第15話 対メデューサ(起源種)戦……完勝?
いつもありがとうございます。
さて、大規模戦闘を期待していたが、
結果として、片やPT戦、こっちは1対1と見事に突っ込み所満載な状況であるが、
これには実は理由が3つもある
まず、受注可能ランクC以上であることが1つ。
カリュクスはアテナ神域にあるとはいえ、
そこはあくまで生産職、技術者の都市だ。
都市の自警団の腕利きでランクBこれが数人しかいない。
彼等は彼等で都市を守る任務があるから、この依頼には参加できない。
ソフィに確認したが、
カリュクスの冒険者ギルドで現役の冒険者で
Cランク以上の人数は俺たちを襲った奴等を除いて
今回集まった人数に6人足した数しか現在いないらしい。
その両手で足りる人数は現在、商隊の護衛依頼で
今はポイエインの首都へ行っているそうだ。
つまり、最初から俺たち以外のPTには露払いを
してもらうつもりだったのだ。
本当にギルドが依頼を出すのであれば、
メデューサの危険度を考えれば、
2ランク上のAで募集し、犠牲者が出て、ぎりぎり勝てるだろう。
次にアレス神域の奴隷商人に綱がっている冒険者たちが
アテナ神域に入り込んでいたことが1つ。
巧妙に隠れて拉致をされていることが
問題になっている。
その犯人を燻り出す意図があったため、
カリュクスに来ているアレス神域の疑わしき人数を
一網打尽にする機会としたのである。
結果として、捕らえることはできなかったが、
神域内の被害の拡大を抑えられたので上々だろう。
最後に、俺とイリアの参戦がある。
俺とイリアは冒険者ギルドでは人外扱いされるランクSである。
現在、ランクSの人数は全部で20人。
アテナ神域には俺とイリアとあと2人。アレス神域は最も多い6人。
アポロン、アルテミス神域は3人ずつ、ポセイドン神域は4人。
アレス神域の6人は仲が悪いことで有名で、
その内の1人は俺の友人でもある。
奴等6人が協力したら、世界を救えそうだが、
それは陽が西から昇って東に沈まない限り無理だ。
結局のところ、アテナ様は俺とイリアに任せるつもりだったのである。
では、1対1になったこっちの勝利条件を確認しよう。
今回の討伐の大目的はメデューサ起源種の首を手に入れることだ。
ここは神話を踏襲している。
小目的は2つ。
こちらは大目的に比べれば
達成できればいいというレベルだが、
挑む価値は十分以上にあると俺は認識している。
1つは『メデューサの涙』の獲得。
これは神話からの推測だが、
メデューサ起源種の石化[EX]は
メデューサ起源種の涙でしか解除できない。
メデューサの首の扱いがどうなるか現時点では不明だが、
万が一、悪用された際の対抗手段として確保しておくに
越したことはない。
もう1つは素材だが、『メデューサの血』だ。
これも効能や調合した結果など確認しないとなんともいえないが、
仮に予想通りだったら非常に危険なことになる。
本音を言えば、俺は首狩るよりこっちを優先したい。
肝心の首を取る作戦だが、接近しての奇襲。これしかない。
小目的達成のためにいろいろ仕掛けに凝ってしまった。
第2陣の連中がやっていた魔術の連射は
メデューサ起源種には効果が薄いのが遠目であるが、
『看破』から得ることができた情報でわかった。
魔術防御力が複製種よりも2ランクほど高いのだ。
メデューサ起源種の髪の毛の蛇は
ピット器官を備えていることが判明している。
つまり、向こうは熱探知ができるということだ。
しかし、幸いなことにこちらにはハデスの隠れ兜がある。
これは隠蔽[EX]で熱、音、におい、魔力など全ての感知を
無力化する優れものだ。ヘンリーに試させてわかった。
欠点は明確に存在位置を気付かれると隠蔽が解けること、
つまり、いると確信されて視線を向けられた位置にいたら、
兜の効果は解けるということだ。
総じて、視線を合せれば終わるこの状況下では
接近しての一撃で勝利するならば、
