表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/66

第5話ヴァナディース

「それで、ケレシスとメリッサはサンク王国にはもういないのか?」


散々イリア、リリィ、ソフィの3人の等身大着せ替え人形(おもちゃ)となっていた

俺はいきなり女体化させたケレシスとメリッサへの怒りもあらかた

おさまってから、2人の行方をリリィに尋ねて、女体化の反動で

俺が気絶していた間に2人が仕事で既にサンク王国を出発していた

ことを知った。


「あまり2人を責めないでくださいね兄さん。

ケレシスはアポロン神域との外交のために出発しましたよ。

その件はまだお話しできませんが、今の状態の兄さんが必要なこと

です。ユニコーンとの契約は仕事が一段落したので、私もお手伝いします。

目撃証言があるアルテミス神域へ同行させてもらいますね」


「……今度はなにを企んでいるんだ?」


「企むだなんて人聞きが悪いです。あくまで兄さんのためです。

慣れない女性の体だと兄さんも大変かもしれませんが、

私たちが支えますから安心してください」


俺をなだめるイリアの言葉の中に不穏な言葉に気づき、訊ねるも、

笑顔とともに俺の言葉は流されてしまった。


「シオン様、イリア様、そろそろ大神殿に出向いた方がよろしいかと」


「そうね。兄さんの服が決まったからアテナ様にお会いしないといけませんね」


先ほどまで俺が試着していた大量の衣装たちを片付けたリリィの言葉に

イリアはそう返した。


 なんか俺の知らないうちにいろいろ話が進んで不穏なことになっているのが分かる。


 会話に加わっていないソフィはようやく決まった服を従者の

仕事だからと主張して、俺にその服を着せて髪を整えてくれていた。


 用意されていた衣服は全てテイラーの奥さん、ヨーコさん手製のもので、

裁縫関係の技能を極め、アテナ神域で1番とされるヨーコさんの

手によるもので、そのデザイン、流し見た防御力の数値においても

下手な金属鎧よりもはるかに高いものばかりだった。


 俺が試着していたなかから選んだものは黒地に紫や銀の糸で

彩られ、アクセントに朱で彩られた和装[暗夜(あんや)]。

機動性を重視した下着にして、下にはスパッツを穿いている。

髪形は動きやすさを考えて、後ろで束ねてポニーテイルにしている。

いっそのことショートカットにしてしまおうかと言ったら、

3人に即答で猛反対された。


 [暗夜]の素材にはバイコーンや火ネズミの皮など多くのランクが

高めの魔物素材が使われているのがスキル【精 査(インヴェスティゲート)】でわかった。

靴は軽量で頑丈なワイバーンの皮ででき、魔力を流すことで跳躍力を上げることが

できる[ワイバーンの靴]。いづれも複製できる代物ではないことも分かった。


 特に和装の[暗夜]には目立たないように施された特殊な刺繍(ししゅう)

