10#初めての狩り
【異世界生活 3日目】
村長達と食事をとる 僕達。
何故か今朝は目覚めが良かった。
昨日はあんなに 落ち込んでいたのに、
今朝の気分も何故だか とても良い。
良く眠れたせいだろうか、それとも 昨晩のシャルとのキスが……
少ししか触れてはいなかったが、ハッキリ覚えているあの感触……
つい、シャルの方を見てしまう。
シャルを見つめていたら、こちらに気付いたようだ。
ニヘッっと はにかみながら 僕に向かってVサイン。
シャルは上機嫌だ。
昨夜の出来事は なんとも思ってないのだろうか?
僕は、今も心臓がバクバクしているのに……
食事も食べ終わろうかと いう時に、
村長が「ブライアン殿 今日はユリウス殿、マーニャ殿、シャルロット殿達と 近くの森へ 狩りに行って欲しいのじゃが……」
「森ですか?」とブライは聞き直す。
「そうじゃ、オオカミや稀に熊が出没するんじゃが、冒険者にとって 丁度良い 腕試し場なのじゃ。お供を2人 入口まで案内させるでの、そこで腕試しをお願いしたいのじゃ。なぁに おぬし達4人なら、いきなりオーク退治でも大丈夫だと おばば が言っておったぞ。そこで、戦いの感覚を掴んでもらって 明日、『ブラックオーク』の住み家まで、子供達の救出に行って欲しいのじゃ」
ブライは村長の話を聞いて 快諾した。
「はい、わかりました。みんな、食べ終わったら
早速準備だ。アーデル、夕御飯は スープが欲しいから お互いに頑張ろうな。」
僕は、「わかったよ」と静かに答えた。
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ブライアン視点
ユリウス・マーニャ・シャルと村人2人で 、獣が頻繁に出るという 森の入口まできた。
「では、ここで待っていますね。ブライアンさん 頑張ってください。」
「はい、行ってきます。さぁ みんな行こう!」
オレはみんなに 声を掛けて 森の中へ入って行った。
中を歩くこと十数分、早速 猪っぽい。いや、そのまんま 猪だ、二匹いる。
猪は敵意を剥き出しにしている。
マーニャは「何か日本の山奥にでもいそうね。異世界って感じがしないわ」
「マーニャ 油断したら 駄目だよ 気を付けて」
ユリウスは弓を構える。
「もう一匹は、私ね」とマーニャは右手を 掲げた。
オレ達の初戦闘が始まる。
「ふっ!」ユリウスは弓を射った、と同時に「火球」と火の玉を出して 弓矢、火の玉 共に、猪に命中した。
猪の額に弓矢が突き刺さり びくっびくっ と 痙攣している。
もうすぐ死ぬだろう。
もう一匹は 炎に包まれながら 走りさってしまった。
あの火力なら じきに、絶命するだろうな。
マーニャは「あれ~死なないよ~」と不思議そうな顔で 言ってる。
マーニャは緊張感が足りないな。
まぁ人間だって火だるまになっても 直ぐには死なないしな……
マーニャは「次はもっと強いのを…………」ぶつくさ 呟いている。
2回目の獣との、遭遇は 『熊モドキ』ってか 熊そのもの なので、『熊』と呼ぼう。
熊も此方を見つけて 警戒しているようだ。
「今度は連携で行こう。ユリウス、マーニャ、頼んだ!」
「了解」
「了解!」
「ふっ!」「いっけー!火弾」
命中した。
熊は狼狽え苦しんでるが、致命的にはなっていない。
「え~ 火弾 使ったのに~」
確かに『火球』より威力が有るのはわかるほどの
大きさだが、相手は 立ち上がれば2m程の熊、
簡単に殺れるわけないか……
オレは 苦しんでる熊に 袈裟懸けで切りかかる。
一刀両断まではいかないが、致命的な一撃を与えたと確信した。
おそらく、弓矢と火弾の影響もあるだろう。
このサイズの熊なら、 不意を突かれなければ、
難なく倒せるだろう。
この後、熊に2回遭遇したが 問題無く倒す事ができた。
これは、訓練を兼ねた狩りだな。
村人達に 熊や猪など 持ち帰ったほうが良いか聞いてみよう。
「少し早いが 出口に向かおう。ついでに ユリウスが倒した 猪を持って帰るか」
帰り道、タイミングの悪い事に 野犬の群れと出会った。
猪と比べると 小柄だが、その分 動きが速いかもしれない。
数えると8匹もいる。
今日の戦いは 今からが本番だと 自分自身に言い聞かせ、気を引き締める。
野犬の群れも、こちら逃がすつもりは無いらしい。
「ユリウス、マーニャ2匹ずつ任せて良いか? オレは 突っ込む! シャルは後ろを頼む」
