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幼女兄貴をクールな男の娘がサポートする、異世界マンション逆転配信 ~お断りした先の爽やか成り上がり~  作者: ラボアジA


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9/12

9部屋目 いいこ、いいこ

(焦っただけぞね、汐音! 男にライバル心とかないきに!)

(ウソ! 楓ちゃんってば、ヒョードルくんへのアピール狙ってたでしょ!?)

「はいはい、半透明の仲良しさんたち? 反省会よ」


 Aランクの猪尾さんは、霊界テレビ越しのAAランク2人に手を叩いた。


「まずはシィポン。撤退時に、ナックラヴィーへの【鳳仙花ほうせんか】をありがと」

(オ~ホホホ! 《自爆》させてヘイトを取る! これぞ、ラスボス令嬢ですわ~!)

「いいえ、せいぜいザコ敵Bよ。投石でアッサリ脳天ヤラれたもの」

(ミ、ミルニャン……。たった今、胸にも大穴よ……?)


 千桜さんと鹿野さんは、0号室の“霊界”にいた。宝石を着けたままマンション内で死ぬと行く、花と緑の多い公園部屋である。


「でも、シィポンなら防げたでしょ? 【姫檜扇アノマテカ】だっていたんだし」

(うーみゅ、確かに)

「本当にムリなら、『いいこ、いいこ』ってあやすダケだから。次こそ頑張って」

(うん!)


 千桜さんたちの背後には、色とりどりの人魂がいた。ひときわ青くて大きいのが、SSランクの桐山さんだろう。

 “霊界”で1時間ちょっと経つと、肉体は魔力の色をした人魂に変わる。滞在限度はおよそ6日と1時間半で、それを過ぎると強制リタイアだ。


「で、次はザコA。私に何か申し開きはある?」

(ウチはザコとちゃう! なぁんも悪いことしちょらんき、謝らんぞね!)

「あら、そう」


 仏頂面だった猪尾さんは、やにわに聖女スマイルとなった。


「ねえ、ワンちゃ~ん……? あなたは、よ~く頑張ったわ~」

(ワフッ?)

「誰も責めたりしないわよ~? ――ええ。いいこ・・・いいこ・・・

(うっわー! くるみ、さっきの今でソレ言うが!?)


 鹿野さんの顔が大写しとなる。


(ウチは勝っちょったハズやき!)

「でも、負けたのよね~。ううん、いいのよ~? 課長が焦って、人選をミスったダケだから~」

(ワフ……。わ、悪かったぞね。最後は、【地震】を撃ってウチごと自爆が正解やったき)

「あらあら~」


 猪尾さんはスッと笑みを消した。


「始めっからそう言いなさいよ、バ楓」

(くるみ! おまんはヒドイちや! こン前も……!)


 ピッ。


「はあ……。うるさい死体だったわね、菊知くん」

「猪尾さんは辛辣だね」

「グチも出るわよ。ミイラ取りがミイラになったんだもの」


 たしかに終盤は、最大の【地震】をチャージして自滅がセオリーだった。仮に相討ちでなくとも、後衛が安全に撤退できる。


「そもそもワンコは、【地震】すら要らなかったのよ? シィポンが【鳳仙花】を喚んでたから、溜めなしで《自爆》できる領域が……」


 ピンポンピンポンピンポンピンポーン!


「――あのバカ。呼び鈴ミュートにし忘れてたわ」

「まあまあ、大事な用かもしれないし」


 僕がインターホンに出た。


「なに、鹿野さん?」

(あ、良かった! おんしに話があったがよ!)


 肉球で指差してきた。


弱いまったい男が女装で気ィ惹くとか、ズルいへこすいだけやき! 今も、何なが!? その無性に似合におぅちょるセーラー服は!? まあ、なんてことたまーるか!)

「あはは……」

(ナニ笑ぅちょるぞね! どうせ小さくこんもぅなった師匠が前衛ながやろ!? ほいたら、狂戦士バーサークモードはイカンきに、水鉄砲の出番はないちや!)

「いや、僕が……」

しつこいしわい! 709の青は、【盾】が仕事ぞ!)


 大声で遮られた。


(いっくらナックラヴィーの弱点が真水いうたち、それはSSランクダブルエスの桐山さんが、まる一日ひいとい【大海嘯】で溶かしちょったダケやきね! 魔力が少しぴっとしかないおんしゃあには、土台ムリな話ちや!)

「でも……」

しつっこいし・わ・い! 第一おんしゃあ、頑丈な【盾】に出来んがやろ!? 弱いまったい【盾】で師匠が守れんらぁ、なまけ者ごくどうと同じぞ!)


 また大写しになった。


(おんしは身の程を知れちや! ほいたら次にうたとき、少しぐらいぴっとばぁ好きになっちゃるわ! 小さいこまい悪たれ小僧わりことしには、『いいこいいこ』ながよ!)


 ――うん、元気な死体だ。



 ◆  ◆  ◆



 待合室で猪尾さん(&死者2名)と別れた僕は、長い黒髪ウィッグをつけたのち、マンション前のQ次郎らと合流した。


「よお、薫子様。主役は遅れて登場か?」

「間を保たせるのは得意でしょ、Qは」


 ホログラムを出すと、コメントが怒濤のごとく流れてきた。



※:セーラー服、着たー!

