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探検LoG 006 グレードBの魔物

また脳が叫んだ。


――逃げろ。


鳴き声がした上後方を見る。


羽が四本生えた巨大な鳥の魔物が、羽を広げながらこちらへ飛んできていた。


スパイラルバン。


グレードBの魔物。


……こんなやつがいるなら、先に言えよ。


正直、勝てる気がしない。


グレードCとBの間には、壁がある。


とてつもなく高い壁だ。


グレードBに殺された探検家なんて、星の数ほどいる。


俺は浮遊島に来た場所へ向かって全力で走った。


確か、鳥居から真っ直ぐ進めば

地上へ戻る白い魔石がある。


くそ。


逃げ切れない。


もうすぐ森を抜けるってのに。


俺は走りながら腰のポーチから水の魔石を取り出した。


金髪女から借りた魔石だ。


……もちろん返す予定はない。


振り返る。


水の魔石に力を込めた。


魔石から大量の水が柱のように伸び、

飛んでくる鳥へ向かって突き出した。


だが。


スパイラルバンは羽を畳みながら、水柱を避けた。


そしてそのまま突っ込んでくる。


咄嗟に横へ飛び、木の後ろへ隠れた。


くそ。


水なんかじゃ、足止めにもならないか。


そもそも俺の装備は


水の魔石。

小型ナイフ。

背中のピッケル。


まともに使えるのは、水の魔石くらいだ。


どうする。


隙を見て白い魔石まで走るか。


浮遊島の端まで……およそ50メートル。


その時だった。


木から太い針のようなものが勢いよく飛び出した。


「痛って!」


左手に激痛が走る。


見ると――


くちばしが左手に刺さっていた。


違う。


木を貫通したのか。


スパイラルバンはくちばしを引き抜き、再び空へ舞い上がった。


空を旋回している。


円を描くように。


クルクルと。


……こいつ。


俺をここから逃がさない気か。


俺は木から少し離れ、焦りながら考えた。


浮遊島の端まで50メートル。


ただ走れば、突撃される。


俺が魔石を使える距離は――約11メートル。


発動まで約五秒。


……5秒が長すぎる。


くそ。


方法が見つからない。


いっそ浮遊島から飛び降りるか?


いや無理だ。


下は森だ。


それに標高は――

確実に5000メートル以上。


時間を稼ぐ方法。


そのとき、ふと思った。


待てよ。


ピッケル。


壁掛け用の金属の輪がついていたはずだ。


俺は背中のピッケルを確認した。


……あった。


これだ。


俺は木の裏から、水を撃った。


スパイラルバンへ。


何度も。


何度も。


挑発するように。


来い。


来い。


体がでかいお前は、木の裏まで回れない。


なら。


くちばしを刺すしかない。


スパイラルバンが痺れを切らした。


突然、木へ突っ込んできた。


木からくちばしが飛び出す。


俺は横から――


そのくちばしを両手で掴んだ。


暴れるなよ。


そして。


ピッケルの金属の輪を

くちばしに通した。


くそ。


はまらない。


くちばしは縦楕円。


根元が太い。


このままじゃ抜ける。


俺はナイフを抜いた。


金属の輪とくちばしの隙間に――


突き刺した。


時間稼ぎでいい。


俺は走った。


白い魔石へ。


森を抜ける。


振り返る。


その瞬間。


もうスパイラルバンは、すぐ後ろにいた。


くそ。


駄目か。


「水でも飲んどけ!」


俺は水の魔石を投げた。


そして全力で力を込めた。


魔石が爆発した。


大量の水が噴き出す。


その水圧に、スパイラルバンが一瞬怯む。


今だ。


俺は白い魔石に手を当てた。


力を込める。


魔石の中で線が伸びていく。


頼む。


早く。


もっと力を込めた。


だが。


スパイラルバンが突っ込んできた。


横に避ける。


しかし羽が俺の肩をかすめた。


体が吹き飛ぶ。


浮遊島の端へ。


足が空を踏んだ。


咄嗟に手を伸ばす。


だが掴めない。


芝生を引っ掻いた。


視界が落ちていく。


俺は思った。


――嘘だ。


初めて空を飛んだ。

シャンプーハットを初めて被ったような

そんな感覚だった。


ーーー記録者 マルコ•ポロローーー

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