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第4話ユニコーン捕獲に必要なもの

 結局、アレス神域への対策は折衷案をとることになった。

隣接している同盟国のアポロン神域への援軍派遣・支援物資の供出、

アレス神域を挟んでこちらと接しているガイア神域への警戒へ6割、

作物の加工業の促進とガイア神域から削り取った土地の開拓村への

戦力派遣と開拓促進など内政に4割といった方針で次回の会議まで

神域の運営を進めることが決定した。


 俺がどうしてアレス神域の限定クラスのことを知っているのか、

ロードとマスターの存在が本当なのかという証拠も開示した。


 以前に撮影していたスクリーンショットを空中表示にして皆に見せ、

ZFOがまだゲームだったときにサービス開始からしばらくしてから、

イリアたちと遠征してアクシデントではぐれて、しばらくアレス神域で

レベル上げに励んでいたときのスクリーンショットも見せて納得してもらった。


最も、かなり前のことであるので最新の情報でないことも忘れずに捕捉した。


 ちなみにお気に入りのダークナイトを手に入れた場所も実は

アレス神域の古戦場跡のダンジョンだ。それまでは召喚獣になるような

魔物が見つからなくて本当に大変だったのはいい思い出だ。




「……ようやく終わった……」


おまけで来たはずが途中から全員にことある毎に意見を求められ、

その都度、報酬の手前、俺は律儀に答える羽目になってしまっていた。


「お疲れ様、しおん。のどが渇いたでしょ?

特製のお茶よ。これ飲んでみてちょうだいな」


思えば、なぜこのとき、俺は無警戒にケレシスの差し出したカップ

のお茶に疑問を持たずに受け取って、飲んでしまったのだろうか。


「ん……? なんだ? 体が熱い? ケレシス、俺に何を飲ませた!?」


リリィの”妖精族(エルフ)祝福(しゅくふく)”の効果であらゆる状態異常を完全無効に

している体が謎の熱を帯び始める異常を示し始めたので犯人である

ケレシスを睨み、俺は問い詰めた。


「ああ、アレは彼に飲ませるのが目的だったのですね。ケレシス代表」


抑揚のない口調で俺の異常に心当たりがあるのか、残っていた

学園都市セーメンの都市長メリッサがケレシスに語りかけた。


「ええ、そうよ。しおん、貴方、ユニコーン捕獲のために最も必要な

ものは分かっているでしょう?

