第7話 現状復帰! 氷を溶かして火の魔術の特訓!
俺たちはエティオピア王国を騒がせていた怪獣ケートスを倒すことに成功し、
生贄として鎖に繋がれていたハーフダークエルフのアンドロメダ王女を
助け出したのだが、倒したケートスの死骸の片付けと倒すために作った
”足場”の後始末をしなければならなかったのはいうまでもないだろう。
ゲームのときのZ F Oであれば死骸の片付けなどを
する手間なくアイテムと魔石を手に入れていたときのことを俺は思い返していた。
俺が召還したシヴァが張り切って海を凍らせてくれたおかげで、
かなり広範囲の海が凍結している。しかも、生半可な炎ではなかなか解けない氷なので、食事休憩後に魔術が使えるメンバーの火属性魔術の習熟の糧に
することにした。
……俺が契約している召還獣のなかにはこの凍土も簡単に元の海に戻せる力を
もつものも当然いるのだが、戦力アップのためにアイテムボックスに
まだ大量にあるMP回復アイテムで回復しながら皆に頑張ってもらうことにした。
もちろん、俺も中位の火精霊のサラマンダーを複数召還して現状復帰作業を行う。
【サラマンダー:中位の火精霊でその姿は炎を纏った蜥蜴。
通常は蜥蜴の姿をしているが、人間の体に変わることも可能で人語を理解し、
喋る知性を持っている。
基本的に召還者に忠実だが、見た目で判断してその逆鱗に触れて焼き殺される
召還者が少なくない】
閑話休題、俺たちはエティオピアで世話になった宿屋「ニョルズル」の女将特製弁当を堪能している。パーティーサイズのランチボックス3つににフライもの各種とサラダ、サンドイッチが丁寧に詰め込まれていた。
俺のもつ”練者の腕輪”のアイテムボックスは収納したアイテムの時間を
止めて保存できる上、質量を気にせず収納できる。某青い猫型ロボの腹に付いているポケットと同じ様な機能だ。
腕輪からは腕輪に登録されている本人しか使えないが、機能拡張で
”他の出口”を作り出して荷物を共有することも可能だ。
救出したアンドロメダ王女は今、俺の横に座って食事をしている。
今後の身の振り方に関して、みんなを交えて話合ったのだが、予想通りというか、
結局、俺の嫁になるということで落ち着いた。
冒険者として、自活できるまで面倒を見て、そのうち自分でいい相手を見つけて、
幸せなってくれればいいと俺は考えていたのだが、なぜか懐かれてしまったうえに、
不可抗力ながら、裸を見られたから責任を取れと言われてしまうと余程の男側に問題がない限り、男に拒否権がないのはこの世界での常識らしい。
幸か不幸か貴族でも王族でもない俺には嫁たちを養う地盤ができているので問題ないらしい。
しかも、リリィたち女性陣全員が俺側ではなく、
アンドロメダ側についたので、俺に否やはなかった。
当のアンドロメダ本人とリリィたちとの関係は良好で、
特にエルフとダークエルフ(アンドロメダはハーフだが)ということで
リリィとローラ姉妹と仲が悪いわけではなかった。
この世界のエルフとダークエルフの関係は険悪なものではなく、
信仰する神の違いが関係していて、エルフの多くが月女神アルテミスを信仰しているのに対して、ダークエルフの多くが太陽神アポロンを信仰している。
エルフでアポロン信者、ダークエルフでアルテミス信者も少数ながらいるらしい。
リリィに訊いたが、互いに信仰している神が兄妹ということもあって、実のところ、
2種族間の仲はかなり良好らしい。
その一方で、ドワーフとの仲も一部とは険悪ながら、ほかの一部とは親密と結構複雑らしい。
そういう経緯もあって、アンドロメダはうちのエルフ姉妹との関係は良好で、
名前を愛称のアンで呼ぶことが決まった。
服も緊急用の毛布から、丁度いいものがなかったので、
アイテムボックスの中に死蔵されてなぜか入っていた花柄で朱地の着物を着せている。小柄で結構似合っているが、胸と尻の発育がいいので、帯で胸が強調されているのがなんともいえない。
