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第16話 胎動する悪意? 弟子たちの窮地!

後ほど改行位置などを修正したものに差し替えます。

---シオンサイド---


 カリュクスに戻るとき同様、俺は8脚馬の幻獣スレイプニルを召喚して、

今は別行動をとっているエルフのリリィたちと合流すべく急いでいた。


 不意にリリィとの繋がっている右手の甲の”妖精族(エルフ)の祝福”がうずき、

リリィの身に異常が起こったことを知らせてきた。


「……これは不味いことになったな」


「?? どうしたんですか旦那様?」


召喚したスレイプニルに跨る俺の漏らした言葉に銀の髪を頭の後ろで束ね、

俺の腰に手を回して後ろに乗っているアンが尋ねてきた。


「リリィたちが危険な状況に陥ったようだ。頼むぞ! スレイプニル!!」


俺の言葉に甲高い嘶きを上げてスレイプニルは応え、

周囲の景色がものすごい勢いで後ろに流れていく。



---ヘンリーサイド---


「はあっ……はあっ……」


くそっ! 体がいつもより鉛のように重く、普段駆け抜けた距離に達する前に簡単に息があがってる。

人影のない裏道を走っているが、まるできつい坂を駆け上がっているようだぜ。


「……ヘンリー兄さん。僕を置いて逃げて……」


麻痺毒の影響で動けなくなって左肩に担いでいるクオルが弱弱しい声を振り絞って告げる。


「馬鹿野郎っ! そんなことができるかよ!! 

お前のことは抜け出すチャンスをくれた姉ちゃん達に任せられたんだ。

それにお前は俺と兄貴の弟だ。弟置いて逃げる兄がいるか!

それに、姉ちゃん達を置いてきて、この上、クオルを見捨てたとあっちゃ、

俺は兄貴に顔向けできねえよ!」


確かに、クオルを肩に担いでの移動は食事に毒盛られて麻痺毒を受け、体感で力が半減している

今の状態では負担が大きい。だが、それを言い訳にしてクオルを置いていく選択肢は俺にはない。


 クオルに言ったように兄貴のこともあるがなにより、捕まったリリィ姉たちもまともに動けない状態に

関わらず、無理して魔力を集めて俺達を短距離転移魔術で逃がしてくれたんだ。

 なんとしてでもまずはゴーレム馬車に辿りついて兄貴謹製の万能薬で回復して、兄貴とアンと合流し、

サラ達を助けなくては。


「……っ! ヘンリー兄さん!!」

「! おっとっ」


クオルの呼び声に反応し、横に跳ぶと横の地面、俺達が通過するはずだった地点が

水系の初級魔術、【水 球(アクアボール)】が着弾して炸裂した。


「ちぃっ! 追いつかれた。いや、先回りされているか」


普段より鈍い体で走ることに集中して気をとられていたため、周囲の警戒が散漫になったのが

仇になり、どうやらもうすぐ完全に包囲されてしまうのが周囲にある隠そうともしない気配から

分かった。もう少しで馬車に着くのに……くそうっ。


 心の中で悪態をつく俺の視界に盾を構えて道を塞ぐ全身鎧に身を包んだ男達と

その後ろに高級そうなローブを着た神官と魔術師たちが見えた。

奴等は俺達をはめたポセイドン神域の神殿に仕える神殿騎士たちだ。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


