表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼女兄貴の配信をサポートしたら、クビにした会社が復帰懇願してきたけど無論お断りします ~マンション攻略、そろそろ本気出す~  作者: ラボアジA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/11

3部屋目 一心同体

 千桜さんってば、ホントに悪役令嬢と素のギャップが大きいよね。

 この魅力が兄貴にも伝われば、相思相愛だと思うんだけどな。


「のお、薫や」


 ベッドの脇から、ジニーが顔を出した。


「この赤面娘、お主へのキスじゃと誤解しとるぞ」

「――えぇっ!?」


 あれ、ジニーとのキスだって、言ってなかった!?


 途端に、心臓が早鐘を打つ。


 えぇっと……。それってつまり、僕がスゴい勢いで千桜さんにキスを迫ってたワケで……うわあー!


「あ、あのね千桜さん! キス! キスは僕とじゃないから! 兄貴とだから!」

「ふぇ?」


 慌てて僕は、幼女精霊のいきさつを話した。


「そ……そーよね、菊知くん! 体の維持に魔力がいるから、ジニーちゃんとの契約キスなのよね!?」

「う、うん! それも、ホッペタでOKだから!」

「ななな、な~んだ! ならセーフよ! ええ、何回でも来て! ジャンジャン来ちゃって、ジニーちゃん!」

「ん、んむ……。意気込んどるトコ悪いが、1回で十分じゃ。ワシ、キス魔じゃないし」


 ジニーは若干引いていたが、無事に千桜さんのほほへ口づけを済ませると、魔力の吸引を始めたのだった。




「ん~む、もうちょい吸えるかのぉ……」


 ジニーが吸引量の微調整をするなか、僕ら2人はベッドにモジモジと腰かけていた。


「あのさ……千桜さん」

「な、なぁに?」

「もし平気なら……今後の方針、決めたいんだけど」

「――え、え~え、モチロンよ!」


 ファサッと赤毛をかき上げてみせる。


「色恋だって百戦錬磨のあたくしが、キ、キキキ、キッスぐらいで動揺だなんて!」

「いや、その……。『が平気なら』って話」

「――ふぇ?」

「さっきの僕が、結構キツかったから……」

「あ……あぁー! だ、ダイジョブ! 2人で分担したし! ぜんっぜん、問題ないわ……。はみゅぅ」


 ――気まずい。


 それでも、どうにか以下のことを決めた。





・兄貴を元に戻す

  →813号室の飛行目玉ゲイザーを退治する

   →高層階なので、ミツオさん達に協力してもらう


・退治に役立つものは「精霊進化のオーブ」

  →有力なオーブをゲットできそうな部屋に行く

   →709号室に挑む


・ジニーの強制リタイアを万全に防ぐ

  →魔力供給の安定には、あと2人と契約がベター

   →僕はQ次郎に、千桜さんは聖女ちゃんにお願いする


・供給メンバーでパーティーを組む

  →千桜さんたちが僕らのパーティーに加わる




「あれ、千桜さん? 最後のって、マンダン脱退にならない?」

「へーきへーき。最近あの会社、利益重視に変わっちゃったし。いい頃合いよ」

「――聖女ちゃんも、説得できる?」

「ええ、ミルニャンはあたしに任せて」


 大きく胸を叩いた。


「菊知くんのお兄さんを助ける方が、よっぽど大切だわ」

「――千桜さん!」


 不意に感極まり、両手で彼女の手を握った。


「ありがとう!」

「ぴゃぁっ!? ――オ、オーホホホ! 貴族として、当然の振る舞いをしたまでよ~!」


 復活した悪役令嬢サマは、とても頼もしかった。



 ◆  ◆  ◆



 夜。


 寝床に入ってからは、静かに基礎練習を行うのがルーティンだ。


「ん~む、狙うは天井の的か」

「うん、精密さを磨くためにね」


 幼女ジニーは、兄貴のTシャツをネグリジェ風に着ていた。


「お主が使う魔力は、最小限か。キチンと丈一の言いつけを守っとるようじゃの」

「まだまだ、兄貴の努力には及ばないけどさ」

「くふ、安心せい。頑張り屋の弟については、よ~く丈一から聞いておったぞえ」


 兄貴の枕を抱えたジニーは、「よっ」と僕のベッドに潜り込んできた。


