第7話 緊急 大規模戦闘(レイド)依頼?
いつもお読みいただきありがとうございます。
初投稿から1週間経ちました。
多くのpvとユニーク、評価をいただきありがとうございます。
少し、ペースダウンしてきてますが、頑張ってゴールに行きます。
「なにを笑っているんですか?」
俺は【風の壁】を解除しつつ、目の前の女神様に憮然とした。
「いやいや、まさか兄妹揃って同じことを訊かれるとは
思わなかったからだ」
「……それで、次の話しはなんですか?
災厄という話しですが、既に見当がついているんですよね?」
ケラケラと笑うアテナ様に次の話しへ進むよう俺は促した。
視界に赤くなっているイリアが入ったが、
今は考えないことにした。
「うん。流石にシオンは気付いていたみたいだな。
そう、魔物の群れ、大型1匹に中型20匹、小型30匹以上が
廃墟となった神殿を占領して勢力を拡大し始めている」
表情を引き締めて敵勢力情報を口にするアテナ様。
アテナ様に仕える梟からの確かな情報であり、
件の梟は今なお、敵集団を監視している。
「この規模になると、冒険者ギルドに市長として
緊急『大規模戦闘』クエストを発行しなければ
なりませんな」
テイラーの言葉に一国を預かるものとしてイリアも頷いていた。
「そうだ。私が大神殿経由でカリュクスの神殿に神託を下し、
それを受けた市長が冒険者ギルドに緊急大規模戦闘を発注、
受注条件はギルドランクC以上。報酬は大型討伐に金貨6枚。
中型討伐1匹につき銀貨2枚、小型討伐1匹につき銅貨10枚だ」
事も無げにアテナ様は言い切ったが、
それとは対照的にイリアとテイラーの頬は引きつっている。
気持ちは分かる。
白金貨1枚以上の金を報酬として出すことになったからだ。
主にカリュクスの財布から。
「それほどまでにヤバイ相手なんですか?」
「ああ、大型の魔物はメデューサだ」
「「「メデューサ!?」」」
冷や汗を浮かべて敵の大将が誰なのかアテナ様に尋ねるテイラー。
その言葉に表情を曇らせてアテナ様の口から出た答えに、
俺とイリア、テイラーの声が重なった。
すぐに俺は頭に引っかかったことをアテナ様に尋ねた。
「アテナ様」
「なにか?」
「この討伐戦はゲームのZFOであった
緊急大規模戦闘イベントと同じ
と考えていいのですか?」
ゲームのときにもメデューサ討伐の
緊急大規模戦闘はあったので
それと同じものかという考えを俺は口にした
「半分正解で半分外れだ」
「というと?」
アテナ様の半々といった答えの先をテイラーが促す。
「今回出てくるのは起源種。
戦闘面ではゲームのときよりステータスが
強化されている点を除けばそれほど差異はない。
ただし、この起源種は討伐後は
2度と現れないので世界になんらかの影響を及ぼすはず。
それに注意してほしい」
「起源種ということは
複製種がいるのですか?」
「ああ、ガイアお祖母様の力で複製種は
生み出されるが、起源種程の力はない。
但し、特定ポイントの障気が溜まると出現するので
注意するように。
ちなみに皆がゲームのZFOで倒してきたのは瘴気が溜まって発生した複製種だ」
起源種という聞き慣れない言葉を問うイリアに
アテナ様は複製種との違いを説く。
「メデューサの起源種はどうやって生まれたんです?」
そこへテイラーが至極真っ当な疑問を口にした。
だが、それは地雷だったとテイラー氏は後にそう語る。
「私が作った」
「「「え?」」」
すぐに返された短い答えに俺達は面食らった。
「もともとはポルキュースとケートーという神たちの娘で女神だったのだが、
あろうことか、私の神殿でポセイドン叔父上と逢引し、交尾したのだ。
私に見せ付ける様に、何度も、何度もな……」
先程までとはがらりと雰囲気を変え、顔から表情が抜け落ち、
淡々と喋るアテナ様に俺達は戦慄した。
この空気でなければ「最後まで見ていたのかよ」とツッコミが入るところだが、
今この場でそれをやった者は頭と体が泣きながら永遠の別れを惜しむことになる。
言った瞬間に逝く。シャレにならんな。
そんな緊張感のなか、アテナ様の話はまだ続く。
「ポセイドン叔父上は私よりも位が高いから、私はゼウスお父様に抗議し、
二度と同じことをしないように注意してもらった。
メデューサには直接警告して、穏便にすませようとしたのだがな」」
アテナ様の顔は笑っている、確かに笑っているのだが、目が笑っていない。
今、依り代にしている少女の顔が整っているから余計に怖い。
その笑顔がこの上なく怖いのだが、
圧倒的な迫力でこの場を離れることもできない。
回れ右し即座にこの前線から離脱したい……。
「メデューサはポセイドン叔父上の愛人であることをいいことに
格上である私を見下し、私の神殿を今後も使わせろと主張することに飽き足らず、
自分の髪を自慢し、私の髪を侮辱したのだ。
故に神罰を下し、自慢の髪を蛇に変え、化け物に変えてやった」
笑顔のまま、こめかみに青筋浮かべたアテナ様はそう仰って、
テイラーの淹れていた紅茶に口をつけた。
その場の空気が少し緩む。背中に多くの冷たい汗の感触がある。
おそらく、2人も同じ状況であろうことはその表情からも分かる。
「魔物になったメデューサは知性を失い、美貌を衰えさせ、
ガイアお祖母様に拾われ、石化の魔眼を与えられたのだろう」
「では複製種が先に何回も現れていたのはもしかして……」
「そう、ガイアお祖母様の実験だったのであろうな」
化け物化したメデューサの顛末を告げたアテナ様に
イリアが懸念を伝え、それにアテナ様は同意した。
「では、戦場はむこうが占領している廃神殿ですか?」
「ああ、そうなるな。
奴は迷惑にもポセイドン叔父上と交尾した神殿に
未練がましく居座っているのだ」
「そうだ、シオン!