麻痺毒で鈍る体を叱咤して、俺は空いている右拳に炎を纏わせ、

神殿騎士たちの壁へ向かってジグザグに動いて駆け寄る。

 案の定、俺を捉えようとして騎士達の壁の後ろから魔術師たちが放った水球が

次々に地面に着弾していく。俺は水球の弾雨の中をクオルを担いで走りぬけ、

避けられない水球をクオルを庇いながら、炎の拳で蒸発させてかわし、

盾を構える神殿騎士達に肉迫する。


「「「「「っ!」」」」」」


まさか俺が無傷で接近するとは思っていなかったのか、

壁役の騎士達に驚愕が広がった。


 俺はその動揺を利用するため、敢えて奴等の目の前で急停止して、

未だに炎を纏わせ続けている拳を地面に叩きつけて、一気に魔力を解放し、

爆炎の間欠泉を発生させた。

 兄貴に教えてもらった火炎系中級魔術【炎 の 壁(ファイアウォール)】のアレンジ。

俺が編み出した火炎系魔術【灼炎の間欠泉(バーニングゲイザー)】だ。

かなりの魔力を消費するが、目の前の奴等のように固まった敵に対して効果的な広範囲魔術だ。


 壁になっていた連中を灼熱の炎が包み、幾つもの断末魔が聞こえた。

止めた足を再び動かす……が、一瞬早くなにかが腕と足に絡み付いて、動きを止められる。


「くそっ! なんだこれは」


動きを封じたものへ視線を移して正体を確認すると水でできた鎖だった。


「どうやらこれで鬼ごっこはお終いですね。

それは【水 流の縛 鎖ウォーターバインドジェイル】。

水系統上級捕縛魔術ですから、人族はもとより、身体能力に優れる人狼族でも解けませんよ。

更に身体能力の落ちた貴方なら尚更です。」


下卑た笑みを浮かべて、仲間の神殿騎士が未だに燃え続けているのに神官が勝ち誇って、

姿を見せた。

 その傍には俺を捕縛するために魔術を維持している4人の魔術師が額に汗を浮かべていた。


「我々の仲間を殺してくれたのですから、貴方には死んでもらいます。

貴方が担いでいる人物は私たちが預かり、丁重に教育して育てますので安心して逝ってください」


「……ヘンリー兄さん、独りならなんとか逃げれるでしょ? 僕を置いて逃げてよ。

僕なら大丈夫だからさ」


クオルが神官の言葉に反応して麻痺毒に犯された弱々しい声でそう言ってきた。

コイツはポセイドンの血を引く半神で見た目だけは俺に迫る身長になったが精神面はまだ子供だ。

奴等のような奴に預けるのが拙い結果になるのは兄貴程頭が良くない俺でも分かる。


「何度も言わせるな。お前は置いていかない。必ず連れて行く。

それよりあとどれ位で動けるようになりそうだ?」


弱気になっているクオルの言葉を否定し、クオルの状態を確認する。

クオルは対状態異常スキルをまだ覚えていなかったのと、

全く状態異常になったことがなかったので耐性がなかったのが今回裏目に出ていた。


「……あと10分くらいは動けないと思う。何気にきついね麻痺って」


「分かった。なんとか10分はたせよう。そのあとは自分で走ってくれよ」


「お別れは済みましたか? それ「この程度の魔術で俺を押さえ込めると思うな!」」


俺は周囲に【炎 の 壁(ファイアウォール)】を発生させて、

俺の手足を縛っている水の鎖の奴等に伸びる鎖部分を蒸発させ、束縛を解いた。


 兄貴やリリィ姉、ソフィ姉レベルの人が使う魔術だったら、

俺は初級の捕縛魔術でも破る自信はない。だが、使い慣れていない上級魔術を使うので

精一杯な二流連中の魔術を破るのは星の数ほどソフィ姉の捕縛魔術の練習台にされた

俺には簡単なことだった。


 更に俺は切り札である”狼化”を解放し、身体能力を数倍化させて駆け抜け、

俺は神官たちをその場に置き去りにして加速する。


 本調子には遥かに及ばないが、先ほどよりも数倍の速さで街路を駆け抜けていく。

ようやく目的の建物が見えたところで俺の脚が急に痛みと共に動かなくなった。


つんのめる形になり、クオルを庇いつつ地面に土煙を上げつつ、俺は倒れこむことになった。


「大丈夫? ヘンリー兄さん?」


「ああ、狼化しているから倒れたときのダメージはない。大丈夫だ」


心配するクオルに答え、痛む両脚を見ると、水でできた短槍が刺さっていた。


「ぐぅっ」


俺は水の短槍を引き抜いた。噴出す血を苦手な凍結系魔術で凍らせて血止めして、

立ち上がろうとした所で、周囲を先ほど消滅させた短槍と同じもの、その数、50本以上ある、

に囲まれてしまった。


 流石にこれはクオルを庇いながらだと避けきれない。更に間が悪いことにさっきの血止めで

魔力を使い切ってしまった。目の前の魔力の発信源を探ったところ、

水 流の縛 鎖ウォーターバインドジェイルで俺を拘束していた二流たちよりも

格上の気配の魔術師たちが俺に追いついてきていた。

途中、気が緩んで真っ直ぐ走ってしまったのは致命的な失敗だったか。くそう。


「はあっはあっ、手こずらせてくれましたが、これで終わりです。

私をこけにしたお礼に2人仲良くあの世に送ってさしあげましょう。

ん? もう1人は生け捕るのではって? 確かにそう命令されましたが、

上には抵抗されて止むを得なかったと言いますから大丈夫ですよ」


息を切らせて走って追いついてきた神官の男はそう俺に水の短槍を向けている魔術師達に答えた。


「姉ちゃん……俺と一緒にいた女性たちはどうなるんだ?」


「ふむ、死に行く貴方は知ってもどうしようもないことですが、

冥土の土産に教えてあげますので、あの世で悔しがりなさい。

上質で強力な魔力を秘めているエルフなどの亜人である彼女たちはミノス王の下に送られて、

迷 宮(ラビリンス)に放たれ、ミノタウロスの子を産むか、

その餌になるでしょう。ここで死ねる貴方達は幸せかもしれませんね。

ふふふ・・・」


口の端を吊り上げて神官は俺が悔しがりながら死ぬのを楽しむために

姉ちゃんたちの辿るだろう悲惨な末路を予言した。


「ほほう、それは聞き捨てならない話だな」


そこに風に乗って、俺達が待ちわびていた兄貴の声がその場に響いた。

御一読ありがとうございました。

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