「しかし済まぬの。薫も休息は大事じゃというに」

「ううん、リタイアを防ぐためだもんね」


 ジニーの体は受肉したばかりで、いまだ不安定らしい。突発的に膨大な魔力がいる事態もありえるそうだ。


「僕が、イザってときは抱きしめて、強制的に魔力を送るよ」

「頼りにしとるぞえ」


 小さい手で僕の頭をなでてくれた。


「いやはや、しかし薫がロリコンでなくて良かったわ。もしそうじゃったら、ワシ躊躇したぞ」

「コラ」


 ジニーのおでこをつつく。


「そういう僕のイジリ方って、兄貴に聞いたの?」

「くふ、丈一との旅は長かったからの。いくばくかは影響を受けたやもしれぬ」

「今までの傾向を見てると、染まりきってる気もするけどね」


 呆れたように息を吐いてみせるも、すぐにお互い笑い合う。


「ジニー。サポートお願いするね」

「まかせよ、薫。ワシらは一心同体じゃ」



 ◆  ◆  ◆



 次の日、僕らは朝食のヨーグルトを無事に食べ終えることができた。

 玄関の鏡で、灰色ブレザーの制服をチェックしたのち、靴を履いてドアを開ける。


「オ~ホホホ! 気持ちのいい朝ね、菊知くん!」


 バタン。


「ふぇ? ちょ、ちょっと、菊知くん? 閉めないでよ~!」

「フウッ……。0歩でヘッポコ令嬢と遭遇したよ、ジニー」

「んむ、やはり閉めたくなるよな」

「ちょっと~!」


 朝っぱらから赤黒ドレスのシィポン嬢は、少々胃がもたれる。


 改めてドアを開けると、千桜さんは明らかにホッとしてみせたのち、口に手を当てた。


「オ、オ~ホホホ! 直前の生配信、ご苦労様。貴族たるあたくしが、見逃すとでも~?」

「あのさあ、いっつも思うけど……。何でソレ気付けるの?」


 お気に入りに登録してても、マメに確認はいるハズなのに……。ホンット、僕のチェックだけは抜かりが無いんだよね……。


 スマホで見せてきた配信アーカイブでは、今しがた撮った制服姿の僕と、水色のスモックを着た園児姿のジニーとが、笑顔で手を振っていた。



「ヤッホー! ワシは“リアルのじゃロリ精霊ADVENTUBE兄貴”こと、幼女精霊のジニーちゃんじゃよ~!」

「兄貴……。また、ずいぶんと設定盛ったね」



※:やべぇ、ジョニキが自分の破壊力に気付いたw

※:幼女兄さ~ん? 今日はその聖衣で組合に凸ですか~?



「んむ、薫とチームで探索する許可を取るぞい」

「学園の隣だし、一緒に登校だね、兄貴」

「ジ・ニ・イ」

「え?」

「ワシを呼ぶときはジニーじゃ、薫」



※:ワシかわいい

※:あれ? 今後はNOジョニー?



「くふ。小さな『よ』は、『幼児』の後ろにくっついて『ようじょ』になったわ」

「そんなムチャな」

「ほれ、薫。言うてみい」

「ジ……ジニー」

「んむ!」



※:腰に手を当ててムフー、かわョ

※:幼女ランクSSS



「それでは皆の衆、今朝はコンパクトにここまでじゃ。精進せいよ~」

「まったねー」



※:ノシ

※:ふおぉ……! やっぱり幼女は最高だぜ!

※:↑おまわりさん、この人です




 僕は千桜さんにスマホを返した。


「さっき閃いて、急いで撮ってみたんだけど、どうかな?」

「いい案だと思うわ、『キャラ設定』って」

「んむ」


 ジニーは【精神感応テレパシー】でも会話できるけど、魔力を使うから、普段は声を出してる。

 そのため、会話の端々から、精霊だとバレるリスクがあった。


 そこで。


「ワシは『幼女精霊のジニーちゃん』に転生したのじゃ。常にキャラを守りつつ、な」

「オホホ。あとは浸透させるダケね~」


 バレる前に自らバラすって、裏技っぽいけどね。


「あ、ジョニーさん!」


 学園が近付くにつれ、生徒たちから挨拶される。


「昨日の配信、見ましたよ!」

「おお! 今朝もアップしたので、あとで見るのじゃ~!」


 大きく手を振る園児の姿に、お嬢様も顔をほころばせる。


「オホホ。薫子様も負けてられないわね」

「うん」


 千桜さんもジニーも、一生懸命だ。


「僕も、2人の足を引っ張らないよう頑張るよ」



「フン。寝言を抜かすな、ジョニーさんのオマケが」



 え?


