第10話 なにか忘れてないか?
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朝日が枕元に差し込み、朝になったのに気付き、
起きなくてはと理性が働き、それに抗う眠気が蜂起し、
両者の争いは一瞬とも永劫ともとれる泥沼に陥った。
しかし、それらも不意に感じた温かく柔らかいなにかの感触を
肌に感じた瞬間に消し飛び、意識は急速に覚醒した。
「……ZZZ、兄さん、ZZZ……」
目覚めれば目の前に整った顔立ちの女性の顔が突然あって、
驚くと共に、顔が赤くなるのが分かった。
相手は妹だった女性だと再認識して、
より顔が赤くなったのを自覚した。
思い起こせば昨日、寝る前にリリィとイリアが
順番に俺の部屋を訪れた。
リリィからは俺が女性と関係をもつことには、
それほど抵抗がないらしいことを開口一番に言われた。
エルフが元々子供ができにくいから、
一夫多妻が一般であり、自分の父親もそうで、
母親達の仲も良く、生母以外の母親たちからも
大切に育てられたことから、
そういうことに抵抗がないらしい。
但し、一夜限りや遊びということで男女の関係を結ぶことに、
強い嫌悪感を持っているようでそこは釘を刺された。
そして、イリアとソフィ、サラのことに話しが及び、
リリィとしてはこの3人と俺が関係を結ぶことに関しては、
含むことなく、イリアに関していえば、お互いの行き違いがあったが、
昼に話しあって和解したので、今後は良好な関係が続くことが
決まったと笑顔でリリィは言った。
今夜は大事をとって自室で休むらしい。
話しが終わるとリリィと入れ替わるように
イリアが入ってきた。
結果を端的かつ大雑把に言えば、
テイラーの屋敷での話しを蒸し返され、押し倒された。
最終的には双方合意の上で一線を越えたのだが……昨夜のことは
実はイリアとは初回ではない。
「えへへ……にいさんZZZZ」
唐突に、この蕩けきっている甘い寝顔を
自分以外の男が眺めているところを思い浮かべてみた。
以前も似たようなことを思い浮かべてみたら、
仕方ないだの、それで凛璃が幸せならといった
諦めに似た感情が湧き上がってきた。
しかし、今回もそうなるだろうと思っていたが、
今回は以前とは違い、その男に対する殺意にも
似たどす黒い感情が明確に広がっていた。
俺はいもしないその男に強い嫉妬を覚えていたことに
自嘲した。
気がつくと、イリアの目がばっちり開いていて、
こちらをじっと心配そうに見つめていた。
「おはよう」
「おはようございます。兄さん。あの、その……」
お互い挨拶を返すが、イリアは頬を染めて言いごもる。
俺はその原因を最初から気付いていた。
お互い寝間着を着ておらず、
イリアは寝転がっている俺に覆いかぶさるような形で
横になっている。イリアの体は女性としてのメリハリが
衣服の上から分かる位はっきりしているレベルで、
いろいろとやわらかい箇所が当っている。
次いで、俺はまだ若い男性で、性欲も人並みにあり、
時刻は朝。
以上が、現状をやや遠回りながら端的に俺がまとめたものだ。
さて、どうしたものかと思案していると、
「……リリィさんが来るまでお相手してもらえますか?」
懇願するように潤んだ瞳に
上目遣いでイリアの様に可愛い子に言われて、
否と言えるおとこはいるだろうか?
