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「悪でも、貴方の笑顔を守りたい」

作者: はるか
掲載日:2026/04/23

俺は生まれた時から親がいなかった。


生まれて1番最初の記憶は、4歳の頃。窓から見た雷雲。とても黒かった。


太陽に直接当たれることなんて無いし、青空も、全て物語の話かと思っていたんだ。なぜなら、常に窓から見る景色はいつも黒くて分厚い雲だからだ。


後から話を聞くと、俺は捨て子で

ボスに拾われたらしい。俺はボスに感謝した。だから俺は、ボスに忠誠心を尽くす。ボスの為なら命をかけていいと思っている。


そう、俺にとってそれは"正義”


…だったのに。


初任務の時だった。

森を歩いたんだ。すると人が居て

俺を見れば、「悪だ」とか言ってくる。それを言われたのは、10歳の時だった。


俺はその時、意味が分からなかった。俺はボスの命令通りにしているだけ。それなのに、責められる要因がよく分からなかった。


「ヒーロー」とやらが、俺の行動を責めてくるから当時の俺は

「俺は命令に従っている!それの何が悪だ!」と。


そしたらヒーローはこう反論する。


ヒーロー「特定の獲物を狙ってるからって、色んな植物動物を殺す必要があるか!!」


俺は、ただ俺は立場が上の奴らがそうしていたんだ。小さい頃から見ていた。だから真似しただけなのに。


でも、そうやって色々任務に出る度に

「悪め!」と襲いかかってくる。


だから俺は、気づいてきたんだ。14歳の時だった。


「世間的に見れば俺は悪役だ」と。


俺は今まで正義を実行してきたのかと思っていた。俺を拾ってくれたボスの、命令のまま。色んな人や植物を殺していたのも、真似していたんだ。

正義を執行する手段だと思っていたのに。


ただ、俺はその常識が受け入れられなかった。…でも最近変わったんだ。


街で素敵な女性を見つけたんだ。

俺はボスの命令で、街で偵察しないと行けないことがあったんだ。


だから俺は行ったんだ。一般人になりすまして、服とかも目立たないように。


初めて街中を歩いた。空は曇りだった。ただ、俺にとっては珍しい光景。曇りは、もっと黒い色しか見たことないからだ。


でも、そんなことよりボスの偵察が先。


目立つ俺の覇気に、周囲の人間はかすかに怯えていた。

だが

偵察中、俺が物を落としてしまった時


俺は気づかなかったけど、今思い返せば、周りは見て見ぬフリをしていると思う。


そしたら、とある女が

「物、落としましたよ」って笑顔で言ってくれたんだ。


俺は、優しさというものを知った。

周りの人間は、俺に脅えていた。一般人に擬態しても、体格の良さやオーラは目立つのかもしれない。ただ、特別悪いことはしていない。普通に過ごしていただけ。


ただその女性は、俺が悪だと決めつけずに親切にするその心がとても素敵だと思ったんだ。


そして、そんな悪と呼ばれている俺に

怯える表情も見せず、笑顔で居てくれた。



俺は、その女の笑顔が何故か忘れられなくて…戦いとはまた別の、鼓動の高鳴りを感じた。


だから、ふわりと「じゃあ」と言い

どっかに行きそうなその女に声をかけたんだ。


初対面でそんな事するなんて、俺が警戒するべきなのも分かるけど


我慢できなくて、

俺「良い奴だな。俺は怯えられてるんだぞ、そんな俺に優しくていいのか?」


と声をかけてしまった。


そしたらその女は


笑顔で「怯えられてるとか関係ないですよ、まだ貴方は悪いことをしてないでしょう?」と答えてくれた。


…確かにそうだ。ここでは何もしてない。

ただ、普段俺は「悪」と呼ばれる行動をしてる。


その笑顔を裏切るようなことをして、申し訳ない気持ちになる。ただ、ボスの命令は絶対なんだ。だから「悪」とやらを辞めることはしないけど


でも、思った。この女、偏見で俺を判断していない。ちゃんと今の俺を見てくれている。


ふと、いくら「悪」でも、コイツだけは絶対守りたいと思ったんだ。


でも俺は、その場で何も言えるわけもないので「そうか」とだけ言ったんだ。


女は笑顔で「ふふ、顔が戸惑ってますよ。」と言われた。少し恥ずかしかった。反射で「黙れ!」と返した。


そしたら女はこう言った。


女「…例え貴方が悪いことをしていたとしても、人にお礼が言える人を、私は悪い人として見ません。私は、人として貴方を見ますからね。」と笑顔で言ってくれた。


その瞬間

空を見れば、白い雲の隙間から少しだけ青空が出てきて、太陽の日が差した。


女の顔に太陽の光が当たる。


太陽って本当に存在したんだ、俺は少し唖然としていた。


ただそんなことより


1番太陽なのは、女の方だ。太陽に当たった女の笑顔はとても輝いて見えた。


俺は少しその女に、心が救われた気がする。


悪として見られる俺の事を少しでも

人として理解してくれようとしたその姿勢に、感動した。


女は「晴れてきましたね、じゃあまた。」と言い、どこかへ行ってしまったけど


俺は思った。世の中には、俺を悪と決めつけずに人として接してくれる人がいることに。みんながみんな、決めつけてくる訳じゃないんだ。


俺は決めた。もし今度どこかで会ったら、この女を守りたい。この偏見のない笑顔を守りたい。


悪だって、ただの悪じゃないんだ。それぞれ理由があって、正義なんだ。悪というレッテルを貼られてるだけで。


ありがとう、女。



数年後


ヒーロー「無差別に生き物を殺すな!!」


悪「黙れ!!俺はあの獲物が欲しいんだよ!邪魔なのは排除するべきだ」


ヒーロー「お前にトドメだ!!お前を殺すために貯めたパワーを…開放!!!」


女「…!?」


ヒーロー(しまった…!!間に合わない…!攻撃が女性に当たってしまう)


悪「…!?」


ドカーン!!と、大きな爆発音が響く。



女「…えっ…?」


悪「…ふぅ…」


主人公「…!?何故、悪のお前が

その女性を庇った?!?」


主人公サイドA「ぷぷっ、もしかして好きなのか?あの女性のこと」

主人公「あいつにそんな感情…」


悪「…好きだよ!!」


女「!?」

主人公「!?」


悪「この女、数年前に少しだけ話したんだ。覚えている。」


女「…!」


主人公「…何故その女性に?!お前ほどの悪が、人を好きになるなんて思えない。なんだ?なぜ好きなんだ?利用しがいがあるとでも…!?」


悪「…違うよ、ただ

この女、誰よりも笑顔が素敵なんだ。」


end

読んで下さりありがとうございます。

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