第五十四回『主人公のテンプレートパターン』
さん
にぃ
いち
面「こんにちは、講師の面沢銀です」
サ「こんにちは、助手というか生徒のサヴァ子です。今回は主人公のテンプレートパターン……ですか?」
面「そうだよ、より大衆的に主人公の設定を煮詰めるにあたっての基本というか王道についての話」
サ「それは第八回~第十回の間でやった『受動型』と『能動型』というのとはまた違う方向性という事ですか?」
面「以前の内容だけどよく覚えていたね。その二つはいわゆるタイプ選択みたいなものだからどういう行動理念で動くかという前提段階なんだ。以前は能動型の主人公という事だけを決めて、あとは世界感に合わせてキャラクターをつくったよね」
サ「そうですね。あとはサヴァ子が強い、ハゲ、筋肉モリモリマッチョマンの変態(※1)という設定をつけました」
面「特に描写はなかったけど、コマンドー・桜庭は変態だったのか……」
サ「それで今回はどうするんですか?」
面「やる事は前回と同じく世界感と合わせるのだけど、今回はさらにジャンルと読者層にも合わせたキャラクターにしていく」
サ「ううん!? ご主人の言ってる事が難しくてサヴァ子はちょっとわっかんないな」
面「わからないかー。まぁ、わっかんねーだろうなー」
サ「デュクシ!! デュクシ!!」(※2)
面「アイテテテ」
サ「サヴァ子に舐めた口を利くからです。全く、いったい誰に向かって話してると思ってるんですか?」
面「生徒だよ! 僕の生徒だよ!! 今回は僕もおふざけが過ぎたと思うからいいけどさ。さて、それでは説明するけどサヴァ子はSFのライトノベルを書きたいわけだけど、その主要な読者層はどれくらいの年齢だかわかるかい?」
サ「そりゃあ中高生くらいのヤングマン達でしょうね」
面「筋骨隆々のハゲのオッサンをそれくらいの層が好むと思うかい?」
サ「好む中高生もいるかもしれませんけど、異端児なのは否めないですね」
面「では、中高生の好む主人公象は何だと思う?」
サ「う~ん、好むかどうかはわかりませんけど。見渡して見ればイケメンで同じくらいの世代の男子とかが多い気がしますが……。でも、それってハーレム展開をしやすいからとか、そういうのじゃないんですか?」
面「そういう言い方をされては頭ごなしに否定はできないのだけど、実際のところテンプレート的に十四歳と十七歳、そして十六歳が年齢設定として多いし使いやすいんだ」
サ「え!? そうなんですか、どうしてまたそんな!?」
面「十四歳はまさに厨二病と同じ学年と年齢、十七歳は高校二年生だからだよ。読者は共感や憧れを持って主人公と自分を重ねると言っただろ。感情移入しやすい年齢や環境設定にしてあげるのは作者の義務のようなものだよ。さらに言うならどんな大人でも学生時代っていうのはあったからイメージをしやすい。いつの世にも学園ドラマが多いのにはそういう理由もあるんだ。この年齢が多いメリットはそういう意味でも真ん中の学年だから後輩キャラや先輩キャラを出しやすいんだ」
サ「ほほう、いろいろ意味があるんですね。確かに酸いも甘いも味わったオジサンの苦労話よりも、同年代が四苦八苦している様を読んだ方が読む側はイメージしやすいですからね。十六歳ってのはどうして?」
面「高校に入学してすったもんだあるという流れが作りやすいから。中学生としては『高校にあがればこんな生活が待ってるかも……』という期待もできるしね」
サ「赤裸々にそんな話をされるとメリットや話の作りやすさの解説だとわかっていても背中が痒くなってきますね……。ご主人ご主人、それでは親がよく海外に出張に出ていて、それくらいの歳の主人公が一人暮らしとか妹と一緒に住んでるとかもよく見ますが、それもそういう理由なんですか?」