一振りで首を確実に落とさねばならない。
ペルセウスが使っていたハルパーは
オリヴィアに渡したからここにはない。
これがギリシャ神話だけの世界であれば
この時点でほぼ詰みだ。
なぜなら、その世界の剣は斬るのではなく、
叩き潰すのが主体だからだ。
しかし、ここはZFOの延長の世界。
アテナ様に確認したのだが、日本刀やシミター、
サーベルといった武器は存在するのだ。
もっとも、なくても生産職の武器職人の誰かが作っていただろうが。
また、俺の集めた刀も使えるということである。
俺は戦闘が始まる前、正確には出発前にサブクラスを封印していた
『サムライマスター』に変えた。
『サムライマスター』は普通の育成では到達できないレアクラスだ。
俺は孔雀の短刀と効率の良い狩場を巡り、
サムライのレベルを限界まで上げたあと、
サムライマスターになるのに必須アイテムの『カイデンショ』を使用して、
クラスアップに成功した。
気がつけば、そのときレベルリングしていた前衛系召喚士という
特殊職とともにサムライの極みに達し、
スキル『居合い』や『白刃取り』なども覚え、召喚獣探しと並行して、
刀狩をして刀を集めていた。
そして、今、装備しているのは『天羽々斬』。
日本神話では『天叢雲』とともに有名な大蛇退治の神剣であるが、
ZFOではどちらも刀に分類されていた。
入手するのにかなり骨を折られたが、
その甲斐はある素晴らしい性能と美しさをもつ武器たちだ。
ランクは天羽々斬がSで、天叢雲はM。
どちらも種族や属性に蛇をもつ魔物に防御無視という効果がある
固有能力『蛇 滅 殺』が付いている。
天叢雲の方は今は装備条件を満たせないので、
ぎりぎりで可能だった天羽々斬にしたがこれは過剰戦力だったかもしれない。
そうしているうちに、メデューサ周辺に設置した囮となる
未点火松明の設置は完了した。
壁の向こうでも派手にやっているようなので、
こちらもそろそろ始めますか。
メデューサも壁を突破しようと
さっきから壁に攻撃を繰り返しているが、
無駄ァ、無駄ァ、無駄ァ、無駄ァ、無駄ァ、無駄ァ、無駄ァッ!
あと50回以上攻撃を繰り返さない限り、その壁は壊せない仕様だ。
俺は壁に攻撃することに集中しているメデューサの背後に
ダークナイトを召聘して、漆黒の大剣の一撃を与えた。
「GYAAAAA」
特撮の化け物の鳴き声が聞こえたが気にしない。
ダークナイトの剣はメデューサの蛇の鱗を貫通し、
紫色の鮮血を滴らせていた。
俺は遠距離召喚で『アクアポッド』というスライムの亜種を召喚し、
床に落ちているメデューサの血を密かに集めさせる。
アクアポットににおいと熱はないからメデューサの蛇は反応しない。
完全に地形に擬態しているので、アクアポットは心配はいらないな。
【アクアポッド:
スライムの突然変異種、亜種の1つで、吸収した液体を体内に蓄える習性をもつ。
通常種のブラッドスライムは獰猛で積極的に獲物に襲い掛かり、吸血し、血液を
分解して、自身の養分に変えるが、これはただ液体を蓄えるだけの魔法生物である】
さて、情報収集も準備も完了したから、慎重かつ大胆に行く。
正直、この作戦は気が進まない。イリアたちが見たらおそらく、
呆れるだろう。
だが、もう後には退けないのだと自分に言い聞かせた。
メデューサ起源種と俺がいるのは神殿の東側で、
わずかに陽が差し込んでいる箇所がある。
メデューサ起源種は不意打ちを警戒している。
俺は羽の生えたサンダルを履いているので神殿の空中を飛び、
メデューサの死角にある柱から様子を伺っている。
再び、メデューサが壁への攻撃を再開しようとした瞬間に
俺は遠距離召喚で2体の石巨兵をメデューサの両脇に召喚し、
同時に脇腹にボディブローを撃ち込ませた。
無防備かつ、鎧となるものがない脇腹、
そこに剛力の石巨兵による
衝撃の逃げ場のない両側からの強烈な同時攻撃。
内臓へのダメージは甚大だろう。
