ただいまの先に。
考え事や、親しい人との会話など夢中になりすぎて道で迷子になったら…心細いと感じる人が多いのではないでしょうか…(・・;)
僕には 双子の弟がいる。
中学になった今でも仲が良く、今日も一緒に帰る途中だった。
「兄ちゃん、今日さ俺のクラスで面白いことあってさ!」
僕と弟は別々のクラスだから、いつも帰り道にお互いのクラスであった面白いことを喋ったりもしている。
ここ最近は雨が多かったから、道が少し霧がかっていて空はどんよりとした灰色の曇り空だった。
そんな気が沈むような元気だったとしても僕達の元気はいつもと変わらない。
2人で雑談しながら帰っていると、弟が言った。
「なぁ…兄ちゃん、霧濃くね?」
確かにいつも 近道として通っている道の先は濃い霧に包まれている。
「まぁ、しょうがねぇよ。行こうぜ」
僕は弟と共に、霧の中へと足を踏み入れた。
「ん…?あれ?」
ちゃんと毎日通っている道のはずだが、霧が晴れたその場所は僕らの知っている見慣れた風景ではなかった。
確かに住宅街だし信号や横断歩道もあるのだが、赤い神社の鳥居が何個もまばらに設置されているのである。
明らかに走る車にとっては邪魔であろう道路の真ん中や横断歩道などにもある。
そして最も不気味なのは他校の学生の帰宅姿や、犬の散歩をしている人を数人見かけるのが自然だが、人どころか車さえ1台も通っていなかったことだ。
あたりはシーンと静まり返り、まるでこの地区全体が眠っているようだった。
「ねぇ、兄ちゃん道間違えたんじゃない?引き返そうよ」
弟が僕の学ランの裾を軽く引っ張って促した。
「そうだな、引き返すか。」
そう言って元来た道を振り返った時だった。
そこには僕らが通ってきた道はなく、同じような住宅街と鳥居が先が見えないほど続いているだけだった。
「は?どういうこと?俺達、ここ通ってきたじゃん?!」
弟は焦って辺りを見回すが、僕らが通ってきたような道はない。
「喋るのに夢中になりすぎてたのかもな…けど、ここに見覚えないしな…人探そうぜ、交番とかあるかも」
ということで僕らは歩き始めた。
どこからどう見ても現実離れしているような光景で、人が全くいないというのも不気味でしょうがない。
だけど心細いのは弟も同じだ。
懸命に歩き続けていると、奥の道に何かが見えた。
(ここの地区の人かな…?)
弟も気づいたようで、じっとその影の方を見ている。
遠くから見ているだけなのでよく分からないが青い着物姿で、天狗のお面をした女性のように見えた。
見られていることに気づいたのか、着物の人はこちらに顔を向けた。
「ここでお祭りでもやるのかな?」
弟が声をかけてきたが、僕は女性から目を離せなかった。
女性はゆっくりとした手つきで、お面を外した。
あまりにも静かすぎるのでカランッという音が遠くからでも聞こえる。
そして女性の顔は、どう見ても人間ではなかった。
何と言ったらいいのだろうか。
顔面の中央から触手のようなものがうじゃうじゃと突き出ていて、
両頬から人間の目が最低でも3つはこちらを凝視していた。
「なんだよあれ!」
僕の視線を追った弟が悲鳴を上げた。
女性はこちらへ向かって来ていた。
「早く!さっさと逃げるぞ、走れ!」
僕は青ざめた顔をした弟に叫ぶと一目散に走り出した。
弟も同じように走る。
どうにかして、家に帰る道を見つけなければ…!
しかし、どこを見ても同じような場所で自分の家には辿り着けない。
少しずつ呼吸が荒くなり、息が苦しくなる。
心拍数が上がっているのは走っているせいなのか、恐怖心から来るものなのか、僕には見当もつかない。
今ただ家に帰ることだけを目的として走り続けることしかできなかった。
角を曲がったり、他の道路へと続く道らしきところに出てみるとスーツ姿の化け物や、小学生らしき姿をした化け物がワラワラといる。
もうだめだと思った時だった、隣で走る弟が指をさした
「兄ちゃん!あれ!」
少し向かった先に僕らの家があった。止まっている車も、庭に生えている花も間違いなく僕らの家だ。
「やった!」
僕らは、ほぼ転がるように家の中へと入った。
玄関の扉を閉めた瞬間、外の静けさが嘘みたいに遮断される。
「……はぁ……助かった……」
靴もちゃんと揃えずに、その場にへたり込む。弟も同じように壁にもたれかかって、荒い息を繰り返していた。
家の中は、いつもと同じだった。
見慣れた下駄箱、少し擦れた床、廊下の奥に続くリビングの明かり。
鼻をくすぐるのは、油の焼けるいい匂い。
「……ハンバーグ、だよなこれ」
弟が小さく笑った。
「ああ……多分な」
さっきまでの恐怖が嘘みたいに、現実感が戻ってくる。
あの場所はなんだったんだろう、なんて考えが頭をよぎるけど——もうどうでもよかった。
帰ってこれた。それだけで十分だった。
リビングの方から、トントンと包丁の音が聞こえる。
その規則的な音が、やけに安心する。
(ああ、いつもの日常だ)
僕はようやく立ち上がって、制服の埃を払った。
弟も「やべぇ、腹減った」と言いながら笑っている。
さっきまであんなに怯えていたのに、もう普通に戻っているのが少しおかしくて、僕もつられて笑った。
「お母さーん!ただいまー!」
弟とほぼ同時に声を上げる。
キッチンの奥から、聞き慣れたスリッパの音が近づいてくる。
ペタ、ペタ、とゆっくりした足音。
「おかえり〜!今日の夕飯は、ハンバーグだからね〜!」
その声を聞いた瞬間、胸の奥に残っていた不安が、すっと消えた気がした。
やっぱり大丈夫だったんだ。
全部、変な夢みたいなものだったのかもしれない。
そう思いながら、僕らは顔を見合わせて笑った。
——そして、キッチンから現れたお母さんの姿を見て、
僕らは、声も出せずに固まった。
お母さんは最初に会った女性と同じような天狗の面をつけていた。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
通学路どころか、家に帰っても恐怖は続く…( ;∀;)
そんな「終わらないホラー」を意識して書いてみました
次の作品も読んでくださると嬉しいです!(⌒▽⌒)




