第18話 捕らわれた弟子たちの現状! ポイエイン代表ケレシス!!
ハルマッタンでヘンリーとクオルを救出し、
冒険者ギルドでサンク王国の宰相のケイと邂逅し、
リリィ、ソフィ、サラ、ローラの4人と同様に所属している
ポイエイン国の代表の1人、ケレシスが迷 宮に閉じ込められていることを知り、
ゴーレム馬車に乗って、迷宮へ出発した。
迷宮に到着すると”練者の腕輪”からピロリンと軽快な効果音が鳴った。
腕輪の機能の1つであるメールが届いたのを知らせる音だ。
慣れた手つきで手早くメールを確認する。腕輪のメールを送ることができる相手は
フレンドリストに登録した”練者の腕輪”を持つ相手のみで、
現状ではこっちの世界に転生した元プレーヤーたちしか”練者の腕輪”はもっているのを確認できていない。
メールの送り主はケレシス。リリィたちが捕らえられている迷宮にリリィたちより先に放り込まれた俺の友人だ。
ハルマッタンを出る前に安否の確認と可能であればリリィたちの保護を頼むメールを駄目元で送っておいたのだ。
……返信内容は簡潔だった。
「 合点!!Σd(・ω・´。) こっちもボスケテ(´・ω・`)」
直接の再会はまだしていないが、向こうの世界で同い年で学部は別ながら、
同じ大学で同じバイト仲間の同性ということもあり、
顔を合わせる機会と行動することがそれなりにあり、
ZOFの話題で意見交換を頻繁にやったので仲は悪くはない。
向こうは心の友と書いて俺と心友であると公言している。
ケレシスの冒険者としての実力はかなりのものであり、
ケレシスの真骨頂はパーティの支援にある。彼女の職業はメインが踊り子でサブが吟遊詩人の上位クラス吟遊騎士。
踊りと呪歌による後方支援と踊り子のアクティブスキル
【剣 の 舞】による接近戦をこなすオールラウンダーだ。
ZFOがMMORPGだったころはネカマであった。
現実化……こっちの世界に転生した現在は肉体はZFOの女性のものになったと
テイラーから聞いた。
本人は落ち込むどころか、喜色を満面に浮かべていたとか。
非常にあいつらしい。
しかも、向こうもケレシス自慢のパーティメンバーで構成された劇団のメインメンバーとカリュクスの冒険者を何名か同行させているので、
身内贔屓を抜いても高い戦闘能力を持つリリィたちが合流できれば
お互いの生存率がかなり上がるだろう。
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「ん……」
「団長、お目覚めになられましたよ!」
「あいよ、それじゃあ、索敵と警戒を頼むよ」
「は~い♪」
聞き覚えのある声が耳朶に届き、私はゆっくりとですが、魔力切れで気絶して失っていた意識を取り戻して自分が仰向けに寝かされているのに気づきました。
「ここは?…… っ!」
「まだ急に動こうとしないほうがいいよ。
厄介な麻痺毒をようやく中和できたみたいだからね。
普通の万能薬を重ねて使わせるとかなんて毒盛っているの。全く」
わずかに残る体の痺れに起き上がろうとした体のバランスを崩され、
倒れそうになったところを声の主に助けられました。
「……ケレシス様?」
「うんうん、君のご主人様の心友のケレシスだよ」
そう言って、サンク王国の女性騎士が着る制服に似たいでたちで
ご自身の女性的な肉体を包み、整った顔立ちをされた赤毛の美女が
私に微笑みました。
…
……
………
「……なるほどね。
メイドちゃんたちにも毒盛るなんてますますもって許せないわね。
あの駄神官どもは!!」
ケレシス様と情報交換したところ、シオン様が同じ迷宮に囚われるも、
自由に動けているケレシス様に私達の保護を依頼されて、
運よくすぐに私達をみつけることができたこと、
ケレシス様たちも麻痺毒を盛られて、この迷 宮に放り込まれたことを知らされました。
幸い、ケレシス様たちには麻痺毒を無効化することに成功した団員がいて、
彼女が隠し持っていた万能薬でケレシス様を解毒、
ケレシス様のアイテムボックスにある万能薬を麻痺毒で動けない全員に
投与して、”動けないところを魔物に嬲り殺される”危機を回避したそうです。
私達は動けないながらもなんとかフェンリルやフレスヴェルグ、
シルフを召喚したソフィがばらばらに迷宮内に放置されたサラ、ローラと
私を見つけ出して召喚獣たちに一箇所に集めさせ、近寄ってくる魔物を迎撃していたところにケレシス様たちが救援に来てくださったとのことでした。