「うん!」
「わかった」
「今度こそ一撃で燃やすわよ」
オレ1人で突っ込むのは 危険だが、シャルの回復魔法を信じよう。
それに今は、戦いたくてしょうがない。
「ふっ!」「火弾!」2人の攻撃は一撃で 野犬を行動不能にした。
とどめは 後回し、オレは群れの中に突っ込み剣を振る 『ザンッ!』
まず一匹、しかし 野犬は怯まない、三体同時に襲いかかってきた。
一匹目をかわし、二匹目を盾で、押さえて、
オレが対処出来そうもない 三匹目は、シャルの棍棒に叩かれ 怯んだ。
オレは怯んだ 野犬を突き刺し「二匹目、次!」
とさらに、攻撃の体制をとる。
しかし残りの野犬は ユリウスとマーニャに 突進していた。
「ふっ!」「火弾!」落ち着いている二人の攻撃に、野犬の突進は 残り二匹となった。
野犬はユリウス、マーニャに急接近して飛びかかる。
ユリウスは野犬に突進され乱闘になった。
「ユリウス!」オレは反射的に叫んだ。
マーニャは ギリギリのところで、二発目の火弾を放った様だ。
マーニャの目の前で野犬が燃え盛っている。
どうやら ユリウスと野犬の一騎討ちは ユリウスの圧勝に終わった様だ。
が、さすがに少し怪我をしたみたいだが。
すかさずシャルが「大丈夫?」と言って「小回復」
と 唱えた。
ユリウスの怪我はみるみるうちに、治っていった。
時間にして、10秒位だろうか。
「シャル ありがとう」
「どういたしまして」
その後、 ユリウスが 怪訝な表情をしたので、
「どうした ユリウス?」と聞いてみた。
「あのさぁ 実際 元の世界の 熊や猪と 闘った事
無いけど、 ここの世界の獣達 なんか弱くないか?」
シャルも続いて「それに、動きが遅い気がするの」
オレも熊と闘った時に それは感じていた。
だけど俺は「熊や野犬達が弱いんじゃ無くて オレ達が強くなってるんじゃないか?」
マーニャが「そうかも、私ねっ魔法を撃ちたくて撃ちたくて、ウズウズしてるの」
マーニャは危ない女の子だな……
よし帰ろう。
出入口で 倒した獣の話をしたら。 荷車を持って来るので 熊二匹と猪一匹をお願いされた。
そんなに 運べるかな……
やはり オレ達が パワーアップしてるのだろう
オレ1人で 熊を運ぶ事ができた。
往復してる間に、猪を三匹狩り。
熊二匹 猪四匹を 村人達にプレゼントする事が出来た。
村人達も大変 喜んでいた。
村に帰ると 既に魔法を使い尽くしたのか、アーデルが ぐったりして 休んでいた。
直ぐに シャルが 駆け寄りアーデルに労いの言葉を
掛けてるようだ。
オレも 人の事は言えないが、昨日のみんなは、アーデルに気を使い過ぎて 少しよそよそしくなっていたはず。
シャルは何か吹っ切れたのだろう。
それを見てマーニャが
「お姉ちゃん 自分だけ特別に水を貰うつもりかなぁ」
と邪推している。
本気なのか、冗談なのか、わからん。
ユリウスもまだ、よそよそしさが 抜けてない。
管理人兼リーダーの オレが何とかしないとな。
明日から『ブラックオーク』退治に出かけてしまう。
明日の朝までには 元通りの俺達にしたいものだ。
「ブライ、ブライ!」
「ん?どうしたユリウス?」
「熊とイノシンの解体を一緒に見るって言ったじゃないか 行こうぜ」
おおっ、忘れてた。
マーニャとシャルも 誘ったけど 棄権したので、
ユリウスと二人で行く事にする。
オレとユリウスは村長の家をでた。
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夜 晩御飯時
村長と村人数名と俺達 5人で食事をしている。
実はユリウスの食欲が無いらしい。
熊と猪の解体ショーのせいだろうか……
マーニャが「ほら、言わんこっちゃない。」
と言ってる どこかの方言ですか?
アーデルに少し元気が出たような気がする。
シャルは、身体の怪我だけでなく、心のケアまで出来るようだ。
あの死にそうなほど落ち込んでいた、アーデルを元気にさせるとは 正直 凄いと思う。
マーニャと村人達は アーデルの事を 『真』と 呼んでる様だが、 もう気にしていないみたいだ。
今日の食事中は より美味しく食べる事ができた。
やはり オレはこっちの世界が合ってるらしい。
元の世界に戻る方法が見つかっても、オレは帰らないだろう。
色々考えてるうちに、夜は更けていった。