なんだったら、神殿も、もう廃墟になっているから、遠慮なく壊しても構わんぞ?
いや、完全に破壊して火を放って消毒し、塩を撒いて、
新しく建て直そう。うん、それがいい」
不意に浮かんだ考えにいい笑顔を浮かべ、捲くし立てるアテナ様。
「壊すのは構いませんが、それって討伐とは別の依頼になりますよ?」
それを見て、対照的にげんなりした表情を浮かべるテイラー。
「ふむ、それもそうだな。
シオンに神殿の指名依頼として出すか。
シオンよ。報酬はなにがよいかな?」
「では、神殿秘蔵の魔導道具か召喚獣の巻物で
お願いします」
「わかった。工面しよう。早速手配するので、私は行く。
討伐は3日後で頼むぞ」
テイラーの懸念を払拭して、俺の要望を聞き、
アテナ様は席を立たれ、金色の髪をたなびかせて、
部屋を出て行かれた。
「ああ、おっかなかった」
テイラーが大きく息を吐いた。
俺とイリアもようやく緊張感から解放された。
「テイラー、あれはお前のミスだぞ。
メデューサの伝承を知っていれば回避できたんだからな」
「わりぃ、わりぃ」
俺がジト目で睨むと、テイラーは俺とイリアに謝った。
「さて、討伐の細部をもう少し詰めなければなりませんね」
「そうだな。人数は精鋭40人くらいで、
当然、イリアの嬢ちゃんも手伝ってくれるんだろう?」
「……そうですね。起源種がどういうものかを
確認したほうがいいですし、今後も類似の形で
起源種が現れるでしょうから、
寧ろ、協力させてください」
「それじゃ、シオンと同じPTでいいな。いいよなシオン?」
「ああ、構わないぞ」
「……はい。よろしくお願いします」
イリアは消え入りそうな声で応えた。
「となると、シオンのところにあと、ひぃ、ふぅ、みぃ……。
ギルドに募集するのは33人か。
まぁ、Cランク以上はそれ位しかいないだろうからな」
「あっ、テイラーさんご自身の参加はできませんよ」
「ええ? なんでだよ?」
イリアの言葉にやる気満々だったテイラーは反論した。
「市長がギルドに依頼を出すのですから、そんなマッチポンプを
知ったら、市民はどう思います?
それに危険なことに上の人間が矢面に立ってどうするんですか?」
「いや、イリアの嬢ちゃんもサンク王国の王様だろ?」
「私はお忍びでカリュクスに来ているので問題ありません。
今は冒険者のイリアですから」
「むむむ……仕方ないか。とりあえず、この件はこっちで処理しとく。
明日の11時前に冒険者ギルドへ行ってくれ。出発は明後日の13時だ」
イリアに正論を突き付けられ、渋々納得するテイラーは
ギルドへ出す後の申請は任せろとこの話題をしめた。
「これが、昨日話題になった問題のポーションたちなんだが」
そう言って、俺はアイテムボックスから、
バイオレットポーションとブラックポーション、
ディアウトポーション、バッカスポーションを
それぞれ2つずつ取り出して、テーブルの上に並べた。
それらを興味深く見つめるテイラー、
イリアは驚愕した表情を浮かべていた。
「へぇ、こいつらが問題のポーションか。
それで効能の方はどんな内容なんだ?」
「兄さん、これは……」
イリアにはこれらを発見してすぐにどんなものか、
俺が実験台になってみせたから、そのときのことを
思い出したんだろう。少し青ざめていた。
「バイオレットポーションは使用すると、
ハイポーション並の回復量があるが、
確率で毒もしくは麻痺が発動する。
ブラックポーションはエクスポーション並の
回復量と攻撃力に50%の補正が入るが、
防御力に−75%の補正が入る。
ディアウトポーションはHPと攻撃力、防御力に
200%の補正が入るが、600カウント後に
HPが10%に減少し、
全ステータスに−90%の補正が入る。
バッカスポーションは服用すると、
HPが全快するが、状態異常:酩酊3と、
打撃攻撃しかしなくなるバーサーク状態になる」
いずれも死兵生産アイテムとして、
調合してできたときにイリアに見せたアイテムだ。
ちなみに俺が”上手に”作った場合はこれより補正数値が良くなる。
ブラックポーションは攻撃力に+75%補正・防御−50%。
ディアウトポーションに攻撃・防御+250%、HP25%まで減少。
