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幼女兄貴の配信をサポートしたら、クビにした会社が復帰懇願してきたけど無論お断りします ~マンション攻略、そろそろ本気出す~  作者: ラボアジA


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5/11

5部屋目 カワイイ=強い!?

「ぐぅっ……。き、貴様ァ……!」


 兵藤くんは下級生2人に助け起こされていた。キツく睨んできたけど、僕がウィッグを被り直すとたちまち視線をそらす。


「ひ、卑怯だぞ、貴様! 取れよ、それ!」

「アレ? 焦った兵藤くんって、結構カワイイ?」

「何ィ……!?」

「おいおい、薫子様。男は狼だぜ?」


 Q次郎は片眉を上げた。


「いいか、倒れたヒヨドリちゃんはローアングルだったろう? そんな奴が『取れ』つったんだ。とすると……、ターゲットは『お股の布』だわな」

「――えっ?」


 水色のスカートが少し開いていたので、スッと両足を揃える。


「兵藤くん……エッチ」

「違う! 断じてソレじゃない!」


 あわてて彼は、Q次郎に詰め寄った。


「言えよ、ナメクジ! こいつが薫だって!」

「いやぁ~、『好き』の形は様々だしな~。あんだけキラってたヒヨドリちゃんが、新たな一面にコロッとヤラれちまったかと思ってよ~……ククク」

「そのムカつく笑みをヤメロー!」


 配信画面では、コメント数が跳ね上がっていた。



※:もうやめて!w ルカちゃんのライフは0よ!ww

※:ヒョードル「HA☆NA☆SE!」(ナメクジは話せ的な意味で

※:涙目のルカwww



「け、決闘だ!」


 兵藤くんが僕を指差した。


「貴様、これほどハレンチな罠を仕掛けたなら、マンションにはその格好で来いよ!」

「ん、分かった」

「何ィ!?」


 彼の動揺で、かえって落ち着けた。

 みんなに負担を掛けておきながら、僕だけ羞恥心を訴えるのはワガママだ。

 それに。


「兵藤くんは、アリスが好きだもんね」

「クッ……! ああ、一目惚れだ! 貴様が女だったらな!!」


 Q次郎が口笛を吹いた。


「ライブ配信で、直球ド真ん中の告白かよ……。さすがはマンダンの生え抜き、コメが大豊作だな」

「んむ、やはり面白き奴よの」


 ブースの入り口から、ひょいと幼女が顔を出した。


「話は聞いたぞ、薫」

「ジニー! ――って、ちょっと前から来てたの?」

「くふ。やりたいシチュには、ワシ貪欲」


 ニヒルに園児帽を直した風来坊は、兵藤くんたちを見上げた。


「勝負はワシが預かろう。時はこれよりスグ。対戦形式は、選んだ一室の攻略タイムとしたいが、如何様いかようじゃ?」

「――いいでしょう、ジニーさんに従います」


 兵藤くんは僕を横目で見た。


「戦う部屋は決めていいぞ。どこでも勝つからな」

「分かった。じゃあ、104イチマルヨンで」



 ◆  ◆  ◆



 組合に冒険探索届を出したのち、異世界マンションの入口へとやってきた。


「フン。魔力もほとんど不要で、大半がザコの部屋か」


 開いたエレベーターに、僕とQ次郎とジニー、そして兵藤くんが乗り込む。


「ヒョードルさん、お願いするッス!」

「ですです。格の違いを見せてやって下さいです!」


 ノッポとチビッコの2人に見送られ、ドアはゆっくりと閉じていった。


「しかし、貴様……。AAAの俺と、104で勝負だと? “路地裏”なら勝てるとでも思ったか」


 加重が掛かると同時に、魔力も濃密に漂い始めた。『異世界』への転移である。


「たしかに、建物のスキマをぬうような細道は、フクザツに入り組んでいるからな。精霊の配置によっては、可能性があるだろう……1%未満だが」


 到着して扉が開くと、さっきまでいた現実の1階廊下ではなく、イキナリ104号室の“路地裏”が広がっていた。

 曇天の下、うらぶれたコンクリートジャングルによって形成された、枝分かれする小道。僕らの他に人影はなく、代わりに、シャボン玉に似た各色のミニ精霊がアチコチに浮遊している。


「のお、ルカよ」


 ジニーが、エレベーター脇にある白い案内板を指差した。


「クリア条件は、そこに記された基準で良いかの?」

「ええ。104号室なら、同じ色の精霊を10体アストラルに帰せばOK。本命ルームの前に、よく肩慣らしでやってます」


 先攻を選んだ兵藤くんは、記録役のQ次郎に冷ややかな視線を送った。


「俺を見失うなよ、の坊?」

「ヘッ、あいにく野鳥撮影は得意でな、ヒヨドリちゃん」


 ジニーはゆっくりと手を挙げた。


「では、ルカよ。――始め!」


 振り下ろした直後、兵藤くんは指先に黒い光を集めた。


「【絶滅】!」


 ほの暗い衝撃波が広がり、半径10mの空間にいた精霊が消え失せる。精霊界アストラルへの送還だ。


 ――待った、ジニーは!?


