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第11話 そのころのリリィ率いる弟子たち! 模擬戦しながらの旅路!!

---ヘンリーサイド---


 兄貴とアンの2人と別れて行動してから2日目、

俺たちは兄貴と合流する港湾都市【ハルマッタン】目指して、

兄貴の造ったゴーレム馬車で修行をしつつ、移動している。


「はあっ!」


「おっと! 【返し斬り】!!」


弟分のクオルの槍の鋭い一撃を俺は愛用の[無銘の大剣]で受け流し、

相手の力と攻撃後の隙を利用して相手の急所を斬り裂いて、

動きを鈍らせる効果をもつ大剣スキル【返し斬り】でカウンターを狙うが、


「くぅッ!」


クオルは攻撃後のわずかの硬直だけで間一髪で素早く間合いを空けて避け、

すぐに馬車の後を走り続けている俺との間合いを詰めるために再び走りだす(・・・・・)

俺たちは鍛錬のため、馬車に置いて行かれないように走り続けながら

模擬戦をしている。


 この練習メニューを考えたのは兄貴で、

最初は馬車の後について走ることから始め、

余裕が出てきたころから移動のときには兄貴の召喚した

ダークナイトとホーリーナイトのペアを練習相手に

1対1やクオルと組んでの2対1、2対2の模擬戦をやり始め、

数回だが、兄貴にも模擬戦をしてもらった…1回も勝てなかった。


 俺とクオルが本気で斬りかかっても、全てを紙一重で回避された上に

ぐうの音もでないカウンターを決められて俺たちは負けてしまった。


 兄貴の話では、今の兄貴のメインクラス『セイント』は

本来、後衛魔術師系である召喚師のクラスの中でも特異なクラスで、

唯一、前衛系(・・・)のカテゴリに入っている変異職らしい。


 しかも、アテナ神域所属のセイント限定で隠し固有スキルに

第 七 感(セブンセンシズ)】という受動スキルがある。

これは1度見た攻撃は2度とくらわないという反則級(チート)スキルで、

兄貴は偶然手に入れて、イリア姉も覚えているらしい。


 人族よりも遥かに優れた筋力とスピードをもつ俺たち銀狼族のスキル攻撃を

当てたと思った絶妙のタイミングで完全に避けるから、

第 七 感(セブンセンシズ)】をもつ相手にはやりようがない

と言ったら、1度見た技が効かないなら、相手が初見の技を沢山持てばいい、

多くの技を覚えて上手く活用すればいいと姉ちゃんにも怒られた。


 かくして、俺とクオルはそれぞれ得意武器の技スキルを数多く習得するため、模擬戦を繰り返している。技スキルを習得する方法は戦闘でひらめくか、

市販されている奥義書を買って練習して習得するか、師事して得る方法がある。


 俺たちはより実戦的な模擬戦を通して覚える方法を選択している。

時々、姉ちゃんの召喚した召喚獣という強敵とも対決してはいるが、

一向にスキルが増える兆しがなかった。


 そんななかで俺たちは【ハルマッタン】の途中にある街【アリゼ】に

食料などの補給のため、立ち寄ることになった。


 アイテム輸送役を兼ねていた兄貴が不在のため、

今回の旅の資金に余裕をもつのと、奴隷商人に売れば大金で取引される

エルフのリリィ姉とローラ、銀狼族で肉親の贔屓ひいき目を

抜いても美人でスタイルのいい姉ちゃんとスタイルは姉ちゃんと比べて、

……だが、美少女の部類に入るサラを目当てに襲撃にしてくるだろう盗賊たちを

討伐してその賞金を得るため、ソフィ姉の発案で冒険者ギルドで

このあたりにいる盗賊の賞金首の討伐依頼を受けることになった。


 日程的に兄貴との合流までにまだ十分余裕があったので、

俺たちはエルフのリリィ姉とローラ、召喚師であるソフィ姉が召喚した

風の妖精、シルフたちの協力で集めた情報を集約した結果、

その日のうちに標的の盗賊たちの巣窟を割り出すのに成功した。


 おかげで 今日は久しぶりの宿屋でじっくり休んで、

明日の早朝に出発して討伐することになって、俺はそれまでの疲れから、

割り当てられた部屋に着くなり、鎧などの防具を外して、

ベッドに倒れこんだら意識が途切れた。



「もうすぐ、目的地のイストモス地峡のクロミュオーンに到達しますから、

襲撃に備えておきましょう」


ゴーレム馬車に揺られつつ、この先の道幅が狭く、

絶好の襲撃地点であるというリリィ姉の説明にみんな気を引き締めて、

しばらくすると、


〔前方1時ノ方角、距離900ノ地点ニ大型ノ魔物1ト人間1ヲ確認シマシタ。

人間ヨリ攻撃魔法ノ魔力収束ヲ確認。

コチラニ敵対意思ヲモッテイルヨウデス。警戒シテクダサイ〕


兄貴が別行動をする前に少し改良して片言ながら話せるようになった

ゴーレム馬車の御者ゴーレム、カペラの【探知サーチ】に目標が

掛かったようだ。どうやら向こうもやる気満々のようで、

先制して魔法を叩き込むつもりらしい。

巨大な火球が馬車を飲み込もうと迫ってきた。


「【ウンディーネ】、お願い!」


リリィ姉のよびだした水の精霊【ウンディーネ】の展開した水壁が飛来した火球を

