第15話 雷鳥飛翔! お荷物付きの指名依頼の終焉!!
「オ ラ オ ラ オ ラ ! 」
黒髪の格闘士リュウが鉄拳のラッシュを繰り出して、
得意の突進をかわされて隙だらけのランドボアの横腹にダメージを蓄積していく。
「ハァッ!」
リュウとは反対側からランドボアに長剣での刺突を突き立てる金髪の剣 士カイ。
凡そ、ここまで見れば対照的な容姿と相まって見事と言えるほど
息の合った完璧な連携攻撃である。
「コイツを仕留めたのは俺だ!」
「いや、俺の剣の方が速かった!」
だが、これは連携攻撃ではない。早速、2人で戦功の取り合いが始まる。
「2人ともやめないか。今回の依頼が失敗したらギルド登録抹消なんだろう?
別に俺は2人が抹消になろうと構わないが邪魔するのなら、排除させてもらうぞ」
「「うっ……。了解しました」」
俺は漆黒の鎧に身を包んだ暗黒騎士を召喚して、2人を威嚇する。
見事に2人はハモッて同じ返事を返してきた。
「……旦那様。言われた魔物たちは全て倒してきたよ。
証拠の討伐部位の確認する?」
「一応確認しよう……うん、大丈夫だ。
時間が経つと崩れてしまう魔物の討伐部位もあるから、
切除したらなるべく日を置かずにギルドに提出したほうがいい。
最も、俺が持っているアイテムボックスように時間を停めて保管するなら、
時間経過による討伐部位の損傷の心配はない。
材料が揃えば機能限定だが、アンにもアイテムボックスを用意しよう」
アンにはソロで先行して今回の依頼と並行して受注させた
魔物討伐の依頼を消化させ、俺は2人の対魔物の実力を確認していたのだ。
「あのう、シオンさん。依頼を複数受注していいのですか?」
カイが恐る恐るといった調子で訊いてきた。
昨日ボコボコにして俺に苦手意識を持ってしまったようだが、
なんとか話して情報をえようとしているようだ。
だが、カイの脚は俺に対する恐怖と緊張で震えている。
「厳密に明文化されてないだけで違反ではない。
複数受注した場合相応にリスクも増えるが、その分リターンもある。
重要なのは受注した際のリスクをきちんと管理することだ。
ランクがCになるまでは同時並行でやるのは多くて2件に絞ったほうが
いいだろう」
「運悪く依頼が被った場合はどうなるんだ?」
「その場合は自己判断で片方の依頼を達成するか、
ギルドの評価に影響するが、両方の依頼を辞退するかのどちらかだな。
どの依頼を達成したかなどはギルドが集計し、ランクが上がってくると
今回の俺の様に指名で依頼を出してくるようになる」
「通常の依頼との違いはあるのですか? 旦那様?」
カイに続いて、リュウ、アンも遠慮なく疑問を俺にぶつけてきた。
「ギルドの出す指名依頼の大半は通常の依頼よりも報酬が高額なものが多い。
依頼元が国だったり、貴族だったり、金持ちだったりする場合がほとんどだからだ」
「つまり、指名依頼は受けた方がお得?」
「それも内容によりけりだな。
報酬はたしかにいいが、実際に受けると犯罪紛いのことをさせられる場合もあるから、
きちんと依頼元の情報集めておく必要がある。
さて、そろそろ今回の目標の支 配 地なのだが、見当たらないな……」
周囲を警戒しつつ、歩みを進めてきたが、肝心の成体のホースディアが
見つからない。
「シオンさん、あれは?」
カイが見つけた小さい鹿角が生えた馬の集団を指指して訊いてくる。
「ああ、残念だが、あれは幼体だ。だが、
……ふむ、3人には丁度いい相手かもしれない。
2割残してあとは殲滅してきてくれ」
「なんで2割のこすんだ?」
「全滅させるとホースディアがここら一帯からいなくなるからだろ」
「なるほど」
「そういうことだ。幼体でもそれなりにいい値段で売れるから頼んだぞアン」
「うん、分かった」
3人は群れを【看 破】した俺の言葉に応え、群れに向かって駆け出した。
直後、リュウとカイのハモった悲鳴が辺りに響きわたった。
「「ザコは雑魚でも、レベル100の雑魚じゃねぇえかあああ!」」
小さい角を構えて2人を追う子鹿と子馬を足して2で割ったような生物に
追いかけ回されていた。
一方、アンの方はというと、
「ハッ!」
気合ととも得物である俺が作り上げたウォータージャベリンで攻撃を巧みに受け流し、
隙だらけになった1匹に強烈なカウンターの一撃を繰り出して倒していく。
しかも、なるべく傷をつけないように弱点の1つである頭部を狙っている。
レアパッシブスキル【天才】持ちなだけはある見事な攻撃でどんどんホースディアの幼体を駆逐していく。
「リュウ、このままでは獲物を独り占めされるぞ?」
「そうだな、このままだと俺たちは何の成果もなく終わってしまうな」
「何の成果もなく終わってしまうイコール俺たちの冒険者生命の終わりだったな?」
「ああ……」
「……やるぞ!」
「応よ!」
華麗に戦果をあげていくアンに刺激されてカイとリュウもようやくお互い協力する気になったようだ。
3人が倒していった幼体の回収に3人に1体ずつ犬邪精を素材の回収役に同行させているので、素材の回収に抜かりはない。
