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第10話 森の惨劇

サブタイトル修正しました。

 旧敵ともいえるアフロディーテの元を辞した俺はすぐにイリアたち

と合流した。以前もこちらに益のある情報をくれたりしていたので、

味方なのか敵なのか分からなくなるときがある相手だ。


 アテナ様(義体)は複雑な表情をして、送還陣で帰っていった。


 アテナ様を見送ったあと、俺はすぐにアイテムボックスからエーテル

ポーションを出してがぶ飲みした。最上位召喚職の幾つかをカンスト、

マスターしているとはいえ、女神の本体を召喚するには圧倒的にMPが不足、

力の一部を仮初めの肉体である義体に入れて召喚するのが現状で

俺が唯一可能なアテナ様の召喚方法だったが、それでも消費する

MPは7割を超えるので、使用後の精神状態はかなり悪い。


 ちなみに義体を使って間接的に召喚する方法はゲームのZFOには

なかった。ソフィとの研究で最近実現したもので、多くの条件がある。


 まず、義体召喚の対象は”憑依(ポゼッション)”を行えるものである必要がある。


 次に召喚者が義体を作成する技術をもっていること。

これに関しては、通常の召喚のプロセスに組み込まれている召喚獣が

多数いるので、大概の召喚師には可能であるが、初回召喚時に召喚対象の

イメージが明確でないとまず失敗する。

 アテナ様の場合は神子であるオリビアに憑依したときのイメージを参考に

構築したので問題なかった。


 最後に義体の作成と憑依を行えるMPを保有していること。

これがかなりのハードルで、本体を召喚するよりもかなり消費を抑える

ことに成功したが、それでも人の身かつ単身で行うには大量のMPが

必要となる。複数人で行う方法もいくつか試行してみたのだが、

召喚者全員が条件を満たしている必要があるのと、全く同じ召喚対象の

イメージをする必要があるなど条件が厳しかった。


 しかも、義体で召喚した場合のステータスは基本、本体より2ランク

ほど下がるのだが、アテナ様の場合は総合ランクはEXで力や魔術などの

ステータスは全てSランクという驚異的な存在であった。


 ステータスが全て同じで最高レベルなのはアテナ様が文武両方に秀でて

いるのが影響しているらしい。

 他の神、例えば、戦神アレスを義体召喚したならば、力はSだが、

知力はGだろう(Cが種族での平均ランク)というのがアテナ様

の見解だ。


「まずはアルテミス神域に行って、話しの真偽を確認する必要が

ありそうですね兄さん。女の敵(オリオン)を倒して終わりですね」


俺の話しを聴いたイリアはそう気楽に言うが、俺はどうも嫌な予感が

してならない。


 ほどなくして、アルテミス神域内の魔導鉄道の主要停車駅、

『アルテミス大神殿』に到着したので、俺たちは荷物をまとめて、

樹齢数百年以上の樹木たちを利用して造られた駅に降車した。


 余談だが、俺たちが使った貸切車両は一旦、この駅に併設されて

いる車庫に保管されて次回の乗車に再度利用することになっている。




~~~~~~~~~~~~~~~~


「これは……酷いですね……」


声の主、緑を基調としたエルフの戦闘装束に身を包んだリリィの

目の前の森に広がるのは森の住人である熊や狼、兎や狸の膨大な数

の亡骸が一面を緋色に染めている大虐殺のあとだった。


 大神殿でアルテミスの神子のアタランテに面会して、アルテミスと

対話し、アフロディーテの話の真偽を確認したかったのだが、最近、

連日アタランテはアルテミスを憑依(ポゼッション)して森へ狩りに行っているらしい。


 成獣になったものに限らず、まだ幼い個体、生まれたばかりの

赤子にすら矢が刺さっているその光景は生活のための『狩り』を

司ると同時に子供の守護神の側面をもつアルテミスの神域において、

あってはならない光景である。


「……」


リリィの妹であるローラも足元に横たわって目を開いて絶命して

いる子兎の目を手で閉じて抱え上げ、痛ましい表情をしている。


「このまま瘴気を吸ってアンデッドにする訳にはいかないから、

広域浄化をしよう。アン、サラ、ヘンリー、クオルは先行して

この惨状の犯人を捕捉してくれ」


「……わかった。兄貴」


俺の言葉にこの惨状を作りだした人物への怒りを抑えて

ヘンリーが答え、3人と共にその場を離れていった。


「やはりアルテミスは変貌してしまったとみるべきか」


自分の子供たちを護るように息絶えている大きなつがいの熊に突き

刺さっている矢に付与されている月の女神の神気の残滓からそう分かった。


「そうですね。あのアルテミス様がこの様なことをお許しになる

はずがありません」


銀毛に包まれた狼の耳を悲しげに垂れて、ソフィが母熊に抱かれながら

女神(アルテミス)の矢とは異なる矢に殺された子熊たちの亡骸を悲しげに眺めて、

俺の言葉に同意した。


 アルテミス神域では生きるための狩りは認めるものの、必要以上の

殺生を禁止し、更に成長中の幼獣たちの殺生は基本禁じているのだが、

魔導鉄道の停車駅で集めた情報によると、平然と幼獣が殺戮され、

目の前の光景がほぼ毎日繰り返されているらしい。