目が覚めたら、ようやく準備が整うから大人しく今は寝てちょうだいね」


そう言って、ケレシスは俺の問いに答えずにロクデモないことを

企んでいるときの笑顔を俺に向けた。


 そして、自分の身になにが起きているのか把握する前に俺の意識は

闇に落ちていった。






「…ん、……んん? リリィとソフィ?」


目が覚めると傍に心配そうにリリィが椅子に座り、ソフィは立って、

こちらの様子を伺っていた。


 ん? 耳朶(じだ)に響いた自分の声に違和感を感じた。


「シオン様、これをご覧ください」


そう言って、リリィは上半身を映し出せる大きさの鏡を持って、

俺に見せてきた。


 そこに映っていたのは見慣れた長い黒髪を後ろに垂らしている

俺の顔が映し出されているが……わずかに違和感がある。


 20歳を過ぎれば一般的に男の顔は厳つくなって、異性の双子と

完全に別の生き物の容姿になるはずなのだが、幸か不幸か、神の奇跡か

どういう訳か俺の顔は双子の妹、各務(かがみ) 凛璃(りり)とほぼ瓜二つのままであった。


 ZFOで俺は外見を弄るのにこだわりがなかったので現実と同じ設定のまま

プレイしていた。加えて、多くのVRMMOでは現実と大きく異なる

身長や体格ではごくわずかだが反応が遅れてしまうことが分かっていた。


 拮抗した相手との戦闘中ではこのわずかな差が生死を分かつので、

俺はデフォルトの現実と同じ背丈と体格のままZFOをプレイしていた。


凛璃の方も身長と体格はデフォルトのままで、変えたのは髪の色を

変えた位で他は全く弄っていないと言っていた。


 しかし、何でわざわざリリィは俺に鏡を見せたんだ? という疑問が

湧き上がってくると同時に鏡の中の自分にわずかに感じていた

違和感の正体に気づいた。


 そう、普段付いていないもの付いていた……胸に。

それは見事な大きさで俺が着ていたシャツを押し上げ、布丈が足りず、

へそが見えていた。いつの間にか服装も簡素な布製の白いシャツと

シャツと同じく白いハーフパンツに替わっていた。


「リリィ、ソフィ、……これは一体?」


俺は自分の発した声を聞いて驚愕する。普段聞き慣れた自分の

声よりも高く、イリアよりも気持ち低く聞こえる声だったからだ。


 俺は慌てて自分の喉を触るが、そこにあるはずの喉仏の感触がなく、

更に嫌な予感がして、自分の下半身を慌てて確認した。

……予感に違わず、気を失うまで長年連れ添っていたものが、

影も形もなくなっていた。


 俺は愕然とする一方で、すぐに現状の打開策を思案を開始していた。

そのとき不意に扉をノックする音が響いた。




「何故、兄さんを女性になる必要があったのかですが。


これに関しては兄さんが探し求めている人材が残念ながら、

このアテナ神域に存在しなかったからなのですよ」


ノックして部屋に入ってきて事情を説明しにきたのはケレシス(下手人)ではなく、

俺と全く同じ顔だがプラチナブロンドの髪をもつ、イリアだった。


 ケレシスやメリッサが来たら、俺は問答無用で2人を亡き者に

しかねないとのイリアの判断らしい。


 その判断は全くもって正しく、否定できなかった。

今の俺なら躊躇いなく、姿を見せたら、即座にあの2人を血祭りに

あげることだろう。


 俺の女体化に関してはイリアも関係していると話を切り出し、

まず俺が会議参加の報酬とした一角獣との件に関してから話が始まった。


「残念ですが、今のアテナ神域にはユニコーンが寄ってきそうな

処女(おとめ)は現在いません。ケイにも調べてもらいましたが、

適格者と思しき少女たちは全員恋人もちでした」


申し訳なさそうにイリアはそう言った。


 ユニコーンが処女厨であるのは有名で、処女を偽って近寄ってきた

女性を惨殺することもそれと同じく有名であった。


「シオン様、性格に余程の問題がない限り、標準以上の美貌を持つ

女性を世間の男性が放っておくでしょうか?」


リリィの言葉に俺はぐうの音もでなかった。

なぜなら、その世間一般の男性の端くれだった俺はリリィをはじめ、

イリアたち乙女と男女の関係になっているからだ。


 下手に他人の恋路を邪魔したら天馬(ペガサス)に蹴られて死んじまうだろう。


 ちなみにその関係になっていない弟子のサラは錬金術師であるため、

ごくわずかなのだが薬品のにおいを嫌うユニコーンが忌避するため除外、

リーダたちは人工生命体であるためユニコーンの守備範囲外になってしまう。


 そうなると最後の手段である無垢な幼女たちがいいと思うかもしれないが、

生憎、ユニコーンの生息地が魔物の出没する危険な森とわかったため、

おそらく守り抜くことができるだろうが、十中八九権力使って、

無理矢理連れて行くことになるから、後々禍根を残すからこの手段は控えるべき

であろう。


「だからといって、なんで俺なんだ? 

テイラーやヘンリー、クオルでもよかったのでは?」


「兄さん、その3人が女性になったとして、ユニコーンが近寄っ

てきますか?」


「すまん、自分で言ってて想像できない」


スキンヘッドのテイラーとややもすれば血の気の多いヘンリー、

ぎりぎりでいけそうなクオルも義兄であるヘンリーと同じ思考だから、

とてもで期待できなかった。


 女体化したときのイメージも特にテイラーが浮かばなかった。


「つまり、消去法で俺しかいなかった訳か」


「それもありますが、あと2つ理由があります。

1つはアテナ大神殿絡みで、もう1つが外交絡み。

 大神殿に関してはこのあと直接言ってみたほうがいいですね。

ところで、リリィ、ソフィ、兄さんのサイズ測って、付けて

あげました?」


「いいえ、まだです」


「ですね」


俺の2人の従者が即答した。

ん? 何の話だ? サイズ? もしかして……。


「う~~ん、見た感じだと私と同じみたいですけれど、

やっぱりきちんと測らないとですね」


「イリア、測るって何を?」


「ん? 兄さんの胸のことですよ。

あ、今は女性の体だから姉さんと呼んだほうがいいのでしょうか?」


「いやいや、それはどっちでもいいだろう。それよりも、

それは今やらないといけないことなのか?」


「はい。男性だった()さんにはまだ実感ないかもしれませんが、

ブラを付けないとシャツで過敏な先端が擦れて大変なことになりますよ?

あと、サイズが合わないものをつけると体にもよくありません」


楽しそうに笑顔でそういうイリアには他意がないようだ。


「では、リリィは兄さんの上着を脱がせて上げてください。

ソフィは兄さんの腕を上に上げるのを手伝ってあげてください」


「はい、シオン様、失礼します」


そう言うや否や、リリィの手にはいつの間にか俺が来ていた白い

シャツがあった。


「では失礼しますね、マスター」


がしっとソフィが俺の両腕を上げた状態にして手首を握っていた。

人族よりも腕力が強い銀狼族だけあって、流石に力が強い。


 振り払おうと思えば振り払えうかもしれないが、性転換したえ影響か、

まだ体を思ったように動かせない。


 最も、俺は阿吽の呼吸で連携するイリアたちに毒気を抜かれてしまい、

結局、しばらくの間俺はイリアたちの着せ替え人形になるしかなかった。


御一読ありがとうございました。

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