第9話 本当に後衛系魔術師?
修正しました。
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イリアを交えて俺、リリィ、アルギュロス3姉弟妹の昼食会は
ソフィたち3人が狩ってきた食材をリリィが
その技術を余すことなく発揮してくれたので、
かなり豪勢なものであった。
あとで知ったが、3人が戻ってくるのを見越し、
俺の帰還祝いを兼ねて、リリィが朝から準備してくれていたらしい。
昼食後、俺は皆を呼び集め、午前中にテイラーの屋敷で決まった
明後日の緊急大規模戦闘についてリリィたちに説明しした。
明日、正式にギルドで依頼が公示されるので、
俺とイリアが11時に冒険者ギルドに行くと言ったら、
ソフィに反対された。雑事は自分たちで処理するからと、
しかし、俺はテイラーの依頼でもあるからというのを理由に譲らず、
ソフィとヘンリーの同行をリリィが条件にしてきたので、
それを呑んだ。
今回の依頼にはリリィも参加するという言い出すという、
ゲームのときとは考えられなかった事態になった。
……いい加減、俺もこれをゲームという考えを
捨てた方が良さそうだと思った。
リリィのステータスを確認したが、
メインクラスは後衛系攻撃役の上級職、アークメイジ、
サブは前衛系攻撃役の中級職、剣士。
所有スキルなどもバランスよく所持しているので、
遠近に対応できる万能型といえるだろう。
余談だが、拠点内でエプロンドレスを着ていると、
何故かサブクラスがメイドに変化しているらしい。
ちなみにソフィたち3人のギルドランクは平均でC。
ぎりぎり受注できる基準を満たしている。
俺とアルギュロス3姉弟妹は拠点の地下にある訓練場にいる。
目的は3人の力量を見極めるためと今後の訓練方針を決めるためだ。
イリアとリリィは2人で話しがあるとかで応接室の方へ行った。
訓練場内に今は予算積み立て中だが、将来的に致死ダメージを
瀕死までに抑える特殊結界を構築する予定だ。
俺は自分のサブクラスを戦闘に向いていない錬金術師から変更し、
装備を確認した。
武器はもちろん、孔雀の短刀だ。
やや緊張した面持ちの3人に俺は切り出した。
「ある程度の能力は俺のスキルで把握できるが、
これから、俺と1人ずつ模擬戦をして実力を測らせてもらう。
順番はそちらで決めていい。準備ができたら、はじめよう」
「では、わたしから参ります」
俺の言葉を受け、一歩踏み出したのはソフィ。
彼女は俺がとある大馬鹿な国王から助け出した少女で、
それが縁で俺を慕って、集落を飛び出し、従者として付いてきて、
俺の一番弟子になった。まだZFOがゲームのときの話しだ。
俺はそのときの彼女はAIが操作するNPCでプレイヤーを
助ける脇役と思っていた。
彼女を仲間にしたとき、
彼女のメインクラスは俺が選択して決めるようになっていたため、
彼女の種族が攻撃力と体力、素早さも高いなど獣人のなかで、
かなり希少な銀狼族でしかも、知性と精神力も攻略サイトにアップされている
銀狼族のデータよりも高いという素晴らしいステータスだったので、
俺は彼女のメイン職を自分と同じ召喚士にした。
イリアとケイを除く他のプレイヤーのほとんどが
俺を馬鹿にして笑いものにした。
同時期に救出したNPCをサポートキャラとして
使えるようになるイベントがあったからだが、
俺は気にせず、彼女を召喚士として育てた。
俺が当時既に召喚士の3周目に入り、
前衛系のサブクラスも獲得していたので、
弱い後衛ができても問題はない。
そこで、自分とは違うスタート地点で
同じゴールを目指してみるのを試す意味も含め、
彼女を召喚士にした。
結果は今のところ上々。
彼女が使える召喚獣は今は俺も全て 使える。
さて、俺が寝ている間にどれだけ変わったかな?