流石のメデューサ起源種も血を吐いてダウンした。
俺はゴーレムに両腕を押さえさせ、追加でゴーレムを2体召喚した。
ゴーレム1体には蛇の胴体部分を地面に押さえつけて、固定するよう指示した。
もう1体のゴーレムにはメデューサの頭部を東向きにうつ伏せに固定させた。
俺は一度メデューサの髪の蛇の注意を逸らすため、
東側の未点火松明に火属性魔術で一斉点火した。
髪の毛の蛇が反応した瞬間、メデューサの前方にダークナイトと
アクアポッドを2体、更に追加召喚し、俺はアイテムボックスから
調理用に下準備した玉葱10個を入れたボールを渡して、
再び死角に移動した。
俺は移動際に気絶しているメデューサに
気付け薬を掛け、目覚めさせた。
メデューサが目覚めたのを確認したところで、
俺はダークナイトにメデューサの目前で玉葱を
微塵切りにするように指示をした。
ダークナイトがメデューサの鼻先の宙に放った玉葱は
次々と微塵切りになって、受け皿として置かれたボールに
落ちていった。
玉葱の刺激によって暴れ始めたメデューサを
ゴーレムに押さえさせ、メデューサの目から涙が出始めたので、
すかさず待機させていたアクアポッドに
涙を集めさせた。
研究と石化の治療に必要な分量の涙が回収できた時点で
メデューサの涙が止まったので、
俺は涙を回収させたアクアポッドを退避させ、
微塵切りにした玉葱の入ったボールを死角から回収して、
ダークナイトを労い、送還した。
玉葱はハンバーグに使おう。
俺はマナポーションを飲んで、一息入れて、仕上げに入る。
ゴーレムたちに蛇の胴体、左右と正面からメデューサを
振り返らせないように押さえさせた。
俺は背後から『居合い』で天羽々斬を抜き放ち、
遂にメデューサ起源種の首を斬り落とした。
呆気なく終わったが、素材をできるだけ多く回収するためだ。
苦戦するより地味だがマシだと自分に言い聞かせる。
胴体の斬り口から噴水のように血が噴きあがるのは想定済みだったので、
待機していたアクアポッド1体に斬り口から出る血を回収させた。
最初に召喚していたアクアポッドにゴーレムが持つ首側の
斬り口から滴る血を集めさせ、
十分な量が集まったところでアクアポッドに退避するように言い、
俺はゴーレムに命令してメデューサの首を首袋に
入れさせた。
終わったと安堵した瞬間、
胴体側の斬り口に付いていたアクアポッドが
勢いよく弾き飛ばされ、
斬り口から、白い羽の生えた子馬と黄金の剣、
子供が飛び出てきた。
子馬と子供は息はあるが眠っているようだ。
幸いアクアポッドは無事だったので、
血まみれの1頭と1人と1振りについている血を
吸い取らせて綺麗にした。
俺は厄介ごとの予感を感じつつ、
スキルの【看破】で
メデューサから出てきたものたちの詳細を確認した。
俺はステータスを確認したあと、
すぐに黄金の剣をアイテムボックスにしまった。
子供が目覚めて剣を握られたら厄介だったからだ。
黄金の剣のランクはA。俺も装備できるが、
固有能力が脅威だ。これがアレス神域に渡るくらいなら……
と思うほど危険だ。
その固有能力は2つ。
1つは『自己鍛錬』使い続けることで成長し、
自ずと斬れ味が増す能力。
もう1つは『神 滅 殺』。
『蛇 滅 殺』の対象が
蛇から神になったものだ。
これは皆とアテナ様に相談しないと拙い。
下手に抱え込むと確実に碌な目に遭わない。
西側もイスカルが出たのが見えたあと、
戦闘音が止んでいたから、終わったようだ。
俺はマナポーションでMPを回復しつつ、
アクアポッドたちにメデューサの涙と血液を空き瓶に注入させ、
イリアたちの到着を待ちながら途方に暮れた。
御一読ありがとうございました。
シオンがメデューサの素材にこだわった理由の1つは
複製種ではあるものが作成できなかったことに起因します。
最後にメデューサからでてきたのは一体なんなんだ!?(棒)
次話は鋭意作成中です。




