表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼女兄貴をクールな男の娘がサポートする、異世界マンション逆転配信 ~お断りした先の爽やか成り上がり~  作者: ラボアジA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/11

11部屋目 最適ルートのインストール

 ドアの前でヒドく狼狽うろたえる兵藤くんをよそに、救護室のお嬢様とジニーはニヤついていた。


「ふふ~ん、あたし聞いたー。ヒョードルくんってば、冷静に水先案内人パイロットが出来るって言ったー」

「んむ、ワシも聞いたー。すごいのー、憧れちゃうのー」


 カゼの設定など、ドコ吹く風の幼女精霊。

 対する兵藤くんは、生温かい風当たりにタジタジだった。


「ぐっ……。き、貴様……。人類未踏の新ルームには、丸3日間もの単独探索権があるんだぞ? 初日をパイロットに費やしても、独占配信が出来るんだ。どれほどの価値になるか……!」

「なら、ますます兵藤くんに渡したほうがいいね。僕は兄貴のサルベージで掛かり切りになるから」

「――本気か?」

「いつもね」


 お嬢様と幼女様に見送られた僕らは、組合を出た。

 マンション前に行くと、ミツオさんを始めとした大勢の冒険者から拍手される。


「いや~、薫くん! 709の別解、鮮やかだったよ! 体調はどうだい?」

「ええ。ご心配をお掛けしました」

「今回のパイロットは君だから、探索メンバーを選んでね」

「さっきは誰で挑みました?」

「リーダーが小さな丈一くんで、あとは僕と、兵藤くんと高橋くんだよ」


 ドラフトメンバーを手で示してくれた。高橋くんは、白づくめのノッポくんだ。


「それじゃあ、白は猪尾さんに変更します。そして、1度行ったあとは、兵藤くんに711の探索権を譲渡しますので」


 みんながザワつくも、ミツオさんはほほ笑んだ。


「お兄さんに似てきたね、薫くん」

「え? 魔力も判断力もまだまだですよ?」

「でも、嬉しいでしょ」

「そりゃあ、少しは」


 ミツオさんに含み笑いされてしまった。――参ったなぁ、絶対バレてる。

 本当は、めちゃくちゃ・・・・・・嬉しいってことが。


 僕らはエレベーターに乗り込むと、すかさず四隅に散った。ボタン前に陣取った僕が“異世界”“7”“1”“1”“決定”と押すと、無事に転移が始まる。

 直後、ミツオさんたちは慌ただしく補助呪文を掛けていった。僕も、気休め程度の【盾】をみんなに張る。


「フン。俺から行くぞ、パイロット」

「わかった」

「よし、【シャドウ】召喚」


 兵藤くんが手をかざしたエレベーターの床から、体長30cmほどの黒い小山が出てきた。到着するなり、サッと外に出す。


「クリア。無反応だ」


 何か攻撃を受けると自動反撃するシャドウは、探索の初手でよく使われる。


 ミツオさんの【水晶球】クリスタルボールで、ホログラム越しに石造りの迷宮部屋だと確認。素早く案内板もチェックする。



――――――――――――――――――――


 711 4つの箱





――――――――――――――――――――



 ――違う、か。

 お父さんとお母さんの消えた部屋じゃない。


 次に、猪尾さんが【生命感知】で精査した。


「菊知くん。半径100m内に、私たち以外の反応はないわ」

「ありがとう。じゃあ最後のステップだね」


 僕が兵藤くんを見てうなずくと、彼は外に一歩踏み出した。


 タンッ。


 そしてすぐに足を戻す。


「異状なしだ」


 以降、ミツオさん、猪尾さんの順で1歩だけ迷宮に足を出し入れし、初回の探索は終了。僕が速やかに“異世界”“1”“決定”と押すと、再び転移が始まった。


「ふうっ……。肩の荷が下りたよ」

「フン、まだだ。俺の代わりにメンバーをガイドしてもらうぞ」

「あ、もう権限移譲?」

「貴様が言ったことだろう」

「あはは。――うん、頼りにしてる」


 ニッコリ笑うと、兵藤くんは顔をそむけた。


「弟、お前は追加で1回すれば用済みだ。どこへなりと行け」

「お役目からの解放だね。ありがとう」


 猪尾さんとミツオさんに役を振らないのも、僕が今後、メンバーに選ぶ可能性が高いからだろう。

 現実の1階に戻ると、兵藤くんは鹿野さんたちに国内3箇所のレベル4マンションへ割り振りを行ったのち、スマホで各所に連絡していった。


 ――彼に任せて正解だったね。


 兵藤くんの代理となった僕は、〈闘犬女子〉の鹿野さん、〈白ノッポ〉の高橋くん、〈緑豆〉の那須野くんと共にエレベーターへと乗り込む。


「あ、あンなあ……弟くん?」


 闘犬女子がこわごわ近付いてきた。


「ウチを助けてくれて、ありがとうな」

「鹿野さん」

「……って、キチンとお礼言ったきね。ヒョードル様に、さっきすごくこじゃんと怒られたき。『わだかまりが山ほどあろうと、助けられたら礼を言うんだ。これすら出来ん人間を、俺が好きになると思うか?』って」