【加護縫い】の付加効果が強力で、各種被属性攻撃強減、各種状態異常無効、

自動修復と元々高い性能を更に底上げしている。


 【加護縫い】は裁縫系スキルの最高位に位置するもので、

俺は裁縫系は育成していないので習得していない。このスキルで

作成されたものは他の人間が同じものを作ろうとしても造れないのだ。


 ちなみに試着したときの俺の姿をイリアが練者の腕輪の機能である

スクリーンショットで記録し、ヨーコさんに渡すのが代金替わりで、

なんでもヨーコさんのアイディア、次の作品のインスピレーションに必要だとか。


 もらった物の価値と性能、デザインの秀逸さを考えたら、

撮影されること位、我慢すべきなのだろう、がまんすべきなのだろう

……orz






~~~~~~~~~~~~~~~~


「う~ん、周りの視線が痛い。

やっぱり俺は[双子座(ジェミナス)仮面(マスク)]を被るよ」


「ダメですよ兄さん。今、顔を隠すのはNGです。

今から慣れておかないと、あとで大変になりますよ?

 リリィ、しばらくこれを預かっておいてくれる?」


「はい、今はイリア様とご一緒にいるのですから、

こちらは私が大切にお預かりしますね」


イリアにダメだしされて俺は隠蔽効果のある[双子座の仮面]を

取り上げられ、イリアは取り上げた仮面を流れるようにリリィに渡し、

リリィはよどみない動きで丁重に仮面をしまってしまった。


 あとで? どうしてあとで? と疑問が湧いたが問い返す前に

イリアが俺の腕を抱き寄せるように引っ張った。イリアの柔らかい

部分の感触が伝わってきて、前のめりになったため、

バランスを取ることに意識を持っていかれてしまい、

問い返す機会を失ってしまった。


 そうして、白を基調にした白金聖騎士団プラチナホーリーオーダーの幹部制服に

身を包み、満面の笑みを浮かべるイリアに手を引かれつつ、

落ち着いた色合いのロングスカートのメイド服に身を包んだ

リリィとソフィを伴って、時折、胸に付いたおもりのせいで

バランスを崩しそうになりながら、俺は大神殿まで繋がっている

人の活気で賑わっている城下町を歩いていた。


 やはり、国王であるイリアが目の前にいるということもあってか、

視線が俺達に集中しているのがわかる。しかし、どういう訳か、

道行く人々の視線が俺の方にに集中しているような気がするのは

気のせいなのだろうか?


 見目麗しいイリアたちに視線がいくのは分かるが、どうして、

俺なんかに?

 しかも、男だけじゃなくて、女性からも熱い視線を感じるな。

あ、向こうの冒険者たちがキマシタワーとかキマシとか言って

騒いでいたから憲兵隊が出動してきた。


「はぁ、マスターはやっぱりご自分の魅力にお気づきなさらないのですね」


とリリィと同じく俺とイリアの後ろを従者として絶妙な距離で歩いている

ソフィが、ため息混じりにそうつぶやいたのが聞こえた。




~~~~~~~~~~~~~


「ようこそ、神子様がお待ちです」


居心地の悪い視線を耐え、まだ慣れていない女性の体の重心の変化

に慣れ始めてようやく、大神殿に到着し、神官に案内されて俺達は

神殿の中を進む。


 ちなみにこの場にいないヘンリーたちは会議の始まる前から、

近くのBランクダンジョンへ潜っている。

 前衛のヘンリー、クオル、アンに後衛のサラ、ローラと、

PTバランスの良い面子で、PT総合ランクが推定Aだから、

丁度いい難易度で苦戦することはそうそうないだろう。


「神子様、イリア陛下たちがお見えになりました」


部屋をノックし、案内役の神官は俺達の来訪を部屋主に告げて、

入室許可を確認して扉を開き、俺達が入った後に閉じて去っていった。




「ふむふむ……やはり、私が思ったとおり、いや、予想以上だな」


俺のステータスを見て感嘆するのは紫髪に黒い瞳をもつ

アテナ様の神子、オリヴィアではなく、オリヴィアに憑依して、

その髪を金髪に、瞳を青に変えているアテナ様だ。


「? なにが予想以上なのでしょうか?」


アテナ様の言葉から湧いた疑問を俺はすぐにぶつけた。


「んん? もしや、イリアとケレシスからまだ事情を聞いていないのか?」


「申し訳ありません、アテナ様。予想以上に兄への変化の負担が大きく、

説明する時間がありませんでしたので、アテナ様のお言葉で

兄へお伝えください」


「ふむ、そうか。では私から伝えよう。

実は先日アポロン兄上の治めるアポロン神域にあるデルフォイの神託所で、

アポロン神域を未曾有の危機が押し寄せ、神域を飲み込んだあと、

他神域にその脅威が波及するという予言が下ったのだ」


と神妙な顔で言うアテナ様。


 アポロン神域には太陽神アポロンがその昔、白い蛇の神を降して、

従属させ、その未来を見通す力を有効利用するために大神殿を

そのデルフォイの地に神託所として築いた。


 アポロンの神子もピュティアという白髪灼眼の一族の者が務める

ことが決まっているというのはZOFにおいては有名な話である。


 この神託所におりてくる予言がこの世界で的中率が最も高いことは

有名で、同時に今回はその未来を回避するための予言も一緒に示された

というのがアテナ様の話である。


「手段までは明示されていなかったが、どうやら私がアポロン神域で

発生する戦闘に加勢することで事態を好転させることができるらしい。

アポロン兄上が直々にオリュンポスにいる私に頭を下げて助力を頼みにきたのだ。


 しかし、私が直接管轄外の地に降臨することはゼウス(父上)の定めた

制約に抵触してしまう。だからかといって、私の神子であり、

依り代であるオリヴィアを私の加護が届かない神域外に出すのは

危険すぎる。そこで……」


「高位の召喚師であり、高位の精霊や神獣とも契約をして”憑依(ポゼッション)”を

行うこともできる俺に白羽の矢がたったということですか?」


「そのとおりだ。女性になってもらったのは私自身が”憑依”

