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第13話 魔獣駆逐! 水球に閉じ込めて電気を流すだけの簡単なお仕事!!

---リリィサイド---


 ヘンリーの提案で目の前の猪の魔物ボア系の上位種グランドボアの亜種、

パイアの起源種(オリジナル)を私とローラ、クオルの3人で迎え撃つことになったのですが、

私はクオルには手を出さないで見学するように厳命しました。

その理由はパイアの”討伐”よりもその肉を確保することが主目的に切り替わったからです。


「姉さま、久しぶりにあれ(・・)をやるのね?」


「ええ、いいかしらローラ?」


「はい、もちろんです。私もがんばりますよ」


ローラは笑顔で私の意図を察してくれたのが嬉しく、

私も自然に笑顔になっていたのに気づきました。


 私がこれから仕掛けるのは私がまだアルテミス神域にあるエルフの隠れ里で

家族や仲間のエルフたちと過ごし、アルテミス様への供物として狩りをしていたときにローラと一緒に数え切れないほど使い、多くの成果をあげた連携魔術(ふたりがけ)


 私の対象を水の中に閉じ込める精霊魔術【水 牢 獄(アクアプリズン)】で相手を捕縛し、

そこへローラが大出力で範囲雷撃魔術【雷 撃 雨トニトルス・プルウィア】を放ち、水の中にいる相手を感電死させる【雷 撃 海(トニトルス・マレ)】。


 今まで1度(・・)だけ破られてしまってますが、

この方法は獲物に傷をつけることなく仕留められるので、

2人で狩りをするときに重宝していました。


「私が回り込みますね姉様」


「分かったわ。牽制するからその間にお願いね。【雷 撃(トニトルス)】!」


雷 撃 海(トニトルス・マレ)】の欠点の1つが対象を2人で挟み撃ちにしないと

上手くいかないことです。どちらが回り込むかはその都度変えていますが、

今回はローラが回りこむので私が獲物であるパイアの動きを制限するため、

牽制で雷撃魔術をパイアに放ちました。


『グゥオオオオオ』


私の放った雷撃が直撃し、動きを止められ苦悶するパイアの上を影が横切ります。


「ありがとう姉様! これでっ! 準備できました!!」


風の精霊(シルフ)たちの力で空中に舞い上がったローラは足止めされた獲物(パイア)

前後左右に通電性の高い特製金属でできた避雷針とする矢を放ちました。

準備はこれで完成です。


「いきますよ! 水の精霊(ウンディーネ)よ、我が敵をその力で覆え!

水 牢 獄(アクアプリズン)】!!」


『!』


突如噴きあがった周囲を囲む水の壁に獲物(パイア)が気が付いたときには時既に遅く、

獲物(パイア)は避ける間もなく、水の壁に包まれ、水の精霊(ウンディーネ)が作り出した

半径5m程の水球の牢獄の中に捕らえられてました。


『グボ、ボォ、ボオオオオ……』


当然、水球の中は空気がないので、呼吸ができず、パイアは息苦しさで苦悶し、

口からは断続的に気泡が出ています。1番苦しい死に方が窒息らしいのですが、

禁呪で転生する魂を捕らえ、力の糧にして徒に世界の理を乱している外道たちに

かける情けはありません。もっとも、このパイアは人ではなく、獣ですが。


「これでお終いです。久しぶりだから全力でいきますよ! 

いかづちよ! 降り注げ! 【雷 撃 雨トニトルス・プルウィア】!!」


 ローラの造り出した雷雲がパイアを捕らえている水 牢 獄(アクアプリズン)の上空を覆い、

轟音とともに幾重もの眩い閃光を放ちました。

 雷の半数近くはローラの設置した避雷針に落ち、パイアに向ける形で

突き出ている突起から避雷針は電流をパイアに放ちます。


 パイアの生体反応が完全に消えたので水 牢 獄(アクアプリズン)が解け、

後には電撃によって脳と神経系を破壊された獲物(パイア)の巨体が残りました。


『あり・・がと・・う』


『あ・・と・・・た』


呪術によって捕らわれていた魂たちが解放され、消えていく間際に私たちに

感謝の言葉を送ってくれました。


 私はローラの放った雷 撃 雨トニトルス・プルウィア

雷光から眼を守るためにシオン様からもらって、ローラが雷 撃 雨トニトルス・プルウィアを放つ前に着けた遮光眼鏡(サングラス)を外し、彼等彼女等の冥福を祈りました。


 両目を開けると、私に倣って祈りを捧げていたローラとクオルが傍に来ていました。


「姉様、その眼鏡はどうされたのですか?」


予想はしていましたが、やはり、私が持っていた遮光眼鏡(サングラス)

