109#プロローグ(escape・survivalgame)
4章スタートしました。
宜しくお願いします。
○○暦、○○○○年
この時代の食料事情は、世界的危機を迎えていた。
人口の増加と農耕可能地帯の減少が原因である。
既に、安全性の無い食料でも食べなければ、生存出来ない時代に突入した。
そんな時代の中、ある大企業の一チームが、世界を揺るがす程の装置を発明した。
その装置とは、生き物を召喚出来る装置、その名も『ホワイトパンドラ』。
『ホワイトパンドラ』の完成により、大量の食用牛・豚・鳥等、様々な生きた食用生物を召喚出来る様になり、世界は救われる……誰もが確信した。
召喚装置完成から、約3年。
世界は未だに餓死者の増加が止まらなかった。
召喚装置を開発した『ガストブレイク社』と、ある軍事国が結託して、召喚装置の恩恵を独占したからだ。
更に、ガストブレイク社は転送装置まで開発してしまった。
その装置は『ブラックパンドラ』と名付けられた。
敵対国には、未知の魔獣を送り込み、従順な国や権力者に対しては愛玩用の生物と最高ランクの食用牛を提供した。
そして、極一部の人々だけが、非常に豊かな生活を満喫していた。
さらに時が経過すると裕福層の人々は食欲と性欲を充たすだけでは物足りない、と考えるようになってしまっていた。
そこで『ガストブレイク社』がある娯楽を編み出した。
その名も『エスケープ・サバイバルゲーム』
このゲームに見事生き残る事が出来れば、裕福層の一員として、豊かな生活を約束される他に、莫大な財産も手に入ると言う事になったのだ。
このゲームの参加者は一般層、貧民層から、ゲームの話を聞き付けて、自ら志願した者。
貧民層、極貧層から、拉致された者が『エスケープ・サバイバルゲーム』の参加者となった。
しかし、このゲームの参加者は知らなかった。
このゲームが始まって一年半、ゲームをクリアした者がいない事を。
そして、一部の裕福層に見守られる中、死亡率100%のデスゲームが、新たに始まる。
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ある室内式のビアガーデンに似た場所で……
彼方此方に、不均等に並べられているテーブルの上には、豪華な肉料理が山の如く積み上がっていた。
そのテーブルの間を、マイクロビキニを着た女性達と、股下5センチ程度の、スカートととは言えないような代物を来た下着を履いていない女性た達が、飲み物を運んでいた。
しかし、その女性達に好奇の視線を向ける人達はこの場の初心者だけである。
この場のテーブルに座っているのは、これから起きるであろう、ある出来事を生放送で見たいために、集まっていたからだ。
この番組名は『エスケープ・サバイバルゲーム』の前半戦にあたる、脱出ゲーム。
誘拐した者や、自ら志願した者達を6人のグループに分けて、ある部屋から脱出させるゲーム。
一般の裕福層は録画して、編集をした映像を閲覧出来るのだが、この場に居る者達は更に莫大な財産を保有しているか、強力な権力を有した者達で、このゲームを生放送で見たいが為に集まって来た者達だ。
その悪趣味な集団の手には、12人の名前と簡単なプロフィールが載っている。
この異様な集まりも既に十数回目、初めは他人であったが、今は同じ趣味を共有する仲間の様になっている者だっている。
その一人が、
「今回は何人生き残りますかね……」
別の人等が、
「私は最初の部屋で何人死ぬのか、そんな賭けが有ればと思っているよ、私はあの部屋が一番好きなんだ」
「でも、エスケープだけで全滅した日が有ったわよね……あの時はサバイバルゲームが延期になって、つまらなかったわ……」
「おっと、そろそろプロフィールの紹介だ、私は手持ちの資料よりモニターを優先しますのでね……」
「……そうね、エックス氏はこのエスケープで、8回も当てた実績があるものね……いったい何百億稼いだのかしら?」
「はは、色々あって半分は取られてしましましたよ……さあ、始まりましたよ」
……
…………
………………
大きさは、映画館にある様な巨大スクリーンかゲームの対象者のプロフィールが映し出される。
スピーカーから、淡々とした声色の低い中年男性の声が流れる。
『今回のAチームはこんなメンバーを集めました』
Aチームとは、テレビや雑誌等で応募出来る、このゲームの志願者である。
危険とは伝えて有るが、ゲームの内容は完全に非公開で、世間には密室からの脱出と無人島のサバイバルゲームとしか伝わっていない。
