第6話 PT戦決着! 眠っていたちから!!
「前衛は壁役にヘンリー、攻撃役にクオル。
中衛に攻撃役リリィ、援護役ソフィ。
後衛に援護役にローラ、回復役サラ。
俺は管制と遊撃にまわる。」
俺は仲間たちに手早く役割と指示を飛ばした。
「ヘンリーは機会があれば、攻撃を受け流して反撃する【返し斬り】で反撃。
攻撃が届かないなら、挑発して、ケートスの攻撃を集めろ。
クオルはヘンリーの回復と補助。攻撃が届くなら攻めろ。
ソフィとローラは風の精霊魔術で攻撃。
ローラとサラは弓はまだ使うな。矢は粘膜で逸らされて効果がない。
ヘンリー、絶対に最後尾にいるアンドロメダに攻撃を通すなよ!」
「応!」
「了解。シオン兄さん」
「お任せください」
「了解です」
「はい」
「わかりました」
ヘンリー、クオル、リリィ、ソフィ、ローラ、サラが応え、配置に着いた。
ヘンリーは大剣が海上にいるケートスには届かないので得意の火炎魔術を飛ばし、ケートスの敵意を一身に集めている。
遠距離攻撃手段がまだないクオルは俺の指示でヘンリーのMP回復と補助に専念。
金の髪と緑の戦闘衣装に豊かな胸と身を包んだエルフのリリィとローラの姉妹は
風の精霊魔法【風刃】でケートスの標的にならないように胴体を攻撃し、
銀の髪と狼の耳と尾をもつ俺譲りのローブに身を包んだ召還師のソフィは召喚した
フレスヴェルグに空から、風属性の攻撃【ウィンドフェザー】で風の羽の弾幕を展開させていた。
ソフィと同じ特徴をもつ妹のサラは適宜、前衛の双子の兄のヘンリーに
ハイポーションを投与していた。
あれから、ケートスは海上からなかなか動いてこない。
怪訝に思い、目を凝らすとケートスの口内に水流が徐々に集まって圧縮されているのが見えた。
「ヘンリー、水流攻撃がくるぞ! 警戒しろ!!」
「了解だ。兄貴」
『GYAOOOOOOOOOOOOOMMMMM』
ケートスの雄たけびの直後、強烈な水圧の放水がヘンリー目掛けて放たれる。
「ハズレだぜ!」
ヘンリーは背後に誰もいない位置に移動し、ケートスの水流攻撃を回避した。
これまでの流れを鑑みるに、リリィたちの風魔法の攻撃では微々たるダメージしか
ケートスには与えられていない。
大ダメージを与えられるクオルの近接攻撃が距離で封じられているから、
このままではいづれ攻撃役のMP切れで押し負けるだろう。
だが、俺は焦らずに左掌に通常の召喚陣を作成し、右掌に召喚スキル
【セフィロトの召喚陣】を作成。
そして、左手を手前に重ねて二つの召喚陣を合成、展開して、
通常召喚陣だけでは召喚できない存在を召喚する。
俺はこの戦いの流れを変える幻獣の召還に成功した。
彼女の登場に辺りに、年中暖かいエティオピアでは決して見ることができない。
目視できるはずのない大きな雪の結晶が数え切れないほど辺り一面に舞い落ち、
ダイヤモンドダストが吹雪いた。
そして、俺の目の前にダイヤモンドダストの吹雪が一陣の旋風で集まり、
青白いドレスを身に纏った絶せの美女の姿をかたどった。
『久しいのう、我が君。妾を呼んでくれるとは嬉しいぞ」
「ああ、随分待たせて申し訳なかったシヴァ。早速だが、
目の前の海を足場にしたい。お願いできるかな?」
『その程度造作もない。どれ、ついでにあの犬もどきの厄介そうな表面も
戯れついでに凍てつかせよう』
「ありがとう。折角だから全力でお願いする」
俺の言葉にシヴァの眉がピクリと僅かに動いた。
『よいのか? 我が君の魔力を相応に消費するぞ?』
「ああ、出し惜しみはなしだ。その力を遺憾なく発揮してくれ」
『フッフッフッフッ、ハッハッハッハッハ、これだから、
いくら待たされても、我が君とともにあると楽しい。よかろう、承った』
そう告げるとシヴァはダイヤモンドダストの吹雪になって、
ヘンリーたちのいる前衛へ移動し、再び威厳ある女帝の姿に変わった。
「クオル、今からシヴァが”足場”を作ってケートスの体の表面の粘膜を凍結してくれる。足場が出来次第、攻勢に移れ!」
「わかったよ。シオン兄さん」
『うむ、よい返事だ。然らば、妾の力を見せよう!
