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第7話 魔導鉄道(前編)

 翌朝、サンク王国を出発してカリュクスに戻り、ポセイドン神域へ行った

前回以上の長旅のための準備をして、拠点の万屋蛇遣い座(よろずやオピュクス)の店番を魔導人形

のリーダたちに任せるため、細かい確認調整を行った。


 それから、その翌日、時間的に昨日なのだが、はカリュクス市長の

テイラーへ一応、出発の挨拶へ行った。


 俺が女体化しているのを見て、なぜだかテイラーの奥さん、

ヨーコさんが創作意欲を異様にかきたてられ、ものすごい速さで

女体化した俺に合うサイズの服を縫い始め、果てはアテナ様を

憑依(ポゼッション)”した金髪状態での衣装も驚異的な速さで作り上げた。


 更にカリュクスの裁縫関係の重鎮をヨーコさんが緊急招集して、

モデル女体化した俺のみという異例の即席ファッションショーが

行われるという事態になった。


 アテナ様は普段着れないデザインの服を着れてご満悦、イリアも

リリィ達も喜んでいたが、衣服に頓着しない俺は予期せぬ精神的に

ダメージを被る形になって1日を終えた。


 ヨーコさんからは【加護縫い】の刺繍を丁寧に施され、素材と全てを

換算したら平気で城が建つレベルの服たちをもらうことになった。

 一部男性でも着れる服を作ってくれたヨーコさんの配慮が地味に嬉しかった。


 そして、ようやく出発の日の朝がきた。




~~~~~~~~~~~~~~~


 カリュクスの駅へ行くため歩いた街中でも先日の大神殿へ行くとき同様、

[双子座(ジェミナス)仮面(マスク)]は着けずに移動することになって、人の目を集めていた。


今の俺の容姿は完全にこの神域の英雄で隣国の王様であるイリア

の黒髪バージョン。イリア本人がすぐ横にいるから、余計に目立つ。

あまり目立ちたくない俺には少しきつい。


 大神殿へ行くとき同様、いや、それ以上に人だかりができている。


 あ、スクリーンショットを俺達に無断で撮ろうとした元PCと思しき

冒険者がその背後に音もなく現れた二刀流と思しき熟練冒険者たちに

なにか囁かれて路地裏へドナドナされて行った。


 人だかりの中には腕章を付けてスクリーンショットを

撮っている人たちが多数いた。

イリアが言うにはテイラー達が魔導鉄道の宣伝のために

冒険者ギルドに依頼をして、情報紙を発行してもらうため

雇った撮影班の人達らしい。


 後にこの情報紙が飛ぶように売れまくる自体をケレシスの所為で

巻き起こすことになるのだが、当時の俺は知る由もなかった。


「あら、いつ見てもリリィさんはお綺麗ね」


「イリア様のお側にいるイリア様にそっくりな方は誰だろう??」


「ふむ、『いつの世も、素晴らしきカナ、百合の華』、いい句ができたぞ!」


「よし、ここにキマシタワーを建設しよう!」


「流石、兄者!」


「なにをこんな所で油を売っておるか、この馬鹿弟子どもがあああ(怒)!!」


「「「嗚呼、流石はお姉様がた、素敵ですわぁぁ」」」


『こちらアルファ、我等がアン様に害意を向けていた不届き者どもの

熟練の二刀流たちへの引渡しに成功』


『了解、引き続き、任務を続行してくれ』


などなど、よく訓練されたカリュクス市民の温かい声援を受けつつ、

駅に到着した。





「これが魔導鉄道か……」


今、俺の目の前にはむこう(地球)の世界で乗ったことがある日本の新幹線

に似た列車の乗車口の前に立っている。


 レールの上を走るこの乗り物はSLに近いデザインと向こう(げんじつ)の電車より

大きなサイズ、動力が魔力機関(エンジン)で炉に魔石を投入することを

除けばほとんど現実世界(むこう)の鉄道であった。


 仕様としては街中を走る在来線よりも特急・新幹線に近い仕様らしく、

座席もファーストクラス、ビジネスクラス、エコノミークラス

という形で設備と料金に違いを設けて運行している。


 停車駅に関しては今のところアテナ神域が最多になっていて、

