1.左遷
「は?薩摩に行け?」
超絶美人の、ロザリンド・クリスタルは、あまりにも驚きすぎて、美しい瞳が飛び出しそうになった。
「そうだ!お前は、この名門イーグル魔術学園のバーミンガム本校に存在する資格はない!」
60を過ぎた、独身の女校長のフェリシティは、偉そうに怒鳴った。
ここは、イギリスの超のつく魔術名門校「イーグル魔術学園」。頭がよく、魔術の才能が秀でていなければならないのは勿論のこと、学費もべらぼうに高く、貴族でもなければ、敷地に足を踏み入れることすら許されない。そんな世界トップクラスの名門校で、飛び級を重ね、18歳にして魔術大学の卒業証書を手にし、極め付きは、このイーグル校の最年少大学教師に任命される所まで上り詰めた!しかも、長い金髪に美しく透き通るような青い瞳を持つ、身長180センチで肉つきのいい超絶美人である。
このような非の打ち所の無い人間に下品な声で怒鳴り付けるのは、神への冒涜に等しい!
「あなた、妊娠しているわね!」
フェリシティのババアが再び下品に怒鳴った。
「は?妊娠!?」
「そうよ!あなた、妊娠しているでしょ!誰との子供なの!?」
「しっ、してないわよ!(してます)」
「してるでしょ!追放よ!追放!」
「ぐえっ」
まずい!やっぱりバレてしまった!
実はと言うと、何も考えずに男と遊び過ぎていたら、うっかり妊娠してしまったのである!
私はあまりにも美しすぎるので、言い寄ってくる男がウジ虫のようにわいてくるのだ!
私も私で安い女ではないので、安っぽい男は鉄拳制裁で追い払っている。
だが、美しすぎる私は、絶世のイケメンすら引き寄せてしまうから始末に負えない。
この間も絶世のイケメンに押し倒され、いかがわしいことをされてしまった。
きっと私の存在自体が罪なのよねー。
それにしても、フェリシティのババアは何であんなにキレているんだ?
きっと男と付き合ったことがないからだろう。
というか、あいつ絶対処女だろマジで。
というか、なぜ妊娠がバレた?
妊娠はしてはいるのだが、腹がそこまで大きくなっているわけではない。
なぜ妊娠していることがわかったんだ?
「おい!フェリシティのババア!私は妊娠していないわよ!」
「ババアじゃありません!」
「いや、ババアだろ」
「追放よ追放!あなたはバーミンガムから追放されて、日本の薩摩分校に左遷されるのよ!」
「誰がそんなところに行くか!」
「いいかしら?!正直、あなたにはとても期待していたの!授業はまともに聞かないし、毎日男と遊んでるし、素行は悪いし!でも、あなたには才能があった!成績は優秀だし、魔術の才覚も申し分なかった!私はあなたが最年少魔術教授として活躍することを、大いに期待していたの!」
「そりゃそうよ。私は天才ですから。」
「だけど、今回ばかりは言い逃れできないわよ!不純異性行為は校則で禁じられているのに、男と遊び歩くだけでは飽き足らず、妊娠まで!」
「だからしてないって!」
「してます!」
「何でわかるのよ!」
「あなた、デーン教授と付き合っていたでしょ」
「ううう、うえっ?!」
は!?嘘でしょ!?
あれだけ念入りに隠れて付き合っていたのに、なぜバレた?
「教授の間で噂になってたの!デーン教授とあなたが付き合っているんじゃないかって!デーン教授は結婚しているのにねっ!怪しいと思って、他の先生と一緒にあなたのことを調査していたの。そしたらあなた!隠れて産婦人科に通っていたみたいね!」
「なっ、何よ!そこまで調査していたの?!キモッ!」
「追放です!バーミンガムから出ていけ!」
「ひどい!この処女!」
「処女じゃありません!」
「いや、処女だろ。」
「出ていけーー!」
こうして、私はイーグル魔術学園バーミンガム本校の卒業証書をもらったのにも関わらす、バーミンガム本校を追放され、イーグル魔術学園薩摩分校に左遷されることとなった。本来であれば、バーミンガムで最年少教授として教鞭を振るうこととなっていたが、その話はたち消えた。
私は天下無敵のイーグル魔術学園バーミンガム本校ではなく、地球の果てにあるといっても過言ではない、薩摩イーグルの高等学部の担任教諭として教鞭を振るうこととなってしまったのである。
私は重い足取りで、バーミンガムの校門を後にすることとなった。
「だいたいあなたは素行が悪すぎる!妊娠の話だけじゃない!問題を起こしすぎです!」
私の後ろから、この世で最も醜い教授であるフェリシティが、絶世の美女である私に捨て台詞を吐いた。
「何よ!問題なんて起こしてないわよ!このブサイク!」
私も捨て台詞には捨て台詞で応えた。
「ブサイクじゃありません!」
「ブサイクだろ!」
あー、あったまに来る!
この最強の魔術師がこの地を去ることによって、バーミンガム本校の威光は地に堕ちることだろう!
イギリスも終わりだな!滅びよ!ブリタニア!
せめてもの救いは、あの憎きフェリシティの顔を二度と拝まずに済めることだろうか・・・。
私は簡単な身支度を整え、日本の薩摩分校に向かうこととなった。
そして私の物語は、イーグル魔術学園の中で、最もレベルが低いといわれる薩摩イーグルから始まることとなる。