「出でよ! 魔狼王!!」
ソフィは中級召喚スキルである【ルーンの誓約陣】を使って、
自分が得意とする召喚獣、黒い狼、【フェンリル】を召喚した。
【フェンリル:
神々に災いをもたらすと言われる魔狼。獰猛ではあるが、
知性を持ち、冷却系の魔術を使え、人語も解する。
終末を迎えた世界で月の女神に従ったという伝承がある】
俺は後方に大きく跳んで距離を取りつつ、【看破】を使い、
フェンリルとソフィのステータスを視る。
俺がいた場所にフェンリルがその爪を振り下ろし、床に傷を付けていた。
攻撃が空振りしたのに気付き、すぐに追撃の姿勢に入っているのは流石だ
ソフィたちの能力は俺の記憶の中よりも能力数値が向上していた。
更に、ソフィは再び中級召喚スキルである【ルーンの誓約陣】を展開して、
俺の背後に巨鷲を召喚し、二体による連携で
俺を挟み込む作戦を繰り出してきた。
【フレスヴェルグ:
死体を飲み込む者の意味する名をもつ巨大な鷲。
世界のあらゆる風を起こしているものと言われるほど、
風系統の魔術を熟知している。邪竜ニーズヘッグと仲が悪い】
上級の召喚獣であるフェンリルとフレスヴェルグを
2体同時召喚できるようになり、
更に離れた位置に召喚できるようになったのは
天晴れな成長成果である。
……だが、俺を追い詰めるには甘い!
俺は無詠唱でダークナイトを4体召聘し、
後ろから迫ってくるフレスヴェルグを漆黒の大剣による4連同時斬撃で
耐久負荷限界を超えるダメージを与えて強制送還する。
同時に、フェンリルにはダークナイト8体を召喚して、
足止めをする。フェンリルが足止めを食っている間に
【ルーンの誓約陣】を展開して、『スレイプニル』を
憑依する。
『スレイプニル』の特殊能力で宙を駆け、
フェンリルの頭と尾を越えたところで、
ダークナイト8体をソフィの周囲に召喚してチェックメイト。
黒騎士に囲まれたソフィは大人しく両手を挙げて降参し、
フェンリルをその足下に展開した送還陣で送還した。
「うう、まだまだですね」
「いい線は行っていたが、大物2体は避けたほうがいい。
フェンリルを基点にするなら、ウンディーネを2体活用するのも
いいぞ。
【ウンディーネ:
水の女精霊。人魚のような美しい姿をしており、
穏和で優しい性格をしているが、怒らせると水底に
引きずり込まれるので要注意。4大精霊の1角でもある】
それと、フェンリルは熟練度が上がると召喚コストが上がるから、
今後はフレスヴェルグとの連携はできなくなるぞ」
「え? そうなんですか?」
「ああ、ところで召喚獣の習熟ポイントが手付かずのままだが、
割り振らないのか?」
「それに関してはマスターのご意見を拝聴したくて
そのままなんです」
「わかった後で聞こう」
そうして、ソフィと模擬戦後の軽い反省会を終え、
俺は次の相手と対峙する。
「よろしくな、兄貴!」
次の相手はヘンリーは待ちに待ったという感じで
喜色満面であった。
最初の開始位置、訓練場の中央に戻り、ヘンリーと向かい合う。
ソフィの開始の合図と共に、ヘンリーが両手に持った大剣を振り上げて、
俺目掛けて跳躍してきた。
「うおりゃああああ!」
大剣技【強撃】体のバネと全体重をかけた強力な一撃を
放つ大剣技の初歩技だ。
初歩技だが、使い手によって十分脅威になる技であるのだが、
唯一の難点がその命中率の低さにある。ジャンプをするため、
体の軸がぶれやすいのともう1つ欠点がある。
俺はヘンリーの跳躍軌道を予測し、側面にまわった。
これで強撃は不発になる。
俺はヘンリーの修行項目に対人戦闘を追加する。
おそらく、魔物相手か、格下の人間しか対峙したことがないため、
安直にハイリスクなこの技に頼っているように見えた。
