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幼女兄貴と往く異世界マンション攻略配信! ~頭を下げてお断りからの逆転成り上がり~  作者: ラボアジA


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7/24

7部屋目 置き告白ヨユーでした

「さ~て、純白の聖女さま?」


 したり顔のQ次郎は、精霊と瓜二つのフィギュアを棚に戻した。


「幼女への事案が、白日の下にさらされちまったなあ」

「わ、わゎ、忘れてー!」

「悪ぃが【勿忘草】なんだ」

「くっ……!」


 猪尾さんは、すかさず小型杖タクトの先を白く光らせた。


「【天罰】!」


 周囲の精霊をかき消す、【絶滅】系の範囲呪文だ。フィギュア棚から、Q次郎の【勿忘草】だけが消え失せる。


「はぁ、はぁっ……。これで、証拠隠滅よ……」

「ほ~お、配信はマダだと踏んだか? いい読みだが、コピーは済ませてるぜ」


 Q次郎はスマホを振ってみせた。


「ま、ダメ元でも【天罰】撃ちてぇよなあ」

「くっ……」

「そして、ダメ押しだがよ。お前が躊躇なく【勿忘草】を消したサマ、相棒が撮ってるんでヨロシク」

「えぇっ!?」


 青ざめた振り向き顔を、僕のスマホはバッチリ捉えていた。


「ゴメンね、猪尾さん」

「き、菊知くん……? なんでアナタが……?」

「ジニーは可愛いからね。万一に備えたんだ」

「――まさか、この撮影! アナタが黒幕なの!?」


 ぎゅっと小型杖を握る。


「ナメクジにすり替えさせたのね!?」

「うん。『709』って答えたときにね」






「イヤーーー!!」


 聖女は床をのたうち回った。




 ◆  ◆  ◆




 ――帰宅後。


「これで猪尾さんも、僕らのパーティー入りだね」

「んむんむ。くるみは見事な高速回転じゃったのお」


 幼女精霊は、横長のテーブルで隣に座っていた。


「ナイショの一室で、女子高生がぐ~るぐる。コレすなわち、秘密の部屋でJKローリングじゃ」

「ジニー……。そういうネタって、どっから仕入れてくるの?」

「くふ、賢者の石」


 自慢げに、琥珀のブローチを叩いてみせる。


「ワシには丈一が宿っておるでな、弟よ」

「ふ~ん……。で、風の精霊だから、兄貴風を吹かせるのも得意だと?」

「テクニシャンな幼女じゃろ」


 人差し指を向けつつ、僕の魔力を欠乏ギリギリまで吸っていく。体調は問題なくキープしているあたり、たいした腕前だ。


「されど薫や、お主は不器用じゃのお。くるみは動画ネタで、もっと縛れたじゃろ」

「それじゃ、コッチが悪党だよ……」


 あの後、降参した猪尾さんと、パーティー結成の握手をした。



『ハァ……でも良かったわ、菊知くんの作戦で』

『え、なんで?』

『アナタなら、屈しさえすれば絶対に動画の流出なんてさせないから。ナメクジだけじゃ、弱みを握らないと不安で不安で』

『ははは……』



 やりとりを思い返してほほ笑んだ。


「兄貴と約束したんだ。全力でマンションの探索にあたること。ただし、卑怯なマネはNG。お父さんとお母さんに説明できる範囲で、ってね」

「左様か。それは済まなんだ」

「ううん、大丈夫だよ……あれ?」


 スマホが震えたのでチェックする。


「今から課長が、新しい探索方針について会見するってさ」

「ほほお。お手並み拝見じゃな」






『皆様、こんにちは。マンダンの福生です』


 座ったままニコやかに会釈する課長。弾みで、天然パーマ風の髪が少し揺れた。


『このたび我が社では、冒険者への更なるサポートとして、〈安心プロジェクト〉を立ち上げました。その第1弾のリーダーが、こちらの鹿野楓かのかえでさんです』

『み~んな~! ヒョードル様の恋人の、ウチに任せちょき~!』


 横に座っていた犬耳少女が、元気よく肉球グローブの手を振った。


『ウチが最初に攻略するがァは、海のお馬さんこと、ナックラヴィー! 号室ぞね~!』



「ええっ!?」

「ぬぅ~む。どうやらワシらごと攻略する気じゃのお」

「ぐ、偶然だよ……たぶん」



『もっちろん、ウチの仲間も充実しちゅうがよ? 前衛はウチこと、〈土佐の闘犬女子〉ワンダ! ほいで招集メンバーは、〈悪役令嬢〉シィポンと、〈聖女〉ミルニャンやき!』