ゲオルギア―セーメン―カリュクス―サンク王国(大神殿)

となっており、サンク王国の次はポセイドン神域のエティオピアに

繋がっている。


 他神域は大神殿のある地域もしくは一部商業都市に作られているが、

今後は各神域の需要と将来性を勘案して既に建設計画があがって

いるらしい。


 既にポセイドン神域のエティオピアとクレタ国には車庫つきで駅が

できあがっているとテイラーが言っていた。


 また、駅毎に独自の駅弁が売店で販売されているという情報もあり、

とても楽しみだ。




「乗車券を拝見します……ありがとうございました」


改札口で皆が各々、あらかじめ渡されていた人数分の乗車券を

窓口の駅員に預け、確認印を押されてから受け取っていく。


 駅員は常駐であるが、冒険者ギルドから信頼のできる冒険者に依頼と

いう形でお願いしているという話だ。報酬はトントンで、長期依頼

扱いなので募集したときはそれほど集まらなかったらしいが、

今では応募が殺到していて、ギルドの実績と人柄などを重点的に

審査基準にして選抜しているらしい。


 冒険者ギルドと魔導鉄道を運営している鉄道ギルドの関係は良好で、

冒険者ギルドは長期に安定した依頼が確保でき、鉄道ギルドは冒険者

ギルドから腕利きを雇えるので安心して運行している。


 既に汚職とかも警戒していて、監査専門の第三者機関も極秘裏に

設置しているそうだ。


 将来的には神域を跨いだ冒険者ギルドと協力してそれに次ぐ

民間自治組織を目指しているとはケレシスの弁であり、カリュクスの

冒険者ギルド長、ガーヴィンもそれに協力的で心強いとテイラーが

笑顔で言っていた。



 さて、俺達が今回利用するのはファーストクラスである。

これはサンク王国国王であるイリアが乗るから、それ以下の席を

用意するのは警護や権威的な意味でもよくないからという話がある

ためである。今回はイリアが折れ、まとめて予約する方が割引が

利いて安くなるからとサンク王国宰相のケイに頼まれて俺達の分も

一緒に乗車券を準備してもらうことになったのだったが……。


「これって明らかに大家族の金持ち、奥さんが沢山いる人向けの

ものだよな……」


俺は用意された2階建ての個室もとい貸切車両を見て思わず

つぶやいた。


 1階は座席スペースで中央に通路、左右に3列×3席で計18席

の高級のリクライニングシートで背もたれを倒して、ベッドにもなる。

 しかも、就寝時には内側から施錠でき、乗車券がない限り、

入室できず、外周の通路を通るしかできない。2階への階段は

内部のみで、緊急時には2階の窓まで梯子が展開する。


 2階は展望室になっていて、景観を楽しむ配置で1階のと同じ

シートが窓側に向かって並んでいた。特筆すべきは試験的に重力

制御魔法が使われているとか、2階の部屋限定だが、走行中は普通

に地面を移動しているかのように慣性を感じずに移動できる仕様だ。


 ドリンク類と人気店の菓子類も完備してあったので女性陣に大好評。


 更に入り口のボタン1つでシートが空間魔法で収納され、

ソレ(・・)目的のキングサイズのベッドが出現し、ベッドサイドのボタン

で壁をマジックミラー化して、夜景を楽しむことができるというの

がパンフレットに記載されていた。


「まぁ、そういうお客さんを見込んでいるのは確かにありますね。

兄さんみたいに沢山奥さんを持つ商人やベテランの冒険者は割りと

この世界では珍しいものではありませんし、この世界の道徳的にも

問題ないです。今後の国家間の友好発展も鑑みて、試験的に造った

ものでしょうね」


とイリアは言う。


……これって俺達、確実に暫定常連としてロックオンされてないか?


 この世界の運送業はまだ専ら馬車もしくはゴーレム馬車がメイン

であり、転移魔術が使える魔術師は希少かつ依頼コストがピンキリ

過ぎて不便極まりない。


 自動車はゴーレム馬車があるので産み出されていない。

ゴーレム馬車を改造すれば自動車と全く同じものができるからだ。


 転移装置、転移陣に関しては維持コストが高いのと、現在では