完全にさえぎり、こちらに被害は全くなかった。


 しかも、リリィ姉は火球が水壁にぶつかった際に発生する大量の水蒸気が

敵も飲み込み、水蒸気の煙で馬車の姿を隠すことを狙っていたようだ。


 リリィ姉はウンディーネに頼んで水蒸気を操作して、

馬車の周囲を完全に覆い、水の光を反射する性質も利用して、

こちらの位置を隠蔽することに成功し、どんどん見当違いのところに

むこうが放った火球が爆音とともに着弾して地面を削っていく。


「ええい、小賢しい真似を! 隠れてないで、出といで!!」


業を煮やしたしわがれた怒声が聞こえてきた。

どうやら相手はばあさんのようだ。


「どうやら相手は『クロミュオーンの猪』と呼ばれている女盗賊のパイアと

いのししのパイアのようね。

あの1人と1匹の所為で、この先にあったいくつかの農村が壊滅してしまった

らしいわ。 しかも、住人たちは赤ん坊も含めてあの猪が全て貪り食べたそうよ」


手配書に目を通してサラがあの老女盗賊の情報を教えてくれた。

人食い猪か……手ごわそうだな。


「カペラ、あの魔物の種族はわかった?」


姉ちゃんが兄貴譲りの【看破(リード)】をもつカペラに尋ねていた。


〔ハイ、種族ハ「ランドボア」ノ上位種族『グランドボア』デス。

ソノ大キナ巨体ト強力ナ突進力ガ主ナ武器デス。

タダ、【起源種(オリジナル)】ノ表記ガ付イテオリマス。

何カ特殊能力ヲ保持シテイルト思ワレマスノデ注意シテクダサイ〕


「分かったわ。ありがとう。それではみんな用意はいいですか?」


「ああ、俺はいつでもいいぜ! リリィ姉!!」


「僕も準備は万端です」


「あたしも大丈夫です。リリィ姉様」


「いつでもいけますよ。リリィ姉さん」


「はい、姉さま」


リリィ姉の確認の言葉にみんなが是を返したのを確認し、


「これより敵の殲滅に入ります。

カペラは馬車を『要塞(フォートレス)モード』にして、

この場で待機。

他のみんなは手筈てはず通りに動いてください」


リリィ姉は兄貴からこの馬車のサブマスターとして登録されているので、

兄貴がいない今はこのパーティの実質的なリーダーとして動いている。


〔了解シマシタ〕


「それでは戦闘開始(オープンコンバット)!!」


リリィ姉の合図に反応し、俺たちは馬車から外にでた。


「カペラ、グランドボアの肉ってランドボアの肉より美味いのか?」


俺は不意に思いついた疑問を看破(リード)でグランドボアのステータスを

読み取ったカペラに訊いてみた。


〔ハイ、グランドボアノ肉ハランドボアノ肉ヨリ魔力ヲ多ク含ンデイルノデ、

ランドボアノ肉トハ比ベ物ニナラナイ位ノ美味ダソウデス」


「そうか、ありがとう」


〔イエ、ゴ武運ヲ〕


俺は答えてくれたカペラに礼を告げて快適な馬車の中から、

若干の潮の香りが漂う外にでた。相変わらず、あの婆さんは

見当違いの方向に火炎魔術を放って魔力を浪費しているようだ。


 俺が同じことを兄貴が見ている前でやろうものなら、

俺は兄貴にいつもの修行の追加で地獄の超 特 別 基 礎スーパースペシャルベーシックコースを課せられるだろうことが想像に難くなかった。

そう考えただけで冷たい汗が背中に流れていたのを俺は感じた。


「ヘンリー、シルフの【風の加護】を付与するので、

3カウント後に作戦通りに突撃しなさい」


「応! 任せてくれ!!」


リリィ姉がそういうと精霊魔法で召喚しされたシルフが

【風の加護】を俺に付与してくれた。

おかげでいつもより体が軽く感じられる。


「3、2、1!」


俺は前傾姿勢で身構え、カウントが終了するとともに地面を蹴り、

愛用の[無銘の大剣]を鞘から抜いて片手に携えて、全力で駆け出した。


 俺の踏み込みで発生した振動の影響で周囲に充満していた水蒸気の一部が

霧散してしまったが、鉄壁の防御力をもつ『要塞(フォートレス)モード』になった馬車には影響はほとんどないだろう。


 いろいろ考える内に俺は視界に1人と1匹を捉えた。

俺は駆ける勢いを味方につけて、大剣の技スキルを発動した。


「【強撃】!」


標的はさっきから火炎魔術を使うことに集中して、

俺に全然気づいていない隙だらけの婆さんだ。


「ひぃいぃいいい!」


婆さんは自身に迫る危機にようやく気づくも、

情けない悲鳴をあげるしかできなかった。


 まずは1人……と思ったが不意に巨体がその身に見合わぬ速さで

婆さんと俺の間に立ちはだかり、婆さんをかばって俺の攻撃を

その身にモロにくらった。


 その巨体の主、グランドボアは俺の【強撃】を受けて多少の手傷を

負ったようで俺を強敵と認識したのか鼻息も荒く、俺を睨んできた。


 奇襲による早期殲滅には失敗したが、まだ戦闘は始まったばかりだ。

俺は気を取り直して、目の前の敵に集中することにした。


御一読ありがとうございました。

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