わわり、3人でメイド服を着て、
俺の世話をしてくれる日もある。
身だしなみに無頓着なところがあるのを自覚している俺としては
ありがたいのでいつも2人、日によっては3人に感謝している。
ちなみに今日はイリアとアンは俺が寝ていたキングサイズベッド
の上で寝ている。胸がきちんと上下して呼吸しているから、2人とも
きちんと生きている|(苦笑)
「シオン様、今日はいかがなさいますか?」
「そうだな、今日はアポロンに頼まれたオリオンが戦う場所を探しに
行こうか」
リリィの問いに応え、ソフィのもつ姿見で身だしなみを確認した俺は
用意されている朝食を摂るため、2人の従者を従えて、イリアとアンが
未だ夢の中にいる寝室をあとにした。
御一読ありがとうございました。
今年はあと2回投稿予定です。




