表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/10

探検LoG 005 自然の神

「良い子ね、カエリ」


さっきのクソガキはカエリという名前らしい。


カエリは神殿の奥へ移動し、静かにそこに立った。


俺はコロンと呼ばれている女の前で、

やむなくひれ伏す形になった。


「あなた、名前は?」


落ち着いた声だった。


「ポロロ・マルコ。

それより足がヤバいんだ。手当てしてくれないか」


「今、治してあげましょう」


自然のような女は椅子から立ち上がり、こちらへ歩いてくる。


治せるはずがない。


……それでも。


その言葉を聞いた瞬間、

俺は安心していた。



それから――記憶がない。



「目覚めましたか」


声で目が覚めた。


俺は知らない場所にいた。


白い柱が並ぶ神殿。


奥の椅子には、女神のような女。


その横には白黒の服の少女。


……あぁ。


俺は死んだのか。


見た感じ、地獄ではなさそうだ。


「ここはどこなんだ?」


俺は女に聞いた。


「浮遊島ですよ」


女は答えた。


「あなた、そこから来たのでしょう?」


「浮遊島……?」


俺が?


「そう。各地に五つあるうちの一つ」


女は静かに言った。


「ここはコロン浮遊島」


そして。


「私がコロン」


コロン神。


自然を司る神。


……いや。


そんなのは空想の話だ。


「俺は死んだのか?」


「死後に行き先などありません」


コロンは言った。


「何があったのかは、足を見れば思い出すかもしれませんね」


足?


俺は自分の足を見た。


……何もおかしくない。


いや。


おかしい。


そうだ。


足は無かった。


人形にやられて――


池に落ちて――


特殊魔石に力を込めて――


空に。


……そうか。


浮遊島だったのか。


……は?


浮遊島?


「礼は言うが」


俺は言った。


「どうやって治した?

俺の右足は池に落ちたはずだ」


「容易いこと」


コロンは微笑む。


「神に不可能はありません」


……便利な言葉だ。


「俺はここから帰れるのか?」


「えぇ、もちろん」


コロンは言った。


「もう一度、白い魔石を辿れば」


そして続ける。


「親も心配しています。早く帰った方がいいでしょう」


だが。


コロンは言葉を止めた。


「ですが」


「一つ、使命を与えます」


「使命?」


「カエリを地上に連れていくこと」


「嫌だね」


即答した。


「俺はそいつが気に入らない」


「神に不可能はないんじゃないのか?」


コロンは首を振る。


「私はこの神殿から離れてはならないのです」


そして静かに言った。


「使命を放棄するなら、足を元に戻してあげましょう」


……。


脅しか。


「わかった」


俺は言った。


「だが、その少女を地上に連れていく理由は?」


コロンは奥のカエリを見た。


「こんな狭い浮遊島で生涯を終えるのは、つまらないでしょう」


「ただ」


「カエリに地上の景色を見せてあげたいのです」


俺はカエリを見た。


少女は、じっとこちらを見ている。


「とは言っても」


コロンは言った。


「あなたは魔石を持つだけでいい」


「カエリ、こちらへ」


少女がコロンの前に立つ。


コロンは胸元で手を向かい合わせにした。


指先の間に――


白い光が生まれる。


少しずつ形になる。


魔石。


……魔石を生み出しているのか?


「この魔石に辿りなさい」


その瞬間。


カエリは魔石に手を伸ばし――


消えた。


「まさか」


俺は言った。


「魔石に入ったのか?」


「えぇ」


コロンは頷く。


「人を取り込む特殊魔石です」


「そこから自由に出られるのか?」


「出られません」


さらっと言いやがった。


「ですから」


コロンは言った。


「いずれ、ここに返しに来なさい」


「そうですね」


「旅が終わった時に」


「俺の旅が終わるのは」


俺は言った。


「俺が死んだ時だ」


コロンは微笑んだ。


「そうですか」


そして。


「まぁ返さなくても構いません」


小さく続けた。


「いずれ戻って来るでしょうから」


……なんだその言い方。


「引き受けた」


俺は言った。


「まともに世話できる保証も、安全の保証もないけどな」


魔石から出られないなら。


まぁ、そこまで問題でもない。


「絶対に肌身離さず持ちなさい」


コロンは言った。


「死が見えたら、親に届くよう誰かに託すのです」


コロンは魔石の上を指でなぞった。


すると。


緑の紐が生まれる。


魔石はペンダントになった。


「頭をこちらに」


俺はしゃがみ、頭を下げる。


コロンがペンダントを掛けた。


「そうだ」


俺は思い出した。


「門が閉まったままだ」


「それに人形の魔物もいる」


コロンは言った。


「早く行きなさい」


「調査員が来ています」


「門は開いています」


そして。


「4日も眠っていたのです」


「母親も心配しているでしょう」


「人形の魔物は?」


俺は聞いた。


「今どこにいるんだ?」


コロンは言った。


「いませんよ」


「そんな魔物は


俺は言われるまま神殿の入り口へ向かった。


……4日も眠っていたのか。


首に掛かった魔石を見る。


神殿を出て、最初に来た場所へ歩き出した。


緩やかな階段を降りる。


ペンダントに触れる。


紐は植物だ。


しなやかだが、妙に硬い。


魔石はうっすら白く光っている。


もし壊れたら。


……少女はどうなる?


死ぬのか。


それは避けたい。


神を敵に回す趣味はない。


森を進んでいると突然、声が聞こえた。


「ガァァァァアアー!」


不快な何かの声が森中に響き、木がざわつく。


ばっと振り返る。


嘘だろ。

臭い、汚い、無礼な男がやってきた。


本当は行きたくないけどしょうがない。


こんなやつと一緒に過ごすなんて、


それにどうしたら。


ーーー記録者 カエリ ーーー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