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第8話 アンの(自称)婚約者との決闘! 井の中の蛙は大海で散る!

修正前のものにルビ振りと追記、改行修正、今回登場する人物1人の名称変更を

しました。

「ぐっはああああああああああああ……」


豪奢なマントを身につけた全身鎧フルプレートメイルを装備して

俺に決闘を申し込んで対峙していた自称アンドロメダの婚約者の男が

右側だけ伸ばした前髪をなびかせて、

体をくの字に曲げて弾丸の様な速度で口から血反吐を吐きながら、

後方に吹っ飛んで視界から消えた。


 そうなったのは勿論、俺がやった訳だが、俺が相手にやったのは愛刀の一振り、

[天羽々斬(あまのはばきり)]を使って刀の技のアクティブスキル【柄打(つかう)ち】で当身を軽くしただけだが、

相手とのレベル差といろいろあって、御覧の有様になった訳である。


 何故こういう状況になったかというと、俺たちがシヴァの冷気で凍った海を

ほぼ融かし終えたときに重装鎧に身を包んだ軍隊が無駄に金がかかっていそうな鎧と

マントを着た壮年の男、その男を少し若くした様なエティオピアの王宮近衛騎士(ロイヤルガード)

装備している全身鎧を身につけた男に率いられてやってきた。


 その歩兵たちの鎧にはよく見るとエティオピア国軍の紋章が刻まれていた。


「貴様ら大義である。余は第153代エティオピア国王、ケフェウス。

余の国を荒らしまわった怪獣を倒されたという報を聞いて、

余が態々(わざわざ)出向いてやったのだ。

さあ、貢物みつぎものとして、戦利品の怪獣の亡骸なきがらを献上するがよい」


と俺たちを威圧する気全開で兵たちを見せ付けるかのように

背後に控えさせた壮年の男、ケフェウス王は開口一番、

頭のつくりを疑うことを言い放った。

更に、その王に付き従う騎士は鬱陶しそうに伸びた右の前髪を

気障きざったらしくかきあげて、


「そこの美女の横にいるのは僕の婚約者(フィアンセ)のアンドロメダだね。

迎えにきたよ。さあ、おいで!」


とポセイドン神域では絡んでくる人間がアテナ神域よりも少ないため

双子座の仮面(ジェミナス マスク)を着けていなかったのがあだとなって、


双子の妹のイリアに似た顔をさらしている俺を女性と勘違いした上、

なぜかアンが抱きついてくると頭が湧いた妄想をしているのか、

全身鎧を着込んだ痛い男は両手を大きく広げて大げさに身構えていた。


「……」


一方のアンは俺にしがみついて、全く離れようとはしなかった。


 当然だ。碌に食事もさせてもらえないでほぼ強引に生贄にされて、

まっぱで大岩に鎖で繋がれたアンの立場でこのタイミングに「迎えにきた」

と言われて応じるまともな人間はいないだろう。


 アンにしてみれば、ようやく解放されたのにまた捕まるのかといった心境だろうな。


「むぅ、そう見せつけられると、流石の僕でも妬けてしまうね。

そこの君、僕のアンドロメダから離れたまえ」


「最後の確認になるが、アン、本当にいいんだな?」


AHOがなんか言っているが無視して、俺はアンに顔を向けて、

国に戻れなくなってもいいのかと最後の確認をした。


「ん……」


「なっ!……」


アンはそう短くうなずくと、俺と身長差があるため、背伸びをし、

更に俺の首の後ろに腕を回して、俺にキスをして、


「アンは旦那様と行く。アゲノルとお父様の所には帰らない」


「という訳でアンは俺たちとこれから行動を共にする。あと俺は男だ」


アンの宣言に続いて、俺を女だと勘違いしている連中の認識を正すため、

俺は口を開いた。


「なん…だって…馬鹿なそんなに美しい顔で男なはず……」


「マジかよ……」


「そんな馬鹿な……」


「ほほう、余に逆らうつもりかアン? それと卑しい冒険者風情どもよ」


激しいダメージを受けてケフェウス王とアゲノルの背後にいる兵たちの

何人かとアゲノルがorzの姿勢をとってショックを受けている中、

ケフェウス王は嘲るように俺たちを一瞥して挑発した。


「なんだと、このっ!」


「やめなさい! ヘンリー!」


「そうだよ、ヘンリー兄」


