第17話 蹂躙と邂逅! 迷宮への道のり!!
「ほほう、それは聞き捨てならない話だな」
俺はぼろぼろになりながらもクオルを50近くある水の短槍から守ろうとしている
ヘンリーを街中に放ったシルフたちの尽力で、
ぎりぎりのタイミングでなんとか見つけ出すことに成功し、
ヘンリーたちを間に挟んで追跡者たちと対峙する形になった。
「誰ですか?
もしかしてこの獣人たちの仲間ですか?
だとしたら、一足遅かったですね。この2人はたった今死にましたよ」
サディスティックな喜色を浮かべえて神官にあるまじき表情で高位神官が
着用を許されている法衣を着た下衆が部下に合図して待機させていた
水の短槍の群れをヘンリーたちに次々に投擲させた。
着弾の余波で巻き起こる砂煙で視界が遮られて、
ヘンリーたちの姿は確認できないが、
ヘンリーたちの姿を確認する必要がないことを俺は知っている。
血まみれになって地面に横たわるヘンリーたちの姿を視て、
俺が絶望する姿を想像しているのか、敵のリーダー格の神官は
気色の悪い満面の笑みを浮かべていた。
土煙が晴れると、そこには巨大な双盾と全身で2人を守っている傷ひとつない
一角獣を彷彿とさせる白い兜を被り、同じく白い全身鎧をその巨体に纏った防具精霊が佇んでいた。
神 聖 卿。
暗 黒 卿と対になる防御に特化した召喚獣。
俺の主力の1つだ。
【神 聖 卿:
護ることに特化した神聖騎士が成長し、深化した姿。
2つの巨大な盾は腕部鎧と一体化しており、
あらゆる攻撃を完全に防ぐ。盾は聖属性の魔力刃を生成して、
トンファーのように扱うことで近接戦闘も可能。更に秘めた力が解放されると……】
「全くもって笑えない冗談だな。
いや、寧ろ滑稽過ぎてここは失笑するべき所か?」
ヘンリーたちが無傷であるのに呆然としている神官たちを尻目に
俺は未だに動けないヘンリーたちの傍へ歩いていった。
しばらくしてようやく、リーダー格の神官の男がようやく、
我に返ったようだった。
「バ……バカな。なんだあの騎士は? さっきまでいなかったではないか!?」
ああ、そういえば召喚師って不人気でこの世界にはほとんどいなかったなと、
我が職の不人気さに心が闇に入るとともに、リリィ達に毒を盛ったこいつ等に
抑えていた怒りが湧いてくる。
「これから死ぬお前達が知る必要はないし、
知っても理解できないだろう……殺れ」
そう告げた直後、俺は無詠唱で召喚できる限界数まで無慈悲な暗黒騎士たちを
未だに戦場で呆けている大間抜けな神殿騎士や魔術師たちの目前に召喚した。
悲鳴をあげる間もなく斬殺させるため、
一斉に正中線を叩き斬って脳天から真っ二つにする指示は
既に召喚前に出している。
ダークナイトよりも僅かに神殿騎士や魔術師たちの方が数が多かったため、
なんとか逃げ出そうと全力で駆け出す者たちがいた。
しかし、俺はダークナイトに俺の目の前にいるリーダー格の神官以外は
全滅させるよう命じているので、驚異的な死を運ぶ黒い旋風が次々に吹き荒れ、逃亡者たちの望みは自身から飛び散る赤い露と消え、一帯に血飛沫が舞い上がり、
路上を緋に染めた。
2人の手負いの冒険者を追い詰めたはずが一瞬で自分以外が皆殺しにされた。
その現実を受け入れることができないのか、再び神官は呆然としていた。
「さて、次は2人の治療だな」
俺は辛うじて立ち上がったヘンリーに万能薬とポーションを渡し、
クオルには同じ薬2種を飲ませてやった。
既にダークナイト達は送還している。
「兄貴……すまねぇ……」
「ありがとう、シオン兄さん」
「2人とも……気にするなとは言わない。
責任を感じているなら、働きで返せ。
そして、同じ轍を踏まない工夫をしろ。
ここは比較的安全なアテナ神域以外ではないからな。
……ソフィ達を助けに行くぞ」
「ああ……」
「……うん」
回復するなり、頭を下げてきたヘンリーとクオルに俺は告げる。
しょうがないで済ませるほど今回の失敗は軽くない。
これはリリィたちにも言えることだから、
助け出した後リリィたちにも警告しとかないといけないな。
と俺は頭の片隅にこのことを置いておくことにしたえ。
「こっ……こんなことをしてただで済むと思っているのか?
