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実りの地  作者: 金城絢


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第三章 隠された真実

友人の一言が頭の中で何度も響く。初めは「仕事の一環だろう」と、沙織は自分に言い聞かせていた。しかし、次第にその疑念が大きくなり、完全に無視できなくなった。

――変な詮索をせず、このまま無難に生活を送るのが、幸せなんじゃ…。でも…疑いを抱えたまま、この先何十年も過ごすのは、苦しいかもしれない…

夫への信頼と裏切られる恐怖が、沙織の心を引き裂こうとする。沙織は、胸に渦巻く感情に押しつぶされそうになりながらも、何かしら手を打たなければならないと思っていた。夜も眠れず、思考が堂々巡りをする中、最終的にひとつの決断を下した。

――探偵に依頼しよう

数日後、沙織は市内の探偵事務所に足を運び、事の詳細を伝えた。彼女が調査を依頼したのは、地元で評判のよい探偵で、和田という中年の男性だった。和田は、落ち着いた物腰で、沙織の話を静かに聞いた。

「心中、お察しします」と和田は言い、少し間をおいてから続けた。「ただ、真実がどうであれ、覚悟を決めてください」

まるで運命の一歩を踏み出す覚悟を求めているかのように聞こえる。長年に渡り、人間の暗部を見続けてきた和田の言葉には、重みがあった。沙織は、わずかに身体を震わせながら頷いた。


「分かっています。調査をお願いします」

それから一ヶ月後、和田から連絡が入った。

「お調べした結果、おっしゃっていた通りの事実がありました」

その言葉に沙織は思わず息を呑んだ。和田は続けて、詳細な報告書を手渡してくれた。その内容を読んでいくと、健太の不倫相手は、友人の噂通り、由利本荘市に住む女性であり、彼女には一人の子どもがいることが判明した。

沙織はその事実を一度に受け入れることができなかった。目の前がぼやけたが、目を閉じて心を落ち着け、もう一度報告書を読み返す。

《相手は、由利本荘市内の不動産会社に勤務する事務職員。ご主人とは、同業者同士の集まりで何度か顔を合わせるうちに、男女の関係に発展したようです》

――本当に……こんなことがあったの……?奈緒の闘病中じゃない……

その瞬間、心の中で何かが壊れる音がした。裏切られていたこと、そして健太がその相手と子どもを育てていた事実が沙織を深く傷つけた。手に持っていた報告書がふるえた。それでも、もう一度冷静にならなければと思った。

――でも……

《子どもは脳に障害を持っています》

沙織は、この子どもが障害を持っていることを知った時、怒りや憤りの感情が少しだけ和らいだ。

自分が知っている限り、障害児を育てることは並大抵の苦労ではない。むしろ、社会の偏見や理解不足、制度の壁に直面しながら生きることは、どれほど辛いことか。

――だからと言って、許せるわけじゃない

沙織の心は、怒りと同情の間で揺れ動いていた。不倫相手との子どもが、障害を持っていたこと、それは一つの「理由」に過ぎない。沙織にとって、もっと重要なのは、自分と瀕死の娘を、健太が長年裏切っていたこと、だった。


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