第十六回『誰に読んで欲しい作品なのか?』
さん
にぃ
いち
面「こんにちは、講師の面沢銀です」
サ「こんにちは、助手というか生徒のサヴァ子です。じゃあ、どこが悪かったのか教えてもらおうじゃないか」
面「悪かったところ?」
サ「さすがにあると思うんですよ」
面「あるよ。それも一つや二つではない、全部だ」
サ「お?」
面「お前は耳が悪いのか? 全部だ!!(※1)」
サ「そんなご主人……姿どころか声まで変わって……(※2)」
面「今の子達はそのネタはわからないだろう」
サ「気にしちゃいけない。さて、全部とまで言われると逆に気持ちいいですね。じゃあ、順を追って説明してください」
面「サヴァ子のその図太さは尊敬できるよ。そしてそれは文系作品を作るうえで一番大事な事でもある」
サ「おや、けなされたかと思ったら褒められた」
面「文章だけじゃなく絵なんかでもそうだけど、競技ではなく自己満足の世界だから自分のやりたいようにやった事に対して何を言われても気にしないというか、深く考えない姿勢はとても大事だよ」
サ「と、おっしゃりますと?」
面「自分が面白いと思った最善の選択をして書いているわけだから、外野の意見というか感想とかをあまりに間に受けてはいけないという事だよ。これは聞く耳を持つなというわけじゃない。全ての評価も批判もありがたく受け止めるべき、でもこれは読んでもらった事に対する感謝であって。全ての意見を反映するという事ではない。例を上げるならスト様死んだ(※3)の人みたいな方の意見をいちいち聞き入れてたらジョジョが大変な事になる」
サ「……いや、でもあれは特殊な例では?」
面「ところがそうでもない。時代の変化もあって作者側が多様な意見を直接目にする事が多くなったとはいえ。かんなぎ事件(※4)なんかは心無い読者に追い詰められたわけだしね」
サ「酷い事件でしたね」
面「自己満足を世に出す以上は、絶賛だけじゃなく辛辣な事を言われる事を覚悟する事。そしてそれを受け止めた上で書いた自分を押し通す心の強さが大事なんだよ。その分、サヴァ子はいささか神経が太すぎる気がするな」
サ「褒められてるんだか、けなされているんだか……」
面「ここで話を切り替えるんだけど、サヴァ子はこの『宇宙! ユニバーサルサムライ THE コマンドー黙示録 』はどういった人に読んでほしくて書いたの?」
サ「えーっと……? ん~~、考えてなかったけど秩序のない現代にドロップキックしちゃうようなストレス社会を生きる中年サラリーマンですかね?」
面「そこはこのサイトの読者層を考えて羞恥心の無い十代に向けて書こうよ!?」
サ「いかんのか?」
面「いかんでしょ! 自己満足を発信するのだから、その自己満足を受け止めてくれる人に読んでもらわないと意味がないだろう。日常系萌四コマみたいな作品が好きだって言ってる人にロシア文学に影響された純文学作品を「書いたから読んで」って言っても見向きもされない。そういうのを読んでほしかったらそれ相応の文学グループの人に渡すだろう?」
サ「確かにそうですね。なるほど、サヴァ子は思いのまま書いたものの。自分でもこれが誰に向けてかかれた物なかサッパリわかりません」
面「そういう点を考えると根底からちょっとズレていた事がわかるだろう?」
サ「うぅむ、のっけから失敗の道を辿っていたと考えるとさすがに凹みますね」
面「いいや、失敗なんかじゃない。文章における失敗というのは自分の書いた作品を否定して初めて失敗なんだ。だからそんな事を言ってはいけない」
サ「ご主人……そのチョイチョイかっこいい事を言うのはどういう読者層へのアピールなんです?」
面「そういうんじゃねぇよ! 台無しだよ!」
面サ「「それでは次回までゆっくりしていってね!!」」
※1 世紀末救世主。プレイステーションで発売されたゲームは名シーンを自由に編集できる機能がついていて、それを使って遊ぶ事ができます。おかげでケンシロウは水中毒になりました。
※2 何年も前のCMでエステに行ったらナオミ・キャンベルになって娘が帰ってきたというアレです。余談だがケンシロウもわりとしょっちゅう声変わりします。
※3 ジョジョの奇妙な冒険の読者投稿のページより以下原文
「あーん!スト様が死んだ! ストさまよいしょ本&ストさまF.Cつくろー!って思ってたのに… くすん…美形薄命だ…・゜・(ノД`)・゜・うっうっう…ひどいよお…ふえーん!! この間「今、時代はストレイツォだ!」の葉書きを出してまだ2週間じゃないですか! どーして、どーして!?あれで終わり!?嘘でしょ!? 信じられないよおっあんなJOJOごときに殺られるなんてっ!! ディオと差がありすぎるわっ!!生き還りますよね?ね?ね? ****……泣いてやるぅ・゜・(ノД`)・゜・ 私はあのおそろしく鈍い彼が(たとえド田舎人でもさ!ヘン!)大好きだったんですよっ!! ストさまあっ!死んじゃ嫌だああああああっ!! 先生のカバッ!!え~ん・゜・(ノД`)・゜・ 」
とんでもないインパクトがあり、かつ情熱的なお便りである。さすがの荒木先生もこの声には耳をかたむける事はできなかった。なお文庫版には収録されていないもよう。
※4 作品のヒロインであるナギが過去に男性と性交渉に及んでいたと匂わせる描写から熱狂的なファンが発狂。コミックを破った画像やDVDを割った画像が大量に流出した。これを原因だと直接名言したわけではないが、この事件の直後に作者は体調を崩し休載に入る。
凶暴かつ心もとないファンを弁護するというわけでは決してないし、一番悪いのはそういう方々に間違い無いのだが、本文中でも触れたようにそういったファンを相手にするという事を考えた展開を考えるべきだと面沢は思っている。商業作品は特にである。
そういう意味ではファンだけではなく、読者層の好むであろう展開のリサーチができなかった編集部にも問題が全く無かったわけではないはずである。
得てして自己満足の世界とはいえ商業となるとそれが通せなくなるという点を、商業を目指す人はゆめゆめ忘れてはいけない。
例え何が原因であれ、何かあった時に一番被害を受けるのは作者なのだから。