「メイドちゃんも気づいていると思うけど、
駄神官たちがワタシたちをこの迷宮に閉じ込めた理由は
ここを根城にしているミノタウロスの餌もしくは苗床にするためなのよ」
ミノス王の牛と呼ばれるこの魔物は男性は嬲り殺して貪り食い、
女性は犯して自分の子を孕ませると噂されている魔物です。
「しかも、この迷 宮にはその起源種がいるみたいなのよね。
困ったことにワタシたちの総力をあげても倒すことが難しい強さを持っているのをうちの索敵に長けた娘が命からがら逃げ帰って教えてくれたから分かったのよ」
「カリュクスの冒険者を雇ったと伺いましたが?」
ケレシス様がカリュクスの冒険者を雇ったことは
ハルマッタンでシオン様を待つついでにやっていた情報収集で
サラが集めてきた情報です。
「ええ、火力不足がちなワタシたちを補うためにカリュクスの冒険者たちを雇ったのだけれど、
彼等を加えてもあのミノ公相手には焼け石に水なのよ。
奴の傍には複製種が常に2~3体がうっとおしいことにひっついているから
困っているのよ。
死人を出さないためにスキルで感知して、接近してきたらなんとか戦闘避けて
逃げ回っている状況よ。勝ち目ないから。
でも、メイドちゃんたちが来てくれて……ようやく戦力的に4分、3分
といったところかしら。
しおんが間に合ってくれればこっちの圧倒的勝利は確定なのだけれどね」
ケレシス様を知らない人が私達の評価を聞いて疑問に思われるかもしれませんが、
この方の評価は的確かつ、的を射たもので
冒険仲間のカリュクス市長のテイラー様いわく、
その評価は恐ろしいほど正確で外れたことがないとのことです。
「ミノ公たちはこちらが出口に近づこうとすると
道を塞ぐように出てくるから出たくても出れないのよね。
ワタシたちより前にこの迷宮に放り込まれた
ダイダロス親子は2階の開けたところから集めた鳥の羽を
迷宮に設置された燭台の蝋燭の蝋で固めて翼作っていたけれど、
ミノ公の襲撃で別れちゃったのよね。どうなったかしら」
不意にケレシス様の腕輪から音が鳴りました。
「……どうやら、白馬の王子様ならぬ黒衣の死神様が
ようやくご到着したようね。
とりあえず、みんながいる所に行きましょうか。
賢狼ちゃんたちもお待ちかねだしね。
もう立てるかしら?」
「はい。問題ありません」
そう言って私は横になっていた部屋をケレシス様に続いて後にしました。
「さて、みんな揃った所で現状の確認をするわよ。
まず、ワタシたちの最優先目標がこの迷宮からの脱出なのはみんないいわね?」
迷宮の大部屋に結界を敷いて作ったスペースで私達と
ケレシス様のパーティーメンバーが集合し、
ケレシス様が腕輪のアイテムボックスから出した円卓を囲み、
同じくアイテムボックスから出された椅子に座って
ケレシス様の確認に一様に頷きで返します。
「この目標達成の障害となっているのがこの迷宮の主であり、
迷宮内を徘徊しているミノタウロス。
しかも強力な起源種に加えて、劣化複製とはいえ
数が問題になる複製種を引き連れているから、
まともにやりあったら勝ち目がないわ」
「では、どうするのですか?」
ケレシス様の言葉にサラが皆が抱いている疑問を投げかけました。
「一番いいのはミノ公たちを避けて出口までいくことなのだけれど、
3つの問題があるの。
1つはワタシたちは意識がない状態でここに運び込まれたため、
おおよその方角しか分からないから、入り口兼出口がどの方向にあるか
不明なこと。
もう1つは戦力的にこの場にいる全員が力を合わせても
ミノ公たちとまともにぶつかると勝ち目がないことね。
最後にアイテムの備蓄が心許ないことがあるわ。
食料に関しては魔物肉で限界まで食いつなぐことはできるけれど、
武器、回復薬や消耗品に関しては流石にワタシのアイテムボックスも
そろそろ限界よ」
そう言ってケレシス様は苦笑いを浮かべて肩を竦めました。
「とはいえ、最高の援軍が向かってきてくれているから、
合流できればワタシたちの勝ちよ」
「ケレシス様、最高の援軍とは誰ですか? もしやサンク王国の国王ですか?」
ケレシス様の援軍という言葉に最も反応したのはカリュクスの冒険者たちを
まとめるリーダーでした。
「妙な期待しているところ悪いけど大ハズレね。
ある意味実力は最凶で、ワタシよりも強い”二つ名持ち”よ」
彼の問いにケレシス様は笑顔で答えてました。
御一読ありがとうございました。




