第四回『自己満足に潜む罠(前編)』
さん
にぃ
いち
面「こんにちは、講師の面沢銀です」
サ「こんにちは、助手というか生徒のサヴァ子です。今回は前回の続き、楽しく書くのはいいけど陥りやすいミスですね」
面「以下は例文です」
カクーンはペルスに浮かぶファロシが水晶髑髏の力で築いた都市。ペルスにはラクーン同様ファロシが存在する。
聖都はラクーンを統治しペルスに関わる物を排除する。水晶髑髏はラクーン、ペルスの両方に存在する。
ファロシは水晶髑髏を内包しており、人類をペルスから守るためにラクーンを築いた。
外なる異物とは聖府にポージされる
ペルスのファロシが生んだカクーンに属さない物。ポージとはラクーン市民をペルスへ追放する聖府の政策。
ロシはファルロシから幻影透視によって伝えられる使命を果たせば水晶髑髏となり、果たせないとシ者になる。
幻影獣はロシを救うために現れる……。(※1)
サ「何かどっかで見た事ある設定のような気がするけど、きっと気のせいですね!」
面「当たり前だろ、あくまで例文だし。それでサヴァ子。これで設定や状況の意味がわかったか?」
サ「わかるわけねぇだろこんなもん!」
面「その通り、どういった作品でも専門用語が出来てしまうのは避けられない。だけどあまりにも現実と比喩できない専門用語ばかりだと書いている本人しか設定が伝わらないから、読むという受け取る側としては非常に負担が大きいんだ」
サ「誰にも見せないならともかく、これで『感想をくれ』何て言われたら、私はまずベッドに横になって、ぐっすりと眠って。きっと悪い夢なんだって忘れる事にします」
面「仮に専門用語について順を追って説明していっても、説明ばかりになってしまって物語を読んでいる気持ちになれないからね。これがゲームとかならオプションの用語解説とかを見ながらできるけど。それでもちょっと不親切と言えるね」
サ「なるほどSFだと空想科学になってしまいますから、どうしても専門用語ばかりになってしまいますからね。そういう意味ではファンタジーは魔法の名前とか国の名前とかオリジナルモンスターとかに必要以上に凝らなければ割と読む側の知識で流用ができますからね」
面「中世なら生活レベルとかの想像も容易だし、学校で習ったりという事もあるからとっつき安いポイントだね」
サ「そういう意味では世界感が身近なようでいてそうじゃなく、そのうえ専門用語を少なくとか初心者には難しいですね」
面「とはいえ専門用語が少なくて、庶民的なSFというのが魅力的なのかというとそうではないからね。そのバランスを取るのが難しいから初心者にはSFはお勧めしていないんだ」
サ「なるほど、そういう理由でしたか」
面「さらに言うなら日本人は子供の頃に触れるSFってロボットアニメだと思うんだよ。それがいけないってわけではないのだけど、外国と比べてスターウォーズやスタートレックといった下地の情報量から比べるとやっぱり幅広さが違うからね」
サ「確かに、剣と魔法のファンタジーは漫画やゲームで子供の頃から接してますけど。SFとかはあまり聞きませんね。さらに言うなら小学生がR-TYPE(※2)の設定を熱く語るとか嫌過ぎますし」
面「だからこそ、いざ書く時に必要以上に設定にこだわったりする傾向があるのかもしれないね。だけど悪い事ばかりではないよ、それだけ設定にこだわれるっていう事は世界感が固まっているという事でもある。例文のものにしたって親切ではないけど、それは逆に理解すればいくらでも深く掘り下げる事ができるという事だから」
サ「いまだに何か新しいソフトを出す気ですからね」
面「ん? あくまで例文だぞ。何か言ったのかサヴァ子?」
サ「はて? サヴァ子のログには何も残っていませんが?」
面「では、次回は話に出た深く掘り下げすぎてしまった場合ですね」
サ「自己満足に潜む罠は多いなぁ」
面サ「それでは次回まで、ゆっくりしていってね!」
※1 パルスのファルシのルシがパージでコクーンに近いって? 知らんな。ちなみにあのゲームは戦闘や成長システムは良く出来ていると思います。音楽もかっこいい!
※2 アイレムが以前に出していた名作シューティング。宇宙の彼方から襲ってきたバイド帝国と戦っていたはずが、いつの間にか謎の侵食生命体バイドとの戦いになっていた。
それに合わせてパイロットは成長を制限された人間だったり、脳をドラム缶に詰め込んだ物といった鬱な設定が加わっていった。基本的にクリアしてもまともに帰還できた事はない。あと、やたらと敵の姿が性器を連想させるナイスゲーム。
こんな設定や内容を得意げに話す小学生とか嫌過ぎる。