 犬耳が思いきりへたっていた。


「あとな……? おまさんに上手くいってほしいがは、本心やったき」

「うん」

「師匠を助けるために、ウチらも力を貸しちゃるけん。な、回復コンビ?」

「そうッスよ!」

「ですです!」

「――ありがとう」


 到着後、彼女たちは1歩を踏み出せたので、僕は晴れてバトンタッチ。高橋くんは上野へ、那須野くんは高崎へ、そして鹿野さんは出雲へと、それぞれ旅立っていった。



 ◆  ◆  ◆



「――以上が、僕の初パイロットでした」


 Q次郎との配信で報告すると、再びお祝いコメントでログが押し流された。



※:祝 ☆ 偉 業 達 成 !

※:ブラボー……おお、ブラボー!

※:「ワシが育てた」

※:ジニーさんって意味ならあってて草

※:こ~んなステキな男の娘は、ナンボいてもいいですからね!

※:女装の歴史は古い、古事記にも書かれている

※:本当に書かれてるのはNG



「あのぉ。では皆さん、そろそろ本題に……」



※:お、せやせや

※:ハイハーイ、以後称賛や脱線したい人は別の場所でね~

※:え? このあと何やるの?



「はい。兄貴を助けるロードマップの構築です」

「つーわけで、リスナーども。叩き台の案を出してくれ」



※:ヨッシャ!

※:ったく……/// しゃーねーな(ガシガシ

※:攻略動画を見まくっとるワイにスキはなかった

※:813は誰で挑むのー?



「1人は桐山さんの予定です。――Q次郎、感触は?」

「おお、速攻でスケジュール埋まってたらしいがな。なーに、さっきの配信で最終日のOKもらっといたぜ。極上のスマイルでな」



※:極上……? 妙だな(首かしげ

※:ほんとかー、ひきつってなかったかー?

※:笑顔とは本来凶悪なもの……



「それとよ、薫。配信中にフサフサから電話が来て、クリアをめ千切ってたぜ」

「え。――それだけ?」

「へっ。当然、サルベージは手伝えねえとの嫌味付きだ。〈安心プロジェクト〉が聞いて呆れるな」


 冒険者が総崩れになるリスクを避けるため、部屋には目安の難易度が設定されている。たとえば、“104:路地裏”だとC、“709:海岸”ならAという具合に。

 マンダンのような大手でも、今のサルベージ対象はおおよそ7階の難度Aまでだ。その考えは理解できる。


 ――でも、それだと813の兄貴が助けられない。


「他には何か言ってた?」

「おう。『ハハハ、ナメクジくん。異世界への転移は1日1往復がルールだよ? パイロットなんかはあくまで例外さ。悪友の君が、優等生の薫くんをそそのかさないでくれたまえ』とか抜かしてたな」

「1日1往復、パイロットは例外か……」


 僕はウィッグ越しに頭をかいた。


「それじゃあ、探索権だけは兵藤くんに譲ったけど、無制限・・・に昇る・・・権利・・は僕のまんま……とか、言ってもいい?」



※:んー、これは優等生!w

※:引き下がる気は毛頭なし!(ペカーッ

※:実際どうなん有識者? 出来るんけ?

※:OKやけど、ジニキばりに薫子様もいい性格してて草



「へへっ。ならいっそ、パイロット権ごと返上させようぜ」

「そうだね、傍目はためにも分かりやすいし」

「ハッハー! フサフサが因縁つけたばっかりに、お宅のヒョードルちゃんが涙目~!」

「――うん。めっちゃ怒るね、課長」



※:そらもう怒髪天を衝くやろ(髪があるとは言ってないw

※:頭(脳プレイ)が光りますな

※:ロングの薫子様ってば、チョウハツ的で好き

※:おまいら配慮せいw 「ハゲ」散らかすほど同意だがな!



「けど、まぁ……。ここは無理せずいこっか。兄貴もルールを守ってたし」

「そンなら、残り4日で4部屋だな。ラストは813だから、選ぶ部屋は3つだぜ」



※:1ミスが命取りか

※:なーに、ジニキの課題をクリアしたんだ、いけるいける

※:ナクラを完全体で出せんかなー

※:そら無理やろ、ジニーさんもオーブありきじゃなかったし



「あ、すみません……。僕が桐山さんにキチンと渡せてれば……」



※:ええんやで(ニッコリ

※:しゃーない、切り替えてこ

※:薫子様の魅力がアレで全世界に広まったからおk

※:ヤダ……薫子様(の運)、ガバガバ……?



「あはは……」



※:話戻すが、ジョニーさんは薫子様にサルベージを託したんだよな?