面「言わずもがな、その通りだよ。何かに巻き込まれるなり何なりしても親の口出しが出てこないからね。いるとどうしても切って考えるわけにはいかないから。だから仮に両親も一緒に住んでいるというケースでもそこまで露骨に出てくるケースは珍しいね。あっても母親くらいかな、それも『おっとりしていて事件に気がつかない』『肝っ玉が強すぎて放任』というパターンがほとんどだと思う」
サ「どうして父親が出てこないんですか?」
面「父親象はどうしても頼りになるというイメージだからね。変な話、親父の力を借りて事件を解決する主人公とか見たくないだろ?」
サ「母親の話じゃないですけど父親は『ヘタレ』か『最強』かの二択が多い気がしますね。うーむ、サヴァ子はわりと他の作品を読みながら『またこのパターンか!』と思っていたのですが、創る側からしたら意味があったり、必要な要素であったり、様々な事情や思惑があったりするのですね」
面「とはいえこれはあくまで創りやすいというテンプレートであって、基本ではないよ。サヴァ子は宇宙SFを書くのだから両親のくだりなんかは意味がないしね。それに何かしらの狙いもないのにテンプレートをそのまま使ってしまったら、それこそどこかで見た作品と思われたり、酷いと盗作と思われてしまうかもしれない。あくまでよくあるパターンであって、どうしてこのパターンが使われるのかを頭に入れておくというレベルで考えてほしい」
サ「なるほどわかりました。ところで、これって男のパターンですよね。女主人公の場合ってどうなるんですか?」
面「基本的には変わらないよ?」
サ「そうなんですか? そういえば性別は違えど読者層は同じですからね。クラスメートの女子がもしかしたらという妄想にふける事もできるから、やはり年齢はそれでいいのか」
面「そうだよ。それに感情移入するしない以前に同じクラスの男子にドキドキと同じ部署の男性にドキドキじゃ話が違うどころか痛々しいだろ。婚圧(※3)を感じるライトノベルとか最悪だよ」
サ「そのご主人の言い方にサヴァ子は棘を感じるのですが……。サヴァ子はピッチピチの二十代中頃ですよ、まったく失礼しちゃいます」
面「例えそうだとしても、若い方が良いに決まってるじゃないか」(※4)
サ「デュクシ!! デュクシ!! デュクシ!!!」
面「ばたんきゅ~」(※5)
サ「それでは次回までゆっくりしていってね!」
ク「彼女はどうしていた?」
ア「変わってないよ、本当に何も変わってない」
ク「……そうか」
ア「兄貴、やっぱり二人に協力してもらうなんて無理だよ」
ク「――――そうかも、な」
ア「兄貴」
ク「でも、何もしなかったら。俺達はずっとこのままだ」
ア「――――あの人は……」
続く
※1 映画、コマンドーでの屈指の名台詞。名台詞というよりも名翻訳と表現すべきかもしれない。意訳のセンスも翻訳には求められるのです。
※2 殴った時の効果音を擬音化したもの、語源はバラエティー番組の効果音であるとかストリートファイター2の効果音であるとか様々。
※3 女性の結婚願望に対する思いから発せられるプレッシャー。強ければ強いほどにお互いに遊びではなくなる。非常に強い婚圧を持つ女性には、相応の覚悟を持って望まないと近づいただけで男性は地面に倒れる事になる。
※4 人にもよるが基本的に男はだいたいこんな感じである。とはいえ若いはアドバンテージであって女性の魅力はそれだけではない。しかしながらその道のプロに言わせれば十四歳で熟女、十八歳でババアと呼ぶ剛の者も存在する。
※5 コンパイルのRPGの魔導物語、同社のパズルゲームのぷよぷよにおける、敗北時に出る文字である。昨今、十数年ぶりに魔導物語の新作が発表された。3DダンジョンRPGから不思議のダンジョン系に変更がなされており、このシリーズの大ファンである面沢は大いに困惑した。ちなみに買って遊びたいのだが年度末進行と重なり未だにその思いはは達成できていない。畜生。




