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第1話亡命回想(前)

 俺達がポセイドン神域から帰還してから3週間が過ぎたある日、

テイラーとケレシスが連れ立って万屋蛇遣い座にやってきた。


「3日後にサンク、ポイエイン、ゲオルギアの首脳会談があるからシオンも来てくれ」


「俺はカリュクスの1市民で1冒険者に過ぎないから、

その会談には参加できないはずだが?」


応接室のソファーに座ったテイラーの開口一番の言葉を俺は即座に正論で反論する。2人の目的は凡その検討はついているが、生憎俺には会談に参加するよりも優先すべきことがある。


俺はZFO時代からの大目的である『サモンマスター』への道を進んでいる最中であって、3年も足止めをされた挙句にメデューサ【起源種(オリジナル)討伐やらクオルの親子対面などでとどこおりがちだったレベリングを計画して少しでも遅れを取り戻そうとしていたところだ。


「もう、テイラーったら、そんな誘い方であのしおんが乗る訳ないじゃない。勿論、報酬として情報を用意しているわよ。貴方がまだ契約できていない召喚獣、【一角獣(ユニコーン)】が発見されたのよ。しかも【起源種(オリジナル)】で」


ケレシスが笑顔を浮かべつつ告げる。そういえばコイツが向こうでも飴と鞭で人をその気にさせるのが上手かったのを思い出した。

普段は傍若無人な変態だが交渉が上手いケレシス、実直なテイラーとマイペースなメリッサと3人で国を治めるということに関していいトリオだと思う。


「その情報とお前とユニコーンを契約させるのに俺達が総力を挙げて全面的に協力するのが会談に同行する報酬だがどうだ?」


1国が総力を挙げてというのは大げさに聞こえるかもしれないが、

【ユニコーン】と契約するのには実際にそれ位かそれ以上の労力が必要になる難易度Sだからありがたい。


ちなみ、一番契約が簡単なのがEでスライムだ。

俺が最初に契約した暗黒騎士(ダークナイト)はランクCで平均のランクDよりも困難だったのを知ったのはダークナイトの習熟度が、ランクEからDへ上がったあとのことだった。


 ユニコーンと契約するにはまずユニコーンを見つけて逃がさないようにしなければならない。


ユニコーンが(好色で)無垢な処女に滅法弱く、処女の前では生来の獰猛どうもうさが抜けるといわれている。その一方で処女をかたった女性が目の前に現れると激怒してその女性を惨殺するから囮となるユニコーンが気に入る女性を用意するのも個人では余程の大金持ちでなければ不可能である。


また、ユニコーンが気に入る美女は稀有な存在と言って良い。


名前にもなっている特長の角は素材としてはSランク以上で、

しかも実際に入手できても状態の判定がピンキリあるため、

非常に厳しく、最高級品質のものはそれこそ城3つ以上買える以上の価値があるといわれている。


そのランクが示すように角の入手も非常に困難で、下手に準備なくトレードマークの1本角を触ってユニコーンを怒らせると、文字通り辺り一面焼け野原ですめば優しいレベルの始末に負えない被害がでてしまうのだ。


「きちんとここに書面作ってきているから、文章確認して、

サインしてくれればすぐに標的の居場所は教えるわよ」


そう言って、ケレシスは2枚の契約書を取り出した。

1つは控えなのだろう。こちらの懸念を先読みし、外堀を埋められてしまった。


「……分かった。まずはその書類を確認させてくれ」


悩んだ末に満足のいく俺の返答を聞いたケレシスは喜々(きき)として契約書を渡してきた。


「今度の会談はサンク王国の王城であるのよ。

しおんとメイドちゃん、賢狼ちゃんには思うところあるかもしれないけれど、我慢してちょうだいね」


そう言ってケレシスはウインクするが、俺はよりにもよってあそこかという気持ちでいっぱいだった。ケレシスの横にいるテイラーは苦笑いしていた。


そして、ふと俺の頭にサンク王国から亡命する羽目(はめ)になったときのことが過ぎった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



それは今からおよそ5年近く前のできごとになる。


当時はまだ、ZFOはVRMMOでサービス開始から2年の月日が経っていた。そのころはネットの口コミで人気になって一気に人口が増え、初心者が集う町はどの神域でも人で溢れていた。


町の転移陣も結界強化のために魔力をまわす処理がされる前だったので、普通に使えたので移動は今とは比べ物にならないほど時間がかからなかった。


ちなみに、ポイエイン連合国の3都市限定ではあるが、俺はドリアードの魔力・龍脈検知能力とわずかながら龍脈を移動させることができる能力と俺のスキル【精 査(インヴェスティゲート)】で結界の術式の最適化を行って、転移陣を動かすのに必要な魔力をなんとか確保に成功した。


話を戻そう、当時のサンク王国はレアイベントのクエストを攻略して前代未聞の大神殿の土地を領有することなり、破竹の勢いで勢力が拡大していた。


当時から俺の傍にいたリリィとソフィに関してだが、まず、俺に妖精族の祝福を施してくれたリリィはアルテミス神域にあるエルフの森域(しんいき)を離れて俺のメイドとしてサンク王国王城近くにある俺の保有している屋敷の管理をしてくれた。