~~~~~~~~~~~~~~~


浄化作業を終えて、あの惨劇の場から距離として1kmほど移動したところで

先行していたヘンリー達を発見した。


「クオル、あいつを見てくれ、どう思う?」


「すごく……変態です……」


俺たちが4人からオリオン発見の知らせを聞いて合流すると、

丁度、ヘンリーがアルテミスの側に腰掛けているオリオンに対して、

クオルに意見を求めていた。


 ヘンリーたちの視線の先には矢筒を背負い、手に弓を持って輝く

銀髪をショートカットにした少女と金髪青眼の青年がいた。


 少女の方は月の女神アルテミスを”憑依(ポゼッション)”させた当代のアルテミス神域の神子、

アタランテだ。リリィたちの話ではアタランテの本来の髪の色は金で、

髪を伸ばしており、憑依した影響で変色、髪形も変化しているらしい。


 一方、青年、オリオンの服装はクオルの言葉が最も端的に表していた。

なぜなら、身に着けているのがボディービルダーが穿いている様な

ビキニパンツだけなのだ。

 体毛が濃い獣人たちですら衣類を身に着けて露出しても上半身裸までが

一般的なこの世界で、水場がある訳でもないのにパンツ一丁でいるオリオンは

異様な存在感を放ち、正直、近寄りたくない。


 オリオンの体型は筋肉達磨ではなく、所謂、細マッチョで、

無駄な肉がなく、鍛え上げられていて、たしかに女性受けがよさそうな

体をしている。


だが、俺はそれよりもオリオンの目つきに強い嫌悪感を覚えので、

スキル【看 破】でオリオンのステータスを確認した。

結果、オリオン自体は思っていたよりも強くはなかった。


========================


オリオン


LV 200 D


種族:神族 ♂ 25歳


属性:混沌


HP 30,000/30,000


MP 150/500


力   A→S  アルテミスの加護


体力  B→A  アルテミスの加護


魔力  E


敏捷  C


技量  C→B  アルテミスの加護


スキル 邪眼[魅了]EX 

    水上歩行EX(ポセイドンの加護)

    弓矢装備A

    弓術スキルA ▼


==============================



 俺が知るギリシャ神話でオリオンの種族はポセイドンを

父にもつ半神半人なので、こちらでもそうかと思っていたのだが、

予想を外されて神族であった。母親は誰だろう?


 閑話休題、それ以上に厄介な邪眼[魅了]があった。

ランクがEXで状況によっては絶大な効果を発揮するから、

対処を間違えると意のままに操られて奴の下僕になってしまう。


 多くの女性を誑かしたのはどうも邪眼の力に思えてならない。

なぜなら、見たところ、ステータス自体はまだ若い神だから、

それほど脅威ではない上に、突出した特徴が他にないからだ。

 今後成長する伸び代がかなりあるのだろう。

アルテミスの加護で強化されているため、弓矢による攻撃には

注意が必要かもしれないが、リリィたちの弓矢を無効にする

風の精霊魔術などがあるので問題ないだろう。


 スキル【邪眼】で魅了されなければヘンリーたちでも

今は十分斃せるレベルの敵だ。奴、独りならば(・・・・・)の話だ。


 しかしながら、今はその隣にいる月の女神を憑依している

神子のアタランテも戦うならばヘンリー達の勝算はなく、俺たちでも

苦戦は免れないだろう。


==============================


名前:アタランテ (NPC)


 種族:人間 女性 18歳


 メインクラス:シャーマン Lv 50 


 サブクラス:ハンター Lv 40


 属性:風・混沌


 HP 92,500 / 92,500 (+90,000)


 MP 96,700 / 110,000 (+104,500)


力  A→S→S 憑依+ アルテミスの加護


体力 B→A→A 憑依+ アルテミスの加護


魔力 B→A 憑依


敏捷 A→S 憑依


技量 B→A→S 憑依+アルテミスの加護


スキル 憑依S


    弓矢装備EX


    弓術スキル▼


    盾貫通


    鎧貫通

==============================

 アタランテは月の女神を憑依しているだけあって、ステータスが

大幅に底上げされて、オリオンが完全に威を借る小物になっている。


 魔術の素養はそれほど高くないようだが、それを補ってあまりある

弓術スキルと盾貫通、鎧貫通のスキルが脅威だ。


 リリィの話では月の女神との相性が他の候補よりも桁違いに良かった

ために今代のアルテミスの神子に選ばれたらしい。


 アタランテのHPを見て、一瞬、自分の目と【看破】の結果を疑ったが、

アタランテ(憑依)のHPはオリオンの3倍以上ある。

 憑依前でも人間では十分強いほうだが、月の女神を憑依させている

だけあって、半端ない強さになっている。


 戦闘するならばやはりオリオンとアタランテは分断して、先にオリオンを

撃破したほうがいい。


 視線の先にいるオリオンとアタランテ(憑依)はどうやら休憩していた

らしく、寄り添って座っていた……のではなく、アタランテが恥ずかしがっている

のか、オリオンと微妙な距離をとって座って2人は談笑していた。


「目的の2人はみつけたが、どうするんだ兄貴?」


ヘンリーの問いかけに俺が答えようとした、そのとき


「探したぞ! アルテミス!!」


太陽の光のように黄金色に輝く髪をもつ青年がオリオンとアタランテの元に降り立った。


御一読ありがとうございました。

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