滅ぶ異世界と二人の女神①
あの時、怒りの感情に任せて、異世界の女神を殺してしまわなくて、本当に良かった。と、ツキは思っていた。
時は訪れた。
全ての神界の神々が注目する中、日本の神を異世界召喚なる邪法によって、傷つけた異世界の女神を、処刑する。この行為をもって、今後、日本の氏子を異世界召喚しようともくろむ、すべての異世界に圧力をかける。それでも尚、異世界召喚を行う輩に対しては、武力行使にでる。異世界召喚は、神々の命さえ奪いかねない、危険な行為だと認識づけることに成功しているのだ。戦争の名目は、いくらでも立つ。
ようやく、異世界召喚から氏子たちを守れる。
滅ぼせば滅ぼすほど、異世界の神々は異世界召喚を恐れ、二度と日本の氏子に手を出さなくなるだろう。
ツキの頬が優しげにほころぶ。
「私の可愛い氏子こどもたち……。もう大丈夫です。怖いものも、恐ろしいものも……。私が、全部……」
ツキは、聖母のような笑みを浮かべ。
「ぜんぶ滅ぼしてあげますから……」
ひとつの異世界を滅ぼすために、異世界の女神を殺すため、一歩を踏み出した。
術で日本の神界と、異世界の神界をつなげると、そこには件の異世界の女神がいた。
どれだけツキを恐れていても、異世界を放棄して逃げ出すわけにはいかなかったのだろう。神殿のような建物の中で、異世界の女神は静かにたたずんでいた。
等間隔に並んだろうそく、薄暗く照らされた窓のない部屋の中、二人の女神が対峙する。