舞え! 【極小細雪氷晶】!!』
シヴァの力で、強烈な冷気をともなった吹雪が日光を反射しながら辺りを覆い、
海が瞬く間に凍結し、ヘンリーを狙って攻撃を繰り返していたケートスの体が
その下の海面諸共に凍結させた。
【シヴァ:氷結の女帝の異名をもつ上位の氷雪精霊。彼女の前ではいかなる熱も
その動きを緩め、やがて完全に停止するだろう。分を弁えぬ輩には厳格な態度をとるが、その信を得た者に助力を惜しまない人情的な面がある】
「クオル行け! ローラとサラは弓による援護射撃を開始!
ヘンリーもケートスの動きが止まっている間は攻撃に加われ!!」
「了解だ! このチャンスを待っていたぜ、兄貴!」
壁役のヘンリーも攻撃してくるケートスの動きを封じたので、
攻勢に転じさせたら、それまでの鬱憤を晴らすが如くヘンリーは怒涛の攻撃を
繰り出して、凍りついたケートスに斬撃を浴びせていく。
それまで明確なダメージを与えられなかったのが嘘の様に、
ケートスの凍りついた巨体の端から、氷が砕け散る破砕音が辺りに鳴り響き、
凍りついた海の上に血溜まりができるも、すぐに凍結してしまった。
シヴァはその様子に満足すると帰還を申請してきたので、送還した。
普通はこのまま戦いに参加させるべきではあるが、
それをやるのは彼女に対して悪手だ。機嫌を損ねると次回呼んでも快く力を貸してくれないだろう。
ケートスの凍った巨体にはローラとサラが放った矢も既に数十本が
突き刺さり、ソフィはフレスヴェルグに再び【ウィンドフェザー】の弾幕を
張らせ、怒涛の勢いで、ケートスに攻撃を仕掛け、
リリィは【風刃】でヘンリーとクオルの攻撃で脆くなっている部分に連携を交えて攻めていた。
一方、俺はダークナイトを1体送還し、残った1体をダークロードに深化させ、
ケートスの胴体を集中攻撃させた。
パキィィィイイイイイイインンンンッ
皆の集中攻撃とダークナイトの攻撃による累積ダメージ、
ダークロードの漆黒の大剣の二刀流と全身の刃物を使った猛攻の前に、
遂にケートスの胴を両断し、上半身と下半身に二分することに成功した。
「クオル、ヘンリー! 一旦退避しろ!!」
ケートスの巨大な上半身が重力に引かれて落下し始めていたので、
前衛の2人に退避命令をだした。
凍りついた氷の海の上に物凄い勢いで出血をしながら、
ケートスの上半身は落下した。
落下の衝撃が凍り付いた海上一面に轟音とともに響き渡る。
クオルとヘンリーの2人はソフィのフレスヴェルグに間一髪、拾われて、
無事、空に退避していた。
『GRUUUUUUU……』
落下の衝撃とリリィたちの猛攻によって体の表面の凍結が解除されたケートスは目を赤く血走らせて、周囲を睨んで、唸っていた。
俺は【看破】でケートスの状態を確認した。
あと一息といったところだが、攻撃力が大幅に上がる【狂暴化】が発動している。
俺とリリィたち中衛以降が立っている崖にあったアンドロメダが繋がれていた大岩は先ほどのケートスのボディプレス攻撃でもはや跡形もなくなっていた。
見晴らしが良くなった眼下にはシヴァの冷気によって辺り一面の海は
分厚い氷に覆われた凍土と化しており、
少し離れたところでは上半身と分かたれたケートスの下半身が起立しながら、
切り口から大量の血を垂れ流している。