興味をもったローラが訊いてきました。クオルも興味津々といった様子です。



「シオン様が強力な雷撃魔術を使う際に眼を守るために作ってくれたものです。

これを掛けると眩しい光を軽減して眼を開けていられるのよ。試してみる?」


別に知られて困るものでもないので教えて、渡してあげると、

ローラは恐る恐る遮光眼鏡(サングラス)を掛けました。


「リリィ姉さん。僕に解体をさせてくれませんか?」


「ええ、いいですよ。但し、私が監督しますから、指示には従ってくださいね」


「はい!」


今回見学させて戦闘に参加できなかったのを気にした様子だったクオルが言い出したので、私は条件つきで承諾しました。

 クオルは曇らせていた顔を笑顔に変えて元気よく返事をしてくれました。

容姿も初めて出会ったときの背の低い子供から大分成長し、

背丈はローラを少し超えて、シオン様が測ってくださった165cmある私に

追いつく高さまで伸びています。


 ローラは遮光眼鏡(サングラス)を気に入ったのか、

無人の方に試しに何回か雷撃を放っていました。


「ローラ、試し撃ちはその辺にして解体を手伝って。クオル、まずは血抜きから始めましょう」


「分かりました。姉さん」


「はい。リリィ姉さん」


ボ、アアアアアアアアアアアッ


2人が私の言葉に答えた直後、ソフィたちがいる方向に巨大な火柱が立ちました。

何事かと火柱の建っている方向に目を向けると、ヘンリーの姿が大きく変わって、

犬歯が伸びて牙となり、ヘンリーの顔は正しく狼そのものになり、

手足の体毛も伸びて完全に腕と脚を覆っていました。


 私は以前にも何回か目にしていた人狼族の男性の一部がもつ【狼化】でした。

狼化は身体能力と魔力循環が大幅に上昇して、簡単な傷ならすぐに治癒してしまう

反面、本人が習熟して制御できなければ、攻撃的になり、防御が疎かになる傾向が

強くなるという短所があります。


 ヘンリーの場合はまだ制御できていない段階なので、

おそらく、魔術師の”パイア”がヘンリーの理性が飛ぶレベルの”こと”をしたのでしょう。

 真っ直ぐな彼の性格をかんがみるに、パイアが使っている魂を縛って

魔力に強引に換える禁呪が原因でしょうか。


 一方、ローラは初めて【狼化】を見たのか、ヘンリーの変貌ぶりに驚いて、

クオルはヘンリーを心配して駆け出そうとしていましたので、

私はクオルを制止しました。


「やめておきなさい。私たちはこのまま、このグランド・ボアの稀少亜種の解体をしますよ」


「ヘンリー兄さんを見捨てるんですか?」


「違います。あそこにはヘンリーのことを熟知している姉妹のソフィとサラがいるから

心配はいりませんよ。貴方も彼の義兄弟を名乗るならヘンリーを信じてあげなさい。

 私たちは任された仕事がまだ残っているのですから、手伝うならばそれが終わってからです」


「……分かりました」


私が制止したことに少し反発して渋々といった様子ですが、クオルは理解を示して、

少しの間驚いて固まっていたローラとともに狩ったパイア(えもの)の血抜きを始めました。


 私たちが扱う水流を操る魔術で血を大き目の液体専用の容器に移し入れ、

シオン様がくださったアイテムボックスにしまいました。

この血液はシオン様の研究用に取って置くためのものです。


 作業の途中で再び大きな音がしたので視線を向けると、

ヘンリーが白銀に輝く体毛に炎を纏って、魔術師のパイアを

地下訓練場に置いてある修練用のサンドバッグを殴るが如く、

すごい速さで殴打していました。


 流石にシオン様の【流星抜刀】には劣りますが、

1秒間に30発に届く速さで拳がでています。

殴られたあとが大きく凹んでいるので、

パイアの殴られたところの骨は間違いなく、粉々になっていることでしょう。

視たところ、こっちのパイアに掛けられていた魂を糧にする禁呪と同じ術式が向こうのパイアの体の随所に施されていました。

 私たちはヘンリーの攻撃をそこそこ鑑賞したところで再び作業に戻りました。


 さて、血抜きが終わったので、解体を始めます。

体の構造はよく食卓に並ぶランド・ボアと同じなのですが、

大きさが2まわり位違う以外はほとんど変わらなかったので、

しばらくして解体は終わってしまいました。


 三度、大きな音がしたのはこちらの作業9割方終わったときでした。

ソフィに召喚された魔狼フェンリルにヘンリーがすごい勢いで派手に吹き飛ばされていました。


 ソフィに聞いた話では制御できていない狼化は強い衝撃を受けると大抵の場合解けるそうです。あの様子ならばヘンリーの狼化は間違いなく解けるでしょう。


 ブロック状にしたグランド・ボア希少亜種、起源種(オリジナル)のパイアの食材を全てアイテムボックスにしまった時点で、

私のアイテムボックスの7割近くが埋まってしまいましたが、

素材としてはゴーレム御者のカペラが看破(リード)で見た通り、

最高級の食材なので不満はありません。


「【水 の 聖 域アクア・サンクチュアリ!】


水の浄化結界魔術でアンデッドモンスターと瘴気の発生の予防を終え、

これでこちらの仕事は終了です。

 気がつけば、私は手に入れたこの最上級の食材をシオン様に美味しく食べていただく方法は何がいいかと考え始めていました。


「姉様、はやくソフィさん達と合流しましょう」


多くの犠牲者の魂を捕らえていた魔獣を解体して緋に染まって汚染されていた大地は

私の水 の 聖 アクア・サンクチュアリで完全に洗い流され、

元の清浄な活力溢れる土地に戻りました。


ローラに急かされて、私は少し心配そうなクオルを伴なって3人でソフィたちに合流すべく、

歩みを進めます。愛しいあの人との一刻でも早い再会を願って。











 


御一読ありがとうございました。

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