3話
泣いているお嬢さんを前にして俺は頭を抱えたいぐらいに悩んでいた。
「どうしようかな。」
この状況を第三者から見た俺がこのお嬢さんを泣かせているように見えるのだ。
「あなたは王都に行くんでしたよね。私を王都まで連れてってはいただけませんか。」
「えーっと、なにか特技はあるかな。」
えーっと、俺は何を言っているんだよ。正直そうとう危険な旅なんだぞ。箱入り娘なんて連れていけるかよ。
「う、歌なら大丈夫です。」
「なら歌って見せてよ。」
歌い終わったら即逃げようじゃないか。
「~~~~~~~~~~~~~~~~♪ ~~~~~~~~~♪ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♪」
これはもしかして、魔法なのか。
「ありがとう。良い歌を聞かせてもらったよ。」
「では、」
「しかし旅は危険だしそれに君は魔法使いの素質を持っているみたいだ。王都に行けば魔法使いの勉強をしてもらうかもしれない。
それでもいいのかい。」
「はい。」
恐ろしさを出すために怖い顔をしていたのでついつい頬が緩んでしまった。
「ところであなたの名前はなんと言うのですか。」
「俺、俺の名前は、クロ。」
「私の名前は、サキと申します。」
「サキ、それじゃあ、これに乗って。」
「布ですか。」
地面に広げた白い布に座る。
世間知らずのお嬢さんには刺激がきつすぎるかなと、驚く姿を想像してついニヤリと笑った。
「それじゃあ、行こうか。」
俺も乗り二人旅の始まりだ。
俺が布に魔力を込めるとふわりと布が浮き出した。だんだんと高くなっていく。
これの最大の欠点は高く浮かせるまでの魔力の出力が半端無いことだ。
「も、もう無理。ここでいいか。」
ある程度の高さまで飛んであとは微力の魔力だけを放出させる。
「はぁ、はぁ、あんまり端に行くなよ。落ちたときに回収するのものすごく疲れるから。」
本当にこれ燃費が最悪だな。
「サキ、大丈夫かー。おいおい、もしかして高所恐怖症なの。」
すると勢い良くこちらを向いて満面の笑みを浮かべてニコッとした。不覚にもドキリとしてしまう。
「す、すごいですよ。わ、私空を飛んでいますよ。」
「そうなんだ。」
想像以上の驚きようだな。なんかこっちが嬉しくなってくる。
「村の外はこんな風になっていたんですね。」
「驚いた。」
「はい、本当に村の外に出してくださりありがとうございます。」
そっか。無知って本当に良いものだよね。なにも知らないからあんな風に無邪気に笑える。
「うらやましいな。」
「え、サキくんどうかしたの。」
「いや、なんでもない。」
思わず口に出てしまっていたらしい。聞こえてないようで良かった。他の人との幸せが羨ましいなんてな。とても恥ずかしくて人には言えないよ。
「王都とはどのようなところなのですか。」
「とにかく華やかで騒がしくて良いところだよ。」
「へー、私の居た村よりも良いところだったら良いですね。」
本当にサキは可愛らしい。まだ他人を疑うなんてことは考えられないのだろうな。
「サキはどんな魔法が使いたいんだ。」
「私は人が笑顔になれるような魔法が使いたいです。」
笑顔になれるような魔法か。うーん、一部では俺達魔法使いは悪魔の手先ってことになってるからな。かなり難しいだろうな。
「挑戦することはただだろう。」
「私、頑張りますね。ところでアオ君の魔法はどんな魔法なんですか。」
「秘密。」
「そうですか。あ、王都はなにか名物のお菓子とかありますか。できれば食べたいのですが。」
「お金持ってる。」
なんだかものすごく突然不安になって聞いてしまった。
「お金は持っていません。」