(案ずるな)


 すかさず【精神感応テレパシー】が来た。


(ワシはあやつより格上じゃから効かぬ。丈一の精霊じゃぞ?)

(良かった……)


 安堵する間に、兵藤くんとQ次郎は路地を駆けていった。


「フン! 蹴散らしてやる!」


 次々と【絶滅】を放つあたり、特定の色を揃える気はなく、どれでもいいから同色10体を送り返すつもりらしい。


 しばらくして、2人が戻ってきた。


「ジニーさん。クリアしました」

「俺の計測では、1分32秒。――この野郎、範囲呪文のゴリ押しとは芸がねえぜ」

「Aランクの合理的戦法だな」


 兵藤くんは僕を指差した。


「この際だ、ハッキリ言ってやろう。俺はな、お前のひたむきさは買っている。魔法学の授業も、覚えがメデタイそうだしな」


 望外の評価に、僕は顔をほころばせた。


「ありがとう、兵藤くん」

「んなっ!?」


 彼はハデに取り乱した。


「お、おぉぉおお前! そのフシダラな格好で、嬉しがるのはヤメロ!」


 紅潮した顔を、黒マントで覆っている。――そういえば、アリスのコスプレをしたままだった。


「ゴメン、兵藤くん。たぶらかす気はなかったんだ」

「へっ、薫子様のありがた~いお言葉だ。意識すンなよ、ヒョードル?」

「う、うるさい!」


 兵藤くんは、僕から微妙に視線をそらしつつ、咳払いをした。


「き、貴様はなあ。探索に不向きな体質なんだ。元来、魔力を使った体は、回復するさいに上限を増やすものだろうが」

「うん。なのに僕は、まだBランクってこと?」

「そうだ。Aにはなるんだよ、お前ぐらい本気で取り組めばな」


 彼は、ぞんざいに手を振った。


「大人しくリタイアしろ。貴様には裏方がお似合いだ」

「そうだね。ここで兵藤くんのタイムを切れなかったら、引退するよ」


 Q次郎が目をいた。


「おい、薫。お前いま、ただでさえ魔力を……」

「大丈夫」


 すでにマンション外で、相当量をジニーに渡していたから、その心配をしてくれたのだろう。


 だけど、兵藤くんの言葉にも一理ある。


「ここでつまづくようじゃ、兄貴を助けるなんて夢のまた夢だからさ」


 僕は黒づくめの彼に向き直った。


「ところで兵藤くんって、僕をよく見てるんだね。嫌ってるのかと思ってた」

「モチロン嫌いだ。弱いクセに、ジニーさんの弟というダケで注目されるからな」


 そっぽを向いている彼は、イラだたしげに腕を組んだ。


「挙げ句……女装姿で配信だと? フザけるな。そんな不埒なコスプレで強くなれるなら、俺も喜んでやってやるよ」

「あはは……」


 僕は路地を進むと、少しばかり開けた場所に立った。


「準備OKだよ、ジニー」

「んむ。――それでは、始め!」


 右手でOKサインを作っておいた僕は、人差し指で中指の腹を叩いた。


「出てきて、【睡蓮】」


 空中に青い魔法陣が浮かぶ。精霊界アストラルとのゲートだ。


「ぴぴ~!」


 魔法陣から、体長15cmほどの少年妖精が出現した。青の基本精霊である。


「睡蓮、今から魔力を送るね」

「ぴぴ~!」


 半透明の4枚羽根を嬉しそうに震わせて、水色の体を淡く光らせる。


「フン。低級精霊を撒き餌として使うのか。まさに呼び水だな」


 背後で兵藤くんが笑った。


「魔力につられた青いザコを、一網打尽というワケだ。10体も至近距離に集めるまで、何分掛かるかは知らんが」

「ヘッ、最近の小鳥はよくさえずるぜ」

「ほーお、驚いた。昨今の大ナメクジはほざくらしい。――さて、30秒経つぞ」


 そのとき、遠くから青いミニ精霊がやってきた。


「そら、ようやく1体目だ。範囲魔法ならじきに射程内だが、魔力の消費が大きいから貴様にはムリだろう。とすれば射撃だが、ザコは的が小さい……」



「【聖水】」



 パシュッ!



 狙い過たず、青い精霊へと吸い込まれていった。魔力に満足してくれたようで、すぐにアストラルへと還っていく。


「フ、フン! 1体ごときマグレだ。連続で当てねば……」


 パシュ、パシュ、パシュ!


「れん、ぞくで……」


 パパパパパシュッ!