大半が町の結界維持に大気中のマナが以前より多く使用されているため、

龍脈からマナを取り出す知識と技術がないと利用できない。


 カリュクス近郊の転移装置、転移陣に関しては冒険者ギルドの

ガーヴィンから指名依頼が来て俺がドリアードの力をかりて使える

ように調整した。1件あたり大規模戦闘クラスの竜討伐2匹分並の

報酬が30件近くあったおかげで、懐が潤いすぎて不本意ながら

カリュクス一の大富豪になってしまったらしい。


 拠点の金庫には(レウコン)(アウルム)金貨が貯まっている。


 余談だが、他の地域では農業の関係からゲオルギアのものを

使えるようにして、金貨ではなく、農作物を定期的に拠点の

転移陣へ送ってもらう契約を報酬として結んだ。


 魔導鉄道の誕生で馬車による運搬業は一定のダメージを受けるのは

必至だが、上手い具合に住み分けをしていく方針で、地方の農村

には魔導鉄道の駅は建設しないで馬車による従来どおりの運搬を

続けさせ運行数を増やすとのことだ。


「シオン様はスレイプニルやペガサスを召喚できるのですから、

冒険者を辞めても、運送業で稼げそうですね」


「確かにその2頭を使えばそれでかなり稼げるけれども、

サラ、神域間の手続きを忘れてないか?」


「あ……」


ついつい忘れがちになるが、神域間には関所があって、

場所によっては略式ながら審査手続きが必要な神域もある。


 魔導鉄道はその手続きを省略して神域間を移動できるメリットが

ウリ(・・)でもある。関所だと下手すると審査待ちの長蛇の列に並ばない

といけない。


 ギルドカードに似た乗車券を首かけ用の紐付きカードを首に下げて、

俺達は用意された3号車にカリュクス駅のホームから乗車した。


「乗車券、なくさないでよ、ヘンリー」


「ひでぇ、さすがに首に下げているから大丈夫だよ。サラ」


アイテム管理が大雑把なヘンリーが双子の妹のサラに釘を刺されていた。


 先頭が運転席のある1号車兼運転手の待機室と車掌室と動力室。

2号車は飲み物や食べ物をカートに載せて巡回販売する乗員の待機室と

貨物室。3~5号車がファーストクラス、6~8号車がビジネスクラス、

9~11号車がエコノミークラスの乗車用車両。

最後尾の12号車は巡回販売乗員の待機室と車掌室、警備隊控え室

と貨物室の車両である。


 乗車用車両の座席はビジネスクラスは指定席、エコノミークラスは

自由席。乗車券が違うクラスの座席には座ることができず、荷物だけ

座席に置いて席を占有しようとすると座席から警告音声が流れ、

荷物をどけない場合、荷物は最後尾の車掌室に転送される仕組みに

なっている。



 無事乗車した俺達は2階の展望室で雄大な景色を眺めながら

各々まったりと寛いでいた。


「ははっ、本当に速いな! すごい勢いで風景が流れていくぞ。

おい、クオル、固まってないであれ見ろよ、ワイルドボアの群れだ」


「……すごい」


ご機嫌ではしゃぐヘンリーと驚いて固まっているクオル。

アテナ神域は森林よりも平原が多いから、町や村の周辺以外はほとんど

なにもない。


 また、レールの周囲には魔物避けの強力な結界が付近に展開しているため、

魔物は近寄ることができないのと、車両はミスリル鋼でできているため、

下手な攻撃ではこの魔導鉄道は傷ひとつ付けられない。


 広大な景色を眺めつつ、俺はイリアたちに甲斐甲斐しく、

世話されていた。


「旦那さま、どうぞ」


「ああ、ありがとう。あむ」


「兄さん、こちらもどうぞ」


「シオン様、お飲み物です」


褐色肌に銀髪の小柄なハーフダークエルフのアンに差し出された

きれいに皮を剥かれたりんごを食べる。イリア、リリィ、ソフィたちからも

親鳥に餌を貰う雛鳥の様に果物やケーキ、飲み物を給仕されていた。


「おお、サンク王城だ!」


ヘンリーの感嘆とした声に続いて、数日前に見た雄大な城が視界に映った。





御一読ありがとうございます。

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