「みんな、おはよう」
「皆さん、おはようございます」
「おはようございます。シオン様、イリア様」
「おはようございます。マスター、イリアさん」
「おはよう、兄貴、イリア姉」
「おはようございます。シオン様、イリア様」
朝食の用意ができたとリリィから声がかかり、
俺とイリアは身支度を整えて、食堂へおり、
既に待っていたみんなに挨拶をした。
朝食はパンにベーコンエッグにポタージュスープと
リンゴだった。だったのだが、分量がすごかった。
主に銀狼族3人の1人当たりが食べる量は
通常の1人前の軽く5倍。
リリィに至っては肉を好まないエルフらしく、
ベーコンエッグは食べていなかった。
最も、俺とイリアも3人と同じくらいの量を
胃に収めた。リリィの料理が美味しかったのが1番の理由だ。
テイラーに指定された時間前に、今、俺とイリア、ソフィ、ヘンリー
は冒険者ギルドの受付にいる。
既に緊急大規模討伐の依頼の受付は始まっているようで、
ギルドの受付に併設された酒場では、
その噂で持ちきりだった。
俺達は既に討伐の頭数に入れられているが、
念のため、受付の人間に確認した。
既に名簿が出来上がっているらしく、
そこに俺達の名前があったのを
確認して、改めて、依頼内容の確認を
ソフィ達を交えてした。
詳細はもうすぐ、ギルド2階の大会議室で行うとのことで、
俺達はそこへ移動した。
大会議室に入るとなかにはテイラーが指定した人数が
揃っていて、俺達、俺とイリアに多くの視線が集中した。
無理もないことだが。
名を忘れられている俺とお忍びのイリアは
この街に来てそれほど時間が経っていない余所者で、
この依頼で要求されるのは世間では1人前といわれるランクC以上。
更に、双子座の仮面の能力で
隠蔽と認識阻害効果が発生しているので、
実力のある者には警戒心を抱かせるには十分だからだ。
「けっ、またお前ら獣くさい獣人たちかよ」
「なんだとうっ!」
感じの悪い集団から出てきた
テンプレなチンピラ風冒険者に挑発されて、
いきりたつ直情的なヘンリー。
傍にいるソフィも反応こそしていないが、
尻尾の動きから不愉快なのが見て分かる。
そのチンピラ風の男がいた集団にティオ・ヤクタの姿があった。
毎回同じやり取りをしているだろうことはむこうの態度で
分かった。
「お前達、喧嘩するなら、この依頼降りてもらって構わないんだぞ?
冒険者の依頼はガキのおままごとじゃないんだからな」
そう言って、貫禄のある男、誰か知らないので、
ソフィに確認したらギルド長だそうだ、
ギルド長がいがみ合う2人に拳を落としてを諌めた。
「血の気が多いのは構わないが、矛先は魔物にしてくれよ。
さて、今回の依頼の詳細だが、大神殿から市長宛に神託による
魔物の襲来の予言が来たそうだ。
我々は市長からの依頼でその襲来してくる魔物を奴等の巣で
殲滅するのが仕事だ。ここまでで質問はあるか?」
ギルド長が辺りを見回し質問者がいないか確認している。
誰もあげないのを確認し、ギルド長は続ける。
「明日の13時に正門に集合。それまで準備を怠るなよ。
馬車で目的地の廃神殿に移動。一晩、野営してから殲滅に入る。
作戦指揮官は俺がとる。往復で2日、討伐に1日の予定。
魔物の数はわかっているだけで大型のメデューサが1匹。
これが本命だな。中型が20匹、小型が30匹以上だそうだ」
ギルド長はメデューサを強調し、
集まった冒険者たちの顔色を見ている。
さっきのチンピラを含め、顔色が青い。
「報酬は大型討伐に金貨6枚。
中型討伐1匹につき銀貨2枚、
小型討伐1匹につき銅貨10枚だ。
大型は頭部の神殿への提出が求められているので、
忘れずにな。提出できなかった場合は報酬は半減だそうだ」
ギルド長が報酬の話に切り替えると
顔色が青かった連中が色めき立つ。
現金な奴らだな。
それにしても、頭部の提出か、厄介だな。
「いつも通り、倒した魔物は倒したやつのものだ。
横取りや妨害はするなよ。調停は面倒だからな。
他に何か質問はあるか?」
再びギルド長が冒険者たちを見渡す。
誰も挙げなかったので俺は気になることがあったので挙げた。
「お、なんだ?」
「魔物の数に関してだが、中型、大型の数が増える可能性と、
増えた場合の討伐報酬はどうなる?」
ギルド長は俺の質問にほとんど気付かれない位短い一瞬だけ、
驚いた表情をしたが、すぐに用心深く俺を見据え、
「なるほど、増える可能性はある。増えた場合の報酬は
ギルドが責任を持とう」