わわ、私はクレタ国のポセイドン神殿に仕える神官なのだぞ!?」
ヘンリーたちを追撃していた奴等のリーダー格の神官はようやく回復し、
開口一番に恐怖で震え、動揺してそう言ってきた。
呆然としている間に俺は神官をアイテムボックスから出した魔獣捕縛用の鎖で
両手、両足を拘束したので、鎖がカチャカチャ鳴って耳障りだ。
縄の方がよかったか?
否、縄だと鎖よりランクが下がって魔術で簡単に切断される可能性が高いから、
耳障りな音はしばらく我慢するしかないか。
「まだ自分の立場が分かっていないのか。全くもっておめでたい思考を
しているな」
「兄貴、こいつをやるなら、俺にやらせてくれないか?」
ヘンリーが殺る気に満ちた表情で訊いてきた。
「悪いが、こいつはまだ殺さない。
必要な情報を引き出せていないからな。そのやる気は取っておけ」
「わかった」
俺の言葉にヘンリーは大人しく引き下がってくれたので、俺はさっさと
この荷物を片付けるため、改めて、神官を一瞥する。
時間があればじわじわと苦しめて、後悔と絶望の内にいろいろ削っていく
ところだが、流石にやることが多く、急がないと拙い状況なので、
尋問専門の召喚獣に任せて、救出の下準備のため行くべきところ、
冒険者ギルドへ向かうことにして、尋問専門の召喚獣を
召喚するための闇の召喚陣を展開する
「え? え? た、たす、け……」
鎖で文字通り手も足もでない芋虫状態の捕らえた神官は底なし沼に
落ちていくように黒い炎で描かれた召喚陣が浮かぶ地面に沈んでいった。
「兄貴早く姉ちゃんたちを助けに行こうぜ!」
「待て、その前に行く所がある」
駆け出そうとしたヘンリーを俺は押し止める。
「まずはこの街の冒険者ギルドに急ぐぞ」
丁度、そう言ったところでアンに回収を頼んでいたゴーレム馬車が到着した。
「おや、ここで会うとは奇遇だね」
ゴーレム馬車の確保を頼んでいたアンと合流した俺達はこの街、
ハルマッタンの冒険者ギルドへ急行した。
そこのカウンターで供として連れきたヘンリーと俺は赤髪に
片眼鏡を着け、上級ローブにスレンダーな身を包んだ
イリアの親友にして、サンク王国の女宰相、ケイと邂逅した。
カリュクスに戻ったときにポセイドン神域に来ている情報を入手していたが、
|ハルマッタンの冒険者ギルド《こ こ》にケイがいることによって
このあとは嫌な予感しかしない。
「いつも控えている従者の子達がいないってことはそっちも神殿の連中に
拉致されたクチかい?」
単刀直入にケイが訊いてきたので、俺は頷く。
「そっちもということは他にも犠牲……被害者がいるのか?」
「ああ、あたしもエティオピアとの交渉を終えた直後に知ったことだけれど、
ここ最近アテナ神域の冒険者複数名、4パーティがハルマッタン、
正確にはクレタ王国の領域で行方不明、正しくは神殿、神官連中に拉致されたらしい」
「他にも被害者がいるのか」
「うん、それと拉致被害者のなかにはポイエインの代表、
ケレシス氏もいるらしい」
「なんであいつが?」
「なんでもハルマッタンを経由して大神殿の観光地である砂浜で
一座の皆と慰安旅行に来ていたところを捕まったらしい」
俺は見た目は絶世の美女、中身はエロ厨学生な悪友を思い出し、
確かにアイツなら、