「えぇーっ!?」

「ほれ見い、引き抜きじゃ」

「ぐっ……」


 僕らはチャンネル内で、「ワイバーンを倒したら709に挑む」と公言していたから、部屋をブツけるのは容易い。


「だけど、千桜さんの加入は? いつ知ったの?」

「そりゃあ、デコペチ男とやり合った時じゃろ」

「今朝だよソレ!?」


 巨大組織のフットワークが軽すぎる。


「待って、猪尾さんは!? 彼女の加入なんて、ついさっきだけど!?」

「あやつは汐音と近しいんじゃろ? ならば、身の振り方は予想がつくぞい。最悪、空振りでもいいんじゃし」

「あ、そっか……。回復が絞れるもんね」


 Aランクの白魔道士を押さえるのは、どっちに転んでも価値ある一手だ。



『けんどよぉ、課長~』


 画面では、犬耳少女が肉球ハンドを挙げていた。


『なんでウチらは709に挑むが? 他にもムツかしい部屋は多いがに』

『霊体が複数いるためだね。〈安心プロジェクト〉の真骨頂、冒険者救出サルベージというやつさ』


 2本指で、スーツの胸元に着けたルビーを示す。


『宝石を装備すると、やられても“霊界”で復帰を待てるだろう? 709は強制リタイアしにくいからね。人気のチャレンジ部屋なんだ』

『そやね、パーティー内で1人でも帰れたらOKやき。709やと、青いSSランクダブルエスさんが今も死んじょるけんど、あン人がリタイアせんがァも宝石のおかげよ』

『けれども、蘇生のためには、誰かがその部屋をクリアする必要があるんだ』

『ワフ。ウチらのクリアまでは、【復活】とからぁの魔法も結局ムダやきにね』

『だからこそ、サルベージに精鋭を集めるのさ。――そう、〈安心プロジェクト〉にね』

『『安心、プロジェクト!』』




「ん~む、まるでエセ教育番組のようなノリじゃのお。最後のカメラ目線は何じゃ」

「視聴者コメントも禁止だしね……あれ?」


 シィポンお嬢様から電話がきた。


「どうしたの、千桜さん?」

『菊知くん……。ゴメンなさい!』

「――もしかして、招集の話?」

『そう!』


 対面通話のご令嬢は、赤毛の頭をペコペコさせていた。


『あたしとミルニャンね、マンダンを辞める前に709へ行くよう言われたの!』

「うん、いま見てたよ」

『あたし、事前に連絡したかったのよ!? だけど課長が、動画が出るまで黙っとけって!』

「仕方ないよ、まだ在籍中だし」


 半泣きのお嬢様を、優しくなだめた。


「それに、SSランクダブルエスの桐山さんを助ける必要もあったからね。むしろ、招集1回きりで脱退できるなんて、超ラッキーだよ」

『き、菊知くん……はぅ』


 不安から解放されたためか、千桜さんはポーッと放心していた。


 その背後から。


『ンもう、汐音?』

『ぴゃあ!?』


 犬耳少女がヒョイと現れた。


『おまんやと、話進まんきに』

『楓ちゃん! か、会見は!?』

『あれは録画よ。ええけん、変わっちょき』


 茶色いタンクトップに短パン姿の鹿野さんは、スマホ画面の真ん中に陣取った。


『おまさんが菊知くんながね? ウチは鹿野楓。ヒョードル様のことがとってもこじゃんと好きな、ワンダフルガールぞね』

「うん。鹿野さんの動画はチェックしてるよ。最近は、兵藤くんと仲良く昇ってるよね」

『え!? おまさんからもラブラブに見えゆうが!? えへへ、ワンワン~……。実にまったくげにまっこと、相思相愛のウチらに言葉はいらんがやねぇ~』


 ポニーテールを揺らしつつ、嬉しそうにをかく鹿野さん。133号室の“耳”による身体変化を、思いっきり取り入れた冒険者だ。


『あっ。ほいたら、明日あいたやけんど。土曜の朝一で、大きいふといお馬さんに挑むき』

「――のお、楓や」


 ジニーは自分のおでこをペチペチした。


「お主、ルカは良いのかの?」