「ちぃっ!」
振りかぶったまま着地したヘンリーはすぐに方向転換して、
俺の方に踏み込んできて、大剣を振り下ろしてきた。
俺は孔雀の短刀を抜いて大剣の腹を叩いて軌道を逸らし、
合間に蹴りをヘンリーの脚へ放っていった。
自分の攻撃を捌かれて、脚への攻撃が集中しだしたヘンリーは
後ろに跳んで間合いを開けた。
「はぁっ、はぁっ、流石は兄貴だ。俺の剣がかすりもしないなんて」
「なんだ。もうおしまいか?」
「まさか! 今度はこれでいくぜ!!」
そういうとヘンリーは大剣を床に突き立て……訓練場に
意図的に傷つけるとは後でリリィとソフィの説教だな。
手の空いたヘンリーは籠手を着けた両拳を打ち合わせて、
俺に殴りかかってきた。
「おおおおおおおおおおおおっ!!」
銀狼族の特徴である身体能力を活かした乱打を繰り返すヘンリー。
だが、俺は孔雀の短刀の腹で手首を叩いて軌道を変え、
ときには短刀を持たない手で拳を払い、またあるときは体捌きで回避する。
その人族にあるまじき速度の回避にヘンリーは驚愕するが、
「なにを驚いている?
アレス神域にはこれ位できる冒険者はかなりいるぞ」
事実、高レベル冒険者、
特に一部の前衛系クラスのスキルを極めた者にとっては
スキルの選択さえ誤らなければこのような攻撃は
難なく捌けてしまうのである。
俺は先程と同じく合間に脚への攻撃を絡め、
ヘンリーの動きが鈍くなった所で攻勢に転じ、
強烈なローキックで体勢を崩したヘンリーの首筋に
孔雀の短刀を突きつけた。
「ヘンリーの課題は我流なため、
攻撃一辺倒になりがちで防御が弱い点にある。
次に、対人戦闘の経験が少ないことがあるな。
格下であれば今のところなんとかなっているが、
実力が同じか、格上が相手だと負けるぞ」
「ぐっ、ぐうぅの音もでないぜ」
「課題が分かれば対処のしようはある。
しかも、今はこれ以上ない極上の練習相手がいるから
その人にしっかり学べ」
「ん? そんな人いたかな?」
「後で紹介する。とりあえず、今は怪我の治療と体力の回復に励め」
「分かったよ。兄貴」
俺は素直に言うことを聞いたヘンリーにハイポーションを渡した。
最後の相手となったサラであるが、
ソフィやヘンリーと同じ模擬戦方法では
その実力を測るのは不適切であると言わざるをえないので、
俺は40m程度距離を取り、そこからサラに直進する俺を
狙って矢を連続で射させて、俺に1矢でも当てればサラの勝ち。
俺はサラを降参させるか矢を使い切らせれば勝ちという特別ルールで
行うことにした。
特殊結界が未実装のため、下手すると死にかねないので、
今回はウンディーネを召聘して、
矢が命中した瞬間空気中の水分で作った『水の鎧』が発動するようにした。
これで矢が当っても、水の鎧が発動して鏃が刺さることはない。
サラが矢を射る体勢を整え、
ソフィの合図で俺はサラ目掛けて突撃を開始する。
額を狙って、1矢目がきた。これを孔雀の短刀で弾く、
2矢目、1矢目と全く同じ軌道できた。これも短刀で叩き落とす。
3矢目、距離が詰まった。ここで体を捻って回避した。
4矢目は射るのに十分な距離がない……と思ったら、
矢を手に持って突いてきた。
俺は突き出された矢の先を切り落として、
サラの首筋に短刀を突きつけた。
「まさか矢を手に持って突いてくるとは思わなかった」
「奥の手だったのですが、シオン様には効果なかったですね」
「連射に関してはこのまま磨いていけば問題はないとして、
難しいかもしれないけれど、
次は束ね射ちの技術があればいいかもしれないな」
「束ね射ちですか……はい。やってみます」
「……姉ちゃん」
「なに? ヘンリー?」
「兄貴…シオン様って本当に人族?
