第五十二話『作品の差別化を図る、大衆的にする』
さん
にぃ
いち
面「こんにちは、講師の面沢銀です」
サ「こんにちは、助手というか生徒のサヴァ子です。前回で技術面の話は終わりと言ってましたけど、今回のコレは何ですか?」
面「今までが作品を書いて楽しむという内容だったけど、ここからは書くだけじゃなく作品の質をより良く向上させようという話になるのだよ」
サ「それはいったい何の違いがあるのですか?」
面「大きな違いがある。ドミニオン(※1)で言うなら基本セットのみのプレイングから拡張セットを買ってのプレイングと言っても過言ではない」
サ「わかり易い例えなのは良いのですけど、その例えをわかる方はいったいどれだけいるのでしょうか?」
面「言うなら今は礼拝堂のカード(※2)を使いこなせるようになったレベルだからね」
サ「だから普通の人はわからないって。ともあれ、基本のその先へって事はわかりました。それで今回の授業って何なんです?」
面「基本に立ち直って設定を練る話だよ」
サ「随分と基本の話に戻りますね。第六回くらいの話で、ともすればこの講座で授業らしい話としては最初の内容ですね」
面「あの時はサヴァ子に好きに設定を考えてもらったうえで、とりあえず形にするという流れだったからね。これが第一部のお話」
サ「そういえばそうでしたね、それでとにかく書いた作品に対して文章のルール学ぶ第二部、文章の書き方を学ぶ
第三部。あれっ、結構考えて構成されてるんですね?」
面「今、酷くディスられた(※3)気がするんだけど?」
面「それならいいんだ」
サ「ご主人の煽り耐性も回を追う事に強くなってきましたね」
面「やっぱ煽ってたんじゃねーか」
サ「そんな事よりご主人、授業を勧めましょう」
面「それもそうだな。今回は思いついたアイディアをより良い形にしていく事です、良い形とは作品の質でもあるし、読者に合わせる。言うならば大衆的にするという事です」
サ「小説なんて自己満足、楽しめればそれでいいがご主人の持論じゃなかったのですか?」
面「そうだよ」
サ「それならどうして大衆的にするという事を意識するのですか?」
面「確かに商業でない以上、書くのは自己満足だよ。でも、それでは自己完結になってしまう。作品や作家性にもよるけど。
読んでもらう人に楽しむという目線
を育む事は決して書く上でのマイナスにはならないし、意識する事によってレベルアップができるよ」
サ「なるほど、頭でっかちばっかりでもいけないって事ですね。それじゃ、いっちょ異世界転生物(※4)でチート主人公(※5)でハーレム物(※6)の話でも書きますか!」
面「違う、そうじゃない!」
サ「えっ、大衆的にってそういう事じゃないの? 今の中高生のトレンドですよ。ゲームの世界から帰ってこれないとかも」
面「人気のあるジャンルを書くという事を大衆的とは言わないよ。これは人気のあるジャンルを書くなというわけじゃない。自分の書きたい作品を書くのが一番。それが楽しいのだから。今回の話はそういう話を書きつつ、
これが他の作品と違うという点を付加する
もしくは、全く読者層に合わない興味の無さそうな設定や世界観の作品に対して
興味を持ってもらうための付加価値をつける
そういった点を考慮する考えをつけようという話なんだ」
サ「ほほー、確かに自分が楽しむというだけの作品ではそこまで頭がまわらないですからね、確かにそういった要素を考えて書くとレベルアップに繋がりそうです」
面「人気のあるジャンルで埋もれずに一歩抜きに出る、新しい方向性を開拓する。どちらも素晴らしい挑戦だし、そこに優越はつかない。だからこそ、こういう思考が必要になってくるんだ」
サ「ふーむ、言ってる事は分かりました。でも、それは心構えだから具体的にどうすればいいかわかりません」
面「そうだろう、そこでサヴァ子の書いた『宇宙!ユニバーサルサムライTHEコマンドー黙示録』を次回に大衆化する!」
サ「ゲェーーーッ! あの伝説の短編小説を!?」
面(自分の作品を伝説とか言っちゃう二十代半ばの女性って……)
面サ「「それでは次回までゆっくりしていいってね!!」」
※1 海外のカードゲームでRio Grande Games社より発売され、日本ではホビージャパンが日本語化して販売している。デッキを作って戦うゲームだがトレカのようにパックで買い足すというわけではなく、買い切りタイプである。場にある規定のカードを集めて自分のデッキを強くする。面沢はこのゲームが大好き。
※2 ドミニオンの基本セットに入っている凶悪なカード。ここでゲームの説明はしないけれど、このカードが場にあると割と荒れる。
※3 煽る、馬鹿にするの意
※4 死んだら異世界だった系、ほかにも何か事情があって異世界に飛ばされた等。よっぽどリアル志向でなければ、割と「異世界だから」で無茶が効くので初心者に優しいうえに人気ジャンル。
※5 努力せずに強かったり最強だったりする主人公。書くのが楽で、これまた人気ジャンルである。しかし、差別化を図ろうとするとかなりアイディアを要求されるため、使いこなすとなると初心者にはやや厳しい。
※6 どういうわけか不思議と登場するヒロインに好かれるジャンルである。男子の夢であり、面沢の学生時代のようでもある。無論、人気ジャンルなのだが、これも差別化を図ろうとするとアイディアを要する上に、なまじヒロインに人気が出てしまうと心無い読者に厳しい事を言われたりする。差別化を図ろうとすると初心者には厳しい。