無論、着付けの仕方を俺は知らない。リリィがカリュクス市長のテイラーの
奥さん、陽子さんから教えてもらっていたのでアンに教えるのも併せてお願いした。
あと余談だが、リリィとソフィの女性用和服も俺のアイテムボックスのなかに入っているし、テイラーたちカリュクスの衣装職人達が作り出した各種水着も
モニターとして試作品を渡されている。
サイズは特殊効果で自動的に着用者に合わせるという魔術的な技術を使っているらしい。
「はい、旦那様」
「ああ、ありがとう」
話が逸れたが、アンは俺のことを旦那様と言い、さっきから俺の口元にサンドイッチなど弁当に入っていた食べ物を差し出してくれている。
そのまま受け取って食べるのではなく、親に餌を与えられる雛鳥よろしく、
差し出された料理を口にする。
今回はリリィたちの差し金でアンに譲っているようだが、
今回の旅行での食事のときはリリィたちのローテーションでこの小恥ずかしいことをしている。
こちらの世界で改めてこの状況にされると、正直、対処に困る。
ゲーム時代のZFOでも、関係に溝ができる前、サンク王国を出る前は
イリアによくされていたのだが、断ったときに見せる彼女の表情から
強い罪悪感に苛まれるので、爆ぜろと言われようが、俺は受け入れざるを得ないのだ。
少し離れたところでヘンリーとクオル、リリィたちから生暖かい視線を送られているが、今は気にしないことにする。俺はお返しにアンにも何度か料理を取って食べさせてあげた。
『我が主よ。本当にいいのか?』
「ああ、問題ないから遠慮なく吸い上げてくれ」
『了解した』
俺はみなと食事を堪能してあと、知性に目覚めて少女の声で語りかけてくるこの黄金の剣に凍り付いて起立しているケートスの下半身を魔力に変換させて、喰わせることにした。
俺は黄金の剣をケートスの下半身目掛けて全力でスキル【投擲】を使用する。小気味いい音を立てて黄金の刀身が凍り付いた巨体に深く突き刺さった。
『構造解析完了。魔力変換開始……完了』
黄金の剣が突き刺さっていた凍り付いた巨体は淡い光に包まれて数瞬後には
光とともに剣の刀身に吸い込まれて消えてしまった。
巨大物を消し去った剣は俺の手元に飛んで戻ってきた。
『我が主よ。馳走であった。我は一足先にしばしの休息にはいらせてもらう』
そう告げると黄金の剣から反応がなくなった。
この黄金の剣だが、最初に声を聞いたときは声というか音が安定していなかったのか、男にも女にも聞こえていたいたが、俺の魔力を少し与えると安定し、
実体化もできるようになった。
ちなみに、実体化した姿は白いワンピースを着たロングヘアーの灼眼の金髪の美幼女だった。orz
メデューサから生まれたのはペガサス、クオル、黄金の剣は3人兄弟妹なのが
分かったのだが、ペガサスは既に主神と俺に仕え、クオルはアテナ神域の冒険者、
黄金の剣は原因不明のシステムロックが掛かって、俺しか装備できなくなっていた。という、ことごとくが父親であるポセイドン傘下から外れていた。
俺は人語を理解する知性があるのに黄金の剣といい続けるのに違和感があったので、安直だが彼女にはアリスという名を付けた。
読めなかったので練者の腕輪の機能で解読したが、黄金の刀身には稲妻と
ギリシャ語で書かれているらしいが、実体化したときのイメージとどうしても結び付け辛かった。
本人は逆に俺に名づけられたアリスの名前を気に入ってくれていたので問題はないだろう。
ケートスの半身を吸収させた後、改めて【看破】で調べたが、
アリスの能力には使い込む毎に斬れ味が増す【自己鍛錬】と種族に神をもつ存在のいかなる防御をも無視する【神滅殺】、
知性を持つ剣の効果を内包する【剣精剣】に加え、
様々な近接武器に変化できる【武器変化】があった。