召喚士……はよくわからないけど、魔術師なんだろ?
なんであんなに強いの?」
「う~ん、マスターは召喚士の最上級職を4回、
今はまた基本職のサモナーになっているから、
5回達人の域まで修練されていて、
その間にサブクラスで近接職のレベルを上げられているのよ」
「そうなのか。あれ? 基本職に戻る方法ってあるの?」
「あるわよ。ルーンストーンっていう希少アイテムが必要だけどね」
こうして、俺は弟子3人と模擬戦を終え、課題を提示して、休憩に入った。
イリアとリリィが差し入れを持ってきてくれたので、
椅子とテーブルのある訓練場の端の休憩スペースへ移動した。
イリアとリリィの間の空気が昼食時よりも和らいでいるので、
応接室で話しているうちに打ち解けあったのだろう。
休憩後、俺はソフィに付いて、
貯まっている習熟ポイントの設定をした。
覚えている召喚獣毎に偏りはあるが、
全体でかなりの量溜めていたので、時間がかかってしまった。
イリアにはヘンリーに模擬戦相手をしてもらった。
剣に関しては俺よりも専門家の聖騎士を極めているからだ。
ヘンリーは頭で覚えるよりも、体で覚えるタイプなので、
只管模擬戦形式で反射で防げるようになるまで、
防御の隙を突いてもらった。
スタミナが切れてヘンリーが倒れるころには
俺とソフィの方のポイント設定が終わったので、
ヘンリーの介抱をソフィに任せた。
イリアのおねだりもあり、俺は久しぶりにイリアと
模擬戦をすることになった。
興が乗って、夕食の時間になり、リリィとサラが呼びに来るまで
俺とイリアの戦いは続き、結局、勝負は着かなかった。
リリィには工房で自習することになるサラのサポートをお願いした。
俺が作ったレシピの薬品全てを練習して造ってもらうのだが、
まず、基礎の『初心者ポーション』を店売りの回復量+10%アップの
最高品質を安定して造れるようにという課題を出した。
何回も失敗を繰り返し、夕食の準備をし始めないといけない時間に
完全に安定して造れるようになったそうだ。
その後、皆で夕食を摂り、イリアは宿に戻るのか尋ねたら、
拠点に泊まるため、リリィにお願いして宿を引き払ってきたらしい。
反対意見もなく、部屋は余っているので、空き部屋を好きに使っていいと言ったら、
一番俺の部屋に近い部屋を即選択していた。
部屋に戻り、リリィに湯を準備してもらって俺は自分の体を拭いた。
リリィが手伝うと言うので、手の届かない背中をお願いした。
やはり、湯船に浸からないとと思ってしまうのは元日本人だからであろうか、
今度の依頼の報奨金で風呂の増築をしようと俺は心に決めた。
余談だが、ヘンリーはリリィとソフィに夕食後、説教されて、
訓練場で3時間正座をさせられた。
御一読ありがとうございました。
シオン、司はソロでの前衛系のクラスの必要性を考え、
サブクラスで普通はやらない方法で育てています。
また、召喚士のクラスの中には想定外のものもあったようで……。
それから、永続効果のある能力値上昇アイテムを調合で発見し、
信用の置ける仲間に有料で販売し、自分でも使っています。
レシピも仲間内で限定公開して、市場には出さないことで
合意してます。※他神域のプレイヤーは生産職を軽視して、
扱いが酷く、過去大きな事件を起こしているため。
次話の進捗は活動報告をご確認ください。