※:そら(709をクリアしたから)そうよ

※:本人に聞けば……ってカゼやったね

※:お大事に言っといて下され >薫子様



「あ、はい」


 はうっ、良心が……。う、ゴホゴホ。



※:なーに、ジニキイズムは過去動画で履修済みよ

※:課題全クリした今の薫子様ならば……これだ!

  男の娘度:SSS

※:かわョ度:SSS

※:兄ラブ度:マママママーベラス



「オイ、てめーら。なんで揃う?」



※:ナメクジ、切れた!w

※:これには薫子様も苦笑い

※:全くおまいらときたら(呆れ



「ったくよぉ……。ガチの評価しろや」



※:あいよ  つ魔力量B、質SSS、射撃SSS、制御SSS

※:まったく、とんだピーキーだぜ!(だいしゅき

※:呪文の精度は高いけどすぐガス欠か

※:――これ、いっそ盾きたえる方がいい?



「ん? えっと、盾とは?」



※:ああ、108の亀退治ルートでんな

※:発動条件が[神に認められし者]必須じゃないですかヤダー

※:それ、ほぼ神退治しろってコトじゃね?

※:またカミの話してる……

※:でも薫子様の【盾】強くできたら大化けするぞ



「ふむふむ」



※:最終日の813で防御の人数減らせるのは良き

※:代わりにアタッカーか索敵投入で

※:そこにジニーちゃんもプラス

※:いけるやん!



「分かりました。では、明後日の108を攻略の軸にしましょう。あとは、[神に認められし者]の称号を取れそうな部屋と、【盾】の習熟ができる部屋をピックアップします」

「よっしゃ。気合い入れろ、野郎ども!」



※:オメーのためじゃねーよ

※:しゃしゃるなナメクジ

※:ミ青めの塩

※:薫子様のためダルルォ?



「当たりキツいな、野郎ども!?」



 そして30分後。

 明日は490のクイズ部屋に挑戦し、5日目に108、6日目はそれまでの結果で分岐させると決まった。


「では、明日の確認ですが。千桜さんが先月490に挑戦していたので、部屋には行けます。ただし、そこはパイロットに強制リタイアの危険があるため、別ルートをとるかもしれません」

「ま、そんならその時だ。ドコを選ぶにせよ、神は倒す。カンタンな話だな?」

「うん」


 急遽復活した僕らのチャンネルは、こうしてお開きとなった。

 あとは、千桜さんの許可だけである。



 ◆  ◆  ◆



「ムリィィー!!」

「えーっ!?」


 僕は自宅のリビングで愕然とした。


「ち、千桜さん!? たった今、『どこでも任せて』って言ったじゃん!」

「でも、490だけはダメなのー!」

「それって、強制リタイアのリスクがあるから!?」

「違う!」

「じゃあ、なんで!?」

「……なるから」

「え?」

「重く、なるから!」


 グッと手をつかまれる。


「いい!? 490ってね、パイロットが天秤に乗る選択も取れるじゃない? そのとき、クリアに失敗するとエレベーターで帰れなくなるんだけど、システム的には、天秤に乗った時点で体重が1トンになってるの!! しかも、クイズを進めるたびに倍々になっちゃうのー!!!」

「く、詳しいね」

「めっっっっちゃ、調べたから……。この部屋に限っては、菊知くんよりも!」


 ヤバイ、目がマジだ。


 けれど千桜さんは、不意に力を抜いた。


「ふふっ……。まっあ~、こう言って断るのは、菊知くん以外の場合ね? 菊知くんには、それなりの……う、ゴホンゴホン。お、お兄さんっぽい……ゴホッゴホッ、せ、『説得』をしてくれたら、悪役令嬢が昇ってあげてもよろしくってよ? オッホホホホ~……」

「――あー」


 兄貴っぽく勧誘してみせろってことね、はいはい。


「いっつも言うけどさあ、僕と兄貴は違うからね?」

「そ、そこはホラ! あたし、妄想力あるし!」

「……悪役令嬢ってなんだっけ」

「オ、オ~ホホホ! さ~薫子ちゃん? あたくしを満足させなさ~い?」


 それで、スーグ調子乗るしね。


 深いため息をついたのち、僕は兄貴っぽい振る舞いをインストールした。具体的には、自信ありげに剛胆な笑みを浮かべ、グイとお嬢様に迫って壁に手をつく。


「『なあ、汐音』」

「ひゃ、ひゃい!」

「『俺と一緒に来てくれ』」

「ピャッ!? い、いく! いきます! う、ウォッケーィ!」


 ――大丈夫かな、千桜さん。悪化してない?


 ともあれ、490が本決定した。

隣室のジニー「大丈夫じゃない、問題じゃ」

薫「あれ、ジニー。聞いてたの?」

ジニー「汐音がどんだけ叫んだと思うよ」

汐音「ゴメンなさい」


※次話は掲示板回

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