※:後方支援面おじさん「こういうのでいいんだよ」

※:なんの、セーラーならばジニキもカワョ



「ああ、ジニーは白い水兵さんスタイルですね」

「ワシもお気に入りじゃ」


 幼女が片足で一回転するや、大きな襟がふわりと揺れた。



※:圧倒的感謝……!(号泣

※:\カワョ/ \カワョ/

※:そこにそっとナメクジをひとつまみ…

※:↑おいやめろ



「そういえば、Q次郎の服もスゴイけど、そっちは触れました?」



※:あ

※:ヤバ

※:ほらー、薫子様言っちゃった



「え、紫スーツの話題はタブーとか?」

「いや、OKだぜ? ったく、男の戦闘服だっつーの!」



※:色がバリバリ反社なんよ

※:こんな服着てるやつ誰がいた?

※:吉良とかジョーカーとか(アカン



「へっ、魔力が紫ってのをスーツでアピールだぞ? 分かりやすさとコダワリの両立、それが俺の流儀よ!」



※:ナメクジが今いいこと言った(気のせい

※:その道不毛じゃね?

※:2323「ガタッ」



 僕らはエレベーターに乗り込んだ。今回の撮影は、ジニーのスマホに任せている。


「さて相棒、ここまで長かったな」

「Q次郎もお疲れ」

「へへっ。ジニーさんの『課題』には散々振り回されてきたぜ」

「そうだね。とくに最後はムチャぶりだったかも」

「んむ、ワシも聞いたぞ」


 したり顔の幼女がアゴを擦った。


の丈一が言うとったわ。『まさか薫が、本当にフレイムワイバーンを溶かせるとはなあ』と」

「フザけんなオイ!」



※:なんという他人事でしょうw

※:いいか、別人だぞ?

※:ジニーちゃんの言い草に草



 ひとしきり笑い合ったのち、エレベーターが到着した。



――――――――――――――――――――


 709 海岸


・ナックラヴィーを倒して石板を取れ



――――――――――――――――――――



 ――いよいよ、決戦だ。


「んじゃ相棒、俺が決着ケリつけてくるぜ」

「うん。こっちも準備するね」


 Q次郎の背中を見送りつつ、僕は【睡蓮】を喚んだ。


「睡蓮、今日は思いっきり食べていいよ」

「ぴぴ~!」


 思いきり羽を震わせた妖精は、僕の出す魔力をどんどん吸収して濃紺に染まっていった。

 一方ジニーは、Q次郎をズームで撮影している。



※:人柱っつーか、むしろナメクジ柱

※:ミ塩 ミ塩

※:ナメクジ「やめろ海水、その術は俺に効く」

※:おっとナクラ出た



 Q次郎は、大笑いして現れたナックラヴィーに、「ヘイヘイヘーイ!」と手拍子を始めた。波を蹴立てて上陸してきた重種馬じゅうしゅばに、騒ぎたてたまま回り込んでいく。



※:こういうのって弱い方が回るよな

※:まっさかー、ナメクジ自信満々やぞ?なお



「へっ、下馬評をくつがしてやるぜ!」


 海を背にしたQ次郎が、拳を真っ直ぐに突き出した。


「この俺が、一撃でな!」

「グワッハハハアー! 面白い、返り討ちだあっ!」



※:おもしれー男・・・

※:大丈夫、いけるいける

※:ほんとぉ?



 猛ダッシュしながら拳を溜めるQ次郎に、ナックラヴィーは前足で豪快な蹴りを入れた。


 ゴボォ!


「ぷげえっ!?」


 モロに顔面へと食らったQ次郎は、逆くの字で砂地に倒れ込む。


「グワーハッハッハ! なんとも呆気ない奴だ!!」



※:知ってたw

※:まさに一蹴

※:大丈夫、逝ける逝ける

※:ヤムチャしやがって……



 微動だにしなくなったQ次郎は、顔から膨大な紫の光が漏れ出すと、見る間に全身が消失した。幾度も目にした、相棒の“霊界”行きである。


 ――Q次郎。今まで色んな場面で時間を稼いでくれて、本当にありがとう。

 おかげで、ここまでこれたよ。


 僕は、振り向き始めたナックラヴィーに人差し指を向けた。


「【聖水】」


 パパパパパパシュッ!


 極限まで高品質にした【聖水】を6連射。2つの手と4つの足に放つ。


 ジュジュ~ッ!!!


「シャギャアアアァーッ!!」



※:はあッ!!? 手足溶けたッ!?

※:えっ(絶句

※:【聖水】の威力じゃねえよコレ!!

※:ナクラ動けねえ!!!



「よし」


 すぐさま僕は、【ウォータースクリーン】を球状に展開した。――ナックラヴィーを、


「ジャギャー!!」


 激烈な瘴気が吹き出されるものの、僕が張った水の膜からは一切染み出してこない。



※:全部シャットアウト!?

※:ひえっ(ひえっ

※:ソッコー溶かせるぐらい極めてる……ってこと!?

