1話
はて、どうしたものか。
村があると聞いてここまで来たのだが、これは村と呼べるのだろうか。
「でも、来たんだしいいか。」
にしたって寂れた村だなぁ。
でも、一人居るよな。
「た、旅人さんですか。」
「あ、住人みーっけ。」
「わ、私を村から連れ出してください。」
ん、なに言ってんだ。このお嬢さんは。
「この村にお嬢さんを縛るようなものはない気がするのだが。」
「では、旅人さんはどうやってこの村に入ったのですか。」
「普通に入り口から。」
それ以外に入る方法なんてあるか。
世間知らずのお嬢さんだなぁ。
「では、入り口につれてってください。」
「でも、俺はこの村に食料を貰いに来ただけだし。」
「この村には私しか居ません。他の皆は流行り病にかかって死んでしまいました。私しか生き残りは居ないんです。」
「隠れてるだけかと思ったら違うのか。」
「ですから私のことを入り口に連れてって下さい。」
まいったな、こんなきれいなお嬢さんにすがられたんじゃあ、連れて行くしかないじゃないか。
「なら行くよ。」
「はい。」
幸い入り口はすぐそこだ。しかしこんないかにも世間知らずの可愛いお嬢さんが何故村の外に出たがるかね。
外には危険しかないのに。
「旅人さんはどこから来たんですか。」
「王都からかな。」
「旅人さんはどこに行くのですか。」
「特に計画性はないよ。さ、着いた。」
「それでは、やってみます。」
すると入り口に歩いていった。すると思いっきりつまずいてしまう。
「いたたた。」
「確かにこれは通れないな。」
しかし俺はあっさりと通ることが出来た。
フム、このお嬢さんが嘘をついて騙そうとしている可能性もあるがこんな泣きそうなぐらい打ちひしがれている姿を演技できるならすごいな。
「確かに通れてないな。」
「どうしましょう。私は村の外に出たいのに。」
「あのさ、ずっと思ってたんだけどそのブレスレットどこでもらったの。」
「おじいさまです。おじいさまが私にプレゼントしてくれました。」
ふーん、プレゼントねぇ。俺はそんなプレゼントは絶対に欲しくないわ。
「そのブレスレットを取って見せてよ。」
「え、なんでですか。」
「いいから、いいから。」
「わかりました。」
取ろうとするのだが全く取れない。あーやっぱりね。しかし悪趣味な魔法道具だなぁ。
こんなの考える奴の顔が見てみたいわー。
「ちょっと貸して。」
「はい。」
軽く親指を噛んで血を流す。ついでにポケットの中から契約書を出して魔方陣に血をを垂らす。
「さっさと出てこい。マジック。」
「へーい。あらあら、可愛いお嬢さんねぇ。」
「どうでも良いから、さっさとあの魔法道具を食ってくれないか。」
「へーい。」
マジックは小さな子供のような形をした妖精だ。ついでに能力は魔法道具を食べること。
「大丈夫、お嬢さんのきれいな肌を傷つけないようにきれいに食ってやるから。」
「え、な、なにをするんですか。」
「いただきまーす。」
口を大きく開けてブレスレットを噛み砕く。そして落ちたブレスレットを掴みまる飲みにする。
「久しぶりに食ったにしてはそこそこ美味しかったな。次はもっと美味しいものを食わせろよな。」
「わかったから、帰れ。」
「へーい。」
スッと、マジックは消えた。お嬢さんの方を見るとお嬢さんの方はショックで固まってしまっていた。
「なんでこんなにひどいことするんですか。私のおじいちゃんがプレゼントしてくれたものなんですよ。」
「今回、お嬢さんが村の外に出られなかった理由がそのブレスレットだったんだけど、それでもほしいの。」
「そんな。」
こんどのお嬢様を阻むものなど何一つとしてない。あとはお嬢様の意思一つでなんとでもなる。
誤字脱字があった場合や直した方がいいところなど教えてください。
がんばります。