『GYAOOOOOOOOOOOOOMMMMM!!』
不意に、ケートスが雄たけびをあげ、上半身だけになった体をのたくらせて、
フレスヴェルグの足に摑まっているクオルとヘンリー目掛けて、
乱雑に巨犬の前脚を振り回し、暴れ始めた。
それまでの攻撃に狂乱じみた動きが加わり、誰も迂闊に近寄ることができない。
「シオン様、申し訳ありません……」
「気にするな。よくやってくれた。後は任せろ」
リリィが自身の力不足でケートスを倒しきれなかったことを謝罪してきたが、
俺は労った。
リリィたちのステータスを【看破】して確認したが、
皆MPが残り僅かになっていた。
俺はアイテムボックスからMPハイポーションexを出して、4人に渡し、休ませる。
今回の戦闘で俺はこのパーティーの明確な戦力把握を主眼に動き、
フォローにまわった。
俺とリリィたちとのレベル差があるのは元より、全体の連携がどこまでできるか知りたかったのだ。
本来はケートスの様なレベルの高い敵を相手に行うことではないと思うかもしれないが、強敵だからこそ、見えてくるものもあるので強行した。
現にローラのリリィとの精霊魔術の連携、サラの弓の連携が予想以上に
見事だったのと、ソフィの召還師としての成長は収穫であった。
反面、反省点はクオルの攻撃手段の乏しさが上げられるが、
これは解決策がすでに浮かんでいる。
しかし、残念だが、ここに至ってヘンリーたちはもう限界で、
あの状態のケートスにトドメを刺せないから、気が進まないが、
俺がケートスに引導を渡すことになった。
予想を上回るタフさをもつケートスにどうトドメを刺すか思案していると、
以前、メデューサからペガサスとクオルと共に出てきた黄金の剣を思い出し、
アイテムボックスから取り出した。
未だ一度も戦闘に使用していないので、血曇りひとつ、錆びひとつない
黄金の剣は太陽の光を反射して輝いているが、何処となく、自分の出番を
待ちわびて期待しているような意思を剣から感じた。
ダークロードを送還し、俺はペガサスを憑依した。
白いペガサスの翼を背に生やし、空を飛翔し、
暴れまわるケートスの腕を掻い潜り、背後に回って、
手に持った黄金の剣で【流星剣】を放った。
【流星剣】はペガサスを憑依したときの限定スキルで、
これまでは刀を使った亜種である【流星刀】を愛用していたが、
今回初めて本元の【流星剣】を使った。
やはり、使用感は全然違い、刀独特の”ひく”動作はないが、
魔力を燃やして音速を超える連続斬撃を毎秒数百回繰り出すところは
同じだった。
だが、一番の違いは黄金の剣の斬れ味にあった。
まるで熱したナイフでバターを切るように何の抵抗もなく
ケートスの骨肉が断ち、気がつくと、ケートスは口から血を滴らせ、
既に事切れていて、魔物が心臓にもつ、ケートスクラスの巨大な魔物が
もつにふさわしい純度と大きさをもつ魔石が露出していた。
そうして、ケートスの血を吸ったからか、黄金の剣に変化が現れていた。
『初めての獲物にこの良き魔物の血を選んでいただきありがとうございます。
我が主。これからよろしくお願いします』
なんと、知性を持つ剣に変化したのだ。
俺は天を仰ぐとともに、アイテムボックスにケートスの魔石と
その辺に転がっている手ごろな大きさの肉片をしまった。
御一読ありがとうございました。