『えーっと、なんで愛しのヒョードル様を招集せんがよ、ちぅコトですか? そらぁもう、課長がせっかちいられで、お馬さん退治を強引がいに決めたセイながですき』

「んーむ、やはり709ありきじゃったか」

『はい。ジニー師匠の戦法をマネしつつ、SSさんも救えるちぅことで、師匠とおんなじ茶色やったウチが選ばれちょうがです』


 ちなみに兄貴は、とくに誰とも師弟関係を結んでない。


『あっ、ほいたら弟くん。おまさんも、ウチらンに挑むがやろ?』


 肉球で僕を指差した。


『ウチらぁよりはよう来たら、その後で昇っちゃるよ?』

「あー……お願いしよっかな」

『ワンワン~。能力がひくいのうがわるい弟くんは、お馬さんとちゃぷちゃぷ水遊びながやろ? 安心し。先に死んでも、ウチらがまとめて復活させちゃるきにな』

『か、楓ちゃん』


 千桜さんが鹿野さんを揺する。


『菊知くんに、そんな言い方は……』

『えーっ? あんなぁ、汐音? 弟くんが、師匠の言いつけを地道しまかに守っちょるがは知っちゅう。けんど、それは師匠の愛やき』

『でもでも、魔法の精度はスゴいモン!』

『ワフ。恋する乙女は無敵やけんど、視野が狭くなるがァはイカンちや』


 肉球で、ポフッと赤毛を叩いた。


『師匠はなァ、弟くんを陰口から守りとうて、魔力が伸びんでも何とか戦える小ワザを作っちゃったが。世間の認識はコレやきにな?』

『は、はうぅ……』

「あの、鹿野さん。そのぐらいで勘弁してあげて」


 僕は苦笑した。


「大丈夫、僕もよく分かってるから。――千桜さんも、ありがとう」

『うみゅぅ……菊知くん、ほんとゴメン』


 お嬢様はすごすごと消え、画面には犬耳少女が残った。


『なァ、弟くん? 課長をやりこめてバズった〈薫子様〉は、師匠のおかげで産み出せたがやろ? 実力やとウチらに完敗ながやき、大人しゅう女装しより』

「うん、しっかり続けるよ」

弱いまったいがァに人気とからァ、ゼッタイ非難されるけんど、大っきいふっとい態度でドンと構えちょき! ほいたら、少しぴっとはマシやきにな?』

「鹿野さん……ありがとう」

『ワンワン~。どういたしましていんげの


 犬耳少女は、肉球ピースで電話を終了した。


「んーむ。薫は大人じゃのお」


 ジニーが、僕の頭を優しくなでてくれた。


「自身が軽んじられようと、マンションに挑む者はみな同志か」

「お父さんとお母さんの捜索にもつながるしね。やる気をなるべく引き出してあげたいんだ」

「くふ、健気な男子おのこじゃて」


 なでていた手を、僕のおでこへとズラす。


「もっとも、精神的余裕は、すでにワンコをせいかのお」

「――え?」

「んむ、気付いとらんかったか。とすると……」


 今度は両肩に手を置かれた。


「薫よ、忘れい」

「う……うん」


 ちょっぴり真剣な幼女に気圧された。


「まだ僕は、知らなくていいんだね?」

「済まぬ。決戦後には教えるでな」

「わかった」


 期限も切ってくれたのはありがたい。


 僕はジニーのおかげで、憂いなく挑戦前の調整に専念できた。



 ◆  ◆  ◆



 翌朝。


 組合の無人窓口で、1人黙々と探索届を書いていると。


「うわーん、おまさーん!」


 猛然と闘犬少女が走ってきた。


「ウチのヒョードル様をー! 取らんちょってー!!」

「え、えぇっ!?」


 すかさずワンワン泣きつかれる。


「女装は禁止やき、おまさーん!」

「で、でも鹿野さん、昨日はやれって……」

「イカンがー!」


 ぐいっとスマホを突き出してくる。


「ヒョードル様が告白しゆう『アリス』は、誰ぞねー!?」











 ――あっ。

Q.好きな男の子が、男の娘に惚れたがやけんど!?(泣

A.悲しいけどこれ(恋愛)戦争なのよね。

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