第二十回『面沢コラム、今ライトノベルが危ない!』(読み飛ばしてもOK)
さん
にぃ
いち
面「こんにちは、講師の面沢銀です」
サ「こんにちは、助手というか生徒のサヴァ子です。今回はちょっとしたコラムで、タイトルの通りですね。でも、これでは何の事だかサッパリ?」
面「読んだ字の通りです。これは近年のライトノベルというジャンルの悪循環が原因にあります」
サ「そう言われてもサヴァ子にはサッパリです。これまで二回にわたってやってきた視覚効果と関係があるのですか?」
面「あると言えばあるし、無いと言えば無い。サヴァ子、たとえば数あるライトノベルの賞があるだろ? あれの選考基準は何だと思う?」
サ「何って? それはもちろん面白いかとかレベルが高いとか、あとは個性的だとかそういうのじゃないんですか?」
面「ブーポン!」
サ「どっちだよ!!」
面「ハズレが七割、アタリが三割ってところかな。今ではもっとハズレの割合が高いかもしれない」
サ「どういう事です、サヴァ子の回答の基準は違うんですか? じゃあ、どうやって決めてるんですか?」
面「サヴァ子の言ったのも勿論、基準ではある。けど、一番の基準は売れるかどうかなんだ」
サ「そんなの出版してみないとわからないんじゃないですか?」
面「いや、ここで言う売れるかというのは大ヒットではなく凡打なんだ。サヴァ子は書店でライトノベルのコーナーに行った時に『似たようなのが並んでる』って思わなかったかい?」
サ「そりゃ最近はやたらと妹がどうのこうの、とか。表紙とかも女の子ばっかりですね」
面「つまり、そういった同じような作品が確実に一定以上は売れる現状があるんだ」
サ「横槍が入りましたがつまりどういう事なんです?」
面「つまりそれだけ視覚からの情報が強いんだ、可愛い子やエロいシーンを読者が期待するのが昨今の風潮なんだよ。悪く言うつもりは無いし、僕も男だから全否定するつもりも無いんだけどそういう単純な欲望を満たすのは総じて底が浅い」
サ「すぐに大声を張り上げて場をはぐらかそうとする芸人や、すぐ下ネタに走って話題のボキャブラリーの少なさをごまかそうとするラジオDJみたいなもんですね(※1)。確かに底が浅いです」
面「以前はライトな層は漫画を読んでたし、アニメなんかのメディアミックスも漫画が中心だったけど。今はライトノベルが原作のアニメが多いからね、っていうか中心のレヴェル。言葉は悪いけどそういうにわか層が作家を志すんだよ」
サ「ご主人! ギリギリの発言ですよ!」
面「そして困った事に、さっきも言った通り、単純な欲望を満たすだけのありふれた作品ならそういう子達でも書けてしまうんだよ。そしてそれが売れるから出版社側はどうしてもそういう作品を拾い上げるんだ。そしてまたそういう作品を読んだ子達が志し……」
サ「なるほど悪循環ですね」
面「どことは言わないけど、ある大手の選考はSFって時点で選外だからね」
サ「そんな! サヴァ子の作品は駄目じゃないですか!」
面「そういう意味でもSFはオススメできないって言ったのだ。サヴァ子は最初に聞いた時点で動機はともかくそっち路線だったからね。もし、現在ライトノベルの賞の応募を考えている方はその時々の流行りなどを考えて書いてみるといいでしょう」
サ「うーん、確かに下手に個性を出すよりも近道なのかもしれませんね。でも、理屈はわかっても寂しい気がします」
面「今の萌えやエロの方面だって重ねて言うけど否定はしないよ、レーベルによっては個性だと思うし。でも今はこの業界全体がそうっちの方面にチューンしすぎているんだ。いずれ一人二人とその流れについていけず、最後には訓練された人しか残らない。その前に規制とかされるかもだけどね。ただ、悲しいかなそうしないと売れないっていうんだから世知辛い。逆を言えばその辺を完璧に把握すれば、さらに一歩上に押し上げる事ができる。最近までまるで新作を発表しなかった人気シリーズ《※2》も投稿作はこういうのが好まれるというのを全部計算し|て書いた《・・・・》そうだし」
サ「時間差で来おった!」
面「今回ばかりは否定できないから困る」
サ「そんな! 救いは無いんですか!?」
面「投稿者が全員そうっていうわけじゃないさ。きちんとした志を持って応募してくる子もいるしね。完成度が高かったり、個性的である作品は賞が取れなくても出版されるケースだってある(※3)んだ。そういう作品が頭角を表すと時代を変えたりするんだ」
サ「なるほどなー」
面「仕方ないといえば仕方ない事だしね。ドラゴンボールが流行った頃の持ち込みの漫画は鳥山明っぽい絵ばっかりだったっていうし。何からも影響を受けずに作品を書くって事はもう難しい時代にきているのも否めない。そこから自分は何をするか、どうするかを考えて。さらに、小説というもの、書きたいというものに向き合って作品を仕上げてほしい」
サ「何かMMRみたいな締めの流れですね……」
面「最後にこれだけ言わせて欲しい。漫画を描けないから小説を書くみたいな理由で小説を書く子は少し考えを改めてほしい。文章で世界を表現するという確固たる文化であって、漫画の下でもなければ上でもない世界なんだ。妥協案にはなりえないし、努力しなくちゃ良い物は書けません。感覚としては就職が上手くいかないからプロ野球選手になるみたいな事を言うのと一緒です、舐めるな!」
サ「どうどう! ご主人、らしくないですよ?」
面「いや、結構そういう理由で目指す子や実際に書いてくる子も多いからさ。無駄に行動力はあるから応募してくる子もいる」
サ「そこまでいけば大したもんじゃないんですか?」
面「サヴァ子のレベルの作品を二百ページくらいの量で読まされてもか」
サ「おおぅ……。自分の作品とはいえあのノリを二百ページは苦行ですね。小説としてほとんど機能してないとまでご主人に言われましたし」
面「だから、この講座を読んで。一定のレベルに達してから公募にチャレンジしようね!!」
サ「最後はダイレクトマーケティングかよ!!」(※4)
面サ「「それでは次回までゆっくりしていってね!!」」
※1 正月芸人や地方の深夜ラジオでよく見かけたりする存在。言い方だけで笑わせるのは笑いの底が浅い証拠。欲望に直結する話題だけで一般に知られていない話を面白く話せないのは話術の足りない証拠。こういう人は実生活でもいたりする。
※2 なんとかかんとかの憂鬱シリーズ。アニメで人気が爆発したが、もともと小説を読んでいる人はその前から完成度の高さから評判にあがっていた。そして一巻以降が微妙である事も評判にあがっていた。
※3 ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ~な呪文を唱える天使などがこのケースでは有名。最近は過激になりすぎて、今ではちょっと埋もれてしまいそうな気がしないでもない。
※4 間接的ではなく直接的に宣伝を行う事。みんなでもっと面沢作品を読もう!宣伝とかもしてくれてもいいのよ?




