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探検LoG 007 ベテランの魔石探検家

俺は浮遊島の端から落ちていた。


頭が下になり、落下速度はどんどん加速する。


あまりの速さに、左手から流れる血が空へ置いていかれている。


下は――森のど真ん中。


しかも上からスパイラルバンも追いかけてきている。


相当お怒りのようだ。


鳥は羽を縮め、俺が落ちるよりも早い。


水の魔石はもう投げてしまった。


ナイフもピッケルもない。


使えるものは全部使って乗り切る精神のおかげで、まさかこんな状況になるなんて。



その頃。


魔石探検区域グレードC【神秘樹】には、魔探局からベテランの探検家4人が派遣されていた。


門の近く。


倒木に座る中年の首にはナイフが刺さっている。


「おぅ、こりゃひでぇな」


ニコロ・ポロロ。


もっさりとした黒髭。身長は低く、ふくよかな体型。


紫の装備に背中には紫に輝く斧。


「探検家同士でやりあったってのか?」


フラ・バートン。


細い顔、アーチ状に伸びた髭、黒髪のオールバック。


腰からだらしなくはみ出た黒シャツ。グレーの長ズボン。


腕部分だけは黒いチェーンで出来ているという、探検家らしからぬ装備をしている。


「森を調べれば分かるだろう」


ロアル・アムンゼン。


赤髪で厳格な顔。毛皮を腰に巻いた粗末な装備。


だが背中には刃の長い赤い刀を背負っている。


一年に一度、最も功績を上げた魔石探検家に送られる賞を二度も獲得している。


「それじゃ、それぞれ別れて生存者を探しましょうか」


ジャンヌ・バレー。


魔石武器を持たない一流の魔石師。


白色のベレー帽から垂れる空色の長髪。


腰には六つのポーチがついたグレーのベルト。


「それがいいだろうな」


フラが言った。


「12人も行方不明なんだ。分かれて探さないと、全員見つける前に日が暮れちまう」


しかし。


ニコロは首を振った。


「いや」


「門は閉められない。門番も3人殺された」


「犯人は複数人いる可能性が高い」


「新しく来た門番の安全のためにも、入り口で二人待つ。単独行動は危ない」


ニコロは気がついていた。


――ここに生存者はいない。


だが、それは口にしなかった。


「いつもはリーダーのポロロの判断に任せているが」


ロアルが言う。


「今回は一人ずつ行った方がいいだろう。生存者の救出が先決だ」


空気が重くなる。


普通ならリーダーであるニコロの判断に従う。


だが、反対意見が出た。


「すみません……私が言い出したばかりに」


ジャンヌが小さく言った。


「おぅ、わかった」


ニコロは言った。


「一人ずつ違う方向へ行く」


本当は。


生存者がいないことに気付いていた。


だが言えなかった。



4人は門の付近から、それぞれ違う方向へ進んだ。


ニコロは一人で森の中を歩いていく。


死体。


死体。


また死体。


三人の死体は全て、自分の武器を握り締めて急所に刺さっていた。


もし相手が魔物なら、魔石能力持ち。


つまりグレードA以上。


効率化のために別れたが、やはり間違いだったかもしれない。


今回は予想以上にイレギュラーだ。


その時。


体が震えた。


――後ろか。


ニコロは振り向きながらバックステップで距離を取る。


木の幹の裏。


まるで真後ろにいるようだった。


斧を両手で握り、右肩に乗せて構える。


目線を木の裏へ集中させる。


すると。


そいつは木の幹から顔を出した。


覗いている。


そして木の裏から、気持ち悪いほど機械的な動きで出てきた。


四肢はあり得ない方向に曲がっている。


顔は――闇。


苔むした体。


まるで捨てられた人形が動いているようだった。


そいつは突然、木に抱きついた。


高速で頬擦りする。


幹に。


そして急にやめたかと思うと、門の方へ走り出した。


ぎこちない動き。


だが。


急激に加速した。


ニコロは追えなかった。


「駄目だ……」


「追わなければ。また門番が殺される」


その時。


声が聞こえた。


……空?


ニコロは見上げた。


木の間から。


空から人が落ちてきている。


その後ろ。


もう一つの影。


細長い。


何かが追いかけている。


ニコロは目を見開いた。


マルコ。

空から息子が落ちてくるなんてな。

体つきから顔から俺が知ってるマルコとは何もかもが違っていたが、血のつながりなのか、感覚的に分かってしまうんだな。


ーーー記録者ニコロ•ポロローーー

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