 見ると、黒髪をオールバックにしたやや小柄な少年が、学園の正門前で腕組みしていた。


「弟。配信が久々にウケたそうだな」

「兵藤くん」

「ハッ! ジョニーさん抜きでは、誰もお前に注目などせんぞ」


 黒マントを大きく翻した兵藤琉架ひょうどうるかくんが、悠然と歩いてきた。


『うわ、ヒョードルだ……』

『学年1位が、弟と悪役令嬢に絡んでったぞ……』


 生徒が遠巻きに見守るなか、黒づくめの兵藤くんが千桜さんの前に立つ。


「喜べ、令嬢。マンダンの新プロジェクトが始動だ。俺のパーティーと組むぞ」

「ア~ラ、残念ですわ。実はあたくし、菊知くんと先約がございますの~」

「――ほお」


 僕を一瞥したのち、視線を戻す。


「課長肝いりの案を蹴って、昨日クビになった奴と組むとはな。ホレた弱みか」

「えぇっ!? そそ、そんなワケない、ですわ! お兄さんを助けて、さらにはご両親を探そうと……!」

「ハッ! 色恋にうつつを抜かして、Sランクになれるものか」

「そ、そういうアナタはどうなのよ?」

「俺は即決だ。相手にホレたら、その場で告白する」


『お~っ……』


 大勢のギャラリーが沸いた。誰かが指笛も吹いている。


「フン、真の強者きょうしゃはうろたえん。ジョニーさんのようにな」

「――のお」


 ジニーが、くいくいと黒マントの裾を引っ張った。


「お主、さっきから『ジョニー』の名を連呼しとるが、もしや丈一のコトかのお?」

「当然だろう。あと、彼を呼び捨てにするな、幼児よ」

「んーむ……それ、ワシじゃ」

「は?」


 顔を指差すジニーに、兵藤くんは大笑いした。


「面白い冗談だ。幼児にしては上出来だな」


 ぞんざいに黄色の園児帽を叩くと、たちまちギャラリーがざわつく。


『お、おい。いくらヒョードルでもヤベェよ……』

『ああ……アイツ死んだな……』


 戸惑いと緊張がもたらす不穏な空気を、彼も感じたらしい。


「おい、令嬢。このエラソーな幼児はなんだ?」

「菊知丈一さんね。調べてみれば?」

「フン、そうしよう」


 園児帽をペチペチ叩きながら、右手でスマホをいじり出す。


「――え?」


 手を止め、ジニーの顔をガバッとのぞきこむ。再びスマホを注視し、両手で高速操作。


「あ、あぁぁ……!」


 大量の汗がふきだす兵藤くんに、ジニーがニッコリ。


「ヤッホー」

「す、すみません! ジョニーさん!」


 深く頭を下げた。


「変化をつゆ知らず、とんでもないご無礼を!」

「ドンマイ」


 ジニーは下から見上げた。


「じゃがよー、非礼を詫びるわりに、まーだワシより頭が高いんじゃのー」

「え?」

「ま、縮んだワシが悪いんじゃよなー」

「――あっ!」


 後ずさって土下座する。


「誠に申し訳ございません! ジョニーさん!」

「あ、この姿の時はジニーちゃんな」

「ジニーちゃん!」

「んむ、苦しゅうない」


 しゃがんだジニーは、オールバックのおでこをペシペシ叩いた。


「精進せいよ」

「ははーっ!」





「のお、薫? あやつ、なかなか面白いのお」

「ジニー……。兄貴に染まりすぎてない?」

「くふ、そうかもしれぬ。なにせ、一心同体じゃからのお」


 ファイブタッチをした僕らは、校舎にヨロヨロと入る兵藤くんを温かく見送った。

◆切り抜き動画、「【悲報】幼女に土下座する高校生www」より抜粋


※:何ソレご褒美やん!

※:デコぺち裏山~

※:土下座への誘導とか、ジニーちゃん鬼畜w

※:弟大好きだし、多少はね?

※:やはり幼女……幼女は全てを解決する……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