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第4話 必ず全うするを以て天下に争う

前編後編にするつもりでしたが、

戦闘シーンが全部後編の方にいってしまったので

サブタイトル変えました。



 残念だが、ヴェスタの騎士団の斥候が収集してきた情報を

俺は信用するに値しないものだと思った。

 その根拠は内容もそうだが、看破スキルで見た限り、

ヴェスタの率いる辺境騎士団には索敵に長けたレンジャーもしくは、

アサシンといった斥候に適したスキルをもった人材が(まった)

いなかったからだ。まぁ、”騎士”団だから仕方ないといえば

仕方ないのかもしれない。


 とはいえ、このままではなんの情報もないまま圧倒的物量と

対峙する羽目になりかねない。俺単独であれば問題ないのだが、

騎士団がいるという縛りがある。

 騎士団に無駄な損害を与えると他神域の国。

特にアレス神域の連中に付け入る(すき)を与えかねない。

それは避けたほうがいい事態だ。


 俺はヴェスタ達と分かれるとアルケー集落からすこし離れた位置で

召聘陣(しょうはいじん)を展開する。

 索敵の1コマンドで敵戦力が把握できるから召聘(しょうはい)するのはシルフだ。


【シルフ (風):

全長15cmほどの風の小妖精で風属性の初級魔法が使用できる。

情報収集や伝令役としても有能であるが、機嫌を損ねると

酷い目にあうので注意が必要】


『お久しぶりです。ご主人様』

「ああ、久しぶりだな。

ほら、好物のネクタルドロップだ」

『わぁ、ありがとうございます』


召聘陣(しょうはいじん)から3体のシルフを呼び出した。

シルフは1組み3体の扱いで、俺の召喚可能枠は10組み30体

である。

勿論(もちろん)、熟練による各種ステータスを上げて探索・索敵に

特化した(ハイ)カスタムを(ほどこ)している。

おかげで、今回のようにゴブリンの(ネスト)にいるゴブリンたちの

戦力を確認できるのだ。

 今回は情報収集なので召聘で十分である。


 彼女らの好物はネクタルドロップ。

つまり、ネクタルで作った飴である。

 これを与えることで探索と索敵の精度と成功率が上がるのは

ZFOの中級以上の召喚士の間では常識であるのだ。

 このアイテムは当然、レシピを見つけて自分で作るか、

他のプレイヤーが販売しているのを買う以外入手方法はない。

 プレイヤーが使うと少しだけMPを回復するアイテムだが、

嗜好品(しこうひん)としての意味合いが強い。

 VRMMOのときは味の再現ができなかったがな。

 ちなみにネクタルドロップの味は桃である。


「この先にあるゴブリンの巣の戦力を確認してきてくれ」

『はい。(かしこ)まりました』


そう明るい声で応えるとシルフたちは一斉に空に飛んでいった。

 ゴブリンの巣までおよそ徒歩で半日の位置らしいがシルフたちなら

ヴェスタたちと合流する前に情報を持ち帰ってくれるだろう。






『帰還しました。また呼んでくださいね。ご主人様』

 早めに昼食を()って集合場所へかなりの余裕をもって到着すると

シルフが情報を持って帰ってきて送還陣に消えていった。

召聘だから仕事が終わると自動で送還されるのだ。


「ふむ……これは(まず)いな」

周りにまだ人がいないのに注意して、シルフ達の持ち帰った情報

を確認して思わず(うな)ってしまった。


ゴブリンの(ネスト)


