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クロは魔法使い  作者: 雪菜
6/6

5話

その日の夜遅く、俺達は王都に着いた。


「モモ、居るか。居ないなら勝手に入るぞ。」

「何してくれんの。この放浪者が。大体こんな夜遅くに起こすなよな。............その可愛い子、誘拐したのか。

そうかそうか、とうとうやってしまったんだな。私も手を貸そう。さ、さ、そこの可愛い子をこっちに見せておくれ。」


忘れてた。こいつは可愛い女の子が好きで好きで仕方がない女の子だったんだっけ。顔がもうすでに嬉しさで破顔している。なんて恐ろしい奴

こんな奴のところに泊まって大丈夫かと、一瞬迷ったがこっちは金欠なのだ。仕方がないだろうと決断した。


「人聞きの悪いこと言うな。サキが王都に来たいって言ったから連れてきたんだ。」

「へー、見た目がこんなガキで口が悪い子をあっさりと信じてしまうなんて純情な子なのか。ますます気に入った。」

「身をくねらせて喜ぶな。気持ち悪い。」


そう言った言葉は相手には都合よく聞こえていなかった。


「めんどくさくなりそうだから帰る。」


うおぉぉい、そこはむしろ助けてくれる展開じゃないのか。マジック見捨てるなよ、一応お前の主だろう。


「それじゃあ、俺は外で寝るか。」


しかし野宿などしたら後で騎士達にぐだぐだと治安について説かれるだろうから嫌だし。


「明日は報告書の提出をしなくちゃいけないし。サキの教育係も見つけなくちゃいけないから大変なのに。」

「はぁい、クロ。久しぶりねぇ。」

「アオかよ。」

「そうよ。」

「こんな時間にどうしたんだ。」

「私は空の散歩に決まっているじゃない。気持ちいいわよ。」

「そうなのかよ。ところで部屋を貸してくれないか。」


藁にもすがる思いで聞いてみた。なんて言ったってアオの部屋は驚くぐらいたくさんの資料におおわれているのだ。

とても人が住んでいるとは思えないぐらいに。


「そんなスペースがあると思うって言いたいところだけれども、今回は特別に許可してあげるわ。ついてきなさい。」


ふあふあと浮いてどこかに行ってしまう。ついでにアオが持っている魔力は浮遊魔力。

アオしか持っていない魔力だ。


「ふんっ。」


白い布に力を込めて僕も浮かぶ。そうして無言で俺はアオの家まで行った。


そうして着いてからまずは絶句してしまった。浮くのが好きだからってやりすぎじゃないか。


「ここが私の家よ。最近引っ越したの。立派な家でしょう。」

「立派すぎてなにも言えねぇーよ。」

「そう。この家はどの家よりも最高の家だものね。」


頬に手を当ててうっとりと眺めている。

家は大きな木の上にあった。まるで鳥の巣のように木に家がくっついている。


「これを作ったのってアオか。」

「当たり、作ってって頼んだのに皆作ってくれなかったから皆を驚かす意味で作っちゃった。」

「そりゃあ、皆驚くわ。」


驚かない方がおかしいよ。


「さぁ、中に入って。」


玄関から中に入るとまた俺は絶句しそうになってしまった。むしろため息が出てくる。


「はぁーー。」

「クロは何でため息ついてるの。確かに少し散らかっているけど気にしなかったらこれぐらい大丈夫でしょう。」

「少しは気にしようよ。」


家の中にはビッシリと黒い文字が書かれたプリントがうず高く積まれている。その家に生活感などは微塵もない。流石は研究魂の塊。


「あのさ、どこで寝たらいいんだ。」

「ここで。」


あっさりと指を床に示した。今は寝れる床があるだけありがたいと思い、プリントをさらに高く積みそこに寝た。


「おやすみ。」

「おやすみなさい。」



次の日起きると体がとても重かった。


「うぅ、なんだ。」


見ると高く積もっていたプリントが倒れて俺にかかっていた。重いがまだ寝ていたい。

よし、寝よう。プリントも温かい毛布がわりになっていて気持ちが良いのだ。正直長旅は疲れてしまったし。


「ほらさっさと起きなよ。報告書を書かなきゃいけないんでしょう。」

「報告書、あああああああーーーーーーーーーーーーーー。キイロに怒られるーーーーーー。」


キイロにだけは怒られたくはない。なんて言うかキイロに怒られた日はその日一日、反省して過ごさなければならないのだ。

かばっと起きると隣にあったプリントの山が倒れてくる。


「少しは片付けておけよーーーーーー。」

「私は片付け苦手なのよ。」


んなことを胸を張って言われても対応に困るわ。確かにプリントの山崩しちゃったのは悪いと思うけれどさ。


「それじゃ、行ってくるよ。」

「キイロに怒られないようにしなよ。」

「わかってる。」

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