「青い海、白い砂浜、……そして、水着の美少女たち!!」
と自身も派手でキワドイ水着を身に纏いながら、
自分の劇場で働く役者、女優たちをしか……
かんさ……穴が開くほど眺めるのが目的で来たのだろうことが
これまでの奴の素行から、すぐに分かった。
それはさておき、
「ケイがいるならそっちのことは任せていいか?」
「ああ、任せてくれていいよ。シオンにこの手のことをさせるよりも、
さっさと捕まった人たちを救出に行ってもらったほうが効率がいい。
それと今回の件は大神殿は無関係という裏は取れているから、
向こうからも増援だしてくれる話しがついている」
「そうか。なら俺達は俺達で動かさせてもらうが構わないな?」
「まぁ、向こうと連携しろというのは……流石に無理みたいだね」
「別に増援が来る前に賊をみなご…倒してしまっても構わないだろ?」
「あははははは……まぁ、遅れる方が悪いからね。
それと、帰ったら、きちんとイリアのケアしてあげてよ?
あの子頑張っているんだから」
「……ああ、分かっているさ。行くぞ、ヘンリー」
「ああ、分かった兄貴」
傍に控えていたヘンリーに声をかけ、俺はケイに冒険者ギルドへの対応を任せ、
馬車に戻った。
「兄貴、結局、ここには何しに来て、何をケイ姉に任せたんだ?」
リリィ達が捕らわれていると思しき場所への情報を先ほど召喚獣から得て、
そこへ行くよう御者ゴーレムのカペラに伝えた俺にヘンリーが尋ねてきた。
「冒険者ギルドに行った理由は行方不明になったリリィたちの届出手続きと
ハルマッタン、ポセイドン神域にある全ての冒険者ギルドのスタンスの確認、
大神殿の今回の事件への関与の確認だ。
全てケイがやってくれると行ってくれたので手間が省けた」
「シオン兄さん、なんで冒険者ギルドにそれらを確認する必要があるんですか?」
「そうだな。まず、冒険者ギルドに仲間が失踪したり、
行方不明になった場合は冒険者ギルドの助力を得ることができて、
普段他神域の冒険者である俺達の立ち入りが制限されるところにも、
捜索のため、立ち入ることが可能になるんだ」
神殿側がこれを拒むには大神殿の神託のみである。
「次にこの神域の冒険者ギルドのスタンスの確認だが、
神官たちが冒険者を見下しているのがデフォルトなこの神域では
可能性としては薄いのだが、神殿と結託していないか調べるためだ」
結論として、ギルドは白で、大神殿も白だった訳だ。
ここで冒険者ギルドも黒ならば遠慮なく叩き潰せたのだがな。
「今日はヘンリーにこの手の手続きを今後できるようになるために
覚えて欲しいから連れて行ったのだが、今回は仕方ない」
「わかった。助け出した後に姉ちゃんやソフィ姉に訊いて覚えればいいんだな、兄貴?」
「ああ、お前とクオルがこの手の手続きを覚えてくれたら、
今回の様なことが起こっても手分けして準備時間を短縮できるようになる」
俺の言葉に強く頷く2人。
ちなみに会話に加わっていないアンはダンジョンアタックに
備えて魔法空間で作った馬車の2階で仮眠を取っている。
それから数刻後、通常の馬車の10倍近い速さで街道を疾駆する
ゴーレム馬車の前に入り口の両脇に大きな牛頭人間の石像が建っている
巨大な迷 宮が待ち受けていた。
御一読ありがとうございました。