する際は女性の方が親和性が高く、異性である男性の神子を正式に

選んだことがないため、”憑依”を行った際の不確定要素を

可能な限り取り除きたかったのが理由だ」


アテナ様が言うにはZFO以前のこの世界では少年のアテナ様の

神子候補がいたらしいのだが、どうしても少女の候補に比べて同調率、

親和性が低く、候補まではいくが、最終的に落選せざるをえなかったうえ、

魔力を扱う職を目指す少年が減ったため、神子の選抜は魔力とアテナ様との

同調率が高い女子の割合が増大していき、必然的に少年の神子候補は数を減らして

いなくなってしまったとのことだ。


「同じ召喚師であるならば俺でなくとも、俺の弟子であるソフィではだめだったのでしょうか?」


「最もな意見ではあるが、如何せん、ソフィではまだ私を”憑依”

させるには召喚師としては未熟。アルテミス姉上の神子候補を輩出

したことのある一族の出であるから、今後の成長次第で可能性は高いが、

残念だが今はどう頑張っても失敗してしまうだろう」


アテナ様のお言葉にソフィがうつむいてしまった。後でフォローしておこう。


「契約を結んだ後は試しに近くのダンジョンに赴き、魔物討伐で

慣らしてみるとしよう!」


アテナ様はいい笑顔を浮かべてそう言われた。


そのあまりにもウキウキした様子から相当ストレスが溜まっているんだなぁと

その場にいた全員の考えは間違いなく一致した。






~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「はっ!」


短い気合とともに放った黄金槍は一直線に並んだ標的を難なく

串刺しにして、その後ろにあった大岩にも大きな風穴を開けていた。

 現在位置は最近オーガが出没するようになったと言われている

大神殿から少し離れたところにある荒野だ。


 アテナ様の神子のオリヴィアも同行したかったようだが、

公務があるとかで残念そうに辞退していた。


俺は光り輝く金の髪(・・・・・・・)を風になびかせて、アテナ様を”憑依”した

ことによる通常状態との動きの差異を確かめつつ、女体化に加えて、

アテナ様と契約したことに選択できるようになった女性限定の

特殊職、戦女神姫(ヴァナディース)の特性を調べている。


 アテナ様の武器が槍であるのは有名だが、他の武器に関しても


苦手というものが一切なく、剣でも弓でも極めつけは重量があって

扱いにくいはずの戦斧ですら手足の如く思うが侭扱える。


 アテナ様の従者を務めている勝利の女神(ニケ)。彼女はアテナ様が

戦場に立つ際に武器に変化しているとアテナ様に教えてもらった。


 アテナ様を”憑依”している状態でさらに勝利の女神を召喚するのは

召喚職を極める目前の俺でも種族的な魔力の制限によってできない。

 だが、同じく形態変化できる黄金の剣(アリス)がいるので全く問題なく、

アテナ様を”憑依”したときの黄金の剣(アリス)との相性は抜群である。


 アテナ様を”憑依”している際は大神殿で渡された[女神(アテナ)神衣(ゴッドクロス)]

が防具として自動で装備され、俺が討伐したメデューサ【起源種(オリジナル)】の

首が付いている[戦女神の楯(アイギス)]も自動で装備される。


 [女神(アテナ)神衣(ゴッドクロス)]の意匠は女性用の

フルプレートアーマーで全身をがっちり覆っているのだが、

全く重さがなく、寧ろ軽いくらいであった。


 現在メイン職にしている戦女神姫(ヴァナディース)、系統としては召喚師系に属するのだが、

ステータスの能力値全てが異様に高い。下手な戦士系職より強いという表現が

生温いレベルで高い。イリアの聖騎士極王のLV1時点の基本数値を比較しても

ヴァナディースが上回っているのが分かった。


 ゲームであれば完全にバグレベルと言える理不尽な能力値である。

アテナ様が言うには俺が人族(天人)故に数値の偏りがないとか。

アテナ様を”憑依”できる可能性を秘めているソフィもこのヴァナディースを

取得することが可能であり、その際ステータスの能力値は肉体的に人族より

強靭な銀狼族故に筋力と敏捷性、体力に偏るとか。




(シオンよ。物思いに耽るのもよいが、おかわりがきたようだぞ)


アテナ様の言葉に従い、”憑依”で強化された索敵をすると、

オーガの大集団、500体位がこちらに向かってきているのが

分かった。


(単独戦闘での感触は掴んだな?

