第5話 おや? 誰か来たようだ??
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目にかかってくる陽の光に朝の訪れを感じた。
見上げればそこは見覚えのない天井で、いつも着ている服の
感触がないことに気づき、次の瞬間自分が全裸なのを理解し、
横を向けば金髪で耳の長い美女が気持ちよさそうに眠っていた。
睫毛長いなと観察していると、彼女が身を寄せてきた。
触れてきた柔らかくて温かい感触から、
彼女の裸であるのが分かる。
自分が昨日、彼女となにを話し、なにをしたのかは覚えている。
確かに、彼女は覚悟はできていると言った。
しかし、感情とはそこまで割り切れるものではないだろうということを
俺は彼女の目を見て感じた。
ならばその刻が過ぎても笑っていられるよう、
楽しい思い出を彼女とも紡ぐべきかと考えていたら、
そのリリィがゆっくり目を開けた。
「おはようございます。シオン様」
「ああ、おはよう、リリィ」
さて、リリィと朝の食事をしたら、敵情視察に行きますか。
俺のいる街、カリュクスの店の一般的な営業時間は
だいたい朝9時から夕方17時だ。万屋蛇遣い座も例外なく、
その時間で営業している。
しかし、昨日は在庫切れで店を閉めざるをえず、
今日はリリィに大事をとらせて休ませている。本人は大丈夫と
言っているが、命令して渋々、休ませた。
テイラーの所へ行くのにも着いてこようとしていたが、
ちゃんと帰ってくるからと宥めて、おとなしく待ってもらった。
それに営業を再開するならするで、
もっと効果的に利益を上げれる策を考えている。
今は計画段階で実行に移すための
準備をきちんと整えなければ意味がない。
今日はテイラーのところに10時の約束があるので、
それほど時間は取れないが、目的は決まっているから、
さっさと行くか。敵情視察へ。
俺は今、万屋蛇遣い座の商売敵、
『箱』の前に立っている。このアルカという店の立地は
俺のオピュクスからテイラーの屋敷に行く途中の大通りの十字路を
右に曲がって少し歩いたところにある。
立地条件としては大通りから少し外れているのであまり良くはない。
しかし、今は多くの客が朝から来ているようだ。
彼等は買い物を済ませて大通りへ戻っていった。
競合店が繁盛している理由は俺以外にカリュクスで
『ティオ・ヤクタ』より上の薬師・錬金術師がいなくなってしまったかららしい。
魔獣大戦に従軍した多くのカリュクス出身の
薬師・錬金術師は戦後政策によって、
町の同職人不足解消のため鉄道の通る他の街に移住したそうだ。
そこにゲオルギア国からの移住者ということで
ティオ・ヤクタが来たそうだ。
俺はアルカの正面入り口から中に入った。
いつもの隠蔽効果つきの仮面を忘れずに装備している。
店の中は俺の店よりも少し広かった。
展示品の場所を大きく確保しているようで、
カウンターはそれほど大きくなかった。
さっきの大集団がいなくなったせいか、
今の客の入りは思ったほど多くはなかった。
客のそれぞれが展示されている品を見ることなく、
カウンターで同じ商品を買っている声が聞こえてくる。
俺は店内を見回し、件の錬金術師を探すが……見当たらないな。
そう結論付けたとき、カウンターの奥に続く扉が開いて、
豪奢なローブに身を包んだ優男がでてきた。ヤツか?。
背は俺より少し高い。顔のつくりは可もなく、不可もなしといった感じだが、
目は切れ長でいかにも神経質そうだ。
纏っている雰囲気も陰鬱で近寄りがたい。
すかさず、俺は【看破】で、
その男のステータスを確認した。名前はやはりティオ・ヤクタだった。
クラスはメインに生産職の中級錬金職の錬金術師レベルは50。
サブは後衛系回復役の”回復師”か。
ステータスの数値的にも、クラス構成的にも、
ソロで素材狩りに行くにはこの近辺の街道に出現する
魔物のレベルから考えると無謀だ。
素材はなんらかの伝手で手に入れているんだろうなとあたりをつけておく。
他に見るところがあるか探していると興味深いのがあった。
”称号”と”二つ名”だ。
二項目とも似たようなステータスだが少し違う。
称号は獲得すると1つの称号毎に、設定された補助効果が
発生する。その効果は様々で、なかには役に立たない効果のもの、
冗談のような効果のものもある。
対して、二つ名、厨二くさいが、こちらは獲得すると、
固有効果と称号にあった補助効果を複数付与される。
その効果は称号の効果に同じものがあれば加算される。
称号と二つ名の最大の違いは称号の獲得条件は千差万別で
条件を満たせば誰でも獲得できて、同じ称号もちがかなりの数いるが、
二つ名は獲得条件がかなり厳しく、
しかも、最初の1人が獲得条件を満たしたら、
二番目の誰かがその条件を満たしても獲得はできない。
さて、肝心のティオ・ヤクタの二つ名と称号だが、
二つ名はなし。称号は『錬金術師 中級』、『薬の探求者』、『エルフ好き』、
『金の亡者】、『ペテン師』だった。
『狂気の錬金術師の弟子』はどこいった。法螺か。
『~の弟子】という二つ名もしくは称号は存在が確認されている。
~といった部分に当る人物に弟子として認知してもらえば、
3人までは二つ名。それ以降は称号扱いになる。
ただし、師匠が複数の二つ名を持つ場合は師匠が二つ名・称号名を
決めることになる。
ティオ・ヤクタのステータス情報が入手できたので、