※:薄いスクリーンの水でも浄化できてる!!



「ジニー、エレベーター頼むね」

「任せよ」


 僕は、魔法を維持したまま砂州を歩いていき、石碑のある対岸に着いた。


「よいしょっと。――これで、どうかな?」


 石板を慎重に持ち上げた瞬間、体中に温かい光が降り注ぐ。


「やった……!」


 快晴の空を仰ぐと、“次の部屋は711”の文字が大きく浮かんでいた。



※:うおおおーっ、新ルーム来たああああ!!!!!!

※:88888888

※:アイエエエ! 別ルート、別ルートナンデ!?

※:分かった! ナックラヴィーを「倒さず」取るのか!!!

※:はあああああ!? 無理だろ!!

※:やっとるやろがい!



(ほんに頑張ったのお、薫)


 ジニーが【精神感応】でねぎらってくれた。


(砂地で水の膜を維持するとは、聞きしに勝る制御力じゃな)

(ありがとう、ジニー)


 “104:路地裏”や、“289:砂漠のバラ”など、低層階でひたすら基礎練習を続けていた。最後に溶かしたフレイムワイバーンですら、“305:岩場”である。


 ――全て、今日のためだった。

 ナックラヴィーを倒す前に、石板を取る。

 そこに別ルートが存在するのか、調ために。


 僕はゆっくりと石板を置いた。砂州を戻り、今度は【ウォータースクリーン】の前に立つ。


「さてと。こっちも忘れずに回収するよ」



※:おっと、オーブか

※:これは「倒して」回収だな



「ジャギャー……! き、貴様はもう用がないだろう! 帰れ!」



※:おいおいおいw

※:命乞いで草

※:つか、バーサーク後も話せたんかいw

※:さ~てさて、ナクラからの懇願に薫子様のお返事は~?



 僕はニッコリ笑った。


「ごめんね」


 すぐに【聖水】を連射した。


 ジュジュジュ~ッ!


「ジャギャアアアアァァーッ!!!」



※:ナクラ……残念!

※:この薫子様、容赦せん!

※:溶けてる溶けてる

※:ナメクジと塩は伏線やったんやなって



 パパパパパシュッ。パパパパパシュッ。


 万が一にもスクリーンに穴の空かないよう、表面を分厚くしていくことで内側をゆっくり溶かしていく。


「しばらくお待ちくださいねー」



※:カワイイ顔してヤるときゃヤる

※:にしても、帰れとか言うナクラ初めてで草

※:フリーパスだな

※:――セーラー服と帰還自由

※:ぶはっw

※:コーヒー噴いた

※:薫子様「か・い・が・ん」

※:BAKAヤロウwww

※:クソッ、こんなんでw

※:今日の大喜利会場はここですか?

※:つか年齢層たけーな

※:Atube老人会の朝は早い、いつものことである



 僕が球体を4倍ほど分厚くするころには、ナックラヴィーの姿はすっかり消滅していた。


「うん、瘴気も浄化できてるね」


 【ウォータースクリーン】を解除すると、水が砂浜にバシャーッと散った。青い宝珠が1つ残ったので、そっと手でつかむ。


「ナックラヴィーのオーブ、ゲットしたよー!」

「ぴぴ~!」



※:コングラッチュレーション……

※:オーブ、GETだぜ!



 睡蓮とともにエレベーターまで戻った僕は、ジニーと「イエーイ!」とファイブタッチしたのち、現実の1階へのボタンを押した。


「んむんむ。これで戻ると、助かった人が出迎えてくれるんじゃよ」

「1階のドアから、“霊界”の人たちが戻ってくるんだっけ。僕初めてだから、緊張するなあ」


 チーンとエレベーターが開くと、そこにはイキナリ人がいた。


「オ~ッホホホ!」

「――閉めよう」

「あぁーん、待って! お約束になりつつあるから、ホント待ってー!」


 まずは、ヘッポコ令嬢が出迎えてくれた。


「ありがとう菊知くん! ナックラヴィーを単独討伐とか、スゴかったわ!」

「Q次郎とジニー、それに睡蓮がいたおかげだよ」

「厳密にはそうだけど、別ルートとオーブは菊知くんがいたからこそよ! イェイイェイ、イェーイ!」


 千桜さんは大ハシャギしていた。


「あ、それでねそれでね! ワンちゃんも連れてきたから!」


 見ると、後ろには口をムズムズさせた闘犬少女がいる。


「ワフ……。お、おまんは……」

「ほら、楓ちゃん? 菊知くんが助けてくれたのよ、お礼は?」

「うう~……」

「ンもう、出来ないの? オホホ。じゃあ、しょうがないわね~え」


 悪役令嬢さまは、鹿野さんの犬耳を優雅になでた。


「は~い、ワンちゃ~ん? いいこ、いいこ~」

「――おまんら、キライちや!」

視聴者コメント

※:おいワンコ、薫子様と顔合わせだぞ? 笑えよ

※:まー合わせる顔がないよな

※:足だけだもんなw

※:||<ここほれワンワン!

※:面目丸つぶれ(物理

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