一見するとデメリットがないように思えたが、【武器変化】は使用するごとに
かなりの魔力を必要とするのと、変化は1日3回の縛りがあり、アリスのレベルがあがれば回数が増えるようだ。
俺はケートスの鯨部分の下半身はアリスに与え、上半身は武器の素材に加工できる牙や爪があったので、アテナ神域に帰ってから加工することにして、
アイテムボックスにしまって、現状復帰に奮闘しているヘンリーたちに加勢するため、サラマンダーたちを召還した。
『『『『『汚物は消毒だあああああああああ!!』』』』』
俺の召還したサラマンダー5体が大規模な火炎放射で解けやすいように氷を割っていく。
彼等の頭部には炎でできたモヒカンがあって、なぜかサングラスをしているが、
ツッコむべきではないと頭の片隅で本能が謎の叫びを上げていた。
「マスター、サラマンダーたちがかけている黒い眼鏡って意味があるんですか?」
俺の傍で同じくサラマンダーを召還して氷を割らせているソフィが小首を傾げて尋ねてきた。
そういえば、こっちの世界にはまだサングラスはなかったな。
「あれはサングラスといって、日差しや強い光で眼を焼かれるのを防ぐために着用する保護眼鏡だ。
精霊であるサラマンダーに必要かは不明だが、俺たちは必要に応じて身に着けたほうがいい。いづれ、カリュクスで出回るだろう」
俺の言葉に納得したのか、ソフィは召還した3体のサラマンダーを引き連れて、
別の場所に移動していった。
「うおおおおおおおおお、バーニングナックル!」
ヘンリーが自身の拳に炎を纏わせて地面を殴りつけていた。魔術があまり得意でないヘンリーらしい攻撃だが……
「ヘンリー、ただ炎を纏わせるのではなく、拳が当たる瞬間に炎を出すころはできるか?」
「いや、……そうか! やってみるぜ兄貴」
「それから、”こういう火走り”も覚えれば攻撃の選択肢が増えるぞ」
俺はヘンリーに地面を走る炎の魔術【火炎波】を実演した。俺の放った9本の火柱が各々別方向に走り、凍土を割っていく。
「……すげえぇ」
「魔術に大切なのは思い描くこと、イメージだ。今のお前ならやれるはずだ。頑張れよ」
「ああ、わかったぜ! 兄貴!!」
俺の激励を受け、ヘンリーは【火炎波】の練習のため、まだ誰も手をつけていない場所に向かっていった。
そして、俺はリリィたちが担当している区域に向かった。
リリィとローラ、エルフたちは水と風の精霊魔術が得意で、それらの反属性である火と土の精霊魔術は
苦手とする者が多いのだが、この2人は数少ない例外であるようだ。
俺の予想を超えて、俺の到着と同時に作業が終わってしまった。
「あ、シオン兄様」
「お疲れ様ローラ、リリィ。2人とも流石だな」
「お疲れ様です。シオン様。いいえ、私などまだまだですよ」
2人は俺の姿を目にすると笑顔を向けてくれた。
「シオン様、この場の現状復帰が終わりましたら、どうされますか?」
「ううむ……アンの冒険者登録に行くか。ポセイドン神域でするのは
……流石に辞めておいたほうがいいよな」
「そうですね。既にアンさんはポセイドンの加護を失っておりますので、
最寄の冒険者ギルドで登録するのはあまり得策ではありませんよね」
「となると、一旦、俺がアンを連れてアテナ神域に戻るか。ついでに店の様子も見てくるとしよう」
「わかりました。その間、私たちは次の街【アリゼ】を目指して移動しますね。シオン様、アンとはそこで合流するのはどうでしょうか?」
「ああ、そうしよう。なるべく早く戻ってくるように……したいのだが、その前に厄介なのがきたな」
次の行動の打ち合わせをリリィ、ローラとしていると、
30人の兵士を連れて鎧を身に着けた貴族と思われる馬に乗った男を引き連れて、
仰々しい鎧に身を包んで豪奢に飾った馬に乗った俺がエティオピアで最も会いたくなかった男がやってきた。
御一読ありがとうございました。