血の気が多く、誇り高い銀狼族のヘンリーが挑発したケフェウス王に

襲い掛かろうとしているのを双子の妹のサラとポセイドンの落とし子で

俺たちの義弟のクリュサオルことクオルの2人に押さえられていた。


「陛下、ここは僕にお任せ下さい。愛しのアンドロメダをあの男から騎士の誉れ高き

決 闘(デュエル)”にて勝ち取って御覧にいれます」


「ほほう、アゲノルよ、わが国で余に次ぐ実力のお主がでるなら相手が不憫だが、

仕方あるまい。ゆけ」


「はっ!」


勝手に話を進めている2人の命令に従った兵たちは流れるように

ケフェウス王たちの背後から左右に分かれて俺たちを取り囲むように展開した。

 ケフェウス王とアゲノルのすぐあとについてきていた最初の30人の後に

到着した兵たちを合せた総勢、およそ100人に俺たちは包囲された。


 一見、危険な状況ではあるが、愚王とその従者が勝手に盛り上がっている間に

俺は【看破(リード)】でケフェウス王と兵たちのステータスを確認したが、

いつもの穏やかな笑みを浮かべているエルフのリリィと俺の仲間達の相手をするには練度が圧倒的に足りてなく、奥の手もなにも持っていないのが確認できたので、

心配は無用だった。


[シオン様、あちらの提案した決闘デュエルをお受けになられるのですか?]


リリィがソフィが再び召喚したシルフを介して、俺に問いかけてくる。


[ああ、負けるつもりは全くないが、向こうの条件を飲んで完膚なきまで圧勝すれば

アンを連れて行くことに反論はできないだろう?]


[そうですね。ではあたしとリリィ姉様はデュ エルのあとの安全を確保するのと、

無粋な真似をしよとする輩を折檻しますね]


[ああ、その必要は多分ないだろうけれど、念のため頼む]


[かしこまりました]


俺は恋人でもあるリリィとソフィ、従者2人に下手な横槍が入らないようにしてもらい、

ケフェウス王とアゲノルが作ったシナリオにえて従った。



デュ エル】はお互いの命を懸けて文字通り死力を尽くして殺しあう(・・・・)一騎打ちだ。

 この世界がまだZ F Oゾディアックフロンティアオンラインというゲームと俺たちに認識されていたときにはプレイヤー間で私闘や模擬戦をするためによく使われていたシステムで、

立会い人として、申し込む側の責任で正義を司る女神【アストライア】を召喚し、

アストライアの開始宣言をもって開始される。


 ZFOプレイヤーの場合はギルドクエストかストーリークエストのどちらかで

アストライア関連のイベントをこなすことになって、アストライアと知り合い、

デュ エル】を行うための限定召喚契約を召喚士以外(・・・・・)なら結ぶことになっていた。


【アストライア:正義と争いごとの調停を司る女神で、正義をはかる天秤でもある剣

『リブラスブレード』を常に手に持っている長い赤髪をもつ美女の姿をしている。

争いごとを厭う穏やかで優しい性格ではあるが、不義を働くものには

一切の容赦がない。【聖なる断罪の炎】であらゆる罪を罰し、浄化していく】


 決 デュエルの終了条件は降参か片方の戦死、戦闘不能を審判役のアストライア

が確認した時点で確定する。

 妨害や卑怯な手段はアストライアが防ぎ、それら仕掛けた人物は皆等しく女神に

罰せられ、彼女の【聖なる断罪の炎】によって処断される。

 そして、如何なる者の介入も2人の決闘者の闘いが終わるまで認められない。


『契約により、決 デュエルの立会、審判役として召喚に馳せ参じました』


穏やかな声音の女性の声が辺りに響き渡り、天 秤 剣(リブラスブレード)を腰に下げ、

成熟した女性の体を鎧に包んだ女神が赤く長い髪をなびかせて、

簡易魔法陣の上に出現した。


 ケフェウス王が部下に魔導具を使わせて召喚させたようだが、

その大変見覚えのある(・・・・・・)魔導具を見て、

やはり、ポセイドン神域にも召喚士は全くいないのかと俺は心のなかで落胆した。


 俺はアストライアと契約済みかつ、育成済みで無詠唱召喚、遠距離召喚もできる。

なにより、ケフェウス王の部下が使ったアイテムは以前、俺がカリュクスに流れ着いた直後に作ったものだ。魔術方程式(マギフォーミュラ)魔 術 回 路(マジックサーキット)魔術言語(マギスクリプト)いづれも俺が考え、