俺はもう1つの要件、評判のポーションの購入を購入する。
他に俺が知る限り使用すると副作用があるアイテムを含め、
3つずつ購入するのを忘れない。
「お客様は当店のご利用ははじめてですかな?」
カウンターに座る小太りな店員がいやらしい笑みを浮かべて聞いてきた。
生理的に受け付けないタイプの笑顔だが、ここは我慢だ。
「ああ、知り合いに教えてもらってな。このバイオレットポーションと、
ブラックポーション、ディアウトポーション、バッカスポーションを3つずつ、くれ」
「かしこまりました。お買い上げありがとうございます。
またのお越しをお待ちしております」
テイラー(知り合い)に教えてもらったので、嘘は言っていない。
俺が注文すると店員は俺が買った商品の副作用に関して言及しなかった。
これは問題行動だ。購買者がその効果を知っていても、
副作用 の説明を怠ると、販売した側の責任になるからだ。
『知っていると思った』で白を切ろうとしても無駄だ。
俺が魔導具『録音機』で今の会話は全て録音済みだからな。
クックック……。
買うもの買ったので俺はそそくさと出口から店を出る。
あの陰険眼鏡の視線を感じたが、すぐに消えたので、
気をつけておくことを頭の片隅で覚えていく。
そろそろテイラーの屋敷にいく時間なので、移動を開始する。
大通りは賑やかで活気があり、露天もたくさん出ていて、
多くの人が行き交っている。
「テイラー市長と約束があってきたシオンだ」
「はい。承っております。シオン様。どうぞお進みください」
昨日の門番ではなく、屋敷の方へ連絡へ行った人物が対応してくれて、
すんなり中に入れた。
「こちらです。シオン様」
ウィルが屋敷の建物の入り口で待っていてくれて、
テイラが待つ部屋に案内してくれた。
案内されたのは昨日の執務室ではなく、応接室だった。
ウィルが応接室のドアをノックした。
「ウィルです。シオン様をお連れしました」
「おお、来たか。入ってもらってくれ」
「畏まりました……シオン様どうぞ」
「ああ、ありがとう」
ウィルのノックに部屋の中からテイラーが応え、
ウィルが開けてくれたドアから、
俺はウィルに礼を言って部屋の中に入った。
まず目に入ったのは陽の光を反射して輝くプラチナブロンドと
視る者を吸い込むような青い瞳をもった、
女性として見事なプロポーションをもつ
擬装のためか冒険者用の軽鎧を纏った髪の色以外は俺と全く同じ顔の女性。
「……凛璃、いや、今はイリヤか。久しぶりだな」
「……ッ!」
俺の言葉に双子の妹はビクッと反応するが、
俯いて何も言葉を返してはこなかった。
「やれやれ、イリアもケイがわざわざ都合つけて、
時間を作ってくれたというのに、
その態度は全くもってよくないぞ!
それでは治る関係も治らないではないか!!」
イリアがいたことに俺は驚いていたが、
怒声をあげる声の主の存在に気付いた瞬間、
俺の脳内にスキルによる最大級の警報が流れる。
声の主である少女は確かに16歳前後の整った顔立ちと
その年齢とは思えぬ発育を除き、服装から一見すると街娘に見える。
しかし、隠されてはいるが、その体に宿る魔力、
いや、その密度から考えると別次元の神力から、
彼女が神、高位の神であることは疑いようがない。
そして、俺はこの神力を前に何度も感じたことがある。
「もしや、貴女はアテナ様ですか?」
「うむ、いかにも、私がアテナだ。下界に直接降臨して何度か逢っているが、
神子を介して会うのは初めてだな」
「なんで貴女がここにいるんですか? しかも、神子?
大神殿の神託はどうしたんですか?」
「ええい、慌てるでない! そんなにいっぺんに聞くな!!」
「落ち着けシオン。俺が説明してやるから」
「……ああ、すまない。驚きが重なって取り乱してしまった」
俺の推測になるが、ZFOのシステムは少なくともこの世界では活きている。
【練者の腕輪】、スキル、ギルドカード。それらが一例だ。
ゲームだったころのZFOにはストーリークエストとグランドクエストがあった。
ストーリークエストは1冒険者として、所属に関係なく、
神々の出す試練を乗り越えていくもので、3年前の時点では未完だ。
対して、グランドクエストはストーリークエストに絡まないが、
端的に言えば、国盗り合戦だ。
自分の所属している神域以外の土地を攻め、支配していき、
他神域の大神殿を占領し、その神殿の神子を斬るなり捕虜にすれば、
その神域の神は脱落し、力を失い、それまでその神を信仰していた者達は
侵略してきた神に取り込まれて、装備していた物を除いた土地と財産。
全てを失う。おそらく、このシステムも活きているだろう。
「アテナ様はお前にこの世界について直接説明されるために、ここに、
神子を介してだが、いらっしゃたのだ。
それだけでなく、このカリュクスにいや、アテナ神域に広がりかねない
大きな災厄が迫っているらしい」
災厄?
テイラーの言った、災厄という不吉な言葉が俺に残った
御一読ありがとうございました。
女神様登場!
神子に憑依という形での登場です。
直接、降臨することも不可能ではありませんが、
燃費が悪すぎるので、今回のような長話になる場合は
憑依で降りたほうが遥かに燃費がいいです。
ちなみにアテナ様が遠出するために、
戻るまでの神託を先に神官たちに出してます。
明日、用事で終日外出するため、次話の投稿は明後日になると思います。