1人目がスクリーンに映し出される。
「秋田大和です。会社員です。もし、5億手に入れたら会社を自分で立ち上げたいと思います。特技は日用大工です」
『実はこの男、生死が掛かってる殺人ゲームだとある程度は察知している様です。しかし今現在死亡率が100%とは知られていないと思いますが』
2人目がスクリーンに映し出される。
「岩手拓巳です。○○会社の社員をしています、このゲームをクリアしたら、彼女と結婚します!」
『実はこの男、ある出版社の雑誌記者で、このゲームの実態調査に潜り込もうとしていました。もちろん面白そうなので、通信媒体のみ没収して、わざとゲームに参加させます』
3人目がスクリーンに映し出される。
「福島美月です。飲食店でバイトをしています。私は2億と裕福層への市民権を選択しました。それで、テレビに出てるような素敵なパーティに参加したいです……」
このゲームの勝利者の報酬は『金5億』か『金2億と裕福層の市民権』のどちらかを選べるのだった。
『彼女は身寄りが全く居ないので、後始末も楽なので参加して貰いました』
このゲームの自発的参加者の7割は親族が居ないのを確認して選ばれている。
もちろん、この企業団体は行方不明の事実を簡単にもみ消せるのだが、楽な事に超したことは無い。
4人目がスクリーンに映し出される。
「俺は青森海斗。○○○○の格闘技団体に所属していました。俺はこの肉体でこのゲームを勝ち抜くつもりです! 目指せ5億!」
『こんな人がエスケープをクリアして、サバイバルゲームに参加出来たら楽しくなりそうですね、因みに彼はその身体の割りに格闘技団体の中では下の位置付けでした』
5人目がスクリーンに映し出される。
「私は山形葵です。私は○○会社で受付の業務をしていました。私はこのゲームに見事クリアした陣内さんみたいに世界一週旅行をしたいです」
このゲームの参加者には、このゲームをクリアした人達の後日の映像を流していた。(もちろん嘘の映像である)
その映像の中には、豪華客船で世界一週しながら遊んでいる男、毎日違う絢爛なドレスに身をまといパーティに参加する女、思い通りの会社を立ち上げ更なる大金を手にした男、モデルの様な美女を幾人も侍らせて、ゲスな笑いを浮かべている醜男の映像を流していた。
6人目がスクリーンに映し出される。
「俺は宮城陸っス、一攫千金を目指して此処に来たっス、賞金の使い道は考えてねぇケド5億もあれば、楽しく暮らせるっしょ?」
『この明らかに知能の足りなそうな男ですが、喧嘩で格闘技経験2年の男を倒した実績のある、貧民層では頻繁に見かける不良です。一見馬鹿に見えますが、この男の素行調査をしていたチームがこの男に、見つかりました。感覚の鋭さはこのゲーム史上最高レベルと思われます』
ざわざわと騒ぐ観戦者たち……
観戦者側には、エスケープゲームで二種類の賭けが用意されている。
1つは、3つの部屋を脱出した時点で何人生きているか。
もう1つは、それぞれの部屋で誰が死ぬかだ。
そして、スピーカーから新たなチームの、プロフィールを、知らせるアナウンスが流れてきた。
『今回のBチームは、男女のペア3組を用意しました』
Bチームとは、誘拐や脅し等で強制的にゲーム参加させるチームの事だ。
『1組目、富山健太と福井麻紀。この2人は猛暑の中、ある遊技場で飲酒をして、熱中症で倒れて救護所で運び込まれたのち、係員に飲酒を咎められた所、酒は飲んでいないと、喚き散らしたバカップルです。警察に通報時に我が機関が、貰い受けました』
2人の姿、身長体重、年齢、性別、血液型が表示される。
『2組目、石川かなたと石川まどか。妹の学費と安全な食事を確保するため、仕事を3つ掛け持ち毎日18時間超の労働をする苦労人の兄。兄が栄養不足で倒れた所で兄妹を拐いました。この兄弟には念のため、10日間の充分な食事を与え、心身健康な状態にしてあります』
2人の兄妹の姿、身長体重、年齢、血液型が表示される。
『3組目、新潟秀次と新潟雅子。この子供のいない夫婦は、どんなに働いても、その日の食事分程度しか稼げない貧民層の夫婦です。ある日、雅子の容姿を気に入った新潟秀次の勤める、会社の社長に目をつけられ、雅子は半ば脅されて関係を持ちました。そんなドラマある夫婦を拐いました。この夫には、その事実を昨日証拠付きで、教えました』
12人の紹介が終わり、数刻の時間が過ぎた。
それぞれ賭けを済ませた観戦者達は、これから挑戦者達がどのように死んで逝くかを心待にして、スクリーンを眺めるのであった。
今回も、ランディは少しお休みです。