「おンやぁ~、ヒヨドリちゃん? 俺の相棒、9連続でヒットしてンだが~?」

「バ、バカな……。そもそも、ここまで都合良く青ばかり出るハズが……。ハッ!」


 ――気付いたみたいだね。そう、【聖水】の純度を上げたんだ。


 質を高める練習は好きだったよ。睡蓮が嬉しそうに魔力を受け取ってくれるし、ミニ精霊たちも気持ちよく顔を出してくれるから。


 全て、兄貴から教わったこと。


「ぴぴ~!」

「ん、何かあった……? あっ!」


 路地の曲がり角から、燃えさかるイグアナが顔を出す。


「――サラマンダー!」


 2mの巨体が、咆哮をあげて突進してきた。直撃寸前で噛み付きをかわすも、睡蓮が丸呑みされる。


「ぴぴ~……!」


 そこで声は途切れた。


「ハハハ! スバらしい純度だな、貴様! 敵対色の大トカゲまで引き寄せたか!」


 赤い巨体を俊敏に反転させ、なおも飛び掛かってくる。


「くっ!」


 魔力を込めて伸ばした右手に、勢いよく食いつかれた。手首から先の感覚がゴッソリ消え、巨体にのし掛かられる。


「ハッ、終わりだ!」


 ――うん、そうだね。


 左手で、柔らかいお腹に触れた。


「【氷柱の矢アイシクルアロー】!」


 ザシュッ!


 零距離射撃で、サラマンダーをアストラルに還す。


 ――おっと。


 仰向けで見た鈍色にびいろの空に、青い精霊が浮かんでいた。


 パシュッ!


 抜き打ちで【聖水】を放って、10体目。

 その直後、僕の真上だけ青天に変わり、空中に“次の部屋は108”と表示される。


「うっしゃあ、クリア!」


 Q次郎が快哉かいさいを叫んだ。


「タイムは1分17秒! 相棒の勝利だぜ!」

「――ありえん。ワザとのし掛かられて、サラマンダーの弱点をついた……だと?」

「おいおい、ピヨちゃん。俺らの配信見てれば、薫のワザは確認できただろ~?」

「底辺ATuberの動画なぞ、見るワケなかろうが!」

「知ってる~! だがよお、俺がロクに焦ってねえ時点で、フツーは気付くよな~?」

「くっ……!」


(んむ、さすがは薫子様じゃ)


 ジニーが、寝転がった僕をのぞき込んできた。


(昨日までの練習が、しかと活かせておったぞ)

(えへへ)


 左手でファイブタッチした。


「さ~って、負けちまったルカちゃんよお」


 Q次郎が兵藤くんの肩を叩いた。


「さっきは何か吠えてたよなあ? えーっと、『喜んで、女装』?」

「うぅっ……!」

「ま、ジニーさんの前だ。言い逃れなんざしねえと思うが……」


 首にガシッと腕を回す。


「金髪ツインテは、お好きですか~?」



 ◆  ◆  ◆



 組合に戻った兵藤くんは、黒いミニスカと網タイツに、ネコ耳カチューシャまで装備して、僕らの配信に出てくれた。


「フン! 見よ、俺の女装を!」



※:おぉ~! ル゛カ゛子゛ッ゛ッ゛!!

※:だが男だ!(歓喜

※:金髪ツインテだと……!? 許せる!



「くっ……! 貴様ら、これで満足だろう!?」

「チチチ、ノルマがまだだぜ、ルカちゃ~ん」


 Q次郎が指を振る。


「いいか? どこぞの聖女みてぇに、ヨソ行きの笑顔を貼り付けてよぉ。『ルカきゅんを、よろしくニャン♪』だ」

「ク、クソザコが、調子に乗りおって……!」



※:頼むよ、ルカきゅ~ん(はぁと

※:早くしろー! 間に合わなくなっても知らんぞー!

※:お願いニャン♪



「チィッ。――い、いいだろう」


 恥辱に震える兵藤くんは、それでも、口角をムリヤリ上げてモニターを見た。


「ル……ルカきゅんを、よろしくニャン!」



※:――チェンジ

※:はー、つっかえ

※:おまえは何を言っているんだ



「ヘッ、大ブーイングだな。そんじゃま、テイク2!」

「出来るかァ!」

◆冒険者掲示板内、ヒョードル専用スレのコメントにて


※:でも、ルカきゅんのツインテってメッチャ似合ってるよね

※:小柄ツリ目強気ツンデレ……大好物ですッッ!!

※:お前ら、落ち着けw ついてるんだぞ?

 >※:何か問題が?

 >※:むしろ、お得とさえ言える

 >※:人類総男の娘化計画だ!

  >>※:えぇ……?(困惑

※:深淵をのぞいていたら、引きずり込まれたようだな

※:沼は深い(戒め

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