所属:ガイア神域

            ランク

ゴブリン     30体 E

ホブゴブリン   15体 D

ゴブリンアーチャー10体 E+

ゴブリンメイジ   8体 C

ゴブリンジェネラル 2体 C+

ゴブリンキング   1体 B


斥候の予想は雑魚ゴブリンの数しか

合っていなかったというオチだった。

非常に(まず)い状況だ。

ヴェスタの辺境騎士団だけならば。

いくつか想定していた状況の中から

4番目位に悪い状況ではあるが、

少々厄介だ。


 少し脱線してしまうが、

ここで【ゴブリン】という種族について説明をはさもう。

一般的なRPGで下級モンスターとして、

一般的に敵役として登場する小鬼(ゴブリン)であるが、

ZFOでは少数ながら、交渉次第で味方になったり、

有益な情報をくれるゴブリンも存在

する。彼等は所属がガイア神域でない無所属の高い知能をもつ、

エルダーゴブリン以上のゴブリンたちだ。

 ただし、プレイヤーの属性が秩序以外、

すなわち、中庸か混沌である必要があるようだ。


 話を戻そう。

ゴブリンはZFOでは最下級にゴブリン、その上にホブゴブリン、

ゴブリンアーチャー。中級にエルダーゴブリン、

ゴブリンメイジ。上級にゴブリンジェネラル、ゴブリンキング。

ゴブリンキングの亜種にゴブリンクィーン。

 最高位にゴブリンロード。ゴブリンロードの希少種に

ゴブリンエンペラーが存在する。

 全般的な絶対数としては、通常>亜種>>希少種といった感じで、

能力的には亜種は完全に別物で、希少種は通常の能力を

大幅に強化した存在である。


 閑話休題。この情報はヴェスタには伝えない方がいいかもしれない。

伝えるとまず、援軍を呼ぶことになって討伐はその到着待ち

になるからだ。 

依頼を受けたとはいえ、早急(さっきゅう)に従者のいる拠点に

行きたいので、長い間ここで拘束されるわけにはいかない。

早めに終る作戦を提案してさっさと終らせるのがベストだ。

 そう考えていたら、ヴェスタと副官を先頭に騎士団の一行がやってきた。


「集合時間にはまだ余裕があるのがよろしいのですか?」

「こちらは問題ない。準備は既に終えてあるから、

これから出発を開始して早めに巣の近辺に着いて野営して体力を

回復させ、早朝に襲撃をかけるのが望ましいと思うがどうだろう?」

「なるほど、その案で行きましょう。ところで、本作戦に於いては

私が指揮官でよろしいでしょうか?」


「そうだな。一冒険者である俺が騎士団を率いる訳にはいかない。

連携という面でもおそらく、期待に沿うことはできないと思うから、

俺は、俺の召喚獣に巣へ奇襲もしくはかく乱をを行うから、

騎士団は俺の召喚獣が討ちもらしたゴブリンにとどめを刺すのは

どうだろう?」

「……本当によろしいのですか?」


少しの逡巡のあとヴェスタは問い返してきた。


「ああ、昨日ダークナイトを見たから分かると思うが、

俺の召喚獣は強力だからゴブリンに後れをとることはまずない。

それに明日は昨日召喚したダークナイトよりも強力な召喚獣を出すから

心配は無用だ。

 あと、今回の討伐の報酬に関しては騎士団からの依頼にしたほうが

都合がいいと思うから、そちらの判断に任せる」

「分かりました。報酬に関しては先にお約束しました通り、

成功報酬ということでよろしいですか?」

「ああ、それでかまわない」


普通の依頼であれば蹴る報酬の内容だが、

ここで揉める時間すら惜しい俺としては即答する。

 まぁ、少なく見積もってもギルドのゴブリン30体討伐以上の報酬は

シルフで調べた敵情報から確定的であるのも理由だ。

 ヴェスタの人柄もあるだろうが、昨日の見せた召喚獣の実力のおかげで

こちらの主張が通ったのは嬉しい。

 一般的な騎士は冒険者というだけでこちらを低く見る騎士が多いから

困り者だ。


「では、参りましょうか」

ヴェスタの言葉に俺は(うなず)く。

「出立!!」


その言葉により、ヴェスタの辺境騎士団と俺はアルケー集落を後にした。








 夜の(とばり)がすっかり降りて、辺は手元の隠蔽(いんぺい)効果を

アイテムで付与した焚き火を除き、闇一色。


「シオン殿はこの作戦のあとどうされるのですか?」


一緒に焚き火を囲んでいたヴェスタが不意に尋ねてきた。


「ポイエイン国の都市、カリュクス

へ行く予定だ」

「そうですか」


即答した俺に溜息混じりヴェスタは

応えた。


「なんで訊くんだ?」

「いえ、できればシオン殿にサンク王国に

(もど)って”いただきたいと思っています」


その真意を問う俺に返したヴェスタの答えに無意識に

自分の眉がつり上ったのを感じた。


「……あそこに俺の居場所はないよ」


少し間をおいて、一瞬湧き上がった

感情を押さえつけ、俺は

そう返答した。


「そのようなことはありません。

貴方が濡れ衣を着せられたことは

国民全員が知っており、蛮行(ばんこう)を行った者達に

(いきどお)っておりました。彼等は女神アテナ様の神罰を

受け、地獄ゲヘナに追放されているのはご存知のはずです。

なぜ、戻られないのですか?」

「……俺が戻ると、俺がいなくなっていた間に

俺の代わりを勤めている人間の立場を奪うことになりかねないからな。

 それから、今はあそこと同じ位にはいい場所があるから、

……あそこには戻らない」

「そうですか……」


同情や悲嘆(ひたん)など様々な感情を込めたヴェスタの問いに

内心で溜息を吐きつつ俺の答えに

分かっていたが、諦めきれないような表情でヴェスタは応じた。


御一読ありがとうございました。


改行位置修正しました。


次話は夕方から夜の間に投稿します。

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