使っている形式のものだ。


 簡易召喚アイテムは消耗品であるが、今はもう生産していない。

生活のためとはいえ、召喚士でなくとも召喚士の契約した召喚獣を他の職でも

召喚できる召喚アイテムは召喚士が不遇のままの一因ともいえる存在だからだ。


 俺が作るのを辞めたとはいえ、いくつかは既に俺の作ったものの模倣品が

市場に出ているのを確認している。売り上げの方は俺が販売していたものよりも

召喚獣のランクが下がってぼちぼちだった。



 俺は練者の腕輪から、愛刀の1つ、[天羽々斬(あまのはばきり)]を取り出した。

 黄金の剣(ア リ ス)を出すのも考えたが、アリスに人の血を覚えさせるのはまだ早いと

感じたので、今回は使わない。

怪獣のケートスと違って人間のアゲノル相手にはオーバーキルすぎるというのもである。


 対するアゲノルの方も愛剣をさやから抜いてやるき満々のようだ。


『2人とも、デュ エルの準備はよろしいですか?』


アストライアの問いかけに俺とアゲノルが頷くのを確認した立会うために

召喚された赤い髪の女神は俺とアゲノルと等距離の中間位置に舞い降りて、

自身の象徴である天秤剣(リブラスブレード)を天高く振り上げ、


『我が名、アストライアの名の下にアゲノルとシオンの

デュ エルの開始を宣言する”!!』


高らかな宣言と共に思いっきり地面に振り下ろした。


「さあ、泣いて地にひれ伏して、命乞いをして、

降参をするなら今のう「お前はもうしゃべるな!」」


開始早々に剣先を俺に向けて無意味な能書きを垂れ始めてすきだらけなバカに

ケートス戦で消化不良の欲求不満が溜まった俺の堪忍袋は完全に限界を迎えた。


 彼我ひが距離は俺の歩幅目測でおよそ5歩。

それを侍系で覚えるパッシブ系スキル【俊足しゅんそく】で一息で詰め、

アゲノルのがら空きの鳩尾に【柄打ち】を撃ち込んだ。

 軽く放ったつもりが正中線の真芯ましんを綺麗にとらえた会心の一撃になったようだ。


「ぐっはああああああああああああ……」


アゲノルは口から盛大に血反吐を吐きながら物凄い勢いで吹っ飛んでいく。

だが、俺はこれで終わりにするつもりはない。


 ここで使えるのならばペガサスを憑依(ポゼッション)して、

飛んで追いつき、【彗星刀】で止めを刺したいところだが、

決闘(デュ エル)のシステム上、召喚士の一部スキルが封じられてしまっているので、

召喚職巡りの途中で覚えた転移魔術を使って、吹き飛ぶアゲノルの吹き飛ぶ先に

先回りした。


 再び【柄打ち】を撃ち込んで、今度はアゲノルの動きを止め、

俺はサムライで習得できるアクティブスキル【居合い】を放ち、

アゲノルが剣を握っている手の手首と腕を切断して、

俺は最初にアゲノルの攻撃手段を封じた。


 更に返す刀で俺は連撃を次々に繰り出した。

アゲノルは気絶しているのか、全く反応がなく、俺にされるがままだ。


 俺がアゲノルの両腕、両足を綺麗きれいに切断して、アゲノルをダルマにしたところで

ようやく、アストライアが俺の勝利を宣言した。


 リラックスして観戦していたリリィたちは俺の勝利に歓声を挙げてくれている。

その一方で、アゲノルを応援していたケフェウス王とその兵たちからは

一切の音が聞こえず、まるでお通夜の様な陰鬱いんうつな雰囲気だ。


 さて、俺がエティオピアで聴いた情報によれば、ここのままで終わるはずがない。


 俺は[天羽々斬]の刀身に付いたアゲノルの血を一振りして飛ばした後、

取り出した懐紙で拭い取って、鞘におさめ、次の戦いに油断なく備えた。


御一読ありがとうございました。


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