次は皆と連携しての集団戦での感触を試してみるべきであろう)


アテナ様の言葉が頭に響く。憑依状態の俺にしか聞こえないが、

明らかに高揚している状態なのがわかる。


「リリィは俺の合図で精霊魔術を行使し、オーガの前衛を牽制して

足止めをしたのち、突撃する俺とイリアの回復と補助を頼む。

ソフィはリリィの護衛と俺達の援護をしてくれ。

イリアは俺と敵を殲滅するぞ」


「分かりました」

「了解しましたマスター」

「分かりました。兄さん」


3人の返事を聞き、俺は女4人と侮って接近してくるオーガたちに

矛先を向けた。そういえば、さっきからアリスが静かだな。


「大丈夫か、アリス?」


「……主よ。どうやらまた新たな能力が追加されたようだぞ。

自分では確認できないから、主が確認して」


「んん?」


アリスの自己申告に従って、スキルの【精 査(インヴェスティゲート)】を使ってみると、

スキルの項目に【人喰い鬼殺し(オーガスレイヤー)】が追加されていた。


 先ほどオーガたちを単独で蹂躙した際に沢山オーガの血を吸った

からか……ますますチート性能に磨きが掛かっているな。


(シオンよ、あと20秒ほどでリリィの精霊魔術の射程に全敵が入るぞ)


アテナ様の助言に感謝し、既に詠唱を終えて待機していたリリィに

目配せした所、既に準備は万端という意図で頷いてくれたので、

発動タイミングがきっちり合うタイミングで指示を出す。


「リリィ、頼む!」


「はい、風の精霊たちよ、我が敵を薙ぎ払え! 【大竜巻(メガトルネード)】!!」

リリィが待機していた魔術を解き放ったところ、荒野に巨大な竜巻が

前触れなく現れ、オーガの大集団を飲み込み、半数以上を天高く舞い上げた。


「いくぞ、イリア!」


「はい、兄さん!」


竜巻が消え、仲間が吹き飛ばされて大混乱をしている怪物の群れたちに

俺とイリアは突撃を開始した。


「あっ……」


気がついたらイリアを置き去りにして加速し、敵集団に槍の

基本アクティブスキル、【突 撃(チャージ)】をして、更に敵の数を半数を

削っていた。女神の神衣の効果ですばやさが異常な値になり、

この状態なら飛行も問題なくできるのでゲッ○ー機動も可能だ。

……孤立する危険があるから使いどころは限られそうではあるが。


 追いついたイリアと共に今度はお互いに速度を調整して完全に連携し、

態勢を立て直そうとする集団を蹂躙して撃破していく。


「【真名解放】! 【聖剣抜刀(エクスカリバー)】!!」


イリアがスキルを使って隙だらけな敵をまとめて灰燼(かいじん)にした。

……イリアはイリアでストレスが溜まっていたようだな。


 俺とイリアはお互いの死角を補うため、背中合わせになって戦場を

駆ける。


 討ち漏らしやリリィとソフィにしかけようとしたオーガは漏れなく、

ソフィの召喚したフェンリルとフレスヴェルグによって斃された。




(ふむ、どうやら、そろそろ限界のようだな。オリヴィアよりも

思っていたよりも長く”憑依”できるようだ。”憑依”が解けた後

はMPが0になるから戦闘中なら即座に回復するなり、

離脱するようにな。久々に戦場で体を動かせて満足であった。

では依頼の件頼んだぞ)


敵の全滅を確認したところで、俺がアテナ様を”憑依”させておく

限界がきたようだ。去り際に依頼の件を念押しして、アテナ様の

”憑依”が解除され、俺の髪は元の黒髪に戻り、装備していた

女神の神衣は光となって消え、ヨーコさん謹製の[暗夜]に戻った。

御一読ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