バッカスポーションは状態異常:酩酊2、攻撃力+10%
程度の差はあれど、内容が凶悪なのに変わりはない。
しかも、これらの副作用を説明なしで売っているのだから恐れ入る。
「1つは第3都市セーメンの研究室宛に送って、
解析してから報告書にしてもらって証拠に。
もう1つは証拠品としてそっちで保管し、裁定を下すときに使ってくれ」
「分かった。討伐依頼の件を至急済ませて、早急に取り掛かろう」
「……イリアの嬢ちゃんをちゃんとケアしてやれよ」
俺だけに聞こえるようにそう言うと、テイラーは応接室を出て行った。
イリアと2人きりにされてしまった。
テイラーにイリアをケアしろと言われたが、
はて、どうしたものか。
別れ方が別れ方だっただけにどう対応したものか悩む。
イリアも同じように考えているみたいだ。
なんとか切っ掛けを作らないとな。
「改めて、久しぶりだな、凛璃、いや、今はイリアと呼ぶべきか。
サンク国を追い出されたことに関しては仕組んだ奴等は
全員血祭りにて報復した。
俺は気にしてないから、イリアも気にしなくていいぞ」
「……」
俺はイリアの方を向いて語りかけたが、反応がない。
こうなったら……仕方ない。俺は椅子を引いて立ち上がり、
「明日の11時に冒険者ギルドへ来てくれ。
不満があるなら、PTの件は反故にしてくれてもいい。
それじゃあ、また明日な」
そう言って、イリアに背を向け、
俺は扉から出ようとし……ローブの端を引かれて立ち止まった。
振り返るといつの間にかイリアが立っていて、
俯き、ローブの端を握っていた。
イリアの足元には水滴が落ちた跡がどんどん増えていっている。
「ご、ごめん、なさ、い……。だから、いかないで、
いかないで、お兄ちゃん…」
「分かった。行かないから、泣き止め」
そう言って俺はアイテムボックスに入れていたハンカチを取り出して、
イリアの頬を伝う涙を拭いてあげた。
イリアは掴んでいた俺のローブから手を離し、
今度はハンカチを握っている手を両手で掴んで離さなくなった。
俺は落ち着かせるため、イリアを椅子に座らせ、
アイテムボックスからロイヤルミルックティーのボトルと
マグカップを2つ出した。
イリア、凛璃はストレスが過度に溜まると
幼児退行することがあった。
次第にそれは俺の前だけになっていた。
普段の凛々(りり)しさと聡明さがなりを潜める
この状態を両親は俺と凛璃を引き離す荒療治で
治そうとしたようだが、結果は見ての通りだ。
俺は凛璃が話す話しを聞き続け、
適度に相槌を打った。
俺がサンク国から追い出されたときには
学校の用事でログインできず、事件を知ったのは
一緒にいたケイに送られたチームメンバーからの
メールだったこと。
ログインしたときには全てが終わっていたこと。
それから3日間体調が崩れて寝込んだこと。
ケイに激励され、犯人たちを追い詰め、
他神域ぐるみの悪質行為である証拠を集め、
GMに証拠を提出して断罪したこと。
凛璃話しの合間に両手で持ったマグカップで
ロイヤルミルクティーを飲んで落ち着いてきた。
次にZodiacに召喚されたときの話しに移った。
目覚めると、戦場でケイに起こされたそうだ。
辺りに充満する血の臭いに気分が悪くなったが、
追撃を受けている部隊を見つけ、救援し、そのまま、
敵本陣に攻め込んで、指揮官をしていた大型魔獣を仕留めたと。
助けた兵士たちに案内されて陣に行くと、
サンク王国の兵士たちに歓待され、
司令部で満場一致で総司令官に祭り上げられ、
その日を終えて、寝る前に現れたアテナ様に謝罪され、
俺と同じ質問をしたこと。
次の日に、テイラー一家と復活した冒険者たちを保護して、
最終的に魔物の殲滅に成功、各国と条約を結んで、
傾いていた自国の情勢を立て直す日々に追われていたこと。
そして、話しの最後に俺を家族として、兄としてではなく、
男として愛していることを告げた。
御一読ありがとうございました。
凛璃との会話をシオンが聞いた形にしていますが、
これはシオンにが話している内容が幼児退行の影響で
脱線しまくっていたからシオン、司が分かりやすくまとめた
ものとお考えください。
次話の進捗は活動報告をご確認ください。