屋敷は定期的に生活スキルである【清 掃(クリーン)】を実行しないとどんどん荒れていって、見た目も居心地も悪くなるので常駐することで【清 掃(クリーン)を代行してくれるメイドの存在は非常にありがたい。当時の不満としてはリリィを冒険に連れて行けなかったことだった。

詳細は別の機会に譲るが、初めて会ったときはお互いに戦闘装備であり、リリィのメインクラスも高位の精霊魔法使い(エレメンタルメイジ)で戦力としては十分であり、パーティに連れて行ければとイリアもシステム的な理由で無理なのかと嘆いていた。


リリィの仕事ぶりはメイドの鑑といえるくらい完璧なもので、

背筋を伸ばしたきれいな姿勢を保ちつつ、仕事をこなして、ポーション作成の補助もしてくれたのだ。当時はNPCと思っていたが、会うと必ず声を掛けていた。


次にソフィだが、彼女はアレス神域で発生した緊急イベントで救出し、健在な両親の了解を得て身柄を引き受けて従者兼召喚師の弟子としてサンク王国に連れてきて10日ほど経った位であった。


当時のソフィの年齢は所謂いわゆる中学生最初期であり、身長は今の彼女の身長の頭2つ分位低い位置にあって、発育も始まったばかりといった様相であったが、きれいな銀髪と整った目鼻に髪の毛と同じ毛をもつ狼耳・尻尾と着ているメイド服もあいまったその容姿は危険な変質者(ロリコン)ホイホイであったのは確定的に明らかで、遊びに来る度にイリアが猫可愛がりしていた。


召喚師としての教育も順調で、契約させる召喚獣はソフィの特性に合せて厳選していった。彼女のお気に入りは俺がダブって手に入れていた魔氷狼王(フェンリル)の喚石で契約させたフェンリルだ。こちらもまだ成長中なので子犬並みの大きさだが、氷雪系魔法の腕は下手な魔術師を軽く上回り、爪牙の威力も皮の鎧なら何の抵抗もなく斬り裂ける凶悪なレベルである。


そんなソフィもようやくサンク王国に馴染みはじめたときのできごとだった。


城内であまり評判がよくない上にイリアに気に入られようと躍起になっている第4騎士団に所属する連中が、王国に流通させるために各種ポーションを作成し終えて城に割り当てられた自室で寛ぎながら、明日に予定している城の近くにできたゴブリンの巣の掃除のためにクラスを調整し終えた俺の部屋の扉を乱暴に開けてズカズカと入ってきた。


「シオン・スレイヤ・ヴァーザード、貴様をアレス神域のスパイ容疑で逮捕する!」


第4騎士団の団長(男)が開口一番、濡れ衣な内容の妄言を声高に叫んだ。


「証拠はあるのか?」


冷ややかに返す俺をそいつは鼻で笑う。

腹立たしいから今すぐ斬り捨てたいところだが、同じチームに所属しているため、チームメイト同士の攻撃は無効化されるため、フレンドリィファイア(同士討ち)は徒労になる。


「そこの獣人とお前の屋敷にいるエルフに決まっているだろう!

密入国したアレス神域の奴隷商人から秘密裏に購入して

メイドとして働かせているのだろうが、俺の眼は誤魔化せんぞ!」

いや、誤魔化すもなにも明後日の方向を向いたふざけた理屈に従うほど俺はお人好しでも愚か者ではないし、2人とも自分の意思で俺に従者としてついてきてもらっている。更にイリアを始めこの国の主要人物に面倒くさい面通しを済ませたし、お前の所にも挨拶に行っただろうが目玉と脳みそくさっているのかと俺は呆れ果てた。


「2人の首に奴隷紋がないのに2人を奴隷と言うつもりか?」


ZFOの奴隷にはシステム上漏れなく主人に逆らえない強力な呪いがかけられている。奴隷であるのを示す印としてその呪いが奴隷紋という刺青のようなものになって首につけられているのだ。買主から逃げようとすれば奴隷紋が反応して首が絞まり、呼吸が困難になり、反抗したり逆らえば首の血流を一時的にもしくは完全に止められて最悪、奴隷は死んでしまう。


これはこの世界では”常識”で一般兵士なら全員知っているレベルの話だ。解除方法は神聖魔法か上級スキル【破 呪(ブレイクカース)】などによる解呪が知られている。


「ふんっ、そんなものはおおかた魔術で隠しているのだろう? お前のような役立たずな奴には勿体無いからお前が囚人として牢屋送りになったあとは俺がゆっくり可愛がってやろう」


本当にアホの発言だが、俺はこいつの言動に違和感を感じた。

チームの一員である俺がチームにいちじるしい損害や不利益を起こした際に入れられるのはシステム的に営倉か独房であり、牢屋に入れることはない。牢屋に入れられるのは他のチームの人間や信頼度が低い状態で不祥事を起こした冒険者や一般人である。


そう思考しながら【探知(サーチ)】で部屋の周囲の人の存在を確認したところ、

第4騎士団が通行止めしているこの部屋の扉と廊下には結構な数の人が集まっており、まるで逃がさないというような意思が感じられる。


不意に彼等の行動をいぶかしむ俺へシステムメッセージが届いた。

[シオン・スレイヤ・ヴァイザードはサブリーダー審議の審議結果により、チーム『白金聖騎士団プラチナムホーリーオーダー』を追放されました]


俺の最悪の予想が的中してしまった瞬間だった。

御一読ありがとうございました。

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