「……わかった」
「他にあるか?……それじゃあ、明日の13時に正門に集合ということで、
一旦解散。遅れた奴は置いていくからな。そのつもりでいろよ」
そうして、解散になって、ギルド長は仕事があるのか、
そそくさと出て行ったが、さっきのチンピラが俺のところに来て、
「お前、びびってんのか? 怖かったら神殿の影でガタガタ震えてな」
「ああ、怖いね。魔物と戦って油断したらあっさり殺されるからな。
だからこそ、臆病だといわれようと慎重に俺は動くことにしている」
反論すると思っていた恐怖を肯定した俺の言葉に
意表を突かれ動きが止まっているチンピラ。
「帰りますよ、デズモンド」
「ちっ、精々(せいぜい)俺等の足を引っ張るなよ!」
ティオ・ヤクタの言葉にテンプレチンピラ、デズモンドは
そう吐き捨てるように言うとティオたちの集団に合流して、
大会議室を出て行った。
「なんだよあいつら」
「マスターに対する暴言、万死に値しますね」
怒り心頭の姉弟に同意して
無言で頷くイリア。
「気にするな。ギルド長……名前はなんだった?」
「ガーヴィンだよ。兄貴。俺達、あのおっちゃんに結構
世話になっているんだ」
「ふむ、具体的には?」
「素材を割高で買い取ってくれる魔物の情報をいただいたり、
難易度は低いのですが、報酬が基準より割高のを少し優先的に
回してくれてました。おかげでお店の維持もなんとかなりました」
「……そうか」
俺は2人の言葉にギルドに借りが1つできたなと思いつつ、
冒険者ギルドを後にした。
「兄さん、神殿に行きませんか?」
「ああ、そうだな。
すまないが、2人はリリィたちと合流して、
明日の準備を手伝ってくれ」
「わかりました」
「了解だ」
イリアの提案に同意し、
ソフィたちに明日の準備にまわってもらい、
アテナ様のいる神殿へ向かった。
「ようこそ、いらっしゃいました。アテナ様がお待ちです」
そういって出迎えてくれた神官の案内についていき、
神子の部屋に通された。
「よく来てくれた。その様子だと、なにか問題がでてきたようだが?」
「はい、今回の討伐で参加するか不明な人物がいるので、
そいつがメデューサ討伐に参加するのか確認しにきました」
アテナ様の問いかけに応えつつ、俺とイリアは仮面を外した。
「ふむ、ペルセウスのことか?」
「はい。今回の討伐依頼の参加者名簿の中に
彼の名前がありませんでした」
「あの男は来ぬよ」
「それはなぜですか?」
イリアが言ったようにペルセウスの名が名簿にはなかったので、
このイベントに参加するとなると、あとは乱入になる。
そうなると、最悪、ペルセウスともやりあうことになる。
できればそれは避けたいのでその可能性を訊きにきた。
「あの男のような下衆はハデス叔父上の元に送ったからだ。
全く、メドューサの首を取ってきたら、体を許せだ!
思い出しただけでも腹立たしい」
そう言って忌々(いまいま)しげになにか黒いものを
立ち上らせているアテナ様。
「では、彼が使う予定だった武器たちはどうされました?」
「ふむ? 私が預かっている。使うか?」
「はい。お借りできるのであれば是非」
イリアの申し出に快く応えてくれたアテナ様は
曲刀ハルパーとご自分の楯と羽の生えたサンダル、
姿を隠す兜、ペルセウスが用意していた首いれ袋
を貸して下さった。
「メデューサ討伐が終わったらちゃんと返すようにな。
サンダルはヘルメス兄、兜はハデス叔父上のものだ」
「はい。忘れず返しに上がります」
アテナ様は少し威圧して返却を忘れないよう言ってきたので、
俺は頷きつつ、応え、借りたアイテムをアイテムボックスにしまった。
「くれぐれもあの廃神殿を更地にすることも忘れないようにな」
アテナ様にそう釘を刺されつつ、俺とイリアは部屋から出る前に
仮面を着けなおし、神官の見送りを背に受けて、神殿を後にした。
そうして、今後の店舗経営どうするか考えつつ、
イリアとの寄り道を楽しみながら、
俺はリリィと弟子達が待つ俺の家に戻った。
御一読ありがとうございました。
この物語でペルセウスとの共闘を期待されていた方には
申し訳ありませんが、彼の出番はありません。
ゲームのときのZFOではペルセウスは強力なNPCとして、
参戦してくれましたが、彼にメデューサ(コピー)を
倒されると手に入らないアイテムがあったり、
特定のイベントフラグが複数まとめて折られるので、
プレイヤーからは嫌われてます。
次話の進捗は活動報告でご確認ください。