「いい加減にでてきたらどうだ? その駄々漏れの気配で隠れている思っているのか?」
3人が俺からいい感じに離れたところで俺は隠れている存在たちに声をかけた。
俺の言葉に応じてか、6人組みの軽装鎧を身に纏った冒険者風の男たちが姿を現す。
「へっへ、気づいていたのなら話しは早い、命が惜しかったら……」
下卑た笑みを浮かべて口を開いた男は最後まで言葉を口にすることなく脳天から
突如現れた漆黒の大剣で真っ二つにされていた。
まぁ、殺ったのは言うまでもなく、俺が召聘した暗黒騎士だ。
「ひぃっ」
「おい、もしかしてこいつはヤバイ奴じゃねぇのか?」
「疲れきった冒険者から横取りする簡単な仕事じゃなかったのかよ!?」
「知るか、逃げるぞ! 命あってのものだねだ!!」
「そうだ、日をあらため・・・ぐぎゃぁ」
会話内容からこいつ等は冒険者ではなく、
同業者を装った性質の悪いハイエナグループのようだ。
無論、ここで1人でも逃がすと他の冒険者が襲われてしまうので、
こいつ等にはここで人生の幕を下ろしてもらうとしよう。
こっちが1人だからばらばらに逃げるつもりのようだが、甘いな。
俺は既に3体の召喚を終え、逃げたリーダーらしき人物の脚を召聘した
石巨兵の腕に掴ませた。
召喚したのはペガサス、スレイプニル、ケルベロス。
それぞれの獲物になった似非冒険者たちは抵抗する間もなく、倒されていった。
ペガサスに捕まった男は急降下の勢いをつけ後ろ脚の蹴りを受けて、
上空に舞い上がったあと、更に蹴り上げられ、最後は自由落下で
地面に激突して絶命した。
スレイプニルの相手にされた男は強靭なスレイプニルの後ろ脚から放たれる
蹴りを喰らって、吹っ飛び、超光速移動で先回りしたスレイプニルの蹴りを
エンドレスに喰らい続けていた。
ケルベロスに捕まった男はじゃれ付かれて早々に息の根が止まってしまった。
反応がなくなった死体の首根っこを銜えてケルベロスは俺の元にきた。
「貴様、こんなことしてただで済むと思っているのか?」
身動きがとれない男は俺を睨んで低い声で脅してきた。
「その言葉は熨斗を付けて100倍にして返そう。
俺たちに略 奪をしようとしてただで済むと思っていたのか?」
「なにを言っている!?」
「ああ、双子座の仮面の隠蔽効果で俺が誰か知らないのか。
まぁ、誰であろうと俺の邪魔をするなら叩き潰すだけだが、
その前にお前の依頼主を調べさせてもらおうか」
「……」
「だんまりか。果たしてそれがいつまで保つかな? フフフ……」
俺は視線を逸らして口を閉ざした男に思わず口端を歪めて、
尋問専用のために契約している召喚獣を召喚するために召喚陣を展開した。
…。
……。
………。
「旦那様、今回の目標を見つけました」
しばらくして、アンが後ろで束ねた銀のポニーテールをなびかせて、
リュウたち2人の先頭になり、戻ってきて、俺にホースディアの成体を
見つけたと教えてくれた。
俺のスキル【索敵】にもようやく存在が確認できた。
視界ぎりぎりだが、遠目に大きな立派な鹿角を頭に生やした馬が
のんきに草を食べていた。
「そうか、3人で倒せそうか?」
「……いいえ、今のアンたちでは返り討ちにあうでしょう」
「分かった。彼我の戦力差をきちんと理解できるならば俺が倒そう」
「1人で大丈夫ですか?」
俺の言葉にカイが心配して訊いてきた。
「大丈夫だ、問題ないというと失敗フラグになるが、
俺のメイン職業は召喚師だ。ホースディアの成体と相性がいい召喚獣がいるから
負けはしないさ」
俺はそう告げて、積層型召喚陣を展開して激しい雷を身に纏った青白い巨鳥、
雷 凰を召喚して、
【雷凰(ライオウ):
炎を纏った鳥である火の鳥に代表される属性鳥の1種で、
雷属性をもつ希少な雷鳥の上位種。穏やかな性格をしているが、
巣に近寄ろうとすると認めた者以外は雷撃の洗礼を受けて黒焦げになる】
俺は3人に言い放つ。
「覚えておくといい、魔物を素材が目的ならば、
できるだけ損傷させないほうが、ギルドの買取価格と評価は上がる。
そのため、使い方次第で外傷を残さないが制御が難しい
雷撃系魔法を使えれば最もいいだろう」
雷凰の突然の出現に驚きホースディア(成体)は踵を返して
自慢の健脚で逃げようとするが、もう遅い。
俺の命を受けた雷凰が全身の雷を使い、
ホースディア(成体)の退路を巧みに断ち、
完全に雷の檻に捕らえることに成功した。
そうして、数時間後、俺たちは無事、
成体のホースディアの討伐部位である角と
依頼品の肉を冒険者ギルドに提出して報酬を分配した。
余談だが、カイとリュウの2人はメデューサ討伐で俺たちと知り合った冒険者の
アルフォンスとオーウェンとPTを組み、徐々に頭角を現していくことになるのだが、
それは先で別の話だ。
遠回りになったが、アンの冒険者ギルドへの登録を終えた
俺とアンは万屋”蛇遣い座”で店番を頼んでいた
魔導人形のリーダたちの歓待を受けてぐっすり休んだ。
俺は足りなくなりそうな商品の補充をして、
再びリーダたちに見送られてアン共にカリュクスを後にした。
御一読ありがとうございました。




